〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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コラボストーリー3つ目ぇ!

他作品が忙しくて手がつけられない......執筆時間さえ確保できれば終わりまでのイメージはできてるのにぃ。


第43話 名探偵、それとも迷探偵?

 

 

 

 

 

 

「まあ、本職はメカニックだしそんなことは他のみんなにお任せしたいんだけど。ノリで行っちゃったんだから仕方ないよね!」

「脱ぐのに何故衣装を着るのだ......」

「形から入るのも大切だよん」

 

いそいそと衣装を脱ぎ出すリッカ。流石に制服の上にコートは暑かったらしい。まして今は8月上旬、夏真っ盛りの時期である。

 

「そんなことはどうでもよくて、まずは私の推理を聞いてもらおうかなっ」

 

私の推理はこう! とリッカは自分の推理を語り出した。

 

 

「もうひとりのほーちゃん......紛らわしいし篠ノ之さんと丁寧に呼ぼうか。

 

きっかけは10年前、束さんがISを世界に発表した日だね。ほーちゃんから聞いたけど、要人保護プログラムってのがあったんだってね。それで家族はバラバラになってしまった。

 

そこを狙う組織が居たんだよ。

篠ノ之さんを誘拐し、なんやかんやして親さんとほーちゃん、そして束さんの記憶を消し篠ノ之さんの存在を抹消した。

そして今、なんやかんだで篠ノ之さんの記憶が戻り、姉妹の再会をと願った。それに感動した心やさしき2人が手引きしてかくかくしかじかでめでたく篠ノ之さんは組織から脱走、そしてアレはこうなって今に至るという訳なんだよ!」

「......」

 

話を聞いて、箒は思った。

 

「お前はなにを言っているんだ」

「あれぇっ?!」

 

本人にとっては渾身の推理だったようで驚きを隠さない。だがこの推理は矛盾だらけだ。

 

「まず第一に、何故私なんだ。そこになにかしらの利用価値があるから誘拐するのだろう?」

「そこは、アレだよ。身代金要求とか......」

「存在を消しておいてか? 見ず知らずの他人を人質に取っても金は取れんだろう」

「うぐぅ!」

「それに人の記憶など消せるものなのか?

お前はなんだかんだと言って居たが」

「なんだかんだは......」

「なんだかんだは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだかんだなんだよっ、ほーちゃん!」

「......」

「二度もぶった!」

 

やはりふざけるリッカを遠慮なく叩くとため息をついた箒。

 

メンインブ◯ック(M I B)とかでよく記憶消してたじゃないか!」

「映画と現実を混同するな。それに宇宙人などいない」

「むむぅ......」

 

ふてくされるリッカ、とはいえ同一人物が2人存在するというありえない状況、混乱するのも無理はないだろう。

 

「そもそも何故私が2人もいるのか......」

「同一人物が2人......閃いた!」

 

ぴこっと頭の毛が跳ね、思いついたように指を鳴らす。リッカは次こそ間違いないと息巻いて自分の仮説を語りだす。

 

「ふっふっふ、謎は全て解け」

『あ、テープ切れた。

巻き直すから待っててくれる?』

「一旦CM入りまーす」

「えええええええええええええええ!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「CM? そんなもんねえよ。ただの遊びだ、あ、そ、び!」

 

 

 

◇◇◇

 

『よし、準備オッケ』

「いきまーす、3、2、1、キュー」

「謎は全て解けた!」

「......聞かせてもらおうか」

 

仕切り直してもう一度、リッカは己の推理を述べはじめた。

 

「まずはじめに同一人物が2人ここに存在する。というところから詰めていこうか。

ただのそっくりさん、というには多分違うだろうしナシ。

だったら、これはもうアニメとかゲームとかみたいな面白い事が起きてるに違いなんだよ。

ドッペルゲンガー、多重人格、クローン、はたまた別の世界からの旅人。

SFじゃよく使われてる言葉ばかり。

 

でも、その中でも可能性は絞られてくるんだなコレが」

 

リッカは箒の方へ近づくと突然手を取り、手のひらのあたりをまじまじと眺める。

 

「まずはじめに、篠ノ之さんの手はマメだらけ。ほーちゃんも似たような感じだったし、剣道やってるんでしょ?」

「ああ、そうだ」

「そこでクローンの線は消えるね。同じ肉体は作れても、マメやなんかは習慣でつくものだからね。再現できないんだな」

 

そしてふたつめ、とリッカが目を落としたのは箒の手首にある鈴をつけた赤い飾り紐......紅椿の待機形態だ。

 

