〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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兼政「みなさんこんばんわ。今週も『ファンタスっ!』のお時間がやって参りました。
今日は『全国喫茶店四十七番勝負!』、その第四週目となってございます。
みなさんから集まったお便りやネット情報からその都道府県一番の喫茶店をアポ無しで巡るという今回の企画。
先週は東北を周り何事もなく無事に、関東に到着いたしました。
でもこれ終わらないのがファンタスでございます。なんと東京ではオータムオススメの喫茶店に行ったところテロリストに遭遇してしまいました。
これから私達ファンタス班はどうなってしまうのでしょうか! それではご覧ください」
成政「前書きを乗っ取るなよ! あとこれ番外編じゃないから、ちゃんと本編だから!」



第16話 河南兼政は請い願う

 

 

休日らしく賑わっていた喧騒は消え、静寂だけが漂うレゾナンス。その一階、ホールであろうよくひらけた場所で、俺たちは人質になっていた。

 

「貴様らは人質だ。政府が要求に応じない場合......1人ずつ、殺す」

 

数分ほど前にそう言った黒ずくめの男はここにはいない。ドラマのように警察か政府の誰かと話でもしているんだろう。

 

「で、これからどうしよっか」

「順当に全員ボコしゃあいいだろ」

「それには人質が多過ぎる、却下」

「ちぇ、こちとらイラついてんのによ」

「俺にいい考えがある」

「......」(絶対に碌でもないことだな)

 

兄貴達が顔をつき合わせているようだが、見張り達は見向きもしていない。いや、気づいてはいるが泳がせているのかもしれない。

どちらにせよ、なるようになるだろう。

 

「......」

「緊張するなって箒、兄貴達がいれば大丈夫さ」

「......怖くないのか?」

「別に? だって兄貴だし」

「その謎の信頼感はなんなのだ......」

「そりゃ、俺の兄貴に対する信頼感は......例えるなら常識。物を投げれば下に落ちるのと同じくらい当たり前のことなんだよ」

「家族だからか?」

「かもしれないね」

「そうか」

 

それ以降プイとそっぽを向いて黙ってしまった。一体箒は何が言いたかったんだろう。

 

「じゃ、打ち合わせ通りに」

「悪巧みは終わった?」

「言い方......ちなお前も手伝ってもらうからな?」

「マジですか」

 

兄貴が指示を伝えた。簡単で助かるのだが、いつものようにまるで意図が掴めない。とりあえず肯定の意を示して頷けば、オータムがメチャメチャ楽しそうな顔をしていた。

 

なにやら嫌な予感がする。

 

そうこうしているとボス格らしい先程の男が近づいてきた。携帯を耳に当てたたまま腰のホルスターから黒光りする銃を抜き放ち、銃口を俺たちの方へ向けた。

 

「おい、そこの金髪の女。立て」

「あら、私?」

「いいから立て」

「本当に私でいいの?」

「殺されたいか?」

 

銃を突きつけられれば仕方ない。そう言わんばかりに面倒な顔をしてスコールが立ち、言われるまま前に出る。

 

「交渉決裂、お前が1人目だ」

「......」

「恨むなら、政府を恨むんだな」

 

そのまま男は、スコールさんに向かって引き金を引いた。軽い炸裂音と、耳をつんざくような高い金属音がモールに響く。

 

「政府が要求に応じるまで、この女のように殺していく。考え直」

「あら、誰が死んだのかしら?」

「今だ、ナリ、オータム!」

「来い、『アンサング』!」

「おっしゃああああああああ!」

 

兄貴から伝えられた指示。

『誰かが撃たれたらISを展開して立て。合図は俺が出す』

指示通りにISを展開し、

 

「行くぜ行くぜ行くぜ行くぜぇ!」

「え」

 

がっしりとオータムが足首部分を掴んだかと思うと、

 

「必殺ゥ! ISホームラン!」

「なんじゃそりゃあああああああ!」

 

