リリカルチート物語   作:抹茶ミルク

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第6章 フェイトさんと遊園地編

 ――1――

 

 

 フェイトが仕事休みでエリオのところに行っていると、なのはからの情報で知った俺は大至急で二人の元へスキマを開いた。

 突然現れた俺とキャロに驚いていた二人。

 仕事は休みでエリオに会おうとエリオのもとまで来たフェイトだが、会うことしか考えてなかったために予定はないらしい。

 俺は二人を説得し、四人で地球へとやってきた。

 

 なぜ地球なのか。

 それは、俺がキャロ以外の子供と接したことはほとんどなく、子供と遊ぶといったら"それ"しか思い浮かばなかったからだ。 

 

 

 ○

 

 

「これ、キャロって言うんだけど」

「これとはなんですか。失礼にも程があります」

「見ての通り生意気なクソ餓鬼だけど」

「クソ餓鬼とはなんですか。まるで駄目な大人な癖に言いますね」

 

 だれがマダオか。

 

「まぁ、君と同じぐらいの年齢だから仲良くしてやってくれ、エリオ君」

 

 俺は目の前のエリオにキャロを紹介していた。

 

「あ、あの……宜しくお願いします」

 

 緊張したようにキャロに話しかけ、手を差し出すエリオ。

 この前のフェイトのこともあって心配だったが、見た感じ原作に近い素直で良い子に育っているようで何よりだ。

 

 キャロは差し出された手を握り、

 

「仲良くしてやらんでもない」 

 

 と、凄い上から目線で言った。

 だというのに……エリオは握られた手を見て顔を赤くした。

 

「エ、エリオに初めての友達が……っ」

 

 それを少し離れた位置で見ていたフェイトが口元を手で隠して泣く。

 

 なんて純粋な二人なのでしょう。

 僕にはとても真似できない。

 

「そう言えば……キャロも初めての友達じゃね?」

 

 思いついたことを呟いた。

 

「べ、別に友達が欲しいとか思ったことないんだからねっ!」

 

 無表情でツンデられた。

 

「はいはい。あ、エリオ君。キャロのことはバカでもアホでも適当に呼んでくれればいいよ」

「バカでもアホでもないです。お利口さんです」

「お利口とか……笑わせおるわ」

「その顔を恐怖で歪ませてやろうか」

 

 おお、怖い怖い。

 

「ルシエさん……でいいでしょうか?」

 

 とても子供とは思えないエリオでした。

 

「キャロでいいよ」

「キャロでいいですよ」

 

 被った。

 

「なんでショウヘーさんが言うんですか」

「お前が自分からそんなこと言うとは思わなかったもん……さては、惚れたな?」

「…………」

「いたっ! ちょ、無言で、殴る、な」

 

 なんだよ……変なこと言ってないだろ。

 

「で、では……キャロ、さんで」

 

 いきなり呼び捨ては難易度高いみたいだった。

 

「エ、エリオ……」

 

 フェイトはいつまで感動しているのか。

 

「と、とりあえず、挨拶も済ませたし、中に、入らない? あと、キャロはそろそろ殴るのをやめるべき」

「じゃあ謝ってください」

「な、なにを? う、うそ、ごめん、冗談」

 

 何か殴る力が増したので謝っておいた。

 最近キャロのことが分かりません。

 

 ようやくキャロが殴るのをやめてくれたので四人で券を買い、中に入る。

 

 どこのって……遊園地だよ地球の。

 言わせんなよ、恥ずかしい。

 

 

 ○

 

 

 遊園地に入って、ちびっ子二人は目を輝かせて周りを見ていた。

 

「わ、す、凄い……あ、可愛い」

 

 フェイトも同様だった。

 乗り物を見て驚き、着ぐるみを見て可愛いと言う。

 

 そんな貴方の方が可愛いのですが。

 なにこれ、マジでお持ち帰りしたいんですけど。

 

「キャロにエリオ君や」

「はい?」

「なんですか? あとエリオでいいですよ」

 

 じゃあエリオと呼ぼう。

 

「遊園地に来たからには乗り物は全部乗らないといけません。コレは法律で決められています」

「何を適当な……」

 

 キャロが相変わらず冷めた目で見てくる。

 

「え、そうなんですか!?」

「そ、そうなんだ……知らなかった」

 

 それとは正反対に信じている二人。

 エリオはともかくフェイトが純粋すぎて悪いことしてる気分になってくる。

 ……やめないけど。

 