「紅椿は束さんが腕によりをかけて作ったほーちゃん専用機。それと同じ物を作ることができるのは束さん本人を除いて他にいない。

つまりぃ、紅椿が2つ存在するなんてことはありえないんだよ......同じ世界ではね」

 

手を離し、その場でくるりと一回転したリッカ。自信ありげな様子に対し箒は彼女が何が言いたいのかさっぱりわからない。

 

「まどろっこしいのはいい、早く本題に入れ」

「もう、せっかちだなぁ。戦隊モノの変身タイムとか合体タイムを邪魔しちゃいけないのがルールなんだから」

 

そしてみっつめ、とリッカは指を立てる。

 

「篠ノ之さん、あなた」

「......私?」

「そう、あなたの存在で私は事件の真相に気がついたのだ!」

 

ビシッと自分に指を指すリッカに困惑した顔で返す箒。

 

「ぶつかった時にメガネを探してくれた律儀な性格といい、妙にガタイがいいところといい私をしょっちゅう担ぎ上げるところといいそっくりなんだよね!

 

妙に堅苦しくて、ガサツで優しい。

そう思うでしょ、別の世界の()()()()()のほーちゃん」

「もう、ひとり?」

「そう、ほーちゃんは私の知るほーちゃんであって、少し違う。つまり隣の世界......俗に言う平行世界っていうのかな。もしあの事件が起きなかったら、もしあの人がいなかったならば。

 

そんな()()()が引き起こした世界線からやってきた奇妙な旅人。

私の推理はそんなところかな」

「大正解だ」

 

パチパチと拍手の音が聞こえる。

その方を向くと、バリケードに腰掛けるオータムが手を叩いていた。

 

「そこの嬢ちゃんの御察しの通り、ここはあたしらの世界じゃない。

SFなんかで見かける平行世界、そんなところだろうな。ちなみに証拠はあるぜ」

 

オータムは懐から写真を取り出すと、2人の方へ投げ渡す。それを手に取り見た箒はその不思議さに首を傾げた。

 

その写真はなんて事は無い集合写真。

ファンタスの面々と一年の専用機持ちがピースサインをしてカメラに笑みを浮かべている写真で、その中には箒も入っている。

 

だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「客観的な証拠にゃ欠けるが、お前にとっちゃそれで十分だろ?」

「この写真、いつ......?」

「5月、ちょうどゴールデンウィークあたりだったか? ちょいと兼政のツテでな。

 

それが次に来た途端手のひら返しされたのは驚いたね! なんせテロリストと来たもんだからな驚きだよ、なっはっはっはっは......ハハハ、冗談じゃねぇ......」

『......ほら、涙拭けよ』

 

グス、と半ば嘘っぽく涙を浮かべるオータムを猜疑心に満ちた目で睨むとすぐに嘘泣きをやめ、面をあげた。

 

「真相はそこの嬢ちゃんが解明してくれたんだし、あとは状況を説明して誤解を解いてから兼政を探すだけだ。あいつが呼び出したんだ、よっぽどの理由があるにちげえねえよ」

「だが当てはあるのか?」

『無いな。ケータイも電波が届かん。

素直に聞いて回るしかあるまいて』

「ま、問題があるとすりゃ......お前が直情バカって事だな」

 

はあと大げさに肩をすくめた仕草を見せるオータムに対し箒はすぐに噛み付いた。

 

「バカとはなんだバカとは」

「お前も大概だが、それはあっちも同じなのさ」

 

何かに気がついたようにオータムはバリケードから飛び降りると、軽く足を開き拳を構えて戦闘態勢を取った。Mも同様にカメラをしまい、自分の専用機を展開している。

 

「......さあ、第二ラウンドか?」

 

バリケードが力づくで破られ、コンクリートが粉々に砕かれ粉塵が舞い上がる。その煙を赤い輝きが切り裂き、姿をあらわす。

 

「さあ、リッカを返してもらおうか! 偽物!」

「......会話は、無意味そうだな」

 

意を決して、同じく専用機を展開して刀を構える。

 

「面白い、機体まで模倣しているとは」

「私は......負けんぞ!」

 

箒の前に対峙するは紅椿。

 

「沢山の人を不幸にした罪、ここで償ってもらう。行くぜ、ゲッター!」

「そっちがその気なら、やってやろうじゃんよ」

『全く、お前といると厄介ごとばかりだ』

 

オータムとMの前に立ちはだかるは赤い魔人。

 

戦いの狼煙が、今まさに上がろうとしていた。

 

「......あれ、私は?」

 

当事者一名(立花リッカ)を置き去りにして。

 

 

 

 

 


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