〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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大変長らくお待たせしました。
いやあ、ほかの作品にどハマりしちゃいまして、それがもう楽しくて楽しくて......忘れてた訳じゃないですよ?

というわけで今度こそ最終決戦です。




第50話 最終決戦

 

 

炎のように赤く、堂々とした立ち姿。

ゲッタードラゴンの牙のように尖った荒々しい装甲や顔持ちは、まさにドラゴンの名にふさわしい出で立ちだった。

 

「すっげ、今度はなんかカッコよくないか!」

「一夏ってば男の子だねー」

「質量保存の法則はどうなってますの!」

「んなもん気にしたら負けよ」

 

後ろで見ていた一夏たちがそれぞれに反応するのに対し、その強さを肌で知っているブロッケン伯爵はたじろぐ。

「ええい、やってしまえ!」

『そんなもの!』

 

半ばヤケっぱちにも思えるような攻撃命令を下すも、ゲッタードラゴンは上昇してゆうゆうと回避。

『倍返しだ、喰らえ、ダブルトマホークブーメラン!』

 

ゲッタードラゴンは2本の大斧を取り出し、投げつける。

 

「ふん、その程度!」

 

伯爵は艦内の兵士に攻撃命令を出し、ミサイル攻撃と時間差でグールの目から放つ放電攻撃を放っていた。

しかし。ゲッターが投げたトマホークは次々と機械獣を切り裂いて、ミサイルも叩き壊し、電撃も左右に飛びつつ紙一重にかわし、

迫っていた機械獣も額からレーザーを撃ち撃破。

 

『射撃は苦手だが、これだけでかいなら外さん、こいつもくらえ!』

 

ゲッタードラゴンは腕を掲げ、大きな大砲をコール。それを両手で構えると、

 

『ゲッター・レーザー・キャノン!』

 

裂帛の気合とともに放たれた閃光は敵を一掃した。

 

 

 

 

「しゃあ、やりい! あれみんなかわしてやっつけて、敵のでっけえ船にまでお見舞いするなんて!」

「というか、あれってレーザーやビームの類い、ですわよね。もう頭が痛くなってきました」

「やはりあのゲッターとやらとその乗り手は凄いな!」

「ってかさあ、今の声って箒だったわよね」

「あいつ、あんなキャラだっけ?」

『......説明しにくいなぁ。どういったものか』

 

ここが並行世界と知るのは実は成政だけ、それをどう説明するにも面倒なので後回しでいいやと考えを放棄した。

 

『しっかしほんと凄いよな。ちょっと調べてみるか』

 

アップデートされた成政の専用機アンサング、もといアナザーワン。その情報収集能力は上限を知らず、試しにゲッターのデータを見ようとして、

 

『なになに?

ゲッターロボG、タイプはスーパーロボット。詳細なプロフィール的なのは......うわ』

「どうした成政?」

 

絶句する成政に一夏が問う。

 

『どうやらあのゲッターっての、マジで元は異世界から来たスーパーロボットらしい。それも初代と違って最初から戦闘用に作られてて、ゲッター線っていう宇宙線で動いてんだとさ』

「は、はあ?! 異世界ぃ!」

「んなメルヘンなことあるわけないでしょ」

「けど、あの反則じみたものは信じられません、むしろ異世界と考えれば妥当なのでは......ぶつぶつ」

「セシリア、そこまで深く考えなくていいと思うよ」

「やはりクラリッサの言う通り!」

「ラウラは戻ってきて!」

 

混乱する一同に成政は何の気なしに情報をさらに突っ込む。

 

『しかもあれに乗ってるのの一人はこっちの世界の箒ちゃんらしいし、もう一人は日本の代表候補生の更識簪って子。後はさっき俺が会った、巴武蔵って人だな」

「箒が乗ってんのか!」

「みたいだな」

 

しかし、と内心成政は思う。

 

(にしてもあんなのを巧みに操って、あんなにも叫んで戦えるなんて、俺の知ってる箒とは違う。こっちの箒も凄いもんだ。これまで何があったんだか)

 

『ねえ、お願いがあるの』

『おわっ、急にびっくりした!』

 

考えにふけっていたところに突然聞き慣れない声がかかれば誰だってびっくりする。

確か更識簪だったな、と思い出した成政が答えると、

 

『ここは私たちに任せて欲しい。ここの敵はだいぶやっつけたし、他のところの手助けをして欲しいの』

『うげ、此処だけじゃないのか』

『その通りだ』

『あっちの方じゃ、俺たちの世界の一夏たちIS乗りが戦ってる。だいぶ苦しいみたいだが、俺たちはここに残らなくちゃいけない』

 

