〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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サブタイトルに特に深い意味はありませぬ。

というわけでコラボストーリー4話、どうぞ!

最近別作品で忙しい上に学業ががガガガ。
とりあえず完結までが頑張りまする......


第45話 鏡合わせの真実

 

 

 

本来日本刀はあまり打ち合いに適さない獲物だ。なにせ、金属製とはいえ刃先は紙よりも薄く、脆い。まかり間違って岩や同じ日本刀にぶつければ使い物にならなくなる。

そして、斬るという行為は酷く力を使う。素人が巻藁に切りつけるだけで刀が歪む、という逸話すらある。

その程度の貧弱な武器が打ち合えばどうなるかは言わずもがな。

 

だが、そこは天災。

日本刀に対する敬意や憧憬を微塵も持ち合わせていない。ただ、妹が日本刀を好むからとこの武器を象っただけであり、彼女の作った武器は日本刀に()()()()()()()()でしかない。

 

というわけで。

 

現状、彼女たちは刃こぼれ歪みそのほか諸々の些事を蹴っ飛ばし、時代劇(フィクション)さながらの大立ち回りを演じているのである。

 

 

 

鈍い金属音が響く。

白刃が唸りを上げる。

火花が弾け飛ぶ。

 

双刀が煌めき、二刀が切り返す。

 

「なんの、この程度!」

「チェストォ!」

 

(剣技はこちらが上。そして同じ篠ノ之流、相手の技は読みやすい)

 

「そこっ!」

「ぐ、うっ!」

 

際どく突き出された切っ先をかろうじて身体を逸らして躱す。お返しにとこちらも横薙ぎを繰り出すが、剣身を差し込まれ逸らされる。

 

(だが、何故......何故だ!)

 

「ぜあっ!」

 

同じ顔、同じ声、同じ剣術。

 

なのに何故か、どうしてか。

 

(何故......勝ちへの道筋が見えない!)

 

篠ノ之箒は、ギリギリと歯を噛みしめた。

 

被弾は双方まだない。前提条件として同じ紅椿を使用しているためSE量も同じ。

武装もなにもかも、全ては同じ。

そのはずなのに、彼女らの間には決定的な差があった。

 

だからこそ、箒は勝ちを見出せない。

 

「くっ、この!」

「隙あり!」

 

少し上体をそらして振りかぶったところに、一閃。箒の脇腹に鈍い痛みが走ると同時に、視界の端にSE残量の警告が現れる。

 

拮抗していた状況が崩れる。

 

心理状態のバランスが壊れる。

 

たとえ自覚はなくとも、目には見えなくとも、箒は確実に焦り始めていた。

 

 

◇◇◇

 

 

同じ時、図らずも戦闘を始めていたオータムとM。目の前の相手をすぐに倒して箒と合流しようという算段だったが、思惑を外れ攻めあぐねていた。

というより、逆に押され始めてさえいた。

 

『こいつら、かなり手練れだ』

「デカイヤツの隣の、更識の妹の方だっけか? そっちもかなり食らいついてくるが、あのデケーのに乗ってる野郎は、初めてやり合うがこいつは......何となくわかるわ。

たぶん実戦慣れしてる。油断すんな」

 

目の前にいてISをまとっている2人の男女、それぞれを見ながら実力を評価する。それ程までに彼らの実力が存外に高かったのだ。

 

「しゃくだけど、お褒めの言葉どうも」

『へっ、あんたらにそんな風に言われるたあな。ちょっと意外だったぜ』

 

言われた男女のIS乗り、更識簪は険しい表情だが冷静に答える。

男の方も全身装甲(フルスキン)のフルフェイスのヘルメットのような、ロボットの顔のような外観からはうかがえないがが不敵な笑みを浮かべそれぞれ答える。

しかし、その内心ではどうか?

 

(けどやっぱ一人乗りのゲッターGだと、いつものパワーが出にくいな)

 

フルスキンのISに身を包む男、巴武蔵(ともえ むさし)は内心でつぶやく。

彼が今身に纏うIS、名をゲッタードラゴンというのだが、現在本調子とは程遠いのである。

 

そもそもこのゲッタードラゴンことゲッターロボG、3つの機体が合体し3人の力を合わせ様々な形態に変形するのが持ち味のロボットなのだ。

それは逆に一人でも欠ければパワーダウンしてしまうという欠点の裏返しなのだが、武蔵はゲッターチェンジ、つまりゲットマシンへの分離・合体・変形の機能をオフにし、溢れた分の出力を回してなんとか出力を補っていた。

しかしゲッターの特色の変形、ゲッターチェンジを使わなければ勝てないような相手には、他の2人のパイロットかあるいは一人で他の形態に切り替えて戦わなければならない。

 

前者はゲッター本来の運用法で問題ないのだが、後者は先の通りパワーダウンしてしまう為、武蔵は機体内のISコアとは別にあるゲッター炉心の出力を臨界ギリギリを保ち続けるという、下手したらメルトダウンを起こしかねないような綱渡りを何度かしてきたのだ。

