〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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主人公の兄弟って主人公までとは行かなくてもチートが多いと思う




第15話 河南成政は休日を満喫する

 

 

ゴールデンウィーク。

五月の初めに訪れる、学生にはちょっとしたご褒美の連休。日頃の疲れを癒すなり、勉学に励むなり部活に邁進するなり、休日の使い方は人それぞれだろう。

 

「マネージャーに休みは無いがな!」

「働き方改革を知っているか成政」

「知らんな」

 

今日は駅前の百貨店『レゾナンス』にて箒と買い出しだ。ついでのように皆からお使いも頼まれたので大荷物になると予想はついていた。だから頭数が欲しかったのだが、一夏は実家に帰るらしくダメ、思いついたのが箒だったのだ。

決して(よこしま)な気持ちなどない、断じて......多分、きっと。

 

「今日買うものは何だ、確認をしておきたい」

「えーと、部長がサポーター、副部長が湿布とスプレー、山岸さんが手拭いの替え......」

「多いな、財布は大丈夫なのか?」

「学園宛に領収書切ってもらう。部費で通ると思うし」

「なるほど 、それが順当だな」

「続き行くよ。藤村さんが下着、河野さんが大きいヌイグルミ......」

「ちょっと待った、それ何か違わないか」

「西さんが料理本で、玉田さんが雑誌......」

「単純に買い物させてるだけではないかそれ?!」

「もののついでだしいいだろ」

「それを世間ではパシリと言うのだが」

「部員の不満解消の手伝いをするのもまた、マネージャーのお仕事である。気にするな」

買うものをリストアップし、売っている店を検索、表示。地図と照らし合わせて最短ルートを導き出す。

んー、ISって超便利、文明の利器バンザイ。

 

「まずは御白さんのジャージからか」

「大丈夫なのか? サイズとかの問題が」

「身長体重スリーサイズ把握してるから大丈夫、本人からの許可も貰ったし」

「いま聞き捨てならん事を聞いたのだが」

「あれ、言ってなかったっけか。

アンサングにかかれば一から十まで見るだけでわかるって」

「貴様今すぐそれ捨ててこい」

実はISなしでもスリーサイズを高精度で言い当てられる特技があるんだが黙っとこう。

 

「ところで、何故貴様はジャージなのだ?」

「ジャージは全てを解決してくれる」

「だからお前は私服がジャージばかりなのか!?」

「私服なんてお金と収納の無駄でしょ」

「......まずお前の服を買いに行くぞ、隣の私が恥ずかしくてたまらん!」

「さっきからずっと気になってみんなが俺見て来るのはそれか。てっきり2人目の男子操縦者が物珍しいからかと」

「お前はもっと自分に気を使え!」

 

そういうや否や、グイグイと俺の腕を引いて、最寄りの服屋に引きずりこもうとする箒。

あっ、やめ、そっちは折れてるんだからあああああああああああああああああ!

 

30分後

 

「よし!」

「まあいいんじゃない?」

 

服のセンスはよくわからないので、箒に適当に服を見繕ってもらった。暗めの落ち着いた色でまとめてあって、素人目からしても悪くない。

服をあーでもないこうでもないと選んでいる途中、店員さんの目線が生暖かったんだが一体何故だったのか。コレがわからない。

 

「じゃ、買い物行きますか」

「そうだな」

 

行くぞレゾナンス、商品の在庫は十分か!

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ありがとうございましたー」

 

店員さんの挨拶を背中に受けながら、メモに横線を引いて文字を消す。

 

「これで部長と副部長が済み、と」

「あと半分ほどか、順調だな」

「んー」

「どうした?」

「お腹減ってる?」

「それなりには」

「じゃ、ご飯にしますか」

「それならあそこはどうだ、空いていそうだし」

 

指差す先を見ると、シックな雰囲気漂うカフェを見つけた。穴場なのか空席が目立ち、今すぐにでも座れそうだ。

 

「じゃ、あそこにするか」

「だな」

 

大量の荷物をロッカーに預け、先ほど箒が見つけたカフェ『(アット)クルーズ』へと向かう。待たされる事なくすぐに空き席に案内され、メニューやら水を貰うことができた。

 

「......俺はナポリタンでいいかな」

「ならば私は、和風スパと烏龍茶を」

「オーケイ。店員さーん」

「ご注文お伺いします!」

「ナポリタンと和風スパゲッティ、それとサラダ。こっちの人に烏龍茶を」

「かしこまりましたー、少々お待ちください」

後は料理を待つだけで手持ち無沙汰になってしまった。これといって話すこともないので、スマホをいじって時間を潰すことにした。

そんなおり、珍しくもないが箒からこちらに話を振ってきた。

 