目の前には敵の母艦はまだ健在、それにISでの対抗は難しいと言う判断だろう。

 

『......頼まれる義理もねえだろうが』

「わかった、やる」

『一夏......』

「目の前で人が困ってるんだ、助けるだろフツー」

『世界は違えど一夏は一夏か。変わらんな』

「朴念仁も相変わらずよ」

『......そ、そうか』

「なんの話してんだ?」

「一夏さんには関係なくてよ」

 

ゲッタードラゴンはまた湧いてきた敵に向き直ると、トマホークを構える。

 

『あ、あの』

『なんだ?』

『......お姉ちゃんを、お願い』

『わかった、任されろ!』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

ところ変わって、成政たちとは反対側の場所。ここでは、同じ一夏たちが街を守ろうと奮闘していた。

 

「ぬぐぐ、なぜあの程度倒せんのだ!」

「俺らだって進化してるんだぜ、簡単には負けねえよ!」

 

人間の顔がついた異彩を放つ機械獣に対し啖呵をきる一夏。実際かなりギリギリながらも、どうにか戦況は均衡を保っていた。

 

(でも、戦況は危いわ。このままじゃジリ貧......ゲッターも足止めを食らってるし、早いところマジンガーチームが来るのを待つしかないわね)

 

IS乗りのうち1人だけの2年生、更識楯無が考え込む。楯無の思う通り、各々が目の前の敵の処理に手一杯。このまま押し込まれてしまえば、一気に戦況は敵側に傾く。

 

「ふん、それならばこうだ!」

 

このチャンスで、敵側が新手を呼び出す。

考え事をしていた楯無だけ反応が遅れた。

 

「しま、新手っ?!」

「っ、きゃあああああっ!」

「楯無さん!」

「ぐはははは! いいぞアポロンA1!」

 

今までの機械獣とは異なり、身体から炎をメラメラとほとばしらせる人型。

その拳は楯無が乗るミストリアス・レディにクリーンヒット、楯無は受け身を取ることもできず吹き飛ばされた。

 

「くそ、どけよっ!」

『一夏落ち着いて! 勝てるものも勝てなくなっちゃう!』

「だけど、楯無さんに一番近いのは俺なんだぞ! 俺が助けなくてどうする!」

『あんたまでやられちゃどうにもなんないのよ!』

「ならば私に任せてもらおうか、一夏」

 

とん、と一夏の方に手が置かれる。

思わず振り向くが、背後には誰もいない。

 

「なんだったんだ......?」

 

今はこんなことしてる場合じゃ、と思い直して敵に向き直る。

だが、目の前に敵はいない。

バラバラに切り刻まれた残骸が崩れていく光景だけが眼に映る。

 

「って、楯無さん!」

 

すっかり忘れてた、このままじゃ楯無さんがやられちまう!

機体を楯無さんが吹き飛ばされていった方へ向けようとするが、目の前に新しい機械獣が立ち塞がる。

 

「この......!」

『一夏、ソイツは攻撃が大振りだからその隙を狙うのがオススメだぞ』

「えっ?」

『騙されたと思ってー』

 

言われた通り、攻撃させるために少し近づいて攻撃をかわす。確かに隙は大きく、倒すには十分だった。

......なんだったんだ、マジで。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「喰らえ、オータム直伝ISハンマー投げ!」

『なんで箒ちゃんそれ知ってるのぉ!?』

「行けぇ、一夏ぁ!」

「任せろぉぉぉ!」

 

出会い頭に目の前のピンチを打開すべく、ハンマー投げよろしく投げ飛ばされた。

紅椿の高出力でぶん投げられた俺は拳を振りかぶっていた巨人にクリーンヒットし態勢を崩させる。

同時に距離を詰めていた一夏が倒れていたIS乗りを救助。

「よし、完璧なコンビネーションだ!」

『復活早々扱いが雑じゃないの!』

「男だろう、これくらい受け止めんか、バシッと」

『受け止めるところか投げ飛ばされてるんですがそれは』

「それは......気にするな」

『出来るかボケぇ!』

 

シリアスに構えてた成政としては理不尽も良いところである。

しかも途中で敵をなぎ倒して登場してきた箒との再会一言目が、

 

「成政か、ちょっと手伝え!」

『良いよ、どうすればいいの?』

「体をまっすぐにしていれば良い」

『はいよー』

「方向よし、角度よし、風向きよし」

『......ん?』

 

従った途端に投げ飛ばされたのは前述のとおりである。

 

「ありがと一夏くん。お姉さん見直しちゃったわ」

「いえ、当然のことをしたまでですし」

「楯無さん、大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ......ん?」

 

救助されたIS乗り、こと楯無更識は混乱した。

現在進行形で自分をお姫様抱っこしているのは織斑一夏で、目の前で自分を心配しているのも織斑一夏。

 

「一夏くんが2人?」

『まま、それは後でお話するんで』

 

とりあえず戦いましょうと混乱した場を収めようとする見覚えのない全身装甲のIS、中からは知らぬ男の声。

日本政府の暗部として問い詰めるべきであろう場面なのだが......

