〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら 作:通りすがる傭兵
な、難産でした......でもこれからの展開も難しいという......
がんばろ
バシバシと火花が散り、装甲を弾丸がかすめ、砂煙が舞う。
大太刀が白い軌跡を描いて煌めき、返す刀で青いプラズマブレードがうなりをあげる。
そこに赤い軌跡を引いた銃弾の雨が迫り、盾の表面で跳ね返る。
そうだ、こんな試合だ。こんな心の踊る、楽しい試合を望んでいたんだ、俺は。
『はははっ』
笑いが止まらない。
「なに笑ってんだよ」
『いやいや、楽しくて、な!』
鍔迫り合っていた雪片弐型を押し込ませ、相手の力を利用して態勢を崩させる。
そこに追撃と左手のカノンを構えるが、ライフル射撃で弾き飛ばされて地面に落ちる。
それをカバーするようにワイヤーブレードが牽制、また仕切り直し。
「戦場に私情を挟むな」
ボーデヴィッヒの手厳しい言葉に、思わず笑いが溢れてくる。
『馬鹿言っちゃいけないよ。これは真剣勝負であって戦場じゃない。
だったら楽しまなきゃ損だろ』
そう、これは真剣勝負。命がけでもなんでもない、軍人からしてみれば遊び。
だからこそ、楽しまないと。
負けても死なない、何度でも同じ相手と同じ場所で戦うことは出来る。
だけどこの戦いはこの一瞬にしかない。一度きりなのは戦場も試合も同じ。だからこそ違う、必ず次がある、だからこの一瞬を楽しもうと思える!
『人生楽しくなくっちゃな?』
「......ふん、行くぞ」
いつも通りに無愛想に飛び立ってしまったボーデヴィッヒ。彼女がこの楽しさを理解するにはまだ時間がかかりそうだね。
(とはいえ、やはり勝たなきゃ面白くない)
ガッチリ連携訓練を積んでる2人と、片側が片側に無理やりに合わせ、その片方が気まぐれに動く。
どちらの事を『コンビネーション』と言えばいいのかは一目瞭然だろうな。
ひとえに俺たちが2人相手に引き下がれているのは、コンビネーションの練習不足とボーデヴィッヒの個人技の高さ。もしタッグマッチトーナメントの開催が1週間遅れてたら確実に負けていた自信があるね。
とはいえ現実は一夏とシャルルのコンビは付け焼き刃以上素人未満。他人以上親友未満がなんとかしてコンビネーションの形を取り繕ってるって感じ。
こっちは適当に作った面識のない2人1組なのでもっとひどいけど。
『しかしどうにかこうにか食い下がれるとはいえ、この展開は
一夏は着々と自分のSEを食い潰してるし、俺のSEはめでたく1割を切った。シャルルも銃の残りが心もとなくなり始めたか射撃時間が減ってるし、ボーデヴィッヒの疲れも無視できない。
このまま睨み合いが続けば、誰かが潰れる。
バランスが崩れてしまえばそこから敗北までは一直線だ。
だからこそ、全力をまだ出せる今のうちに決着をつける。
「こんな楽しい試合を、呆気なく終わらせるなんてもったいないからね」
「わかってるじゃんかシャルル」
「えへへ」
「そろそろ、
『小粋な言い回しするねェ』
「副官に教えてもらった。決着の時はこう言うのだろう?」
始めてボーデヴィッヒが笑った。
それはうら若き乙女が見せるようなもんではなく、狼のような肉食獣が獲物を前に昂ぶった時に出る笑み。
どう猛な、しかし初めて見た彼女の感情表現。
『ボーデヴィッヒ、アレで行こう』
「ふん、乗ってやろうではないか、合わせろ」
『合点承知!』
チャンスは一度、タイミングはシビアってもんじゃない。ほんと、博打は好きじゃないのに、なんでやりたくなるんだろうね。
右拳に力を込める。
前に立つボーデヴィッヒの顔は伺えないが、確実にあいつは笑ってる。
そして、ボーデヴィッヒを挟んで目の前にいるであろうあの2人もきっと。
「来るぞ」
ボーデヴィッヒの言葉に合わせて今まで抑えていたハイパーセンサーを全開、レーゲンに半ばハッキングする形でアンサングの得た情報を流し込む。
(成る程、最後は基本と同じか)
一夏が突っ込み、その背後のシャルルが待機、一夏が敵を止める、又は回避させた瞬間にシャルルの射撃で仕留める。
何度となく見てきた光景。
解析など、とうの昔に終わっている!
「はあああああああああああ!」
最後の命を燃やし尽くすようなまでの、白式の吶喊。背面ブースターを目一杯ふかし、過剰なまでに零落白夜を輝かせる。
「この時を......貴様を倒す時を、待ちわびたぞ織斑一夏!」
「勝つのは、俺だ!」
キュインと短く音が鳴り、レーゲンのブースターが瞬時加速の態勢に入る瞬間!