「なあ成政、一夏は今回勝てるとは思うか?」

「前情報の少なさは目立つけど、4割ってところじゃないかな」

「4割か......」

「近接型って言ってたし、一夏も零落白夜の扱いには慣れてきてる。前回よりは勝ちパターンが見えるし、楽だとは思うけど」

「問題は、第三世代兵器か」

「能力がわかんないから対策はぶっつけ本番、そこだけがネックだねえ」

 

操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器。搭載した兵器を稼働させ制御するにはかなりの集中力が必要で、未だ実験機の域を出ないようだ、以下参考書より。

 

「当てはまるとすればティアーズのBT兵器だな」

「一夏の零落白夜もカウントすべき」

「いや、一夏のそれは千冬さんと同じワンオフ・アビリティではないのか?」

「違う違う、アレはレプリカ、偽物の再現兵器だよ。威力が素の8割しかないんだし、白式は二次移行も済ませてないんだから」

「例外と考えるのはいかんのか?」

「それは思考放棄と同じでしょ」

「難しいな」

 

うむむと困り顔を見せる箒、正直かわいい。

じゃなくて、そこが悩みどころだ。

 

「鈴は中国出身だから、第三世代兵器も中国っぽいのでは?」

「確かに一理あるね。考えてみよか」

「お待たせしましたー! サラダ、烏龍茶、和風スパとナポリタンでーす」

「ナポリタン僕のです」

「ではごゆっくりどうぞ〜」

「中国だから、何か炎とか出せそうではある」

「確かに、私のこの手が真っ赤に燃える! とか言いそう」

「近接戦闘を強化するものだろうか」

「射撃の可能性も否定できないね。性格からして向いてるとは思わないけど」

「試合動画が欲しくなるな。使うのが見られればどうとでもなるというのに」

「駄目だった」

「そうか」

 

このままではなにも出来ないままだ。前回よりも余裕があるといえ、強敵なのだから時間をかけておきたいものなのだけど、

 

「成政、タバスコかけすぎでは......」

「ん? ああ気にしないで」

 

本当にどうしたものやら......

 

「ここのコーヒーうまいんだよ、ほんとマジ、信じろって」

「オータムがそこまで言うなら入るけど、撮影許可は大丈夫? アポ取ってあるの?」

「そこは......なんとかなるだろ」

『D陣に全てを投げる出演者の屑』

「おまっ、それはあんまりじゃねえか!」

「Mちゃん今日も絶好調だねぇ。じゃ許可取ってくるから待っててね」

 

テレビ収録だろうか、なにやら面が騒がしくなってきた。別段興味があるわけでもないが、話のネタくらいにはなるだろうと思って振り向いて......

 

「成政、なんで死んだ魚のような目に。やはりかけすぎたのではないか?」

「あ、ナリじゃねえか」

「なんで兄貴がここにいるんだよ」

 

そこで手を振っていたのは、大学にいるはずの兼政(かねまさ)兄さんだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「まさか、お前がIS動かすなんてなあ。実は女だったのか?」

「ちゃんとついてるよ見せてやろうか」

『公共施設で脱ぐ......通報すべき?』

「いいわよ〜」

「よくない!」

「なっはっはっはっは」

 

どういうわけか、兄貴と愉快な仲間たちとテーブルを囲むことになった。飯代は奢ってくれるそうなのでありがたいが、面倒なので早く逃げたいのが本音だ。

 

「成政、この人は......」

「紹介します。ウチの不肖の兄です」

「どうも、河南 兼政です、こいつの兄貴やってます」

「確かに似ているような」

「まあまあ、名刺でもどうぞ」

 

礼儀正しく名刺を一丁前に差し出してくる兄貴、胡散臭い。

 

「というか名刺? そもそも大学生じゃ」

『ファントム・カンパニー 社長』

「......社長?」

 

渡された名刺にある見慣れない文字に頭が混乱する。 社長? あれか、会社の偉い人的なやつだよな、でも兄貴は大学生で、あれ?

