〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら 作:通りすがる傭兵
それ以外にもオリキャラ然りISABキャラ然りでわちゃわちゃし出し始める予定。
さあキャラが増えるぞ、頑張れ自分!
第11話 河南は転校生とエンカウントする
4月もほとんど終盤。春の暖かな陽気は残っているが、初夏のジメッとした暑さが忍び寄り始めるこのころ。
当然のごとく男子同士で駄弁る俺。だって話し相手なんぞ一夏と箒と、最近混ざるようになってきたオルコットだけ。このクラス剣道部は箒と四十院さんだけだし、四十院さんあんまり得意じゃないんだもの。
そういえば今日でクラス代表決定戦からちょうど1週間、あの時は楽しむ余裕も無かったが、今となってはいい思い出なのかもしれない。
あの戦いの後オルコットは自分の非礼を
そのあとの
「ねーねー、織斑くん、他の組に転校生が来るんだって」
「この時期に転校生? 珍しいなあ」
「まゆつば物ですわね。途中編入は至難の技です。倍率100倍の入試をくぐり抜けるより難しいとも言われていますわ」
「要するにすげえ奴って事なのか。セシリアは物知りなんだな」
「とっ、当然ですわ! なにせこの私は」
「えりーとなのですわー」
「私はそのようには言いません!」
クラスメイトの1人が、声を抑えてそう声をかけて来た、どうやら転校生が来るとか。
順当に考えるなら引っ越しで近くに学校がこれしかなかった、て理由だがIS学園に限っちゃそれはないだろう。ならば国の後押しを受けた代表候補生と考える方が自然か。
「そんでどんな人が来たんだ?」
「2組と3組に一人ずつなんだって」
「クラス代表戦も近いし、イレギュラーはやめてほしいんだけどな......もう資料作っちゃったし」
「仕事早すぎだろ」
「ISって便利だよな。資料集めが
だって代表候補ならその国のサーバーのパパッとクラッキングして、あとはなんとかなったし」
「今聞き捨てならないことをお聞きしたのですが!」
「バレなかったからモーマンタイなのよ」
途中まで会話していてふと気がついた。
キレのいいツッコミが今日に限って飛んでこない。
「......ちょっと箒が遅すぎる。探して来るわ」
「マジか、気がつかなかった。
俺も行こうか?」
「人数は多いほうがいいな。頼めるか」
「任せろ」
朝のHRまであと10分弱。校庭まで行くならともかく、走れば校内くらい一周できる。
善は急げと俺は教室を飛び出し、勢い余ってすっ転び廊下窓ガラスに衝突する羽目になった。
「ってーなこんにゃろう!」
思わず窓に向かって怒鳴りつける。こちとら急いでるのに君に構ってる余裕なんてないんだから、手間かけさせんな!
「......ん?」
話は変わるが、1年1組、その廊下側の窓からは立派なIS学園の正門を望むことが出来る。
そこから腰まで伸びている美麗な黒髪を束ねた女子生徒が、綺麗な白髪の生徒らしき人影と言い争っているらしい様子がうかがえた。
......あのリボンの色といい、髪型といい見覚えしかないと言うか。
つまり、
箒が、
ピンチ。
「ウチの
「河南さん、ここは4階、落ち着いてくださいまし!」
離せオルコット、俺は、俺は箒のピンチには身体を張って立ち向かわなければいけないのだ! それが、こんなところで!
「そういやISっていう空も飛べる便利グッズがあるじゃない。
カモン、アンサング!」
指パッチンでアンサングを召喚、そのまま窓枠を乗り越えて空へダイブ。
いやあ、ISって便利だねぁ!
