〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら 作:通りすがる傭兵
今日から春休みだし、書くため頑張るぞー!
第1話 河南成政は篠ノ之箒と再会する
2月も終わり、そろそろ春の嵐が訪れる予感のするこの頃。
俺こと
他のクラスメイトは公立高に受験勉強で忙しいだろうが、俺は私立高から声がかかったから勉強なんてしなくて良いのだ、推薦バンザイ。
「まーた男が訴えられてら。
世の中世知辛くなったもんだねえ」
俺が家の中でゴロゴロしているのは、単純に家から出たくないからではあるが、体を動かすのが面倒だからではない。そもそも運動しないとなんかこう、モヤモヤするのだ。まあ運動神経は
それで外出しないわけと言うのは、ニュースでやっているように男というだけで面倒ごとになるから出たくないのだ。
10年前に起きたというとある事件のお陰で、女性の地位は大幅に向上し、反比例して男性の地位は大きく低下した。
それもこれもインフィニットなんとか、というものが原因だと言われているが、正直詳しく知ろうとは思っていない。
なにせ、女子しか動かせないんだ、それこそ男子が興味を持とうが動かせもしない、イコール無駄でしかない事だ。そんなことを考えるのは勝手だが、俺は別のことを考えていたほうがよっぽど有意義だとは思うがね。
『たった今緊急ニュースが入ってきました』
そんなアナウンサーの慌ただしい声を聞いて、俺はよっこらせと身体を起こす。どうせ有名人がぽっくり死んでしまったか、何か大変なことでもあったんだろう。都会から離れたこんな田舎には無縁なことだが、気になるもんは気になる。
まあ、そんなニュース明日の話の種ぐらいにはしておこうか、と思って耳を傾けてていると、
『信じられません、たった今男性がアイエスを起動したとの情報が飛びこんできました!』
本当に緊急だったようで読み上げられるのは文章だけ、テロップも画像も何もなし。そして読み上げられる名前にも知り合いには心当たりなし。
俺は興味も失せたとテレビの電源を落とした。
「ま、2人目なんて出ないやろうな」
10年調べて出なかったんだ、今更出るはずもあるまいて。
「......なのにどうしてこんな隕石に当たるよりもレアケースな事になるんだ」
その日から1ヶ月とちょうど半月。俺の体は実家から遠く離れた東京にあった。
清潔感あふれる教室。
キャイキャイと騒がしい女子生徒の声。
うららかな春の日差し。
入学式が終わり、俺は自分の教室に入り
俺はこんなケミカルで小綺麗な校舎望んでなんかいない、もっと山と自然に囲まれたのほほんとした、それでいて剣道部の強い高校から推薦を貰ったはずなんだ。
なのに何がどうしてこうなった!
......落ち着け俺、怒りというのは何も解決なんかしない、極めて非建設的な感情だ。
つまりそれを持つということはそれだけ時間とエネルギーを無駄にしていることは明白、クールになれ、自分。
そうだ、一度状況を整理しよう。落ち着くかもしれない。
インフィニット......ああもう
男子がISを起動して、それを皮切りに全国の男性にISの適正検査が行われた。そこで俺はISを起動してしまった訳なんだな、理由? こっちが聞きたい。
そしてあれよあれよという間に
だめだ、余計に腹が立ってきた。
「はーい、全員揃っていますねー、SHR始めますよー」
教室の前扉から入ってきた、子供と見紛うばかりの低身長の人物。スーツも一回りサイズが小さなせいで更に子供っぽく見える。
その人物は元気な声で副担任の
「それでは、1年間よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします」
「はい、じゃあ出席番号順から自己紹介してもらいましょうか」
声ひとつ上げるだけで注目の視線が集まるのが手に取るようにわかった。別に
ここはIS学園。読んで字のごとく、ISの操縦者を育成する学び舎。その生徒は俺ともう一人を除き......当然全員女子である。
それがもう辛いのなんの。
一応俺だって女子に囲まれて生きてきましたし、そりゃあ、まあ、着替えの現場にだって遭遇した回数も二度や三度くらいはある。普通の男子よりは、言い方はアレだが女慣れしてる自信はある筈。
