〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら 作:通りすがる傭兵
タッグマッチに関してはそれなりにオリジナルが入りますので、そこんとこご了承ください。
ロランの専用機がどんなのかさっぱり分からんのじゃぁ......
第19話 河南成政は転校生と話したい
「それでは、転校生を紹介します!」
朝の
それもあれもこれもだいたい兄貴の所為なのだが面倒なので以下省略。
(ガンタイギンパツロリって何の呪文やら)
転校生の片割れの事を兄貴はそう言っていたが、日本語じゃないのでさっぱり理解できなかった。そしておまけ程度に付け加えられた軍人で専用機持ちの情報。
それを聞いた時思わず変な声が出て睨まれたが、些細なことである。
もう1人もおもしろいと聞いたし、これはもう生で見るっきゃないと頑張ったので、
「なんか奇跡的な回復見せてるんだけど」
「根性です!」
怪我を無事完治させて学校に復帰。
「あ〜、階段から芸術的な落ち方したなりなりだ〜、おかえり〜」
「錐揉み回転しながら階段から落ちたんだっけ?」
「違う違う、H難度の後方伸身2回宙返り3回ひねり技名シライ2をしながらだよ」
「専門的な解説ありがとう体操部の
怪我を斜め上に脚色されてた事を除いて特に何もなく日常に戻った(なお犯人は新聞部の黛先輩だった模様)。
剣道部は春の大会を迎え、強豪校ひしめく東京予選をIS学園は個人団体ともに無事突破できず、3年生はこれをもって引退した。
頑張ったんだけど、他が予想外に強かった。
高校生の壁を体感した大会だったよ。でも本番はこれから、秋に向けて頑張ろう! と気合を入れ直したイベントでもあった。
夏までの怒涛のイベントを消化すれば部活に割ける時間も十分に出来るしね。
「では、おふたり、入ってきてください」
「失礼します」
「......」
足音を響かせ、教室に入る人影二つ。
制服は箒のような無改造のものでなくガッツリ改造が成されており、その人の個性がよく理解でき......ん?
転校生を目を追いかけていて、ふと疑問が湧いた。
胸が平たいのはいい、その事についてとやかくいうと隣のクラスから
でも、なんでベルトに長ズボン、それに俺らと同じジャケットを着てるんだ?
「シャルル・デュノアです。右も左もわからない
「......男?」
「はい、
誰かがポツリと呟いたセリフに、少し笑って返すシャルル君。
スッと通った目鼻立ちに中性的な甘いマスク。一夏のかっこいいとは別ベクトルのイケメンだ、羨ましい。
でも彼は男子操縦者3人目の筈、大々的に報じられてもおかしくないのになぜそうされないのか......謎はあるがそれはそれ。
ソニックブームよろしく放たれる歓喜の声をISで無効化し、もう1人の転校生、兄貴の言う『楽しい方』に目を向ける。
「ラウラ、挨拶しろ」
「はい教官」
「私はもう教官ではない」
「はっ、失礼致しました」
「......」
かつかつと固い音を響かせ綺麗な敬礼をしてから彼女はそう名乗った。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
白と遜色ないような銀髪に眼帯、制服は動きやすいようにハーフパンツに改造され、上着はどことなく軍服みを感じるもの。敬礼や立ち方が板についてるし軍人さんかな。
もひとつ特徴を挙げるとすれば小さい事だ、男子でも小柄そうなシャルル君よりさらに小さい、140と少しくらいだろうか。
「貴様が......!」
ジロジロと観察していると視線が一番前の一夏に向けられる。気がついた時には、パシンと平手を打つ音が聞こえた。
「認めん、貴様が教官の弟であるなどと......!」
あんまりな事態に呆気にとられる一同を置いて、ボーデヴィッヒは無言で席について腕を組んだ。遅れてシャルル君もその隣の席に。
「......以上だ。次は二組と合同訓練だ、万が一にも遅れる事のないように」
織斑先生が締めて一日が始まる。
今日はいつになく荒れそうだ。
「さて、逃げるか」
イケメン2人なんぞ女子校じゃ注目の的だ、巻き添えで織斑先生に頭を叩かれたくないしね。
案の定というべきか予定調和と言うべきか、一夏とシャルル君は遅れて来たので叩かれた。
それとシャルル君の走り方はどうにもそれっぽい、つまりそう言う事なんだろう。
にしても良い肉のつき方だぁ......じゅるり。
「......え、なんで僕のことジロジロ見てるの?!」
「変なやつじゃないんだよ、ちょっと変わってるだけで」
