〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら 作:通りすがる傭兵
更新速度がた落ちで本当に申し訳ない。
というか他作品にうつつを抜かして申し訳ない。
武道場に急行した一同を待っていたのは、
「ヘイ一夏、ワンツー!」
「ワンツー!」
「サン、シー!」
「サン、シー!」
「ジャブ!」
「ジャブ!」
「からの」
「回し蹴りっ!」
「そうだ、いいぞ一夏ぁ!」
「うっしゃあ!いっくぜぇ!」
スパーリングしている一夏と成政だった。
「「なにやっとるかお前は!」」
「ドロップキック!?」
「なんで俺までっ!」
箒2人のツッコミがわりのドロップキックを喰らいきりもみ回転で吹っ飛ばされる2人。
「ナイスシンクロ、さすが同一人物」
「さっきまでの感動を返して......」
「うーん、なんかギャグっぽくなってきた」
呆れ半分驚き半分の外野をよそに箒は2人を正座させると、腰に手を当てガミガミと怒鳴りだす。
「全くお前という奴は、そんな事だろうと思っていたが、思っていたが!」
「まーまー、そうカッカしないでよ」
「怒らないことが出来るわけないだろう! このような事態なのにどうして落ち着いてられるんだお前は!」
「別にスポーツできれば問題ないっす!」
「お前という奴はー!」
成政の襟首を掴んだかと思うと思い切り揺すり出す箒。成政が止めようと手を叩くが、騒ぐ箒に届くはずもない。
「だいたいお前という奴はいつもいつも!」
「ストップストップ、成政くんが泡吹いてるから、今度こそ死んじゃうからぁ!」
◇◇◇
「なるほど、だいたい状況は理解した」
束の説明に頷く成政。若干納分からない部分はありはすれ、大筋は理解できたようだ。
「ところで、なんでお前は死ぬような目にあったんだ? ISに乗ってるんならそんな事滅多にないだろ」
そこで武蔵が疑問を呈する。苛烈な戦場を戦い抜いた自分はともかく、平和らしい並行世界の人間、しかもISに乗っていた人間がそこまで追い詰められる理由が浮かばないのだ。
「話せば長くなるね」
「構わん、私も気になるしな」
「右に同じく......」
「私も気になるかなっ」
もう1人の箒や簪、リッカも気になる様子。それを見てつまらない事だけどと前置きして成政は口を開いた。
「7月の臨海学校で軍用のISが暴走してね、俺たちIS学園の専用機持ちで対処する事になったのさ。
そこで駆り出されたのは一夏と、ちょうど束さんに専用機を貰った箒。ものすごく嫌な予感がするもんだからこっそり付いて行ったら、案の定追い詰められてたって訳」
「それで?」
「2人に攻撃が行かないように前に出て足止め。そんで俺には実力もないし、ある程度時間を稼いでダメ元で自爆しろって言ったら......そっからは覚えてないけど、箒ちゃんがピンピンしてるんだから上手く行ったんだろうね。良かった良かった」
なんでも無いように言ってのける成政。
だが、
「そいつは、本気で言ってるんだな?」
巴武蔵は、それが許せなかった。
「簡単に、命は投げ捨てるもんじゃねえぞ」
「俺だって死にたくは無いさ。でも、箒ちゃんと俺とで命を天秤にかけるとすれば俺の方が軽い。ましてや一夏の分も乗ってたんだ。どうすればいいかなんて一目りょう然」
「ふざけんな! 命はそんな軽いもんじゃねえぞ!」
怒りに任せて成政に掴みかかる武蔵。それを周りは止めようとしたが、
「俺だってなあ、戦いの中で仲間や色んなもんの為に自分とゲッターを犠牲にした事はあるさ。自爆してでもなあ!」
「「なっ!?」」
突然のカミングアウト。その驚くべき内容を聞いた箒達はもちろんのこと、武蔵を歴戦の戦士と知りつつもその詳しい過去を聞いていなかったこの世界の面子もまた一様に驚いた。
しかし、この世界の箒だけが悲しげな顔をしているのを見ているものは誰もいなかった。
彼女だけが、おぼろげながらも武蔵の記憶を除いた事があり、自然、自爆の事も知っていたのだ。
武蔵がゲッターロボの炉心を暴走させて自爆し、その膨大なエネルギーをもってして、敵戦艦の爆発を相殺した事を。
もう一つは、武蔵の戦友の一人であり同じパイロットの顔を持つよき兄貴分に、武蔵の過去とゲッターの無茶な使い方をしている事を教えられたからである。
「言っとくが俺も異世界人だ、あんたらと似たようなもんだ。そこで幾つものヤバい敵と戦ってきた、そりゃもう命懸けでな」
武蔵の言葉を、周りは食い入るように注目して聞いた。時折わからない単語を混ぜ込んでくるが、それは彼が気が回らないほどヒートアップしているからだ。
「その中で俺は、元の世界での帝王ゴールとの一度目の戦いじゃ、自分の怪我じゃ助からないと見て強制分離でリョウやハヤトを逃がしたり、ゲッターG出撃の時間稼ぎにブロッケン伯爵に奪われたゲッターに特攻したり、しまいにゃあ仲間だけじゃなく大阪の町や大勢の人達を助ける為にゲッター炉心を暴走させて自爆もして、気がつきゃこの世界に来たさ!」
壮絶な過去を語る武蔵に、思わず息を飲む。だが、彼は止まらない。
「そっから色々あって箒やリッカや簪達と出会ったり、甲児達と再会もした。
けどな、甲児や鉄也と再会したときゃあ、驚かれた後に泣かれたぞ!?