それでもクラスに仲のいい男子はいたし、四六時中女子だらけの生活に浸かってきたわけじゃない、それに男子剣道部とも交流はあったし。
「織斑君、織斑君?おーりーむーらーくーんー!」
「わっ、あひゃい!」
目の前では同じく緊張していて気を張っていたであろうもう一人の男子、
「あの、はい、えと......織斑一夏です、よろしくお願いします」
一刻も早くこの空気から逃れたい、と言わんばかりの簡潔な挨拶。女子がそれで納得いくはずもないだろうて。
「......えっと」
予想通りと言うべきか、織斑は『で、他には?』とでも言いたげな女子の視線に晒されているんだろう。見てわかるほど冷や汗を垂らして、視線は右往左往している。
気持ちはわからないでもないが助け舟は出さないからな、知り合いでもないんだし。
「......以上です!」
「お前は満足に自己紹介もできんのかぁ!」
「あだあっ!?」
すぱこーん、とおおよそアニメぐらいでしか聞かない衝撃音、近くにいた俺の耳が痛いくらいだ。痛みのあまり頭を押さえる織斑は、己の頭を叩いた犯人を恐る恐る見上げて、
「げえっ!?関羽!」
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
もう一発ダメ押しを食らっていた。
ぐおおおと悶絶した様子の織斑を放置して、その犯人のパンツスーツに狼のような鋭い眼差しの女性は教壇に立つと、こう名乗りを上げた。
「諸君、私が織斑
「マジかよ......こいつは凄え」
こんな人が教師、冗談だろ? 正真正銘、謳い文句に偽りなし、本当に
前言撤回だ、俺はここにきて正解だった。
この環境なら、もしかすれば俺の夢も......
「キャーーーーー!千冬さま!本物の千冬様よ!!」
「ずっとファンでした!!」
「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」
「耳がーっ!?」
ぐおおおおさすが元世界一、ブリュンヒルデの人気。頭が物理的にガンガンする...... 目の前に立つこの御仁は同じレベルの音圧を受けてるってのに、なぜこんなに
「ーーーー、ーー、ーーーーーーーーーー」
「ーー!ーーーーーーーーーー!」
「ーーーーーーー!」
「ーーーーー」
というかさっきからなにもきこえないんですけど?! うぐ、何が一体どうなってるんだ、状況がまるで把握できないし。
なんで織斑がまた叩かれてるんだ。
なんで俺の方をみんなが見てくるんだ?
なんでブリュンヒルデがこっちを睨んでるんだ。
それで織斑は何を言ってるんだ?
「ーーーーー!ーーーーーー!」
「え、なんだって?!」
「ーーーーーーーーー!」
「すまん、全然聞こえんぞ!」
「ーーーーーーい!」
い、お、お、う、あ、い?
口の形から推測するにこうなんだが、一体織斑は何が言いたいんだ。
いおおうあい......いおおうあい......
「ああ、自己紹介か」
「ーー、ーーーー!」
ブンブンと首を縦に振って肯定の意を示す織斑。オーケー理解した、なる程そういう事ね。ならば教えてあげよう織斑一夏。
これが、自己紹介だ!
「河南成政です。趣味はスポーツ観戦、好きなものは辛いもの。
これから1年間よろしくお願いします!」
そういや横をちらちら見てたけど、座ってちゃ見えなかったからな。
この機会に、と俺は視線を窓側に移した。
「......か、なみ?」
頭もガンガンしてまだはっきりと声が聞き取れた訳じゃない。でも、その声だけははっきりと届いていた。
視線の先にあいつはいた。
随分と変わっていたが、在りし日の面影は色濃く残っていた。
あの時から少しキツめの目つきは相変わらずで、その壮観な顔つきは年頃らしく可愛らしいものに、紫色の瞳を彩る驚きの色も、どこか懐かしくて。
「おまえ、
「河南、河南なのか?」
「そうだよ篠ノ之、久しぶり!」
「会いたかったぞ、河南!」
人目もはばからず駆け寄って飛び込んできた篠ノ之を、俺は思い切り抱きしめて、
「まさかこんなところで会えるなんてな」
「運命、というものかもしれんな」
「そうかもな、ははは......あ」
今ここがどこで何をしていたかを、さっぱり忘れていた。
具体的に言うと、俺の背後にいる
「初日早々
春の教室に快音が二度響く。
今日も、IS学園は平和らしい。