「本当です。なのでドンドン乗っていきましょう」

「そ、それって……ジェットコースターとかも乗らないと駄目、なのかな?」

 

 フェイトが恐る恐る訊いてくる。

 

「当然です。遊園地まで来てジェットコースターに乗らないとか逮捕されます」

「え、えぇっ!? ど、どうしよう……」

「……怖いの、ですか?」

「は、はい」

「普段、空中を高速で飛びまわっているのに、ですか?」

「あ、あぅ……それとこれとは、関係ないです」

 

 顔を赤くしてモジモジするフェイト。

 

「なんですか、この可愛い生き物は」

「お前もそう思うか。天然でこれだから恐ろしいよな」

 

 キャロと小声で話し合う。

 

「うぅ……でも逮捕されるのは駄目だし……どうしよう」

 

 すごい悩んでいるみたいだ。

 

「ということで早速行こう。早くしないと全部乗れないぞ!」

 

 俺はフリーパスを掲げる。

 

「キャロ! まずは何だ!?」

「勿論ジェットコースターです!」

「どれだ!?」

「一番人気のドラゴンはどうでしょう!?」

「良く分かってるな! 正解だ!」

 

 ドラゴンとはここらで一番長く、一番怖いと評判のジェットコースターだ。

 最初にこれを選ぶとは……やはりキャロは侮れんな。

 

「エリオ!」

「は、はい」

「心の準備は万端か!?」

「はい!」 

 

 こういうのは初めてだろう楽しそうなエリオ。

 

「エ、エリオが楽しそうなのはいいけど……こ、怖いよ」

「大丈夫ですフェイトさん」

「しょ、翔兵さん……」

「怖くないようにずっと手を握って……」

「フェイトさん行きましょう!」

 

 俺が言い終わる前にフェイトの手を引いて歩き出すエリオ。

 

「な……なん、だと……?」

 

 わざと俺の邪魔をしたというのか?

 だとしたらエリオ……お前は俺の敵だ。

 相当勇気、振り絞ったのに。

 

 俺が打ちひしがれていると肩をポンッと叩かれた。

 振り返ると、そこにはキャロ。

 

「負け犬乙」

 

 今の俺は怒りで人を殺せるぞ。

 

「私達もさっさと行きますよ」

 

 キャロに手を引かれ、フェイトとエリオの後を追うのだった。

 

 

 ――2――

 

 

「うっひょぅぉぉぉおっ!」

 

 ノリで叫んでみたのだが、口に空気が入ってきてヤバイことになった。

 てかチンフワ(※チン○ンがフワッてなる例のアレ)がとてつもない。

 もう落下だもん。直角ってか微妙に頭が下向いたまま落ちていく。

 まぁ、股間のむず痒さだけで別に怖いとかは感じないけど。

 

「…………っ!」

 

 後ろを見てみると目を瞑って、手すりをギュっと握り締めているフェイト。

 マジ可愛い。

 エリオは顔が青白くなっていた。

 

「おっひょぉ~ぅ」

 

 そんな二人(ほぼフェイト)に気をとられて気付かぬうちに再び落下。

 不意打ちにさっきより情けない声が出てしまった。

 フェイトとエリオはさっき見た通りだし、一緒に乗り込んだ四人のうち、声を出しているのは俺だけ。

 まさか……

 

「何見てるんですか。変な声まで出して気持ち悪いですね」

 

 キャロの怖がってる顔とかレア物の場面が見れるかも、と隣を見ると無表情にそう言われた。

 

「気持ち悪いとかお前……興奮するだろ」

 

 俺のガラスのハートを傷つけた仕返しにいつもとはちょっと違う切り返しをしてみることにした。

 

「………………」

「やめて! その哀れんだようでいてドン引きな顔で俺を見ないで!」

 

 いつもみたいに酷い事言ってよ!

 って、それも違うわ!

 

「嘘。嘘だから! ね?」

「何が『ね?』ですか……ありえないほどキモかったです」

「キモいって言うな! 仮にキモかったとしても間違いなく俺が目覚めたのはお前の所為だよ! このドSがっ!」

 

 謝りつつ相手を貶すという大技を使う。

 

「……何を開き直ってやがりますか、この変態が。というか、こっち見ないでくれますか」

 

 なんだよ、まるで俺に見られると妊娠する的なその物言い。

 

「ふははは。だが残念だったな! お前の身体ではまだ妊娠は出来ないのだよ!」

 

 はい、論破!

