〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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相変わらず畜生ムーブする主人公。
これにカタルシスが存在してるのやら......読者ついてこれない気がするぜよ。


第28話 河南成政は戦いがしたい(Ⅱ)

 

 

『じゃさよなら。シャルル・デュノア』

 

引き金を引き絞って、心の中で別れを告げた瞬間だった。

 

「おおおおおおおおお!!!」

 

目の前を白い流星が駆け抜けていった。

 

言わずもがな一夏の白式なのだが。

じゃあ抑えていたはずのボーデヴィッヒは負けたのか、と思い目を向けて見るとそりゃあもう苦虫を100匹ほど嚙み潰した悔しげな顔をしていた。

肩部の大型レールカノンが随分と短くなっていたので、恐らくは一夏の手痛い反撃を食らってしまったんだろう。あれ撃てんのかな。

 

視線を戻せば(もつ)れ合って倒れている白式とリヴァイブ。ここは今絶好の隙なんだろうけど......

 

「襲わないでね?」

「当たり前だ。全力のアイツを倒してこそ私の力が本物だと示すことができる」

 

その通り。

今襲ってしまったら一夏の全力は引き出せない、不完全燃焼のままで試合が終わってしまうだろう。

それはとてもツマラナイし、互いのためにならない。この試合はタッグマッチトーナメントなんて薄っぺらな言葉では不足するくらい、大切な試合なんだ。

 

一夏の決意の場であり、

シャルルの信念を測る場であり、

ボーデヴィッヒの集大成であり、

俺の......あれ、俺だけそんな理由ない。

まあいいや、2人の成長が見たいために参加してる賑やかしで。

結果がどうであれ、今回ばかりは全員が全員、全てを出し切る試合でないと。

 

「暇持て余すのも勿体無いし、ちょっと寄ってくれる?」

「......何をする」

「作戦会議。コイツの()()()()()()()()、まだ知らないでしょう?」

 

ふと思ったんだけど、アニメとかで戦場とか試合中とか、やたら登場人物が喋るやつあるじゃん。

アレって相手にこんな心理が働いてるのかね、参考になったわ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「うう......」

 

目の前がくらくらする。

視界いっぱいに表示されるセンサーは全部真っ赤っかで、ビービーと煩い警告音を喚き立てている。

えと、確か僕どうなって......

 

「......ル、......ルル、シャルル!」

「......いち、か?」

「おい大丈夫かシャルル!」

 

ボンヤリとしていた輪郭がはっきりしてきて、呼びかけているのが一夏だと分かった。

そうだ、今は試合中で、確か、どうなって......

 

『じゃさよなら。シャルル・デュノア』

 

そうだ、僕は......

 

僕はあの弾丸を()()()()()()()()()()

 

「ごめん一夏......僕は」

「謝るな」

 

有無を言わさぬ口調で一夏は言う、僕の言おうとしたことを遮るように。

 

「謝ったら、駄目だ」

「一夏、でも僕は」

「謝るような事なんて何一つしちゃいないじゃないか」

「違う、違うんだよ!」

 

優しく差し伸べてくれた手を、払いのける。

 

「僕は()()()()()()んだよ!

謝るような事なんかじゃない、それでも足りないくらいの酷い事を、僕はっ!」

 

言った、言っちゃった。

 

この為に頑張ってきたのに。

本番では結局、何も出来なかった。

いつものように、諦めて。

成政の言う通りだよ、僕は何も出来ない。

諦めてばかりで前に進めない、ダメ人間だ。

 

一夏失望するだろうな。

せっかく諦めないって、2人で約束したのに。

 

「約束、したのにっ!」

 

ぎゅ、と胸が締め付けられるように痛む。

殴られても文句は言えない。

一夏が無言で手を上げるのを見て、覚悟して目を閉じた。

 

「謝る事なんてない。それはきっと正しい事なんだ」

「え......」

 

目を開けると、優しく一夏が僕を抱きしめていた。

何が一体どうなっているか全くわからない、なんで、どうして一夏はこんなに僕に。

 

「なんで......優しくしてくれるの?」

「泣いてる女の子に怒るなんて男じゃないさ」

「泣いてなんかっ」

「俺にはわかるんだ。表面だけ見てとかじゃない、心が泣いてるんだよ」

 

白式の金属の腕が背中を優しく撫でる。

まるで幼い子供をあやすように、暖かく。

 