バットよろしくフルスイング、一番近かったリーダー格を吹っ飛ばした。

訳がわからない事態に呆気にとられる一同。そこで動けるとすれば日頃から理不尽に慣れている者......つまり俺たちだ。

 

「全員ぶちのめせ、無事で帰すな」

「それは救助側が言う言葉なのか?!」

「......」(いつもこうだから諦めろ。それと縄解いてやるから手を出せ)

「すまんな」

「......」(お互い様だ)

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「北◯有情破顔拳!」

「「「「ぎゃーっ!」」」」

「パーフェクトね、兼政」

「こっちも終わったぞー」

『こうして 街 の 平和 は 守られた !▽』

 

なぜか胡座をかいて座った兄貴の掌からビームが飛び出し、テロリストが三下めいた叫びをあげてゴミのように飛んでいく。

最後の苦し紛れらしい銃撃をスコールが素手でキャッチし、その取りこぼした最後の1人にオータムがロッカーを投げつけK.O。

見たところ死者は0、民間人のけが人も0。テロリストのお方々はたった今突入してきた警察の方々に引っ張られていき、事件は収束した。

 

「特に何もなかったね」

「いや色々あっただろう?!」

「いろいろ......?」

「常識を疑うような事とか! ファンタジーのような出来事があっただろう!」

「そんなんあったか?」

「普通の人は掌からビームなぞ出さん!

オータムとやらはあんな細身の体で人を片手で投げ飛ばすのはおかしい!

スコールはなぜ銃弾を食らって平然としているのだ!」

「いや、兄貴の仲間なんだからあれくらい出来ないと」

「くらいとはなんだくらいとは! 常識的に考えて、可笑しいだろう!」

『当然の疑問だな。だがな』

 

そうまくし立てる箒を制したのはM。

キュッキュと筆を動かしていたかと思えば、少しキツい(ように見える)目つきで差し出してきた。

 

『みんな私と同じ(いわ)く付き、伝えれば不幸になる』

 

もし知りたければ、普通じゃいられなくなる。そう忠告しているかのようだった。

その意図が伝わったか、箒はそれ以上聞こうとはしなかった。その目つきから、当人も口を開きたがらないようなおぞましい出来事があったに違いない、そう表情が物語っていた。

 

「あん? アタシがおかしいって?

決まってんだろ、改造人間なんだから」

「私はサイボーグよ? 生身のところなんて脳髄くらいかしら」

 

当の本人たちはそうでもないようだったが。

「改造人間って言っても、()()()()体のリミッター取っ払った位だしな。スコールに比べりゃどうって事はねえ」

「たかだか? リミッター?」

「人間の身体てのはいつもリミッターをかけてるんだ。全力を出そうと思っても脳が無意識にセーブして、意図的に力を出せるのは全力の2〜3割ってところなんだ」

「そうなのか?」

「火事場のバカ力、って言うだろ?

アタシはいつもそれを引き出せる」

 

軽自動車くらいなら持ち上げられるぜと笑ってみせたオータム。

今度は私の番ね、と一歩前に出たスコールが口を開いた。

 

「私、ターミネーターなの」

「......それで?」

「とある馬鹿げた博士がいて、フランケンシュタイン博士に憧れて人造人間を作ろうとした。私はその成れの果て」

 

詳しくは言えないけどね、と付け足したところで兼政に呼ばれて行ってしまった。

箒は言わずもがな、これはMも知らなかった事らしく驚いているようで固まっていた。

俺は兄貴が関わってる時点でなにもかも理解した、兄貴に関わるものに常識を振りかざしたら負けなのだ。

 

「じゃ、じゃあ成政の兄さんはどうなのだ。

人造人間、サイボーグ? それとも宇宙人?」

「『......』」

「おい、なぜ黙る。何かしらあるんだろう? 一番非常識な者が一番普通だなんてありえないだろう? なあ?」

 

言えない。

兄貴は俺が知る限り、ただのなんの変哲も無い人間だなんて、言えないだろ......!