 

「………」

「ふごっ!」

 

 無言で鼻っ面を殴られた。

 超痛い。

 

「まぁ、冗談は置いといて……なんだよ、全然怖がってなくて面白くないんだけど」

「私はショウヘーさんの所為で面白くなくなりました」

「何をバカの事を……最初に見たときから無表情だったじゃねーか」

「え、超楽しんでましたが何か?」

「え」

 

 あれで?

 冷めた目つきで俺を蔑んできたあの状態で?

 

「楽しいなら素直に笑えよ」

 

 子供っぽくない奴め。

 少しはフェイトを見習いやがれ。

 

「ん? もしかして実は怖いとか?」

 

 怖すぎて表情が消えてしまったとか。

 

「はい? ありえな――」

「んだよ! お前、それならそうと言えよ。やせ我慢しやがって!」

「勘違いな上にニマニマしたその顔を叩き潰したいです」

「仕方ねーから手繋いでやろうか? ほれほれ」

 

 右手をキャロに向けて差し出し、ひらひら振る。

 

「…………」

 

 キャロは俺の顔と手を交互に見て、

 

「完全に勘違いですね。大体本当に怖かったらショウヘーさんの戯言なんて無視するに決まってるじゃいですか。それに降りたらその顔面をボコボコにします。マジムカつきます。でも、ショウヘーさんが惨めになるので差し出された手は握ってあげてもいいですよ?」

 

 そんな悪態を付きつつ俺の手を握るキャロ。

 ほんとに素直じゃないな、こやつめ。

 

「あ、ちょっとまって。キャロなんかに構ってないでここはフェイトたんの手を握って高感度アップがオリ主的には正しいのではないだろうか。……よし、キャロ。今すぐ手を離せ」

「死ぬがいい」

 

 アレレ?

 キャロが何か怖いぞ?

 しかも何か甲羅っぽいものが俺の顔面に向かって飛んできてる気がするぞ?

 

「ぐべぇ!」

 

 気のせいでもなんでもなく、キャロに手を強く握られて逃げることも出来ず、俺は顔面で甲羅を受け止めたのだった。

 

 

 ○  

 

 

「くっ……まだ一つ目なのになんという疲労感」

 

 ジェットコースターを降りて呟く。

 主にキャロの所為で。

 

「とりあえずベンチでぐったりしてるフェイトでも見て落ち着こう」

 

 ぐったりしてる姿も天使だね。

 吐きそうな顔してるけど。

 エリオと二人同じ表情してる。

 さすが同じ技術で作られただけはある……関係ないけど。

 だがフェイトのなら……

 

「俺が受け止めてやるぜ」

「変態でーす。ここに変態がいまーす!」

「ちょ……おま、ばかっ」

 

 キャロが大声で心外なことをおっしゃる。

 周りの人の注目を集めてしまったが、フェイトとエリオの二人はこちらが気にならない精神状態なのか視線を向けてくることもなかった。

 

 これは……全部のアトラクションをまわるのは無理か?

 一つ目でこれじゃあ、な。

 

「ショウヘーさん。次はあれに乗りましょう」

 

 腕を引っ張るキャロの視線の先にはドラゴンに次ぐと評判のコースター。

 実はこの遊園地、ジェットコースターだけで五種類あり、しかも全てが『世界の絶叫系、恐怖部門』のTOP10に入っているという代物なのだ。

 

「え~、無理じゃね?」

 

 俺は言いながらフェイトたちを見やる。

 

「そんなことじゃ全部乗ることは出来ませんよ」

 

 それはそうだけど……勢いで言っただけで別に本当に乗らなきゃ罪になるわけじゃないんだぞ。

 

「あの二人が復活するまで時間かかりそうですし、待ってるのも暇ですから乗りましょう」

「……それは確かにそうだ」

 

 だけどあの状態の二人を置いていくのはちょっと心配だ。

 フェイト美人だしナンパとか……。

 『魔力ダメージでぶっ飛ばして』ってイメージが湧き上がってきた。

 まぁ、フェイトがそんなことするとは思えないけど、大丈夫だろ。

 

「よし! 乗るか!」

「その言葉を待っていた」

 

 偉そうに言うキャロ。

 

「お前は何キャラだよ」

「キャロだよ」

 

 知ってるよ。

 ダジャレか!

 

 という訳で、俺達は気分の悪そうなフェイト達を置いてアトラクション制覇へ動き出すのだった。

 




これからの連載は今まで通り2000~3000字程度で一話。
まとまったら今までの話のように纏める形式で行こうと思います。

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