〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら 作:通りすがる傭兵
次からはそうします。
そんでもって今回は自分の中二病パワーが多めです、きつい内容だとは思いますけど......なり君はこうだと思ってるのですよ
「出席を確認する」
「あの先生、河南君が居ないんですけど」
「河南は階段で転んで怪我をしてしまったらしい、よって病院だ。それ以外はいないか」
転んで怪我をした、か。
学園側は不祥事を揉み消したいらしいな。
私があの天災の妹だからか? この身を呪った事はあるが、それで救われたのは初めてだな、笑いたくなる。
「こちらからは連絡はない。号令」
「きりーつ、礼」
今日もまた1日が始まる。
成政を置き去りにしたまま。
あの時の感触を、よく覚えている。
目を閉じれば、あの後の情景がありありと思い浮かぶ。いや、刻み込まれているの方が正解だろう。
木刀を振り下ろそうとする時、すでに成政が回り込んでいた。しかし私は鈴ばかりに意識が向いていて見えなかった。
木刀を止めようと腕を伸ばす成政。
私はそれに気付かずに奥に見据える鈴の頭に向かって木刀を振り下ろし、
『めっちゃ痛いいいいいあやっぱり痛くない痛くないから気にしないでねあだだだだだ!』
意識が戻って最初に見たものは、玄関先で腕を抑えてのたうちまわる成政の姿だった。
あれからは記憶がおぼろげだ。
何か誰かと話したような気もするし、何かしたような気もする。
気がついた時にはベッドの上で、昨晩のことは悪い夢だったと自分を騙そうともした。
しかし、私自身が私を許せなかった。
私は生まれてこのかた、邪な気持ちで剣を振るったことはあまりない。
あったとしてもちょっかいやイタズラ程度のもので、明確な敵意を向けた事は絶対になかったのだ。
私は禁忌を破った。明確な敵意を、殺意を刀に載せてしまった。
「初めて......人に刀を......」
私は鈴音を殺す気で刀を振るった。
よしんば殺さなくとも、頭に当たっていれば重度の障害が残った可能性もある。
私は自分が恐ろしくなった。
自分が他人に殺意を抱いた事にではない、他人を害する時、あまりにもいつも通りだった自分にが、怖いのだ。
「箒、次移動教室だぜ? 行かないのか?」
「あ、ああ。すまない。今行く」
私の才能は剣術ではなく、人を傷つけることにあるのではないか。
私は、剣を持つに値する人物なのか。
そう思わずにはいられなかった。
私が悩み続けている間も時は進み、いつの間にか放課後になっていた。
「篠ノ之さん、部活一緒に行きません?」
「四十院か。今日は気分が優れないのだ、休ませてもらうと伝えてくれ」
「そうですか......どうぞお大事に。篠ノ之さんに河南さんも休むとなると、部活が寂しくなります」
「すまないな......」
「謝る事ではありません」
それではと手を振って教室を去る背中を見送り、私も机にかけた鞄を手に取った。
(一夏は私の事をどう思っているのだろうな......嫌われてしまっているだろうか)
寮に向かう足取りは重い。
一夏はこれからセシリアとISで訓練だから、しばらく帰ってこない事は知っている。
「......ただいま」
扉を開けても、部活で遅くなる私を出迎える声はもちろんない。
「ああ、おかえり箒」
だからこの声も、きっと幻聴で......
「それで、ご飯にする? 風呂にする? それとも練習?」
「......な」
「それとも勉強? IS関連教科は教えられないけど大丈夫かな」
「成政っ!?」
目の前には、五体満足の成政がいた。
「ぶ、無事なのか?」
「そりゃ無事とはちと違うけど、元気だよ」
「う、腕は、腕は大丈夫なのか?!」
「大丈夫だよ、ただの打撲だったし」
制服の袖を捲り上げてみせる。そこには紫色の跡さえ残っていてはするが、見る限り真っ直ぐでなんの異常も無い腕があった。
「ば、馬鹿な......ありえない」
「いや触ると痛いからやめてね! ステイステイ!」
「あう、申し訳ない。しかし......」
「骨折ぅ? まっさかー、生まれてこのかた怪我した事なんてないよ」
「いや、おかしい。確かに私はお前の腕を折ったはず、折ってしまったはずなんだ」
「そんな事ないよ、レントゲン撮ってもらったけど、なーんもなし」
箒は優しいなあ、と声をかけられる。普通ならば安心するが、私の頭には混乱しか生まれなかった。
(何故だ、いや確かに。確かに私は成政の腕が折れ曲がるのを見ている。でも現実では打撲のみでなんの異常もなく、ただの軽傷......?)