 

「まず目の前の敵を倒しましょう」

「.......そうね、そうしましょう。後でたっぷり話を聞かせてもらうわよ」

「あははは......」

 

ある程度スルーすることも大事なのだ。

 

 

そうしている間にも各々の活躍により敵もだいぶ数を減らしている。

成政達の世界のIS乗りという加勢を得たこの世界の面々は、数で上回るだけが取り柄の機械獣を順当に撃破している。

 

「おのれい、こんなことがあってたまるものか!」

『悲しいけどこれ現実なんだわな。んじゃロラン、やっちまえ!』

「やっと出番か、待ちくたびれたね」

 

 

 

戦場に花が舞っている。

そう錯覚した人間がいるのも無理はなかった。事実、目の前で起きていることがそうとしか形容できないのだから。

 

「ふふふ......」

 

上空でダンスを舞うように、ひらりひらりとステップを踏むロラン、そして専用機『オーランディ・ブルーム』。

機体から溢れる色とりどりの粒子が、敵味方問わず、まるで花びらのように降り注いだ。

 

「さあ、私の魅力に酔いしれたまえ」

 

瞬間、

 

「なあっ?!」

「なんだ?」

「どーなってんのよ......」

 

動きを止めていた機械獣がぎこちない動きで、()()()()

 

「なぜだ、なぜこのような!?」

 

一際大きな、ボス格であろう機械獣からは驚きの声が聞こえる。それを聞きつけたロランが得意げに手品のタネを明かした。

 

「私の専用機『オーランディ・ブルーム』。その特殊能力は、私の機体の発する粒子を浴びた機械類を操作することができる。

ISなら数秒ほどだけど.......どうやら、効果は抜群みたいだね」

「くうっ、おのれおのれおのれぇ!」

 

悔しげな声を上げる敵の首魁。それを見た成政がニンマリを口角を釣り上げて、

 

『でもまだ終わりじゃないんだなぁ』

『そして更なる追い打ちをかけるのが』

『俺たちだぜえ!』

 

「なに......まさか!?」

 

その声で機械獣や戦闘獣の軍団がハッとするも、もう遅い。

 

『ターボスマッシャーパーンチ!』

『サンダーブレークッ!』

 

火を吹いて飛ぶ黒い二つの腕が、飛来しては次々と機械獣を打ち砕く。

追い打ちをかけるように空から降ってきた凄まじい雷は戦闘獣らに直撃し、黒焦げにしては倒れ伏す。

 

「ロケットパンチを生で見れるとは......」

『それにすごい雷......って、今の声って聞き覚えあるような、ないような』

「あの攻撃が来たって事は、やっと来てくれたのか!」

 

疑問に思う一夏と成政と、喜びの顔になるもう一人の一夏。

そして攻撃が飛んできた方向から、雲を切り裂いて舞い降りるは二体の黒き魔神。

 

果てしなき戦いを終わらせる魔神皇帝ことマジンカイザーと、巨悪を討つ偉大な勇者こと、グレートマジンガーである。

 

『みんな、待たせちまってわりいな』

『だがここからは、俺達のターンだ』

「マジンカイザーに、グレートマジンガー!?」

「このタイミングで、ダブルマジンガーか!」

「だれか状況を説明してくれ......」

「ようやく来たのね、というか甲児さんに鉄也さん、そっちの方はもういいの?」

 

飛来した巨人に戸惑う一同。特に指揮役で状況を知っているらしい楯無が質問すれば、

 

『そいつは問題いらねえ、あの程度どーって事ねえよ。フリード兄妹に任せてきたしな』

 

さてと前置きして、凄まじい威圧感を放つマジンカイザーに乗る甲児が相手を睨みつける。

 

『まだやるかい?』

『くうううっ、おのれ、覚えていろーっ!』

 

状況は理解できたらしく、捨てセリフを吐き尻尾を巻いて逃げていった。

 

『これにて一件落着、だな』

 

 

 

 

 

 


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