――1――
「今はなのはもフェイトも地球にいない、か」
あの後、アリサにそう聞いた俺は若干拍子抜けしつつ二人と別れた。
完全に今日、あの二人とそれから出来ればはやても含めた三人と話をしようと思っていたのだが、三人とも忙しい管理局員だしそうそう地球に居ないよな。
ま、居ないなら居ないで前回出来なかった買い物タイムと行こうか。
そう決めた俺はキャロと二人で歩いている。
「まず、服だな。服屋より本屋か」
一着ずつ買うより雑誌を買えば、その本の中の服は全部創りだせるしな。
「いや、まずは前に行ったケーキ屋に行くべき」
「お前……アリサん家で散々食っただろ。まだ食うのか?」
「甘いものは別腹って良く言いますよね」
「さっきまで食ってたのも甘いものなんだが」
「それはそれ、これはこれです」
まぁ、やることもなくなっちゃったし、元々はアリサの家ではなく翠屋に行くつもりだったから良いんだけどな。
ため息を吐きつつ翠屋へと向かう。
そういえば……翠屋は軽食もあったな。
俺はそっちにしよう。
○
翠屋に着いた。
「君がなのはが話していた子連れの男性って人かな? なのはとはどんな関係なんだい?」
店に足を踏み入れた瞬間、数多くのオリ主を処刑場(道場)へ導いていくラスボスが登場なさった。
何か凄ぇプレッシャーを感じる……魅力操作が効いてないのか?
「あー……多分そうですけど」
「やっぱりそうか! いや、ピンクの髪のカワイイ女の子を連れてると聞いていたからもしやと思ったんだがね」
店の入り口で話し始めた俺の袖をキャロが引っ張った。
「なんだよ?」
俺は『お話(OHANASHI)』フラグ回避に必死なんだよ!
「ケーキ」
キャロの視線はケーキが展示されたショーケースに釘付けだ。
俺の事なんかどうでもいいんすね……。
「あの……とりあえず座っていいですかね?」
「おっと、そうだったね。では注文を聞こうか」
キャロはケーキを数種類(多分まだ追加で頼む気でいる)。
俺は冷たい紅茶とサンドウィッチを注文した。
「お待たせ」
注文の品をテーブルに並べ――
「それじゃ、さっきの話の続きをしようか」
俺の対面に座る高町士郎。
なのはパパである。
「話……とは?」
「うん。君はなのはとどんな関係なんだい?」
凄い笑顔なのに有り得ない威圧感を感じる。
「え~っと……関係と言われても」
一回会っただけだし……。
ただ、あの時は魅力操作前、変に怪しまれている可能性はある。
「いやね、数日前に帰ってきたなのはが、『どうしてももう一度会ってちゃんとお話したいの』なんて言うもんで気になってしまってね」
「そ、そうですか」
追い追われる関係ですなんて言えない……。
「あなたの娘さんが必死になって追いかけるような関係です」
キャロ――――ッ!!
「お、おま……何を……?」
「どういう……事かな?」
はっ、殺気!?
「いや、あのですね? 追いかけるといいましても……」
前回の出来事を話す。
俺とキャロが魔導師だけど、管理局の魔導師じゃないこと。
地球に来たときにアリサ達に見られ、なのはにそれがバレたこと。
その事について色々と話を聞きたいというなのはから逃げたこと。
「…………」
全然信じてくれてなさそうな顔をしていた。
「キャロ、お前からも本当だって言ってくれよ」
「…………」
「キャロ?」
返事をしないどころかこちらに視線もくれやがらない。
キャロは悲しげな瞳で自身の前に積まれた空の皿を見ていた。
「お姉さん! ケーキ全種類追加で!」
俺はカウンターに居た高町桃子に大きい声で告げた。
途端――
「今の話は本当です」
「そうなのかい?」
「はい」
士郎さんは『ふむ』と頷いてから、
「なんで逃げたのかな? またウチの店に来たということは別に疚しい事がある訳ではないんだろう?」
「え~っと、ですね……実はキャロはですね」
俺はキャロと過ごすことになった経緯を説明した。
「それで……管理局は万年人手不足なので……捕まったら、俺はまだしもキャロも局員として働かされてしまうかもと思ったので逃げてしまったんですよ」
実際はキャロをフェイトに押し付けようとしたことは黙っておいてそれらしいことを言っておいた。
「そうか……確かに、自分の意思とはいえ、当時小学生だったなのはも普通に働かされていたな」
顎を指でさすりながら考える士郎さん。
「でも……それなら何でまたウチに来たんだい?」
「それは……後々考えたら、管理局はともかく娘さんは信用できそうだし、ちゃんと話してみようかなって思いまして」
「なるほど、分かった。君は中々の好青年のようだね。キャロちゃんを引き取りちゃんと育てているのだから」
威圧感が消え、人の良さそうな笑みになる。
「ケーキ、お待たせしました」
と、そこで桃子さんがケーキを運んできてくれた。
「わ~い! ありがとう、お姉さん!」
「どういたしまして。ふふ、こんなに素直で可愛い元気な子、悪い人に育てられるわけないわ」
嬉しそうにケーキを貪り食うキャロを見て微笑む桃子さん。
素直で可愛い……?
