〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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なんだろなー、なにもかもが中途半端な気がする。




第21話 河南成政は訓練したい

 

 

 

 

射撃訓練。

銃が普及していない日本ではあまり聞かない言葉だ。勿論それをした事がある人はさらに少ない。しかしISでは比較的ポピュラーなジャンルでもある。

己を知り敵を知れば百戦危うからずと孫子も言っている。ならば敵を知ることから始めようと、シャルル君主導のもと射撃訓練を行なうこととなった。

ついでにアンサング改の試運転も兼ねている、病み上がりで運動をするのも久しぶりだ。

 

だから、そうだから。

 

「射撃の基礎から教えるね?」

「すまん」

 

銃の反動でぶっ飛ばされて地面に転がった事は、断じて俺のミスじゃない。

 

「えーとまずは、銃を構える時は......」

 

シャルルが一夏に射撃のイロハを教えているのを待つ間、俺は改装に伴い新しく追加された武装に目を落とす。

 

鈍色に輝く、短く太い銃身。

握り拳二つ分はありそうな大きなレンコン状の丸いパーツ。

少々形は歪ではあるが、昔の刑事ドラマなんかでよく見かけたリボルバー拳銃、名前を『カノン』と言う。

ただ、説明を聞いた時はすこーし正気を疑ったが。

 

『これ、IS用のキャノン砲の弾撃てるやつだから、威力すごいよお! 当たれば(小声)』

 

やたら弾倉部分が長いと思ったらそういう訳だったのだ。そん時は特に何にも思わなかったのだが、調べれば調べるほど説明がいかにぶっ飛んでいたかが理解できた。

まず口径が50ミリ。たかが5センチと鼻で笑っていたのだが、調べてみると戦車で100ミリ前後が普通。手持ち火器となると、IS用でも12.7ミリが主流。

 

おかしい。

 

そしてもう一つの特徴として散弾をはじめグレネードや煙幕弾など、多種多様な弾を使える。催涙弾もあるのだが、暴徒を鎮圧すればいいのだろうか。

対ISを考えると、その馬鹿げた銃から撃ち出される強力な弾丸は脅威だろう。しかも拳銃なので取り回しもよく、接近戦中に撃つことも出来なくはない。

ただまあ、そう美味い話があるはずもなく、 銃身が短いせいで命中精度は悪い、炸薬をこれでもかと詰め込んだ特殊弾の反動は自分が吹っ飛ばされる。

結局のところ至近距離で撃って当たればラッキー、銃というよりは隠し小刀とも呼ぶべきだろう。それ以外に使い道が思い浮かばん、という開発者の言である。

 

「成政くん?」

「悪い、考え事してた」

「いいのいいの、教えるから構えてみて」

「んー、こうか?」

「えっと、こうやって......」

下手くそに構えた姿勢の後ろから、半ば抱きつくように覆いかぶさってくるシャルル君。

銃の姿勢はアンサングに覚えさせるとして、ちょっとこの機会を利用させてもらう。

......成る程、やっぱりそうか。

歩き方だけじゃ確信が持てないけど、こうまでされればバカでも理解できる。

練習メニューの組み直しは頭が痛いけど、折角の辛党同士、仲良くしたいしね。

 

「これでよし、撃ってみて」

 

アドバイス通り、まず銃身をまっすぐ的に向け、どっしりと構え、集中して......

 

ドパンッ!

 

「外れた、もういっちょ!」

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

「......アハハハハ」

「あと2発、2発あるから!」

 

ドパンッ! ドパンッ!

 

「......だらっしゃーい!」

「河南くん?!」

 

教えられた通りの基本動作なのになんで当たらないんじゃこんちきしょう!

てか投げた拳銃の方が的に当たるとかどういうこっちゃい、ふざけんな!

 

「うーん、撃ち方はあってるのになぁ」

「じゃシャルル君やってみてよ。貸すから」

「ええっ、僕が?」

 

回収して来たカノンに貸与許可を出し、弾を詰めてから手渡す。

困惑していたシャルル君だったが、睨み付けると諦めたか構えをとった。

そして6回引き金を引いて一言。

 

「これ結構癖があるね、全然当たらないよ」

「6発全部あてといて言うセリフがそれか。嫌味か君ぃ!」

「ちょっと反動が強いけど、ちゃんと撃てば当たるから。ほら、もう一回やってみようよ」

「ぐぬぬぬぬ......」

 

弾詰めて、周りに人がいないか確認して、肩幅の足開いて的に平行になるようにして前傾姿勢で......

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!ドパンッ! ドパンッ!

 

「なんで的にかすりもしてないのさっ」

「おかしいなぁ」

「どうしたんだ?」

「一夏、終わったの?」

「ああ、でも立て込んでるなら」

「実はかくかくしかじか......ということが」

「面白そうだ、やってみていいか?」

「やれるもんならやってみろ、出来るわけない」

「言ったな、1発でも当てたら飯奢りな」

「ナイナイ、天地がひっくり返るくらいありえねえっての。外したらお前が奢れ」

 

そもそも射撃管制ソフトすら入ってない白式で当たるかっての、今日の昼飯は一夏の奢りだな。

 

ドパンッ! ドパンッ!ドパンッ!

 

「ハズレ」

「まだだ、あと半分!」

 

ドパンッ!

 

「おんやあ? 外れてますよぉ?」

「イライラするなぁ......!」

 

ドパンッ!