「一歩踏み出すのは怖いもんな。

決断するのは、とっても勇気がいるもんな。

1人じゃ、耐えきれない事だってあるよな。

......だったら、俺が力を貸す。

俺が手伝ってやる。

一歩踏み出すのが怖いなら、俺も一緒に踏み出してやるよ。

決断できないなら、俺がまず背中を押してやる。

1人で耐えきれないなら、俺が守ってやる。

 

だから、諦めるな。

 

1人で抱え込まないでくれよ。寂しいだろ?」

「一夏......」

「俺がお前を守る。だから、諦めるな!」

「うん......うん!」

 

一夏が強く僕を抱きしめる。

少し痛いくらいだけど、これが一夏の決意の強さ。

だったら、僕も応えないと。

震える身体に鞭をうって、僕は一夏を痛いくらいに抱きしめた。

 

IS越しじゃ暖かさは伝わって来ない、金属の 冷たさしか伝わってこないはずなのに、なぜか一夏の白式は暖かかった。

きっとそれは、

 

......一夏の、優しさなんだと思う。

 

 

 

 

「あーあー、テステス。

ボーイミーツガールが済んだかねお二人さん? こっちは待ちくたびれて砂糖吐きそうなくらい暇なんだけど」

 

 

 

......ん?

 

 

「いいいいいいいいいい一夏?!」

 

よく考えたらこんなに一夏が近くいやそれはそれで良かったけども匂いとかすっごく感じたし暖かかったしいや待って今試合中ってことはこれを全部見られてたわけであわわわわ。

 

「......よく考えたら試合中だったな」

 

ほら一夏だって顔真っ赤っかだし、よく考えたらあんなに恥ずかしい事を......うう。

 

「でも、決心はついただろ?」

 

まだ少し顔は赤いけど、真剣な顔でそう言って、剣を構え直す一夏。

 

「そういうところ、ズルイんだから一夏は」

 

一夏には聞こえないように小声で言う。

本当に、君のことが好きになりそうだ。

 

「行こう、一夏。2人で、どこまでも!」

「ああ!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

良い感じに決心はついてくれたようで。やっぱり一夏はヒーローっぽいよな、あんな素面じゃ絶対に言えないようなことスラスラと言っちゃって。あーずるいずるい。

でも、ここぞって時に言えるんだから、やっぱりヒーローだよ。

 

......ただ、恋敵を増やすのは良くないんだけどなぁ、箒ちゃんの恋路がヒマラヤ登山レベルに厳しくなってるんですけどこのトーヘンボク。

 

まあいい、シャルルが立ち直ってくれれば良いのだ。

 

「これで対等に試合ができる」

 

視界の端、表示されている全員の残りSE量に目をやる。普段はそうはならないのだが、こういった競技の時はハイパーセンサーがリンクしてなんやらかんやらしてこうなるのだ。

うーん自分でも分からん......疲れてんな。

改めて確認しよう、うむ。

 

一夏は3割強。

ボーデヴィッヒは7割ジャスト。

シャルルが5割弱。

俺は......2割。うん、知ってた。

 

8割も削れてればIS自体にダメージも通っているものだが、さすが全身装甲、なんともないね!

でも2割なんて吹いて飛ぶレベルの心許なさですし派手に動けはしないわな。

めでたく焔火もオーバーヒートで使用不能だし......誰だ2分も調子乗って引き金引いてたの! 俺か、俺だな! バカ!

 

手札はボーデヴィッヒがプラズマ手刀にワイヤーブレード、そしてAIC(停止結界)

俺が雷切にカノン、そしてとっておきのアレ。

一夏の手札は零落白夜に瞬時加速。

シャルルが武器が山ほど。

 

そこから予想される動きとすれば、基本的な動きはシャルルが牽制(けんせい)して一夏がトドメ、だろうな。最初もそうやって動いてたし、練習していたのがそれと見て間違いはない。

一夏を囮にしてシャルルが決める、て作戦もあるかも知れんが不可能に近い。空間把握能力が高いボーデヴィッヒに奇襲は不可能、それこそ瞬時加速を使わない限りはね。でもシャルルが瞬時加速を未習得なのは知っているからね、だから不可能に近い。

これはボーデヴィッヒにも伝えているから、一夏の雪片に気をつければ負けはないでしょう。

それにこっちには秘策がある。

特に一夏が見れば驚くだろうな、にしし。

いやー、驚いた顔を見るのが楽しみだ。





これって一×シャル√なんじゃあ......(プロットにない)

どーしよ......

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