元気なのは認めるが、素直で可愛い……だと?
「なんだ桃子。聞いていたのか?」
「聞こえたのよ。大きな声で話してるんだもの」
「それもそうだな!」
「ええ」
豪快に『はっはっは!』と笑う士郎さん。
早くも桃色空間が出来つつある。
「それより残念ね? 折角なのはに会いに来てくれたのに、あの子またお仕事に行っちゃってるからいつ帰ってくるか分からないの」
「忙しいみたいだからなぁ。連絡もこっちからしないと全然してこないんだ」
自分で行って自分で悲しくなってる士郎さん。
「連絡……とれるんですか? 地球にいないんですよね?」
まぁ、向こうの世界の通信機でも持ってるんだろうけど一応聞いておく。
「ああ、なんだか別の世界でも使える携帯電話のようなものを貰ってね」
「あ、そうだ。ちょっと連絡してみましょうか」
そう桃子さんが提案する。
「え、良いんですか?」
正直会えるまで何回も来るとかキャロが太りそうなんで遠慮したいです。
「ええ、ここではちょっと使えないから着いてきてくれるかしら?」
「あ、はい」
「ケーキ持って行ってもいいですか!?」
ショーケースの中のホールケーキを指差すキャロ。
「ふふふ。それは後でね。シュークリームで我慢してくれるかしら?」
「はい!」
シュークリームをいくつか受け取るキャロ。
何か恥ずかしい気分になった。
「店員が誰も居なくなるのは拙いな」
そう言って士郎さんは接客に戻っていった。
○
桃子さんに連れられ高町家のリビングへやってきた。
「じゃあ連絡して見るわね」
俺らの前に通信機を置いて、桃子さんが操作する。
暫くすると目の前にウィンドウみたいなものが現れ、その中になのはの顔が映っていた。
「どうしたのお母さん。何かあ――」
「やっほ」
「シュークリームうまし」
なのはの言葉の途中で俺は画面に向かって片手を挙げ、キャロは俺の隣でシュークリームを食べていた。
「な、なんでぇ――――っ!?」
――2――
「な、なんでそこにいるんですかっ!?」
なのはが驚いたように、自分の実家のリビングにいる俺達に質問してくる。
「色々あって、ケーキ食べに来たらこうなった」
掻い摘んで説明する。
「全然わかんないよっ!?」
だろうね。
「実は……かくかくしかじか、あれこれこうなってこうなった」
「よ、余計わからない!!」
「ケーキ食べてたらこうなりました」
「ケーキ!?」
なんだ……お前は腹ペコキャラでも目指してんのか?
「まあ、ふざけるのはこれぐらいにして、簡単に言うと……」
ここまでの経緯を説明する。
「ちなみにアリサとすずかとは仲良くなりました」
実は連絡先も交換したんだぜ?