 

「あーと1発! あーと1発!」

「あーもううるせぇ! 外野は静かにしろ!」

 

残り1発、ラストチャンスと意気込む一夏の見据える先、未だ無傷の的は微動だにしない。

精神統一のため目を閉じていた一夏、その瞳がキッと目標を見据えた瞬間。

 

「面白そうだな、混ぜてもらおうか」

 

一夏の頰ギリギリと掠めた弾が、的をバラバラに粉砕した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「貴様も専用機持ちだな、ならば話は早い。

私と戦え、織斑一夏」

「イヤだ。戦う理由がねえよ」

「貴様に無くとも私にはある」

「......ねえ、これどういう状況?」

「まずい状況」

 

眼前には、肩部の大型キャノンから砲煙をあげる黒いISが空中に立っている。パイロットは言わずもがな、ヴォーデヴィッヒだ。

訓練に来て鉢合わせたか、はたまた最初っから一夏狙いで押しかけたか。

決闘騒ぎだけになるならいいが、

 

「ねえ、アレって......」

「これどうなってるの?」

 

人が多すぎる、こんな状態でドンパチやり始めたら確実に混乱するだろ。

ここはどうにかして丸く収めないと。

 

「私は貴様をーー貴様の存在を認めないっ!」

「また今度な」

「そうそう、この後戦う機会はいくらでもあるんだしここは人も多いからもっと整った場で」

「ならば、戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

瞬間、大型実弾砲が火を噴く。

狙いは白式、あんな紙装甲で当たったら、

 

「伏せろ一夏!」

「一夏っ!」

 

頭をひっ摑んで地面に叩きつけると同時に、シャルル君がシールドで上手いことカバーしてくれた。とっさのことなのに開いた右手にはカノン砲を呼び出してるあたり流石の練度。

 

「ドイツの人はビールだけじゃ無くて頭もホットなのかい?」

「はん、フランスの第二世代機(ガラクタ如き)で私に勝つつもりか」

「量産化のメドも立たない第三世代機(ポンコツ)よりは動けると思うけど?」

 

言葉の応酬、睨み合う2人。

結局のところ担当の先生が駆けつけて来るまでこの睨み合いは続いた。

 

 

その帰り、更衣室で着替えていた時のこと。

 

「なぁ、なんでシャルルは俺たちと着替えたくないんだと思う?」

「突然藪から棒に、なんだよ」

「いや、男同士だから仲良くしようぜ、って感じで誘ってみても頑なに断られちまってさ」

 

裸の付き合いって言うだろ、とさも当然のように言ってのける一夏。無知は悪ではないとはいえそれを他人に押し付けるのは良くないぞ。

 

「そりゃ、恥ずかしいから見られたくないもんあるんだろ、こんな風に」

 

ISスーツを脱いで、脇腹や腹に走る手術跡を指差してみせる。

「いつ見ても慣れないな、ソレ」

「最初んときはめっちゃ驚いてたもんな。あと心配かけるからみんなには言わない約束、守ってるか?」

「ああ、男同士の約束だしな」

「頼むぜ。

で話を戻すけど、俺はもう慣れたけど最初はもう人に見せんのが嫌で嫌でな。

シャルル君にだってこんな傷だのがあるかも知れんだろ? トラウマかも知れねえし、詳しく聞くのも辞めとけ」

「おう......そんな事考えた事もなかった」

 

シャルル君の場合、ああだから着替えたくないんだろうけど。

 

「ところで一夏よ」

「なんだよ成政」

「賭けの約束覚えてる?」

「飯奢るってアレか?」

「ヨロシク」

「はぁ?! アレはノーカンだろノーカン、あんな事があったんだから」

「じゃ数学のノート写させて?」

「また内職してたのか......」

「いいじゃんか内職のひとつやふたつ。先行ってるぞ」

「あ、一夏君ちょうどいい所に」

「ああオイ、ったく。

数学のノートは机の上だからなー!」

「サンキュー!」

 

なにやら一夏に用事があるらしい山田先生とすれ違う形で、俺は更衣室を後にした。

そろそろ学年末考査、赤点取ると部活が潰れるから頑張んないとな......特に数学。

山田先生で緩いからって内職してたら置いてきぼり食らったし、高校なめたらいかんな、うむ。

 

 

◇◇◇

 

 

 

「こーれーで終わりっ!」

 

最後の公式を写し終えてガッツポーズ、練習問題は別として終わり。いやー、長かった。

 

「もう少し静かにできんのか」

「へいへーい」

「貴様つけあがるなよ!」

「黙らっしゃい」

「はぐわっ!」

 

絶対零度の目線とワンセットで飛んでくる言葉を適当にあしらい、筆記用具を片付けついでに消しゴムを指で弾いて眉間にシュート、軍人とはいえ女子で小柄、体重も軽いしあっさり吹き飛ばせる。

......しかし、なんでこれ当たるのに銃は当たんないんだか。昔から兄貴対策にこれだけ練習してたからかな。

 

『えー、そんなのも当たらないのー?ぷぷぷ、ださーい』

 

あのヌルヌルとした動きを思い出しただけで腹がたつ。

 

「貴様ぁ!」

「来いよ軍人気取りが、ナイフなんか捨ててかかって来やがれ!」

 

今日は虫の居所が悪い。

ちょっくら付き合えボーデヴィッヒ!

 

「貴様に日本の柔道の真髄をイタタタタタタギブギブギブ!」

「黴の生えた技術がCQCに勝てるか!」

 

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