〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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今回は蛇足回みたいなもんです。
書き方が少々特殊なんで読みづらいでしょうし、読み飛ばしても大丈夫だと思います。


それでも良い方はどうぞ。


第10.5話 断章 取材記録 1-a

 

 

 

まず、取材を受けてくれてありがとう。

結構胡散臭かったでしょ。

 

「ぶっちゃけるならそうです、ね」

 

たはー、結構言ってくれるわね。

 

「いえ、別にけなしているわけじゃ!」

 

いつものことだからもう慣れちゃったわよ。

とりあえず、名前と年齢、クラスお願いできる?

 

「えと、みんな知ってると思うんですけど」

 

まあ儀礼的なものだけど一応って事で。

 

「わかりました......

1年1組、織斑一夏、16歳です」

 

織斑一夏、と。

よし、じゃあバンバン質問していくけど、答えたくないなら答えなくてもいいし、言いたいことがあれば言っても構わないわ。

それと、原稿ができたらちゃんと送るわね。

 

「そ、そんなに至れりつくせりで......」

 

いいのいいの。私、他人の嫌な顔ってあんまり好きじゃないから。クリーンで後腐れのない取材を心掛けるようにしてるの。

 

「じゃ、じゃあ......ありがとうございます」

 

んー、初々しいわねえ。入学した頃を思い出すわー。

じゃ、本題に入りましょうか。

この学校はどう? 楽しい?

 

「楽しいですよ。

アイツら、あ、弾と数馬って言うんですけど、そいつらと離れてしまったのは残念です。けど昔なじみと再会できましたし、気の合う奴らもいっぱい見つけられました。

あと、空を自由に飛び回れるってのは、純粋に楽しいっす」

 

たしかにそうね。

 

「それと、学食が美味しいんですよ。

料理は出来るんですけど、こうプロフェッショナル、って言うんですかね。技を盗もうにもレベルが高くて、まだ四苦八苦してます」

 

ハングリー精神旺盛ねえ。確か厨房で働いてる1人が料理部で副顧問をしていると聞いたわ、時間があれば聞きに言ったらどうかしら。

「そんな事が、行ってみます!」

 

こらこら、まだ取材中よ〜。

 

「ごめんなさい、つい」

 

何が貴方をそんなに駆り立てるのかしら。将来の夢はシェフとか、料理人?

 

「いえ、違いますよ?」

 

おや、ではどのような。

「だって、みんなが笑ってくれたら嬉しいじゃないですか。俺ができそうな方法が料理だったってだけで、違ったらその方向を勉強しますよ」

 

泣けるわねえ。

 

「このくらい当然ですってば」

 

ところでみんな、って誰の事?

もしかしてガールフレンドとか?

 

「みんなはみんなですよ。友達とか、千冬ね、織斑先生とか。

恋人は......恋愛感情はイマイチわからないんですよ」

 

あら残念。じゃあお姉さんが立候補するのもありかしら?

 

「クラス対抗戦に向けて成政や箒が張り切ってますし、練習でいっぱいいっぱいなんです。ごめんなさい」

 

あら残念。せっかく彼氏ができると思ったのに。

 

「本当にすみません」

 

いいのいいの、冗談だったから。お姉さん彼氏持ちだし。

 

「え、そうなんですか」

 

これも冗談。けど付き合いそうな男女二人組はぱっと浮かぶわねー。何か知らない?

「......俺が知っている限りであれば」

 

あの2人、初日にハグしたって本当?

 

「そりゃあもう、ガッシリと」

 

付き合ってるの?

 

「んー、本人はそうじゃ無いって言ってますし」

 

......本音は?

 

「お前らもう付き合っちまえ」

 

わかる。廊下や武道場によく2人で話しこんでるのを見かけるの。新聞部じゃもっぱらの噂よ? 創立始めての学内カップルか! なんてね。

 

「なんで付き合わないんでしょうね?」

 

実はどっちかにほかに好きな人がいるとか。

 

「まさかー、箒は俺に当たり強いし、成政に至っては男です。無いとは......無いとは......思い、ます、よ?」

 

普通に疑いだすあたり友達としてどうなのかしら。

 

「だってあいつ場慣れしすぎなんですよ!

この前なんかうっかり更衣室間違えた時なんか、開幕早々アイツの言った言葉なんだと思います。?

『みんな筋トレ頑張ってるね、感心感心』

あんなの見たら女子に興味がないとしか思えないっすよ!」

 

今サラッと重大発言しなかった。君は女子更衣室に侵入したって事よね。大丈夫なの?

 

「あ、あれは事故です! 悪気はなかったんです!」

 

......オフレコにしとくわね。

 

「助かります......叩かれるのはもう十分だ」

 

そろそろ時間ね。まとめに入りましょうか。

 

「もうこんな時間ですか?!

やべえ、練習に遅れるかも」

 

だいじょーぶ、あと一つだから。

 

「それならいいですけど」

 

ズバリ、クラス対抗戦に向けての抱負をどうぞ!

 

「......えと、誠心誠意頑張ります」

 

面白みのかけらもないし適当に捏造しとくわね。

 

「もうそれでいいですよ! 時間ないんでこれで失礼します!」

 

はい、お疲れ様でしたー。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

こんにちわ。

 

「こんにちわ」

 

河南成政くんでいいのよね。

 

「はい、その通りです」

 

じゃあ取材始めていくわよ。

 

「お願いします、(まゆずみ)さん」

 

礼儀正しい割には織斑君とは違って固くないわね、それとも神経が太いだけなのかしら。

 

「取材なんて、10回も受ければ慣れちゃいますよ」

 

高校生で取材慣れしてるなんてどうなのよ。

 

「マネージャーなのよ」

 

おっ、成政くんはシャレを理解するタイプ?