実は俺もキャロもこの通信機を持っているのです。
今まで色々な世界に行って、使ってる人を見て良いなと思って創ったのです。
でも今までは俺にはキャロ、キャロには俺、それだけしか連絡先が登録されてなかったのです。
……淋しかったのです。
なので、仲良くなったので二人分の通信機を創り出してプレゼントしたのだ。
「なので高町さんもあの二人に連絡先を教えてあげれば喜ぶと思うのです」
「? ……教えてるよ?」
「こっちのじゃなくて今使ってる通信機のです。二人も同じの持ってます」
「なえっ!? いつの間に!?」
「俺がプレゼントしたからです。ちなみに連絡先は交換済みなのです」
まぁ、そんな話はどうでもいいとして、本題。
「まぁ、それよりも高町さん。俺達は高町さんに用があってやってきたわけですけども……」
「あ、そう言えばそう言ってましたね。でも私……仕事で当分地球へ帰る暇がないんですけど」
だろうね。
どうするか……。
「ちなみに高町さん、今ドコに?」
「え……ミッドですけど」
「ミッドのどこですか?」
「……教導隊の食堂ですけど」
管理局の中か……それはマズイな。
「キャロ、ミッドのケーキ屋に興味」
「ない訳がなかろうもん」
「あ、そうですか。……って事でミッドのケーキ屋に居るんで、出来ればフェイトさん連れて二人で来てください、では」
「え、ちょ、ケーキ屋ってドコ!?」
俺にもわかりません。
なのはの声を無視して通信機を桃子さんに返却する。
「よし、ミッドへ行こう」
俺はミッド(の安全な場所と念じて)へ向けスキマを開いた。
○
「ここがミッドか」
まるで未来都市じゃないか。
地球が進化した感じか……俺には良く分からんが凄いんだろう。
「さて、じゃあケーキ屋でなのはとフェイトを待つか。キャロ」
「あっち」
キャロが指差す方へ歩く。
実は旅するようになってから分かったのだが、キャロの感(主に自分の興味のある事についてだけ)が凄いことになってるのだ。
だから多分、キャロに着いていけばミッドでも一番と言っていいぐらいに美味しいケーキ屋に辿り付けるはずだ。
「あ、最初からミッドで一番のケーキ屋にスキマ開けばよかったかも」
ま、初めてのミッドを眺めて歩くのも良いかもしんない。
ケーキ屋はすぐに見つかった。
店に入ってすぐにキャロは数種類注文して、店内に備え付けられているテーブルで食べ始めた。
俺はもう甘いものはいらないので飲み物だけ買って同じテーブルに座り、ここに来るまでに買っておいた地球とミッドのファッション雑誌を眺める。
「お、キャロ、これ着てみない?」
俺は目にとまったページをキャロに見せる。
「……変態ですか? それ日常で着ろってありえないです」
「はぁ?」
俺がキャロに見せたのは子供っぽくもあり夏らしくもある可愛い感じのワンピースだったのだが、キャロの反応がおかしい。
「大体、私にそれが着れるとでも? 嫌味ですか? 死にますか?」
俺は雑誌を自分の方に向け確認する。
その理由がすぐに分かった。
「違ぇーよ! 誰がお前のビキニ姿なんか見たいよ!?」
それは俺の見たページの隣のページが水着特集の表紙で、グラビアアイドルばりのモデルさんが海をバックにビキニで写っていたのだった。
キャロはワンピースではなくこっちが目に入ったようだ。
だがキャロにビキニはない。
まず下はともかく、上は支える物がないからポロリが確実だ。
それはそれで有りかもしれんが、キャロなら絶対的にスク水系だろうが!
あっ、隣のページと掛け合わせてワンピースタイプも捨てがたいな。
「それはそれでムカつく物言いですね」
「ビキニはまだ早いっつの。せめてあと五年は成長してから言え」
あれ……?
五年後のキャロで……着れるか?
「凄い失礼な事考えてる目で見てますね」
「……あと七年は経ってから言え」
「二年増やした……だと? ふざけてますね。五年後覚えてやがれです」
はっ、五年後にこんなんが着れるようになってたら俺がプレゼントしてやるよ。
是非着てくださいって土下座してな!
男らしくない?
そんなことない。だってキャロだぜ?
確実に美人に成長することが分かりきってるんだぜ?
それでビキニが着れるような体型になってるんだぜ?
見る為に土下座ぐらいするだろうが!
まぁ、キャロがそんなグラマラスボディ(笑)に成長するとは思えんが。
確か漫画版では十四歳でもペッタンコだったはずだ。
「おお、楽しみにしといてやるよ」
「く、何ですか、その哀れみのこもった眼差しは……」
残念だよキャロ。
お前に勝ち目はないのさ。俺には原作知識があるからな。
さらに俺の能力があればお前をフェイトやシグナム以上のボディにしてやれるんだけどな……絶対しないけどな!
そのままのキミでいて欲しい……俺はそう思うのです。
「いつまでもスク水の似合うキャロでいて」
「殺しますよ」
おお、怖い怖い。
○
そんなこんなでキャロと二人、和気藹々と過ごすこと数時間。
カランコロンと店の扉が開かれる。
「や……やっと、見つけたのっ!」
「場所くらい……聞いておこうよ、なのは」
入ってきたのは息を切らしているなのはとフェイトだった。
「やっと来たね。お二人さん」
「やっと来たって……どれだけ探したと思ってるんですかっ!」
なのはがちょっと怒っていた。
「いや、俺もどこのケーキ屋に行くのか分からなかったし、そもそもミッドに来たのは初めてだし。まぁ座りなよ。疲れただろ?」
俺は二人に座るよう進める。
「疲れただろ……って、誰の所為だと思ってるの」
と言いながらなのはが座る。
フェイトもなのはの隣に座った。
「まぁ、まずはお疲れ様と言っておこうか」
「おつかれ」
俺とキャロがそれぞれ言いながら片手を挙げる。
「なんだろう……すっごくムカつくの」
「なのは……私もだよ」
二度目の出会いも最悪だった。
あれ……俺、二人と仲良くしようと思って来たんじゃなかったっけ?