『
右腕を起点に作られた力場が空気を歪め砲を形作り、撃つ。
そのエネルギーは余すところなくブースターに吸い込まれ、普通のとは比べもののならない速度を発生させる!
「お前が教えてくれた事だぜ、一夏!」
「
圧倒的速度で打ち出された黒い流星が、白い翼を斬りふせた。
バシバシと装甲と帯電させ、解除の兆候を見せ始めながら落ちていく白式。
「や、やった......」
「まだ残ってる!」
倒した時に生まれる一瞬の空白、そこをシャルルが見逃すはずもなかった。
「まだ、終わってない!」
『瞬時加速だって?!』
「ちいっ!」
距離をとっていたシャルルが距離を詰める。 瞬時加速を使えるとは予想外だが、あの距離からならボーデヴィッヒが反応できないわけない!
「終わりだっ!」
腕を振りかざして突っ込んでくるラファールを停めようと両手をかざし、AIC起動態勢に入るボーデヴィッヒ。よし、間に合う!
ガイン、という金属音を立てて仰け反るレーゲン。
「6発目。これで飯おごりだな、成政」
白式の手には、白い煙をあげる俺のカノンが。
『んなのありかよ!』
「やるときゃやるのさ」
「貴様ぁああああああああああ!」
悔しさを滲ませて吼えるボーデヴィッヒ。
......これはもうチェックメイトだな。
集中力を乱された以上AICは不発。
そして捨て身の特攻とは思い難いシャルル。
「とっておきをプレゼントしてあげる!」
「
がっしりと組み付かれた以上防ぐ手段は無し、そこにとっておきの1発か。
『完全に負けだな、こりゃ』
カノンとは比べものにならない衝撃音が轟き、空気を震わせる。それが2発、3発も。
「これで......おしまい!」
「ぐうっ、があああ!」
......全力の右ストレートも追加とかオーバーキルすぎんねんやろ。
『ところでアンサング。盾殺しって何?』
《検索完了。
ある程度の太さを持った金属の杭を、火薬又は電磁加速などし、音速に近い高速で敵に衝突させる兵器》
『杭の太さは?』
《シャルル・デュノア搭乗、ラファール・リヴァイヴカスタムⅡに装備されているものは、直径20センチ》
『にじゅっ?!』
「さあ、あとは成政だけだね!」
一夏は白式がダウンし、ボーデヴィッヒは行動不能。
残りは一対一。双方ズタボロでどう転ぶかわからない......けど、リヴァイヴ右腕、盾の下に隠していたらしい盾殺しから湯気が上がっているのを見てしまった今じゃ、
『降伏はアリですか......?』
「諦めちゃダメだよ?」
ねえ、もうほとんど決着ついたようなもんだし帰っていいかな......。
「 ダ メ 」
やだこの子怖い。
「......さあ、観念して?」
『あの......優しくしてくださいます?』
「やだ」
見たことのないような満面の笑みでゆっくりと近づいてくるシャルル。その手にはボーデヴィッヒを今さっき沈めたばかりの盾殺しが準備万端でスタンバイしている。
「色々言ったんだからさ、覚悟は出来てるよね?」
『そりゃ謝る覚悟は出来てるけどぶっ飛ばされる覚悟はまだできてーー』
「して?」
『はいします』
とりあえず歯ぁ食いしばって腹筋に力入れときゃ......
『やっぱ無理です』
成政 は 逃げ出した!
「逃がさないよ?」
しかし 回り込まれて しまった!
『......ねえ、なんでそんなビュンビュン瞬時加速使えるので? 俺のデータじゃ使えないって聞いてるんだけど』
「一夏に前々から教えてもらってたし、あとは見て覚えるだけだったしね」
『インチキ才能もいい加減にしやがれ』
しゃらり、と雷切を抜いて戦闘態勢を取る。それに倣ってシャルルも姿勢を低く、右腕を引いて態勢を作る。
『俺は抵抗するぞ......死にたくないからな』
「大丈夫だよ? ISには絶対防御があるんだから。けど多少の衝撃は通るんだよ?」
『知ってるから死にたくねえって言ってんのさ!』
「ふふふ、知ってるなら良かった。さあ、逝こ?」
『字が違うくない?!』
ジリジリと近寄るシャルルから一定の距離を取り続ける。今でもシャルルは人懐っこい笑みを浮かべてるわけだけど、その裏にあるのは真っ黒な殺意というか恨みというか、ブラックな感情がどっさりと。
そんな状態で殴られてみろ、死ぬわ!
『助けてらうえもん!』
「パートナーをネコ型ロボ扱いするなよ......」
『だったら代わってよ一夏ぁ!』
「遠慮しとく」
『裏切り者!』