 

『世の中には知らない方が良いこともある』

「......今回は、本当にやばいのか?」

 

ブンブンと必死に首を縦に振るM、なんとかして誤魔化そうとしてるんだろう。その必死さに免じて俺も頑張らないと。

 

「そ、そう! 兄貴いつもどこほっつき歩いてんかわかんないからさ!本当わかんないんだよね」

『私も聞いたことないからな、きっと誰にも言いたくない事なんだろうさ。うん』

「そうなのか......そこまで必死なら、きっと大変な事だったんだろう」

 

横を見ると、見えない程度にガッツポーズするMと目が合った。初めて会った得体の知れない奴だが、今日こいつとは少し仲良くなれた気がした。

主に苦労人ポジションとして。

 

「なりまさーって言ったっけか? こっち来てくれ! 面白いもん見せてやるから!」

「え、なんですオータムさーん」

『いかん、オータムのソレには手を出すな!』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

side 篠ノ之 箒

 

 

「やー、ごめんね待たせて。上に今の映像放送できるか確認取ってたからさ」

「いえ、別に待ってはいませんよ」

「今回もダメでさ、一部がニュースで使える以外はお蔵入りだってよ、かっかっか」

「はぁ......」

 

帰ろうとした矢先、兼政さんが話があると私を呼び止めた。先生方にも帰りは遅くなると伝えているし、多少話したところでなんの影響もない。

 

「まあ座って」

「では、お言葉に甘えて」

 

しかし、私に話とは一体何なのだろうか。

 

「箒ちゃん、って言ったっけ。成政と仲よさそうだけど、どんな関係?」

「ただの腐れ縁で、幼馴染で、マネージャーと選手。恋人だのそんな関係ではないです」

 

ここ1ヶ月で何百と聞かれ答えた質問。反射のようにスラスラと、何の淀みもなくそんな言葉が口をついた。

「あいつの春はまだかぁ」

 

こりゃ父さん達には良い報告はできないかあと夕焼け空を仰ぐ兼政さん。だが、それでもいっかと彼は話を続けた。

 

「じゃ、一番仲の良さそうな君に頼む事にする。

俺の弟を、河南成政を守ってやってくれ」

 

告げられた言葉は家族に向けるにはどこか異質で他人行儀だった。

 

「アイツはな、他人に優しすぎるんだ。

他人の為になるならと身を粉にして働くし、その為なら傷つく事を厭わず躊躇わない。

それが俺は心配でならないんだよ」

「それは良い事では無いのですか?

優しいことは短所では無いと思います」

「確かにそうだ。でも優しさってのは、行き過ぎれば狂人と変わりがないんだよ」

「っ!?」

「だってそうだろ? いくら親しい友人だからとはいえ、自分の命を投げ出すのに躊躇いが一切存在しないとかマトモじゃねえ。

アイツが運動音痴な理由知ってっか?」

「いえ、小学校から急にとしか」

「やっぱし言ってないか。

全身20箇所以上の粉砕骨折、筋肉断裂に内蔵破裂。全身細切れズタボロになれば、そりゃ満足に身体もうごかせなくなるだろ」

「なんですか......それ」

「友達を庇ってトラックに跳ね飛ばされて轢かれた。まったくもってアイツらしい理由だろう?」

「......」

「それからも良く怪我しては病院に世話になってる。アイツの裸見てみろ、ブラックジャックも真っ青な手術痕だぜ? そんくらい死にかけてるってこった。

アイツは自分の命の価値を軽く見積もり過ぎてる。IS学園なんて危ねえ場所にいるんだ、そのうちウッカリ死んでもおかしくないんだよ」

 

兼政さんは大きく息を吐き、そして最後の一言を告げた。

 

「アイツのイカれた価値観を変えろまでとは言わん。でも......せめてアイツが少しでも躊躇うようなそんな理由を、アイツにくれてやって欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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