――3――
「今日はお話聞かせてくれるんだよね?」
店内に現れてから暫くして息を整えたなのはが、俺達と同じテーブルについて言った。
「うん。じゃなかったらわざわざ会いに来ないし」
なのはを見ると探し回らされたことに若干怒っているものの、前回会った時よりも表情が柔らかく見えた。
警戒心も薄そうだ。
フェイトも同様だった。
腰掛けて紅茶を飲む、それだけで絵になるってどういうことだよ。
「てか、一年前に一度会っただけの俺が良く分かったよね」
こっちは原作っていう形で知ってるし、アリサは出会いからしておかしいし二度目の登場も一度目と同じだったから分かりやすいと思うし。
それに比べなのはなんて年中事件追ってるようなもんだからあの程度のこと慣れてるだろうしな。
「そりゃあ…………一度会ったら忘れられないの」
なんだと?
その言い方……まるで……
「まさか……俺に惚れてる?」
みたいじゃないか?
「そんなわけないの」
すっごい冷静に言われました。
てか表情がないってこういうことを言うのか、と初めて知りました。
さすが悪魔呼ばわりされるだけのことはあるぜ。
「あんな逃げられ方したんだもん。忘れられないよね」
フェイトが苦笑する。
苦笑ですら美しい。
フェイトさんマジ天使だし、これ。
「フェイトさんマジ天使」
「ふぇっ!?」
真っ赤になるフェイトがマジで可愛い。
なにこの娘、持って帰りたいんですけど。
「あ、やべ、ついうっかりくちにだしちゃったぜー」
「うわーめちゃめちゃ棒読みだー引くわー」
お前もな。
つーかお前ホントに何でも返せるな。芸人にでもなった方がいいよ、もう。
「真面目に話して欲しいんだけどな」
ふざけていると笑顔だが完全に目が笑ってないなのはがそう言った。
なのはさんマジ悪魔。
「なのはさんマジ――っ!?」
慌てて口を塞ぐ。
これはついうっかりで言ってしまおうものなら死亡フラグになってしまう。
「マジ……なんですか?」
ど、どうする、俺。
「なのはさんマジ女神って言おうと思ったんですよ、ええ。ホント女神のようにお美しいですよね」
とりあえず褒めて褒めて褒めまくれ!
女が怒ったときは褒めるか謝るかだってどこかで聞いたことある気がする。
「そ、そうなんだ。なんだ! 変なこと言おうとしてるのかと思っちゃったよ!」
なのはも褒める言葉には弱かったらしい。耳まで真っ赤だった。
「なのは……」
なんかフェイトさんは俺が誤魔化したってのに薄々気付いてるのか生暖かい眼差しでなのはを見ている。
誤魔化しだけど、なのはが可愛いのはマジ。
さすが主人公。
少しぐらい悪魔的で暴力的なお話するからってそんなのマイナスにならないぐらいのレベル。
これだけ可愛いのに『美しい』って言われただけで真っ赤になるとか……言われなれてそうなもんだけどな。
あ、綺麗すぎて近寄りがたいって感じなのか。
なるほどなるほど。
「まぁ、とりあえず自己紹介からでもしますか」
話を戻す。
うん、自己紹介って大事だよね。
お互いを知ることは話をする上でとても大切だと思う。
「俺は浅月翔兵。好きなタイプはフェイトさんです」
「えぇっ!?」
急に言われてフェイトがうろたえる。
そんなんを見るだけで萌える。
「高町なのはです」
「フェイト・T・ハラオウンです」
何か合コンみたいになった。
「キャロ・ル・ルシエです。好きな泳法はバタフライ。嫌いな泳法は平泳ぎです。ケーキがあれば食べます」
意味わかんねぇから。
つか泳法ってお前……泳いだことないだろ。
しかも最後の『ケーキがあれば食べます』って自己紹介じゃなくね?