 

「ああ、大学辞めた」

「辞めた?!」

「今番組作ってる」

「番組ぃ!?」

「深夜帯にやってる『ファンタスっ!』って番組知らない?」

「知らん」

「私も知らないな」

「知名度低いなぁ......」

 

きっぱりと断言してやると思い切り凹んだ兄貴。ザマアミロと言いたいところだが、様子があまりにも暗いので何も言えない。

 

「じゃ、じゃあアタシは、アタシの顔とか心当たりないか?」

「どこかテレビで見たような見ないような......どちら様です?」

「マジか......」

「元気出しなさいオータム、これから頑張ればいいんだから」

「スコールぅ〜!」

 

オータムにスコールと。なんかペラッペラな名前だなあ、なんかコードネームっぽい。

目の前で友情を深め合う2人もだが、他にも気になることはある。先程までカメラを担いでいたこの、体格も華奢でともすれば中学生とも見えないこともない女性、というか女の子。

 

「なんでこの子紙袋被ってるの?」

「自分の顔が嫌いなんだと」

『あまり人に見せたくない。声も嫌』

「......まさか拉致なり誘拐なりしてきた?」

「......」

「黙り込むって事は?」

「そのまさかなんだよ」

「箒、警察」

「わかった」

「待って待って、話聞いて!」

『これには深い訳がある』

 

本人たちがそう言うなら、と携帯を置く。

本人も渋々と言う様子で、他言無用と念押ししてきてから話し始めた。

 

「ヨーロッパに企画に行ってきた時に拾った、道で」

「あん時は大変だったよなぁ、ホント」

「それも含めて楽しかったんだけど」

「兄貴の事だからどうせハリウッド顔負けの大アクション劇だったんでしょ?」

「楽しかったよー。カメラ回したんだけど、流石に放送できない内容でさあ」

「兄貴の事だから、って何故そんな事を?」

「だって、兄貴悪運カンストしてるし」

「自分で言うのもアレだけどツイてないね」

「一言で纏めると疫病神だな」

『不運を以て悪を制す』

「一緒にいるとトラブルには困らないわね」

「そ、そんなになのか......」

「気になる、気になるよなぁ?」

 

我が意を得たり、と言わんばかりで聞いてくるオータム。スコールさんに目で助けを求めると諦めろと答えられたので、素直に続きを促した、俺も気になるし。

 

「兼政の乗る乗り物は大抵事故る」

「「『これは常識』」」

「えぇ......」

『飛行機は落ちる、車は燃える、列車は脱線する、自転車は跳ね飛ぶし船は沈む』

「原付の旅では何度轢かれた事か」

「死人が出なかったのは奇跡のようね」

「今回の旅も相当だったよな。イギリスのネッシー探し、巻き添えでアタシ喰われかけたし」

「いやあ、ネッシーは眉唾だと思ってたんだけど、まさか本物だったとは」

『007にも殺されかけたのも忘れないで』

「でも今回、そんなでもなかったでしょう? 中東に比べれば」

「寝て起きたら戦場、目覚ましが爆撃音の1ヶ月、思い出したくねぇ......」

「一番楽しかったのはアレだね、メキシコ」

「マフィアとの鬼ごっこは楽しかったわね〜」

『私はアメリカでエイリアンに会ったのが楽しかった』

「宇宙人殴ったの兼政くらいだろ、あん時のエイリアンの顔は傑作だったもんなぁ!」

「あとはそうだな、ドイツで試合見てたら誘拐された事もなかなか。一緒に誘拐されたのが日本人だったのは運命を感じたね」

「巻き込まれたその日本人が可哀想すぎる」

「いざ帰ろうと思えばドイツ軍も押しかけてきたのもいい思い出かな」

「日本だったらアレだな。サムライの霊に呪われたやつが印象に残ってる」

「Mがなんかに乗り移られたやつだろ? そんでお前が塩ぶっかけて解決して」

『すごくビックリした』

「ビックリしたで済んでるあたり君も毒されてるねぇMちゃん」

「もう何が来ても驚かん......驚かんぞ」

「エジプトじゃミイラに殺されかけたり。あの天災が『そんなオカルトありえない! 世の中は全て科学で解明できる!』と言った直後にミイラが動き出した時の顔といえば......」

「姉さん......」

 

話し始めれば雪崩のようにネタは尽きず、いつのまにか3時間もここに居座る事になってしまった。

そろそろ去ろうかと腰を上げた時、金欠なのでコーヒー一杯で粘りまくっていた兄貴が思い出したようにこう言った。

 

「あーそうそう、今日はまだ起きてないから、これからテロリストあたり押しかけてくれるんじゃ」

「オラァ! 全員動くな!」

「死にたくなきゃ俺たちの言うことに従うんだな!」

 

セリフも言い終わらないうちにトラブル(銃を持った二人組)が飛び込んできた。

 

「......これだから兄貴は嫌いなんだ」

「よっしゃメシ代タダになるぅ!」




ちょうど成政たちが話し込んでいる頃

一夏「へぶちっ!」
弾 「どした一夏、風邪か?」
一夏「誰か噂してんのか?」←兼政と一緒に誘拐された日本人

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