「同じ意味じゃないの......?」
◇◇◇
「なんであの2人仲良く出来ないんだか......出来たら強いのに」
ひゅるひゅると煙を吹いて落ちていく甲龍とブルー・ティアーズを見ていて思わず溜息をついた。
今日の1、2組合同練習。そのデモンストレーションとして呼ばれた鈴とオルコットさんの対戦相手はまさかの山田先生、しかも使用機体は訓練機のラファールな上2対1。
大方苦戦はするだろうが山田先生の勝ちだろうか......と予想はしていたが、結果は山田先生のワンサイドゲーム。
いくら未熟とはいえ1+1を0.5にするとは、小学生からやり直せオイ。
あーやばいうずうずする、あとで2人まとめて反省会してもらおう、動画も撮った事だし。
前フリも終わり、本格的に授業が始まる。
「それでは、専用機持ちをリーダーとしてチームを作れ!」
千冬先生の号令の下生徒が均等に分かれ、
「「一目見た時から決めてました!」」
そんな事は有り得なかった。
瞬きするうちに一夏とシャルル君の所に山のような
「全くだ、授業は遊びでないと言うのに」
と厳しい言を呈したのは箒、一夏のところに行かなくて良いのと聞くと、
「あいつに教えられるのは少し腹がたつ。それに成政なら勝手知ったるなんとやら、だ」
「そ〜だよね〜」
「河南君の説明はわかりやすいですから、我々初心者にとっては有り難いのです」
「ね〜」
今では別部屋になってしまった布仏さんと、なぜかしれっといる四十院が同意する。
「......しかしこの様子ですと」
「貴様ら、出席番号順に並べ!」
織斑先生の怒りの鞭が飛ぶ。
ああ、やっぱりそうなるのね。
結局出席順に並び替えられ、俺が担当する事になったのはあんまり面識のない2組の方々。
「ハイそれでは、歩行訓練を始めます」
「「「「よろしくお願いしまーす」」」」
「礼儀正しくてよろしい」
今雑談すると時間も足りなくなるし、ぱっぱと進めて早い所終わらせちゃいましょうか。
「今回使うのは、高い防御力からくる信頼性が売りの日本製ISですね。
で、乗り方のコツとしてはーーー」
実体験と教科書知識を織り交ぜつつ、なるべく簡単で具体的な説明を心がける。
そして特に何事もなく終わった。
おかしい、1組だったら必ず一悶着あるのに......なぜゆえに。
「いや、私らだって立派な女子高生だし騒ぐよ? でも1組はノリが良すぎると言うか。」
「休み時間と授業のメリハリぐらいはつけるし。」
「「「ねー」」」
「1組全員にその言葉聞かせてやりたい。」
同じ学園の生徒とは思えないなあ、特に同じクラスのはずのツインテールのちんちくりんとか、ちんちくりんとか、中華娘とか!
「全部聞こえてんのよあんた!」
「あいたぁ!」
ツッコミで衝撃砲使うのはヤメロッテ!
こっちがIS持ってないからって加減してるけど、枕の3倍くらい痛いぞそれ!
そして時は流れて昼休み。
今日はマイ弁当を作ったのだが、一夏が一緒に屋上で飯食おうぜ、と声をかけて来たのでその流れに。
流れといえば、ウチの兄貴の口癖は『激流を制するは静流......』とか言ったような言ってないような、なんだったっけなぁ。
「シャルルも行こうぜ、一緒の方が楽しいだろ?」
「うん、そうだね!」
男子3人集まればなんとやら、普段話せないような事で盛り上がりそうだ、と理想を膨らませていたのだが、
「何故だ......」
扉を開けてみれば箒がおもいっきし項垂れていた。その隣にはほおを膨らませるオルコットと鈴。こっそり訳を聞くと2人でご飯のつもりがこうなったらとか、一夏ェ......
「一夏、弁当だ」
「サンキューな箒!」
重箱サイズとまでは行かないが、男子用のそれなりに大きな弁当箱を取り出して一夏に手渡す箒、小さいところから確実に、な。
ちなみに弁当箱は俺の私物なんだけど、話があると来た時はちょっと驚いた。
「成政も弁当か?」
「いやあ、たまにはやんないと腕が鈍っちゃって......」
「河南君料理するんだ、すごいね!」
「マネージャーですから」
かぱり、と蓋をあけると、カレーの良い香りが漂ってくる。
「あら、それは?」
「ジャーマンポテトカレー風、カレーの匂いは食欲をそそるからね」
「うまそうだな、貰っていいか!」
「答える前に食ってるじゃんよ......あ、シャルル君にはフォークあるから、どぞ」
「ありがとう! 河南君は優しいんだね」
にこっ、と笑うシャルル君の顔に少しときめいた。流石フランス、仕草がいちいちセクシー、それに比べて、うん、考えると悲しくなってきたぞう!