あ、ちなみにキャロは原作同様、ル・ルシエを名乗ってます。
「そ、そうなんだ」
なのはが苦笑している。
「ど、どうして平泳ぎが嫌いなのかな?」
こんなふざけた自己紹介でも健気に会話を広げようとするフェイトはホントに天使じゃなかろうか。
「え、だって卑猥じゃないですか」
「ひ、ひわいっ!?」
「…………」
予想外の返答にフェイトが再び赤く染まる。
なのはも固まっていた。
平泳ぎが卑猥って……お前、全国の平泳ぎ選手に謝れ。
「あの、こいつの事はほっといて良いんで話を進めましょう」
キャロの言うことを一々聞いていたら埒があかん。
「えっと……良いんですか?」
一足早く回復したなのは。
「良いんです。ケーキでも食わせときゃ大人しくしてますから」
そう言ってケーキを追加で注文する。
こいつ今日一日でどんだけケーキ食うんだろう。
明日から当分甘いもの無しだな。
「ふん、ほっとくとか言うのは気に食わないですけどケーキには罪はないので、まぁ許してあげましょう」
「そりゃ、どうもありがとうございますね」
生意気なことを言ってケーキを食べだすキャロだが、ほっぺにクリームがついてるのを見てなのはもフェイトも何か微笑ましそうにしている。
こういうとこだけ見れば子供らしくて可愛いんだけどなぁ……普段の言動の所為で台無しである。
「あ、そう言えば俺らの事知りません?」
自己紹介を終え、聞いてみる。
「へ? そりゃあ知ってますけど……前に会いましたし」
まぁ、今のは俺の聞き方が悪かった。
「そうじゃなくて、色々してる二人組みってことで何か思い当たりませんか?」
俺がそう言うと二人とも考え込む。
「――あっ!」
少ししてフェイトが声を上げた。
「そう言えば……ここ一年ぐらいで誘拐グループとか犯罪者を捕まえたり、魔法生物とかで困ってる世界を救ったりしてる二人組みが、確か黒髪の青年と帽子をかぶったピンク髪の少女」
やっぱり管理局にも名前知られてたか。
いやぁ、色々した甲斐がありましたな。
しかし、知られてるのは予想通りだけど、いざそんな風に言われると照れるもんだなぁ。
「それが俺達なのです」
俺は自分とキャロを指差して言った。
「え、えぇ!?」
フェイトが驚く。
「え、え? フェイトちゃん、それホントなの?」
どうやらなのはは知らなかったらしい。
教導隊で忙しかったのかな?
「目撃情報からすれば多分そうだろうけど……」
フェイトが言いよどむ。
「どうしたの?」
「私も聞いただけだけど、助けてもらった人達はその人達のことを『凛々しくて、まるで英雄のようだった』って言ってるらしいから……」
「……そ、そうなんだ」
ん?
あれ……もしかしてホントにお前か、ってこと?
「英雄」
「凛々しい」
俺とキャロを交互に見る二人。
「キリッ」
凛々しくねーから。
口にクリームついてるから。
「お前、凛々しくも英雄っぽくもねーから。ただの幼女だから。……キリッ!」
凛々しいってどっちかってーと俺、だろ?
「ぷ」
笑うなや
――4――
「英雄云々は置いといて、多分それは俺達で間違いないはず」
いい加減話を進めようじゃないか。
「まぁ、これで俺達が犯罪者じゃないって信じてもらえますよね?」
そのために頑張ったんだもの。
「えぇっと……そうですね」
なのはが頷く。
「でも……聞くところによると施設の破壊とかしてるみたいですけど」
フェイトが言いにくそうに話し出す。
施設の破壊か……心当たりあるわ~。
うん、何箇所か壊したね……キャロが。
犯罪グループの施設って分かってたし、被害者救出後の犯人制圧だったからキャロがいつもの甲羅を振り回して暴れたんだけど。
「細かいことはいいじゃないですか」
言わないでおこう。
「いや細かくは……一応犯罪ですよ?」
え、マジで?
「犯罪者のアジトだから別にいいんじゃないの?」
「だ、駄目ですよ!」
なのはが言う。
「え、だって高町さん……もうなのはさんでいい?」
「あ、はい。いいですよ」
「じゃあそう呼びます。なのはさんだって極太レーザー魔法砲撃良くぶっ放してるじゃないですか」
「ご、極太レーザー魔法……何か、凄い嫌な言い方なの……」
「あれって結構周り破壊してません?」
「してません!」
あれ? そうだっけ?
壁抜きとか完全に破壊じゃないのか?