あの後αナンバーズのみんなが俺が死んだ事に涙流して悲しんだって聞かされたり、甲児からは『あの時の涙返しやがれ』なんて言われたし、炉心が臨界寸前のゲッターで戦ってたときゃあ箒に泣かれる程心配かけちまった!どれだけ俺がみんなを悲しませたか、それで面目なかったか!」
それは武蔵の、心からの叫びだった。
懺悔と謝罪のこもった叫びだった。
それを聞いたこの世界の箒達やリッカは、驚きを交えつつ、心の底で思っていたこの気持ちを、正面から受け止めていた。
「それにな、俺は仲間や敵や色んな奴の死にざまだって見てきた。死にたくなかった奴や、覚悟を持って戦って死んだ奴だっている!
それをてめえは、そんな覚悟で、箒やみんなを悲しませたってのにそんなへらへらした態度でいやがって......」
そして武蔵は、成政に怒っている。ガチギレしている。
「俺だって人のこたぁ言えねえのはわかっちゃいるが、てめえがそれで自分の命や残された箒達の気持ちを粗末に、ないがしろにすんじゃあねえよ!」
無言のままおし黙っていた成政は、武蔵の手を外した。
「......俺だって死にたかなかったさ」
「わかってる」
「だけど、俺はこれしか方法が思いつかなかった」
「そうだろうな」
喧嘩腰に成政の発言に答える武蔵。
俯く成政は、握りしめた拳を震わせ、ポツリ、と言葉を漏らす。
「箒ちゃんが悲しむかも、それくらいは思ってたさ。だけど、俺の代わりはいくらでもいるんだよ......俺がやってたのは、誰でもできる仕事ばかりさ。誰だって出来る事だった。
誰もやらないから俺がやってただけだ。
......そんな俺が、居なくなったって変わらないだろ。
俺の仕事は誰かが引き継ぐ。
俺が居なくたって学園は、剣道部は回る。
だから、代わりを見つけて欲しかったんだ。
俺の事を早く忘れて欲しかった。
他の誰かを、見つけて欲しかった。
一夏みたいな、頼れる奴をっ!」
「この大馬鹿者が!」
ビリビリと空気を震わせるほどの声で箒が叫ぶ。
「他人の代わりなど存在しない。お前の仕事が誰に出来ることだろうと、お前の仕事はお前のものだ、お前の居場所は、お前だけのものだ!
それも知らないで......お前が居なければ、私はダメなんだ。だから、ずっとお前の、側に、いさせろ!」
「ぐふっ!?」
拳を握りしめて、成政の左頬を右ストレートで殴りつけた。
「だったら俺じゃなくていいだろ......俺だってまだまだアマチュアだ、そんな俺が、お前の、側に居られるわけないだろ!」
お返しのボディブローが箒の身体を突き上げる。だが、箒は両足を踏みしめて耐え、自分の思いをぶちまける。
「どこがアマチュアだ! お前はプロだ、最高のマネージャーだ、それは、私が保証する!」
「お前のような世界を目指せる人材が、ヌルい環境に甘えるんじゃねえよっ!
もっと厳しく、ストイックでなきゃダメだろっ!」
「私はいつだってストイックだ!」
「机の上グチャグチャなのにどーこがストイックだこの、まずは身の回りの整理整頓から始めろばーか!」
「貴様こそ私が着替えている時ズカズカと入ってきて......顔色一つ変えずに挙げ句の果てに『いい筋肉してるね!』だと!
お前には乙女の恥じらいが解らんのか!」
殴りあいながら、大声で叫んでいる内容はどことなくラブコメチックで、先ほどの緊迫して居た雰囲気が一気に解けてしまう。
「なんだろう、この新手の痴話喧嘩は......」
「正直に話せたし、良かったんじゃない?」
呆れて物も言えない2人に代わり、リッカが少し笑って茶々を入れる。
(それに、この昭和的展開。アニメオタク的には目の前で見られて感動物なんだよ)
「「この......分からず屋!」」
「あっ」
クロスカウンターが見事に決まり、2人して床に大の字になって伸びてしまったのを見、リッカが肩をすくめる。
「やれやれ、これだから青春ってのは面白いんだもの」
「......どうすんだよこれ」