〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら 作:通りすがる傭兵
君本名長すぎるんやて......
と言うわけでどーぞ、試合始まるまではもうしばしお待ちを
side 篠ノ之箒
「はあああああっ!」
裂帛の気合とともに剣を繰り出し防ごうとした薙刀を一刀両断、返す刀で胴を薙ぐ。
正確に装甲のない部分を捉えた斬撃は絶対防御を発動させ、打鉄の少なかったSEを全損させた。
『更識簪、打鉄SEエンプティ!
よって勝者、篠ノ之・ローランディフィルネイペア!』
「いい試合だった。薙刀使いとは珍しいものを見た、世界は広いのだな」
「......あり、がとう」
「次は全力で来い」
「......」
「練習することはいいのだが、疲れがたまって本番動きが鈍れば本末転倒だ。
もう少し自分の体調と相談した方がいい。
よく練習して、よく休む。強くなる秘訣だ」
座り込んでしまっていた更識に手を差し伸べ、頭を垂れる。
「ありがとうございました!」
「っあ、ありがとうございました!」
「ありがとーございましたー」
「ダンク ユーヴェル。いい試合だった」
パチパチと誰ともなく拍手が始まり、やがて波がアリーナ全体を覆い尽くす。
「......やはり、勝利とは気持ちのいいものだな」
願わくば全国の舞台でもこの歓声を浴びたいものだ。
控室に戻り、軽くシャワーを浴びて汗を流す。この上に制服を着て観客席に向かってもいいのだが、この人混みの中席を取れるとは考え難い。
素直に次の試合まで待機することにしたのだが、体が昂ぶってしょうがない。そんな時こそ素振りだ。
握った時の木刀の暖かさ、適度な重さ、古ぼけた薄い木の香り、切っ先が風を切る低い音。落ち着く。
『お知らせします、第2試合を5分後に始めますので、出場する生徒の皆様は準備をお願いします。繰り返します......』
「次は、成政と一夏の、試合か、この目で、しかと、見届け、なければ、な」
「そうだね、次の対戦相手になる訳だから」
「ただ、少し、わからないことが、ある」
「何がだい?」
「なぜ成政は、あいつと組んだ、のだ?
あいつは、不正が、嫌いだった、意味のない、暴力も、嫌いだった。
それを体現しようとしたあやつと、なぜ組んだのか......なぜ、私ではないのか」
『ごめん、俺別の人と組んじゃったから』
そう頭を下げられた光景が目に浮かぶ。そして示し合わせたようにロランツィーネが組もうと持ちかけてきた。一発で成政の指示だとわかったがなぜこのタイミングで......
私は、信頼されていないのだろうか。
「信頼されてるさ。だからこそ私に話を持ちかけてきたんだろう」
「ロランツィーネ......?」
「ホウキ、信頼ってなんだと思う?」
「決まっている。あいつなら必ず成し遂げてくれる、勝利してくれる、そう仲間を信じることだ」
「私だって舞台の時は同じキャストや裏方、舞台に関わる全員でいい劇を作ろうと団結し、仲間を信じてベストを尽くす。
君の言っていることとほぼ同じはずさ。
......でも、彼のは少し違う。
彼の信頼ってのはおそらくその人の事をしっかり見ることなんだよ」
備え付けのベンチに座っているロランツィーネが私に座るよう促す。それに従い腰を下ろすのを見計らって、また口を開いた。
「彼は目がいい。だからこそ色んなものを見え過ぎてしまうんだ。実力、調子、対戦相手との相性。そして勝利、敗北の可能性。
その中でも勝利の可能性が一番高い道を選び、提示する。たとえそれが残酷な通告でもね。
見ず知らずの他人なら言わない、信頼するからこそ心を鬼にしてそう言うんだ。
彼は君と組みたかったはずだけど彼のその目が良しとしなかった。結果として私と組むのが一番勝利に近い、そう判断した。
私と組めば
それが、彼の信頼だと思うよ」
「成政の信頼か......」
あいつらしい、そう思った。
変に回りくどく、お節介で、自分以外を傷つけるのを嫌う。お似合いではないか。
「......ならば、私はその上を行こう。
私と組まなかったことを後悔させてみせる」
『第2試合、選手の入場です! 西ゲートからは......』
「だから勝て! 勝って私と戦え、成政ぁ!」