だからこそ、普段はそんな無茶をさせんが為に同じチームの一員の箒や簪らに支えられ、あるいは一つの形態に絞って運用している。

そしてセカンドシフトしてゲッターロボからゲッターロボGへと進化したからこそ、一人乗り状態でもやはり落ちるが、それでも3人乗り状態の旧ゲッターよりは上であり、武蔵の実力も相まって第3世代ISと互角かやや上回る性能を発揮しているのだ。

 

だからこそ武蔵は今、「今はちょい押してるかもだけど、それだけじゃいけねえか?」と焦りすらも感じていた。

それだけではなく、以前に彼女らを見たのとは違う、妙な違和感にも戸惑っていた。

 

(なんかこう、あくどい感じがしないんだよなぁ。こう、親戚の面白い人って感じの雰囲気が)

「わりいけど、こっちもやる事があるんでな。片付けさせてもらうぜ!」

 

考えてる暇を与えないとばかりに、オータムのアラクネが距離を詰め。いくつもの装甲脚を掲げて突進してきた。

それに援護するかのように、Mもけん制しようとライフルを構える。

 

『ちいっ、考えてもしゃあねえか!』

 

ぎりり、と歯ぎしりをした武蔵はドラゴンの左肩からもう一本のトマホークを取り出し構えた。

その両手のトマホークで幾つもの装甲脚を受け止め、弾き飛ばし。切り払って対処し、仕切り直そうと後退するが、

 

『隙を見せたな!』

「武蔵さん、まだ来る!」

 

Mと簪の叫びで武蔵はハッとなった。見ればオータムが下がったのと入れ違いに、Mの操作するビットが襲いかかる。

まずい、不意を突かれたか。

このままではまずい状況と見た武蔵の次の行動は、

 

『こうなったら......オープン・ゲット!』

 

『んなっ、なんだと!?』

「分解なんてアリかよっ!」

 

ゲッターを3機のゲットマシンに分離させ、緊急回避。バラバラになった一瞬のち、レーザーの雨が空間を通り抜けていった。

これにはMやオータムも驚き、意表を突いたつもりが逆に意表を突かれた形になった。

その間にも、赤い戦闘機のドラゴン号、青い戦闘機のライガー号、黄色とオレンジのポセイドン号の3機は合体の陣形を組みつつオータムの後方へ。

 

『簪、あの手で行く!合わせろ!』

「了解、前に言ってたあの手を......!」

 

武蔵はポセイドンから指示を出し、それに答える構えの簪。

やがてポセイドン号を先頭に合体に入る。

 

『チェーンジ・ポセイドン!スイッチオン!』

 

武蔵と簪が声を揃えて高らかに叫ぶと同時に、ガシンガシンと音を立てバラバラだった機体が変形し組み上がり、一つの形を成す。

 

振り返ったオータム達の目に飛び込んできたのは、

 

「変形合体とかまじかよっ!?」

『面妖な......』

「たしかに、客観的にみるとそうだよね。

だからこそロマンが溢れる、燃える、昂ぶる、熱くなれる!」

『コイツがゲッターの真骨頂、ゲッターチェンジよ!』

 

ゲッターの変形した姿、名付けてゲッターポセイドンである。

 

『コイツで決まりだ、ゲッターサイクロン!』

「ビックリメカも大概にしやがれ!」

『......不味い、オータム!』

 

胸部周りの装甲を開き、内蔵されたプロペラで竜巻を巻き起こすゲッター。ISをよろめかせるほどの暴風に思わず2人の足が止まる。

 

『この瞬間を』

「......待ってた!」

『「ミサイル、全門斉射!」』

 

ろくに回避行動も取れないオータム達にミサイルは次々に命中、爆炎に包まれる。

 

『どうよ、これが俺たちのコンビネーション!』

「名付けて、サイクロン戦法」

「......けほっ、もうちょい捻りやがれ......」

『右に......同じく......』

 

ミサイルの猛打を浴びた二人は、パタリと地面に倒れ伏した。

 

 

◇◇◇

 

 

 

(何故、どうして!)

「やあああああっ!」

 

高い金属音が響く。

 

(同じはずなのに!)

「はああああああっ!」

 

刀がぶつかり合い火花を散らす。

 

「どうして、ここまでの差がっ!」

 

同じ条件、同じ機体、同じ実力。

 

その前提条件を捩伏(ねじふ)せ、もう一人の箒は箒を圧倒していた。

かろうじて鍔迫り合いに持ち込む箒、だが状況は好転しないまま。

少しずつ押し込まれる。圧倒される。

もはや敗北は、時間の問題になっていた。

思わず叫んだ箒に、笑みすら浮かべて、

 

「どうして、だと?」

 

もう一人の箒が答えた。

 

「決まっているさ」

 

その真っ直ぐな瞳で。

 

「簡単な事だ、誰でもできる」

 

その強く、逞しい心で。

 

「友を護るためならば、どこまでも強くなれる! それが私だ!」

 

 

 

 

 

切っ掛けはただの幼い約束だった。

私はそれに縋り付いてきた。

アイツが目の前から消えて、約束が風化して忘れ去られてるかもしれないものに、目をつぶってしがみついてきた。

 