このままあの不審者にドロップキックと行きたいところだけど、流石にISでそれをやると肉塊になっちゃうのでやらない。
だから生身でやる。
助走を取れるように箒達の数メートル手前に着地。そのままISを解除して、
「ウチの子になにしとんじゃってあらぁ!?」
「な、成政っ!」
また盛大にすっ転んだ。
「ぬぐぐ......」
「大丈夫かい?」
「ああ、ありがと」
う、と言葉を続けようとしたが、手を差し伸べてくれた人物は箒ではなく、よりにもよってアイツだった。
アッシュグレイの髪色に、すらっと伸びた身体。そして男女関わらず人気の出るだろうと簡単に予想できる整った顔立ち。
「ふふ、私に見とれてしまったかい?」
「そんなこたあない」
「つれないなあ」
問題があるとは踏んでいたが、やはりそうだった。この鼻についたような言動、清廉潔白真正直を地で行く箒が揉めるわけだ。
「成政、こいつを説得してくれないか」
「説得? いつもだったら一夏よろしく叩いて速攻で逃げてるだろうに」
「私はそんなに常識たらずではない!」
「成る程、すれ違いから始まる恋というのも悪くはない、か。ふふふ」
なんだろう、意味深な発言をされると気になってしょうがない。
「というか朝に君はなにをしているのかね。もうホームルームが始まる時間でしょうに」
「可愛い白百合達が私を離してくれなくてね、こんな時間になってしまったのだ。
それに、ね」
そう言うや否や、こいつは流れるような仕草で箒を抱き寄せ。
「こんな可憐な蕾を、見逃せると思うかい?」
「な、ななななな、なななななぁっ?」
少女漫画のような、日常生活ではまかり間違っても言わないようなセリフを素面で言い放ってみせた。
なんだろう、凄くイライラする。
「......両立できるんなら問題ないが、ウチはそんな時間はない。もし箒と付き合おうってんなら諦めてくれるか」
「おや、私と箒の間柄を邪魔しようと?」
「別に他人の恋路に首を突っ込むのは趣味じゃない、むしろ歓迎すべき事だ。
でも、俺たちの目標のためには邪魔なんだ」
昔から痴情のもつれで将来をダメにしたスポーツ選手はそれこそ山のようにいる。その一端に将来有望で天才の箒を加えるわけにはいかん。それに剣道を大学で続けるにせよ辞めるにせよ、この高校の3年間が勝負なんだ。一切の無駄な時間は許されない。
「なるほど、そういうことか」
したり顔でそいつは言うと、箒を離し、俺に向き直る。
「君、名前は?」
「1年1組、河南成政。マネージャーをやっている」
「私はロランツィーネ・ローランディフィルネィ。ロランと呼んでくれ。
君風に言うなれば、オランダの代表候補生かな」
成る程、噂の転校生か。
代表候補ってわけなんだし、おそらくクラス対抗では立ちはだかる障害、か。
「そして私は、君に決闘を申し込む」
「ごめんちょっと意味がわからない」
「簡単だ、君は箒のことが好き。
そして私も箒のことが好き。
だったら、起きる事は決闘しかないだろう?」
「いやいやいや、そんな事はない、断じて!
俺はマネージャーで箒は選手、それ以上でも以下でもない!」
「人の機微を見抜けなくて役者は務まらないさ。隠し通せているとでも?」
ロランは真面目な顔で、こちらの心を見透かすような、内面を覗き込んでくるようなそんな視線を向けてくる。耐えきれずに目をそらすと、勝ち誇ったようにロランは言う。
「自分に正直になりなよ、少年」
◇◇◇
「織斑、オルコット、河南! 前に出ろ」
オランダ代表、確かヨーロッパの小国だったはず。特に量産機作ってる話もなかったし、技術力は持ち合わせているかはわからないな。
そしてロランといったか。代表候補生ともなればそれなりに露出度は高いんだが、オルコットのように今まで見かけたこともないし。
「河南ぃ! 返事をしろ!」
「はっ、はい!」
反射的に言葉を返せば、みんなが不思議そうにこちらを見ている。
「前に出ろ」
今は授業中だった、特に実技授業は集中しないとな。
「専用機を展開しろ」
「「「はい!」」」
専用機、ロランも専用機を持っているんだろうか。でも2組のカナダの代表候補生は専用機の持ち合わせがないというし、でもあの自信はどこから来るんだ。やはり専用機が......
