〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら 作:通りすがる傭兵
これにてストーリーは完結です。ありがとうございました。
第52話 そして、世界大会へ
「......そんな事もあったなぁ」
思い返せば貴重な体験をしたもんである。あれ以降あの世界とは縁がないが、よろしくやってるんだろうか。
貴重な体験といえば、今の状況も負けず劣らずなんだけど。
「行ける、箒?」
「ああ、必ず勝ってみせる」
ISスーツ姿の箒ちゃんと拳をかち合わせる。
多少緊張で硬くなっているけど、許容範囲内だな。どっちかといえば、興奮してドジらないかが心配なくらい。
「しっかし、世界、かぁ。
思ってたのは全国大会なんだけど、どうしてこうなったんだか」
「あながち間違いではないだろう。全ての国の代表と戦うんだ。考えようでは全国大会だろう?」
「君はいいけど俺は胃が痛いよ......そんなに神経図太くないんだ」
「自分が戦うわけでも無いだろうに」
「確かにそうだけどさあ」
「私のことを信頼していないのか?」
箒の物言いに思わず詰まる。信頼しているといえばしているのだが、
「相手は一夏だ。どう転ぶかなんてわからないよ」
「全くだ。まさかフランスに引っ越してしまうとはなぁ」
「あの惚気ようじゃ当然だと思うね、聞いたことある?」
「胸焼けしそうになった」
「女子でも辛いのかよ」
あの機体が開発されて随分と立つのに、白式の零落白夜は健在。対策もなにもねじ伏せ、いつものように刀一本で勝ち上がってくるんだもの、恐ろしいたらありゃしない。
学生時代も随分と実力者だったのに、まだ伸びるなんて想定外だぞ......
「こちらとて似たようなものだろう」
「確かに」
箒の専用機も変わらず紅椿のまま。しかし二回の改修を経た紅椿『更改』は昔とは比べ物にならないレベルにまで達している。
唯一の難点といえばうさ耳のメインエンジニアが気まぐれすぎるってところ。サブでひーこら言ってる更識さんが可哀想で仕方ない。
現に今死んでるし。
「ハロー、激励に参りましてよ」
「お、セシリア。射撃部門入賞おめっと。
惜しかったねぇ」
「まだまだ世界は広いですわね。銅メダルが精一杯でしたわ」
「まだまだ、では無いだろう。お前は十分に実力はある、誇るべきだろう」
「勝ちたいと思うのがIS操縦者というものでしてよ。あなたもそうでなくて、箒さん?」
「確かにそうだな」
『そろそろ入場してください!』
ピット内にアナウンスが届く。日本で開催されているだけあって、アナウンスも日本語、というより聞き慣れた感すらある。
まさか大河先輩の実況をまた聞く事になろうとは、つくづくIS学園生の活躍の場の広さを感じる。
「もうこんな時間か。ありがとセシリア。
旧友に会えてだいぶ気が紛れた」
「応援してますわ」
「では......金メダルを持って帰ってくる」
「ああ、楽しみにしてるぜ」
試合会場に入った選手に、マネージャー......いや今はコーチか......口出しなんてできない。学生時代から随分と味わってきた歯がゆい気分だが、これもまた良い。
「何か話してるようですわね」
「顔合わせるのは久しぶりだからな、なんか思い出話でもしてるんじゃないか?」
「......構えましたわ」
「始まるか!」
『さあ始まりました第5回モンド・グロッソ、総合部門決勝戦!
決勝戦に望むのは、あらゆる相手を二刀で斬り伏せてきた侍ガール、日本代表、篠ノ之箒!
彼女に立ちふさがるのは......なんとなんと、フランス代表で出場した織斑一夏、いや、一夏・デュノア選手ゥ!。
誰がこの対戦カードを予想したでしょうか、私はもう目が離せません!
解説の織斑千冬さんどう思われますか?』
『双方は互いの手を知り尽くしている、といってもおかしくはない。だが、互いに学園を離れ5年。その差が、今回の勝負の鍵になるだろう』
『奇しくもIS学園時代は同級生だった2人!
ライバル同士の対決となります!
さあ、勝つのは日本代表篠ノ之箒か!