ああ、脱出とかのためだから仕方ないんだな、きっと。
「俺達も脱出の為に仕方なく破壊したんですよ」
「え……地上にあった結構大きな建物が全壊してたらしいんですけど」
フェイトさん聞いただけって割には結構詳しいっすね。
執務官だし、スカさんのこともあるし、そういうのは結構調べてたりするのかも。
「全壊と言えば……全力全壊」
「スターライトブレイカー、ですな」
ナイス、キャロ。
「へ、変なこと言わないでっ!」
怒るなのはだった。
「うぅ、全然話が進まない」
「なのはファイト!」
落ち込むなのはを励ますフェイト。
凄く……他人事です。
「フェイトちゃんも頑張って!?」
「ご、ごめん」
しゅんとするフェイトになのはが強く言い過ぎたとあたふたする。
微笑ましい光景である。
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
「だ、誰の所為だと思ってるのかな?」
え、俺の所為なの?
まぁ俺の所為なんですけどね。
「そ、そういえば……浅月さんは」
「翔兵、もしくは、ショウヘーでいいよ」
フェイトが何か聞きたそうな表情で話し出したところを俺が遮って提案する。
「えっと、じゃあ翔兵さんはキャロちゃんを保護してるんでしたよね?」
やべっ、名前で呼ばれるとか想像以上にドキドキするぞ。
「まぁ、そうですね」
「えっと……仲、いいですよね?」
「へ?」
ん?
何か話が全然違う方向に進んでるぞ。
いいけどね。
「仲……良いの?」
俺はキャロに尋ねる。
「ショウヘーさんは私にとって……」
お前にとって……なんだ?
「ニンジンです」
「嫌いって事か!?」
お前ニンジン嫌いだもんな!
なんだよ、泣くぞ。
「しかしニンジンはカレーにはなくてはならない大事な物だと思います」
なんだよ、照れてんのか?
好きなら好きって素直に言えよ。
「まぁ残しますけど」
「なんなんだよぉ~っ!」
ちょっと喜んだ分ダメージでかいよ!
「でもキャロットケーキなら食べます。というか好きです」
なんなんだよ!
どうせまたオチがあんだろ!?
言ってみろや! 俺はもう期待しないぞ!
拗ねはじめた俺の肩を叩くキャロ。
「………………」
キャロを見る俺。
キャロは慈愛に満ちた眼差しで、
「キャロットケーキ」
親指を立てた。
「うおぉ~ん! キャロォ――ッ!」
泣きながら抱きしめた。
「くっそ、お前、くっそ……すいません、キャロットケーキをください!」
俺は店内に響く声でキャロットケーキを注文した。
○
「やっぱり、仲良いですよね」
一部始終を見たフェイトが言う。
「ま、悪いとはいえない」
悪かったら四六時中一緒にはいれないだろ。
「…………あ、あの!」
少し黙って何か考えていたフェイトが意を決したかのように声を上げた。
「ど、どうすれば子供と仲良くなれますかっ!? キャロちゃんと同じぐらいの男の子なんですけど!」
それは……もしかしてエリオのことか?
あれ……仲悪いの?
「あの、キャロちゃんみたいに笑ってくれないし、表情も少ないし……私、保護者失格なのかな」
何か勝手に落ち込みよる。
コレは……慰めフラグか!?
「子供と仲良くですか」
「はい」
「そんなもん遠慮しないで思ったように行動すりゃ良いんですよ。俺なんか最初、キャロを巨大生物の前に置き去りにしましたもん」
「…………はい?」
あれ、なんかミスった?
フェイトさんの顔が怒ってるように見えるんだけど。
「な、なにしてるんですか貴方は! 虐待じゃないですか!」
おぅふ……完全に怒ってるよ。
「え、だって……」
「だって、じゃありません!」
怖い。
怖いけど美人。
メチャメチャ美人。
「でも、こんなに元気に育ってますよ?」
「そうかもしれないですけど、そんな危険なことしたら駄目に決まってるじゃないですか!」
フェイトさんによる説教が始まった。
「なのはさんなのはさん」
「……なんですか?」
「俺、なんか拙いこと言った?」
「はぁ~」
ため息吐いてないでどうにかしてよ。
「その時は良かったかもしれませんけど、もしもキャロちゃんに何かあったらどうするんですか!」
机をバンッと叩く。
「それはないです」
断言する。
いざとなったら助けれるし、回復だって出来る。
「確かに大怪我したことはないですね」
キャロが珍しくフォローに回ってくれた。
「だよな」
「何度か殺してやろうと思ったことはありますけど」
「マジで!? 初耳なんだけども」
「でもまぁ……そのおかげで制御できなかった自分の力が制御できるようになりましたし、感謝は……そこはかとなくしてます」
そこは素直にしろよ!