「河南!」
「す、すみません!」
見れば、2人は専用機を展開している。何故だろうか、いくら印象に残る出来事だからといって、こうまで気のすることもないはずなんだが。
「よし、アリーナを一周してこい。飛べ!」
オルコット、一夏と順繰りに空を飛ぶのに合わせて、俺も後に続いて地面を蹴った。
「織斑! 白式のスペックはティアーズより高いんだぞ! なぜ遅いのだ!」
「すみません先生!」
「返事をするぐらいなら行動で示せ馬鹿者」
叱咤されながら、オルコットより
「なあ、イメージが大事とは言ったけど、さっぱりわかんねえぞ。目の前に円錐状をイメージするってどうやるんだよ」
「それはただの一例であって、自分に合っているとは限りません。自分に合う方法を模索するべきですね」
「成政はどういうイメージで空飛んでんだ?」
「スー◯ーマン」
「......なんだろう一気にチープになったな」
「アメコミヒーローバカにしてやんなよ」
「???」
「降下訓練だ! 地表から10センチで止めてみせろ!」
「ではお先に失礼しますわ」
織斑先生の指示に従い、まずオルコットが地面に降りていく。あの歓声を聞く限り、ジャスト10センチだったんだろうか。
「うえー、ちょっと怖いな」
「じゃ、お先」
「あ、おい!」
見本を見せるのもマネージャーの仕事、オルコットのようにジャストで止めてみせ、
(まった、止まり方がわからん)
止まれって念じるだけでいいのか? でも重力とか慣性とか働くだろうし、いやでもPICって慣性の法則だの重力を打ち消す代物なんだからそれは考慮する必要性が存在するいやでもどっちだオルコットのやつもうちょい見ておけばよかったって目の前に地面がががががが!
「誰が五点着地の見本を見せろといった、馬鹿者」
「いや、止まれなくて」
「そして織斑、穴は埋めておけよ」
「あい......」
この後の武装呼び出し訓練も、考え事をしていたせいでしこたま怒られた。
◇◇◇
「なあ、お前今日おかしいぞ」
「考え事がすぎるぞ成政、授業くらい集中しろ」
「そうは言っても気になるんだよ、2組の転校生が」
ロランのように普通なら朝に来るはずなのだが、昼休みになってもどういうわけか2組の転校生はいつまでたっても来ない。そう2組の生徒が話していたのを聞いたので確かだろう。
「代表候補生だろう? 対策しなきゃいけないんだろう? どうせバカみたいな機体使うんだろう? 対策に時間かけさせろくださいこんちくしょう!」
「心配性が過ぎますわね。体に毒ではなくて?」
「それで勝てるんだったら青酸カリでも硫酸でも遠慮なく飲む」
「誇大表現が過ぎるだろう......」
「ともかく、この私に勝った一夏さんがいるのです。気を楽になさってはどうですか?」
「一夏だから心配なの」
「お前そりゃどういう言い分だよ!」
「一夏のダメなところをザッと200は挙げられるが」
「そうね、私もできそう」
......ん? 誰だ、こんな声心当たりは特にないんだが。
「久しぶりね、一夏」
「鈴、鈴じゃんか! 久しぶりだな!」
振り返ると、ない胸を張って立つちんまいと形容するべきだろう小柄のツインテ女子。
んー、なんだろう、日本人の感じがしないような、でもヨーロッパ系統の顔立ちでも無いんだしなあ。
まじまじと謎のツインテ女子を見ていると、視線に気がついたかこちらに少々厳しい視線を向けて、
「何......って¥@&€%#!?」
なにやら言語化しづらい叫び声をあげて、後ろにぶっ倒れた。
「......いや、俺の顔って気絶するほどか?」
「日頃の行いだな」
「と、とりあえず保健室、保健室だな!」
「一夏さんそちらは反対方向です!」