はたまたフランス代表一夏・デュノアか!』
「試合......開始!」
◇◇◇
河南成政→篠ノ之成政
IS学園卒業後は大学へ進学、同じ大学に進学していた箒を影から支え続け、日本代表のコーチに就任した。
教員免許を取得したので教師も悪くないかな、と考えていた矢先箒のプロポーズを受ける事に。答えは言うまでもないだろう。
織斑一夏→一夏・デュノア
IS学園卒業後、白式を携えフランスへ渡航。
自身の身を交渉材料にフランス政府やデュノア社と立ち回りシャルロットの安全を確保。その影には水色の髪が見えたり見えなかったりとか。
第5回モンド・グロッソでは学生時代と変わらず一撃必殺『零落白夜』を引っさげ世界最強に挑む。
完全に嫁バカと化している。
篠ノ之箒
IS学園卒業後は成政と同じ大学へ進学、そのまま日本代表の座を獲得した。
第5回モンド・グロッソでは二刀流と高機動をウリとする紅椿『更改』を手に世界一位を目指す。
決勝戦後、世界中が注視する中成政にプロポーズをする事となる。
セシリア・オルコット
IS学園卒業後は祖国へ戻り射撃の腕を磨く。
改修された専用機『スターダスト・ブルー』により見事射撃部門3位を射止めてみせた。
本人はいい人が見つからないと嘆いているが、本屋で出会った男といい感じなのはメイドのチェルシーだけが知っている。
凰 鈴音
IS学園卒業後は祖国へ戻り、中国代表として第4回モンド・グロッソを制覇。
第5回では準決勝、一夏との激戦に敗れ3位決定戦へ。
打ち上げで飲んだくれ居酒屋にいた店員を押し倒す事になるのはまだ先の話。
シャルロット・デュノア
IS学園卒業後は一夏とともに母国フランスへ戻りその後結婚、専用機を降り専業主婦としての道を歩む。
応援席で声を張り上げまくり隣席のラウラを驚かせる事になるのは言うまでもないだろう。2人揃ってバカなのだ。
ラウラ・ボーデヴィッヒ
IS学園卒業後はドイツへ戻り軍属の道へ進む。日々祖国の平和と安全を守るかたわら、世界も見据えていた。
第5回では準準決勝で箒に敗れる悔しい結果に終わる。
国元では同僚の男性が指輪を片手にやきもきしていることを、彼女はまだ知らない。
ロランツィーネ・ローランディフィルネイ
IS学園卒業後は役者に専念。各国を渡り歩く実力派女優としてスターダムをのし上がり、ハリウッドデビューを果たした。
現在は祖国オランダで女優兼オペラ歌手としてマイペースに過ごしている。結婚する気はまだないようだが果たして?
更識簪
学園在学中に篠ノ之束と接触、一番弟子に相応しいと学園を引っこ抜かれ世界中を渡り歩く事に。
現在はしょっちゅう不在のメインメカニックの代わりとして日本代表の足元を支える。
仕事が恋人。
更識楯無(刀奈)
本編に一切出番のなかった生徒会長。
日本の暗部として暗躍しつつ、平和な世界を目指して政治を勉強中のようだ。一夏の件ではフランスに多大な貸しを作ってホクホクしている。
親からは早く結婚しろとせっつかれているようだ。
河南兼政、オータム、スコール、M
相変わらずバカをやっているようだが、彼らの知名度自体は徐々に上がってきている。
オータムは大河ドラマ準主役を勝ち取り一躍有名女優、Mはカメラマンとして大成しいくつもの賞を獲得する名カメラマンへ。
でも社長と副社長の2人には逆らえず、今日も世界のどこかでオータムが不満を叫んでいる事だろう。
織斑千冬、山田真耶
現在もIS学園にて教鞭を振るう。最近では厳しいだけでなく優しい面も見せたりだとか、少し強めに出てみたりと教師として着実に経験値を積んでいるようだ。
篠ノ之束
多少丸くなったとはいえ天災は天災だった。
自由気ままに世界を放浪する傍らISの不正利用を暴きまくり純粋な競技用としてのISを目指し日々暗躍中。
娘(自称)のクロエと一番弟子(無理やり)の簪と今日も世界を騒がせる。
あとがきめいた何か
初めて完結した小説になります。
コラボで言いたいことを吐かせてしまったので、自己完結してしまった、という方が正しいかもしれません。
彼ら彼女らの学園生活の一コマはいずれ。
3ヶ月の間......リメイク前からおつきあい頂いた人にはもっと前から。
ご愛読ありがとうございました。