「キャロちゃん」
「だから、その男の子にもフェイトさんがしたいようにしてあげてください。困ったり照れたり嫌がったりしても」
「で、でも、嫌がってるんだよ?」
「少しぐらい強引に言った方がいいんですよ。家族になりたいなら」
キャロ……お前、何てまともなことを。
成長、したな。
「キャロ……お前……俺の事、家族だと思ってくれてたんだな」
泣けてくるぜ。
「はぁ!? べ、別にそんなこと思ってないです!」
「照れるな照れるな」
この、可愛い奴め。
キャロの頭をグリグリ乱暴に撫でる。
「て、照れてないです。き、気持ち悪くニヤつかないでください」
「はっはっは」
素直じゃないのお。
いつも生意気なくせにそんな風に思ってたとか、お前レベル高ぇな。
「…………」
しばし呆然と俺達を見ていたフェイト。
「よし! 私もエリオといっぱい話してみます。やりたいようにやってみます」
何かを決意し宣言する。
やっぱりエリオのことだったか。
「そうと決まれば早速! 色々参考になりました。ありがとうございます!」
立ち上がるフェイト。
「待っててねエリオ!」
凄まじい勢いで店を飛び出すフェイトだった。
「…………フェ、フェイトちゃん……え、何この状況」
なのはは混乱している。
――5――
「……フェイトちゃん」
フェイトの出て行ったドアを見つめ呆然とするなのは。
しかしフェイトはエリオに何する気なのかね?
今後もフェイトの子育てについての相談には乗っていこう。そこから何かが始まるかもしれないし。
同じ話題があれば仲良くなりやすいし、精々困った君でいてくれ、エリオ。
それだけ相談される可能性が増えるんだから。
「なのはさんなのはさん」
それはともかく……今の内になのはを攻略してしまおう。
…………。
勿論、恋愛的な意味じゃないよ?
「なのはさんって無茶する人でしょ?」
「え?」
ビックリしたように目を見開くなのは。
「な、なんでわかったの!?」
「俺だから」
だんでーに笑ってみる。
「お・れ・だ・か・らっ」
机をバンバン叩くキャロにムカつく。
「冗談はおいといて……結構無理してない?」
原作知ってるからなのはが無茶する奴だってのも知ってるし。
昔、ガジェットに落とされたことも知っている。
確か、それがあって色々制限されてるはずだ。
全力出せないとか。
「え、えっと……そんなことないですよ?」
誤魔化そうとしてるのか無理に笑う。
「いやいや、実は身体結構ボロボロだったりしない?」
「そ、そんな……ことは……」
「あるでしょ」
「う、うぅ……」
俺の言ってることが当たってるのか、なのはは段々シュンと俯いてしまう。
「俺、なんとか出来るよ」
「…………はい?」
「俺、それ、治せるよ」
なんか片言みたいになってる。
まぁ、ある意味自分の能力の一部を見せることになるから緊張してるってのはあるけども。
「ほ、ホントですかっ!?」
おぅ……食いつきが半端ないぜ。
そんなに全力全壊したいのか……なのは、恐ろしい子。
「ホントだけど……俺達のことなんとかしてくれるなら治してもいいよ」
「なんとか……って、どうすればいいんですか?」
お、ちょっと揺らいでる?
てか俺、性格悪くね?
こんなんじゃ……フラグ、立たなくね?
もしかして、無償で治療から惚れたのコンボとかあった?
うおぅっ! 勿体無いことした!
「いや、前から言ってる通り、管理局関係を何とかして欲しいんですよね」
こうなったらもう、トコトン行ってやるわ!
「……それは」
「基本的に自由に生きたいんで管理局入りは避けたいんですよ、俺は。あ、キャロは別に良いですけど、フェイトさん子供好きそうだし彼女に預けるのもいいかもなぁ」「おい」
「あ、なのはさんでもいいですけど、コレ要ります?」
キャロを指差す。
「がぶっ」
「いってぇ――――っ!」
噛まれた。
「何すんだよ!?」
「そこに指があったから噛んだだけです」
狂犬か!