 

「人並み程度ですって、というか早く取材始めましょうよ」

 

これは失礼。それでは始めちゃいますね。

 

織斑一夏君にも聞いた事なんだけどね、

この学校、どう? 楽しい?

 

「楽しいっすね。強い人いっぱいいるんで。

何故かIS学園てスポーツに力入れているわけでなくとも、武道系部活は強いんですよ。それが謎でして」

操縦者志望の子は何かしら学んでることが多いし、必然的にそうなるのよね。

 

「なるほど理解しました。

それでですね、一人一人おさめてる流派もそりゃバラバラじゃないですか、興奮しないわけがない! と」

 

マネージャーの面目躍如かしら?

 

「そんのとーりなんですよ! しかもISは現在注目度の高いスポーツ、観客動員数も関わる人数もぶっちぎりで世界トップ!

競技人口は少ないのが唯一の悩みですが」

 

やっぱり夢はでっかく世界制覇! かしら?

 

「そうですねえ、なって欲しいです」

 

やはり、それは織斑君の事かしら、それとも?

 

「篠ノ之の事ですけど、邪推しないでくださいよ。アイツとはただの腐れ縁なんで」

 

その割には抱きついてたりするけど?

 

「そんくらい海の向こうじゃ日常茶飯事でしょうに。いちいちガタガタ言わないでくれます? というか女子同士はよくて男女はダメなんですか」

 

お姉さんみたいな人が邪推するからだけど?

 

「そりゃダメですね」

 

でしょう?

 

「この様子じゃ話さないと帰してくれないですし、気になるのでバラしちゃいますね。

十数年ぶりの再会で、ちょいと感極まりすぎてしまって、つい出来心って奴です」

 

それなら納得できる、かも?

 

「そこは言い切ってくださいよ」

 

......

 

「なんで無言なんですか、ねえ」

 

さて、そろそろ時間も時間ですし纏めに入っちゃいましょうか。

 

「そう、ですね。あとで問い詰めに行きますけど」

 

あら怖い怖い。お姉さん怖くて朝も起きられなくなりそう。

 

「ちゃんと起きてくださいよ」

 

別にどうでもいいじゃない、赤の他人なんだし、気にする事の程でもないと思うのだけれど?

 

「武道をおさめてる時点でもうロックオンしてますけど? ()()()()さん」

 

......え?

 

「変装はできても歩き方は誤魔化せませんよ。特に古武術の体捌き足捌きは独特ですし、すぐわかっちゃいました」

 

あらー、お姉さんもまだ未熟ね、生徒会長として失格だわ。

 

「生徒会長とは一体」

 

さあ、なんでしょう?

 

「もうひとつ。一夏も昨日取材を受けたって言ってましたけど、あれも嘘ですか」

 

あれは本当、でも薫子(かおるこ)に無理言って君のもセッティングさせてもらったの。

 

「目的は一体なんです? まさか面白そうだったからとか言いませんよね」

 

面白そうだったから。

 

「......」

 

じゃ、バレちゃった事だし、お姉さんはお(いとま)させて貰うわね。

でも最後に1つ、この質問には答えて貰うわよ。

 

「どうぞ」

 

君は、この学校で何をしたいのかな?

何を成そうとしているのかな?

 

「そんな事ですか。

 

俺がやりたいことはーーーーーー」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「いやー、バレるなんて思いもしなかったわね」

「最近の若い子は凄いわねー」

 

深夜、消灯時間をぶっちぎってなお机に向かい続ける少女が2人。

暗闇の中でPCの液晶画面だけが無機質な光を投射し、キーボードを叩く音が部屋を支配している。

 

「で、草稿(そうこう)の方は纏まりそう?」

「んー、織斑君はともかく、河南君がグレーゾーンが多すぎるわね。どこまで使っても大丈夫そう?」

「人の恋路を妨げると蹴られそうだし、当たり障りのないことだけにしてちょうだい」

「らーじゃ」

 

たたたたたん、と文字列を打ち込む音がまた漆黒を支配する。

しばらくして、キーボードを叩く少女が覗き込んでる少女にふと漏らした。

 

「ほんと、最近のは頭おかしいわね。

篠ノ之束の妹といい、

織斑一夏君といい、

イギリスの代表候補もそうで、

貴女の妹も大概だし、

厄ネタの不法投棄じゃない。

......でも、極め付けは河南君で決まりね」

 

取材メモ、最後の一文。

生徒会長、更識 楯無(さらしき たてなし)の走り書きの字で記された言葉は、

 

「そりゃ、例えば俺が死のうが何されようが、才能あるやつを頂点まで引っ張ってくる事ですよ。

俺はハッピーエンドが好きなんでね」

 




薫子「ところで、織斑くんのキャッチコピーどうしましょうか」
楯無「我が白刃の前に、万物はひれ伏し許しを請うだろう!」
薫子「深夜アニメキメすぎて頭おかしくなったの?」
楯無「だって簪ちゃんに話合わそうと思えばそうなったんだもん!」
薫子「付き合わされる私の身にもなってみなさいよこのシスコン!」



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