「はい酢豚」
「もぐもぐ......料理上達したな鈴! あとでレシピ教えてくれ!」
「そりゃ秘密よ、なんせウチ秘伝の......」
「美味しいですわね」
「勝手に食べないでよ!」
鈴は酢豚を作って来たらしく、タッパーでドンと提供してくれるそう。少しつまんでみたけど、個人的にはもうちょい香辛料を入れた方が好みかも。
「あと成政、約束のブツ」
「いよっ、待ってました!」
一回り小さいタッパーを取り出して手渡す。
これだよこれと目を輝かせていると、疑問に思ったからかシャルル君が首を傾げた。
「ねえ河南君、それなあに?」
「これはだな......麻婆豆腐だ」
「へえそうなんだ、確か中華料理だよね、初めて見た。僕食べてみたいな!」
同士の予感。がっしりと肩を掴み、スプーンを渡しておく。
「いや話がわかる人がいるって良いよね」
「アンタが食うって言うから要望通り作ったけど、他人に食べさせるとは聞いてないのよ!?」
「?」
「安心しろ、ラッシーは常備するようにしてる」
「日頃から辛党増やそうとしてんじゃないわよ!」
「おいよせ、シャルルはまだ何も知らないんだぞ危険すぎる!」
「何が危険ですの」
「見ていればわかる」
早速頂きましょうと蓋を開けると、唐辛子の刺すような辛味が伝わってくる。赤い中に茶色のひき肉と大きめに切られた豆腐、そして少し見える小粒の黒は山椒かな?
「んじゃ、いただきまーす」
一口食べると。まず飛び込んで来たのは肉肉しい挽肉の食感と、硬い豆腐の感触。肉と鶏ガラの旨味、そして香味野菜の香りがそれをさらに引き立てる。
そして本番、追いかけてくる山椒の爽快な辛さに唐辛子のガツンとした刺すような感覚。
良いね良いねぇ、これぞ麻婆って感じ!
弁当箱下段に詰めた白飯をかきこむと、お米の甘さが辛味で引き立つ。それと同時に、また辛味と旨味が欲しくなる!
「......美味い」
日本料理も美味いけど、俺中国に生まれてみるのもアリだったかもしれんな。
隣を見ると、少し汗をかいたシャルル君が同じように白飯を頬張っていた。
「シャルル君、どう?」
「美味しい! 僕こんな美味しいもの食べたの初めて!」
「嘘でしょっ、味見したけど食えるもんじゃなかったわよそれ!」
青ざめる鈴に首をかしげるオルコットとシャルル。いや作った張本人が言うことかねそれ、料理人として失格だろ。
「デュノア、無理しなくて良いんだぞ!」
「そうだシャルル、無理くり美味いとか鈴に気を使わなくても」
「なんで、美味しいのに?」
「......シャルル、ちょっと借りる」
「え、ちょ」
一夏がシャルルのスプーンを借り、先っちょに乗せて口の中に放り込んだ。
「なんだ、普通にうま......」
美味いじゃないかと言いかけてぴし、と石像のように固まる一夏。本物と違うところがあるとすれば、みるみる赤くなる顔と玉のように浮かぶ汗だろうか。仕方ない。
「ほいラッシー」
「かっ、ぬああああああああああああいってええええええええ!!!」
ごろごろと転げ回り、水筒の中身を飲み干す一夏、鈴のやつはあんまり辛くなかったんだけどなぁ、シャルル君食えるくらいなんだし、軽いもんでしょ。
「こんなの狂ってる......」
「ではわたくしも」
「悪いことは言わない、やめてセシリア」
「そう言われるとなおさら引けません。私はオルコット家当主、気高いイギリスの貴族でしてよ!」
一夏からスプーンを奪い取り、口いっぱいに頬張るオルコット。
いやあ、人って火を吹けるもんなんだね、今までずっとCGかと思ってたよ。
「でもちょーっと物足りなかった、次作るときはもうちょい辛くしてくれると嬉しい」
「僕も作ってもらっても......」
「アンタら頭と舌が狂ってるわよ」