ある日、アイツが戻ってきた。

手を伸ばして、声をかけてくれた。

 

だからこそ私はまた立ちあがれた、だからこそ私は私でいられたのだ。

 

それはもう過去の話。

 

差し伸べてくれた手は消えた。

言葉をかけてくれた姿はもういない。

また、約束が残るばかり。

 

「お前には友がいて、私にそれはない。

羨ましいよ、お前が」

「......なにが言いたい」

「だからこそ、だ」

 

私には何もない。

 

守るべき友を失い、

 

その約束を(けが)し、

 

それでものうのうと、生きている。

 

許せない。

 

お前は私、私はお前だ。

でも何故......何故お前だけが幸せで、何故私だけがこうならなければならない。

何故成政が死ななければならないのだ。

 

許せない。

 

許せない、許せない、許せない。

 

許してなるものか。

 

私は、私を許さない。

一生、私は約束を追いかけ続ける。

それが私にできる償いだから。

 

だから、

 

「お前だけは許してなるものか、篠ノ之箒!」

「本性を現したな!」

 

目を見開き、全身に力を漲らせ、刀を握りしめて吼える。

心がぐずぐずに崩れていく気がした。

そうじゃない、と一片の良心が私の腕を掴む、だが私はそれを振り払った。

 

1ヶ月前のあの日、私は死ぬべきだった。それが何の因果か1ヶ月も生き延びていた、ただそれだけ。与えられた恩赦()は、十分に受け取った。

 

「消えろ、消えてしまえ。お前()は生きている価値など無いのだから!」

 

答えろ、紅椿。

私の罪を、裁く力を寄越せ。

 

 

 

単一能力《ーーーー》、起動します。

 

 

なにかがカチリと切り替わるような音がして、紅椿が唸りを上げた。

 

力が湧き上がってくる。

全身からエネルギーが溢れるのを感じる。

その全てが、相手を倒せと叫んでいる。

だが、間違った力なのだろう。

 

聞こえる警告音は紅椿が苦痛に叫ぶ声。

全身を削り取るようなこの痛みは、私の力の限界以上を引き出している証左。

 

「この土壇場で二次移行だと......!」

「違う、そうではない」

 

この力は、間違っている。

正当な成長でもなく、進化でもない。

これは破滅への一本道。

自らを生贄にした分不相応の力の代償。

自分の身を削る裏技。

操縦者も機体もボロボロにしてしまう暴走に過ぎない。

 

だが、一撃振るうには十分すぎる力!

 

「はああああああああああああっ!」

 

感覚を研ぎ澄ませろ、限界まで振り絞れ、

神経を指先まで尖らせろ、一瞬を見逃すな。

 

「「今!」」

 

奇しくも、叫んだのはほぼ同時。

 

互いを弾き飛ばし、空中を踏みしめて、

渾身の、右上から左下への振り下ろし。

繰り出す技も、タイミングもほぼ同時。

 

「「ぜあああああああああ!」」

「その戦い、ちょっと待ったなんだよっ!」

刀が埒外の力に阻まれ、強制的に停止させられる。

 

「危ない危ない、同じ人で殺し合いとか洒落にならないし。あと折角のコラボなんだし? もうちょい友好的にいかないと。そう思うでしょ?」

 

両者のちょうど中間地点。足場もないのに宙に浮かぶその人影は、苦笑いしながら二人に笑いかけた。

エプロンドレスを身に纏い、頭のうさ耳をぴこぴこと揺らすその人物。それを箒は、いや箒たちはよく知っていた。

 

「「ね、姉さん!?」」

「御名答、みんな大好き束さんだよー。

ところで箒ちゃんが二人いるとか幸せ空間すぎるんだけど。素敵、抱いて!カモーン!」

「......私の箒ちゃんはやらないよ。というか()()()()()は考えなしなんだね」

「やらない後悔よりやる後悔。最近できたモットーなんだよね」

「ふーん、ま、興味ないけど」

 

しかも2人。

遅れて上空から降ってきたもう1人の束は不機嫌そうに頭をかいて、赤椿の装甲板の上に立った。

 

「それで、これからどうするの、私」

「そうだねっ。じゃあ答えあわせしないと。そうでしょ、かーくん?」

「ああ、ドッキリの後はネタバラシしないと」

 

同じく上空から、音もなく着地する男。

 

「......お前は」

「ども、今回の黒幕改め企画担当、河南兼政です」

「成政のお兄さん......」

「いつか来ていたテレビ局の人?!」

「並行世界なんて面白いものがあったから、つい、ね?」

 

悪びれる様子もなくカラカラと笑う兼政に、束はため息をついた。

 

「だいたい全部こいつが悪いんだよ」

「そいつは結構、でも君ら共犯だから道連れだよ?」

「共犯? 拉致って車に押し込めて連行する事のどこが共犯なんだよ説明してみろ!」

「番組に出演する時点で全員協力者。

協力者と共犯はイコール、いいね?」

「んなわけないだろミソカス野郎バラすぞ」

「あっはっは、怖い怖い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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