「あ、あはは……ちょっと、遠慮します」
でしょうね。
「そんな訳で俺達を勧誘しようとか調べようとか辞めてもらえるとありがたいんですけど」
「でも、それは……」
「おっと……それだけではあれでしょうから、なのはさんやフェイトさんの個人的な頼みとあらば何かのお手伝いぐらいできると思いますよ? まぁ、外部協力者のようなものと思ってくれればいいです」
勿論、全く関わるなと言ってしまうと原作の皆さんと仲良くなる機会がなくなってしまうのでフォローも忘れない、俺偉い。
「でも……」
「局員では出来ないこと……あると思いませんか?」
「うぅ……私一人じゃ……」
頭を抱えて悩みだすなのは。
「一人じゃ決められないというのなら、この人にも一緒に考えてもらいましょう」
俺は通信機を取り出し、俺となのはの間に置く。
「話は聞かせてもらったわ」
「……リンディさん!?」
ウィンドウが現れ、そこに映っている人物はリンディ・ハラオウン。
それに驚くなのは。
「な、なんでリンディさんが!?」
「実はなのはさん達がこの店に来てすぐぐらいから、俺達の話は全て筒抜けだったのだ!」
「な、なんだってぇー? てか私も知らなかったんですけど」
「言ってないもの」
無言でポカポカ叩いてくるキャロ。
「殴るな。ま、管理局が相手だし俺達のこともちゃんと話そうと思ってたし、管理局のお偉いさんの中でもリンディさんはまだ話が通じそうだしな」
まぁ、他にも……本人を目の前にしたら色々言いくるめられて管理局入りさせられそうだし出来れば全部ここで済ませてしまいたいってのがあるけど。
「そもそも、いつ連絡先知ったんですか。私は知らないですよ」
「何かリンディさんに繋がったらいいなと思って適当に操作したら繋がった」
「相変わらずぶっ飛んでますね」
「褒めんなよ」
「照れんなよ」
「……あの、いいかしら?」
俺とキャロがじゃれあっているとリンディさんが話に割って入ってくる。
「先程の話、なのはさんを治せるというのは本当かしら?」
「マジな話、本当です」
「手伝いということは嘱託魔導師ということで良いのかしら」
ふ、さすが提督、少しでも管理局有利にことを進めたいとみえる。
「いえ、それでは管理局に所属したくないという此方の意見が通ってないです。あくまで個人的な手伝いです」
「それは……難しいわね」
「俺達が手伝いたいから勝手に手伝ってる。別に管理局に報告しなくてもいい戦力。それって『この先』では役に立つと思いません? 例えば保有制限、とか」
機動六課ではそのやりくりに色々手を回して大変だったはずだ。
「あなた……なにを、いえ、どこまで知ってるのかしら?」
「さあ? ただ次元世界中を旅してると色々な話が耳に入るんですよ」
「管理局に……敵対の意思はない、のね?」
「ええ。リンディさんやなのはさん達には全く」
「なにか含みを感じるんだけど」
「管理局も一枚岩じゃないって事ですよ」
スカさん関係以外で、俺達が解決した事件の中にも少なからず管理局が関わっているものがあった。
まぁ、それで俺達を指名手配するほどに大きなものではないが。
「なるほど……分かりました。その条件を呑みましょう」
「ありがとうございます」
「それで、なのはさんの事、本当に治せるのね?」
「間違いなく。な、キャロ」
俺はキャロに視線を向ける。
キャロの前で怪我を治すとか、キャロ自身の怪我も治したことあるしな。
「はい。それは間違いないです」
「そう……。お願いして、いいかしら?」
「勿論ですよ」
「それじゃあ、またじっくり話したいから地球に来たらウチに来てくださいね」
ニッコリと微笑むリンディさん。
それは……お断りしたいです。
「フェイトも貴方に相談したいことがあるでしょうし、ね」
「甘い物でも持って是非お伺いさせていただきます」
「そう、嬉しいわ」
あ、乗せられた。
「バカですね」
絶望の表情を浮かべていると冷ややかな視線で俺を見下しながらキャロが言う。
「それじゃあ、お待ちしてます」
「わかりましたよ! あ、なのはさん治しますけど見られたくないんで通信きりますね!」
「え、あ、ちょ――」
何か言ってたが切った。
それでリンディさんとの通信は終わった。
○
「それじゃ、いきますよ」
「……はいっ!」
なのはに向かって手のひらをかざす。
実際、この行動に意味はないんだけど、それっぽく見せるためだ。
「これは……なかなかボロボロだ」
わかんないけどね。
手をかざしたら分かるってどんなだよ。
「いきます」
能力を使う。
自己治癒力、回復力、生命力とかそれっぽいのをいくつか上げた。
「終わりました」
「へ? もう、ですか?」
「うん。もう終わった」
「は、早いですね」
「ま、まあね」
何かシチュエーション次第では言われたくない言葉だなぁ、とぼんやり考える。
考えてしまったことで無駄にダメージを負ってしまった俺がいる。
「一応、半年から一年ぐらいは無理しないように。それだけ我慢すればあとはリリカルマジカルだろーが全力全壊だろーが好きにしてください」
「にゃ、にゃあああああ! な、なんで知ってるの!?」
「リリカルマジカル! 魔法少女」
「リリカルなのは、始まります」
俺とキャロがキリッの顔で言う。
「うにゃあぁぁぁぁぁっ!」
真っ赤になって叫ぶなのはであった。