「別に邪推しなくてもいいじゃないの。怪我が軽くて済んだのだから喜びなさいよ」
「そ、そうだな、よかったな」
「ならば良し。それでお説教と行きたいわけなんだけど......」
「うぐ......」
「十分に悩んだようだし、やらなくてもいいでしょう! それに、人の為に何かができる人というのは、得てして素晴らしい事だからね」
じゃあ今日はアリーナ行こっか、と私の手を引いて外に飛び出した成政。
そうだ、きっと。
昨日の事は、何か悪い悪夢に違いないんだ。
「クラス対抗戦まであと3週間、張り切って頑張りましょう!」
「はい!」
お前がいつも通りだから。
だから、昨日は
◇◇◇
「ただーいま」
「お帰りなりり〜ん」
「今日も一日頑張ったぞい!」
「いぇ〜い!」
「今日なにしたのん?」
「えっとね〜、かいちょーとおねーちゃんと一緒にお仕事したの! 楽しかったよぉ〜」
「よく頑張ったな、偉いぞのんさん!」
「でへへへへ〜」
「よーしよしよしよーし」
「うぇへへへへ〜」
「のんさん、顔が溶けてる溶けてる」
「おっと」
「いっつもどこか抜けてるねチミは」
「それほどでも〜」
のんさんを膝の上に乗せてナデナデすると、不思議と疲れが取れるのだ。この柔らかい髪の毛がそうさせるのか、実際不思議でならない。
「ところで、腕は大丈夫〜?」
「ああ、なんとかなった」
「無理しないでね、
「騙し騙しやれば持つよ」
「無理しなくてもいいのに......」
しょぼん、とパジャマの猫耳をしおらしく畳んで悲しみを露わにするのんさん。
すごく罪悪感が湧くが、箒の為に必要な犠牲なのだ、すまぬ。
「無理しないと、箒が無理するから。
だいぶ参ってたみたいだし、無理矢理にでもやってやらないと潰れちゃうよ」
「驚いたよ〜、お昼に枕取りに行ったら、部屋でギプス叩き割ってるんだもん」
「箒が困ってんだもの、ほっとけない」
「みんなには言わなくていいの?」
「織斑先生には流石に伝えてあるよ。それとオルコットにも。他はうっかり口が滑りそうだから、ね」
箒の前では痩せ我慢をして誤魔化したが、俺の腕はポッキリと折れている。
普段なら怪我はさっさとなおすに限るのだが、箒が罪悪感でパンクしそうだったので一芝居打たせてもらったわけだ。我ながらいい演技だったのではなかろうか。
「......ここまでやる必要、あるの?」
「当然。箒には頑張ってもらわないと」
「感心しないね、極度の自己犠牲は。主人公気取りかい?」
「そして当たり前のように何故お前が居るんだ、ロラン」
「好敵手に塩を送りに来たのさ。ニホンじゃそんな慣わしがあるのだろう?」
それはそれとして、と前置きして近寄って来たかと思うと、真剣な顔でこんな事を言った。
「A fool thinks himself to be wise, but a wise man knows himself to be a fool.
愚者は己が賢いと考えるが、賢者は己が愚かなことを知っている。
かの有名な劇作家、シェイクスピアの言葉を引用させてもらったが、君はどちらだろうね。
愚者であるか、賢者であるか」
相変わらず変わったやつだ。
「みんなが頑張れるように手助けする。そうやって考えれば人助けなんだし、賢者じゃないの?」