〜もしエス〜 もし女子剣道部のマネージャーがインフィニット・ストラトスを起動したら   作:通りすがる傭兵

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展開が遅い......遅くない?

いいからセッシーの出番よこせ、という人はもう少し待っていてください。

おそらくISABキャラが1人出演が決まりました。
次回かもう少し先になると思います。


第7話 河南は世界最強について考える

 

 

「おはよ、2人とも」

「おう、おはよう!」

「おはよう、河南」

 

朝はいい、1日の中で一番好きだ。

空気は澄み、空は晴れ渡り、それでいて静か。

1人で考えにふけるも、大人数で熱く盛り上がるも自由。1日の中で一番少ないこの限定された時間は練習にももってこいだ。

 

「昨日は悪かったな、色々考え事してて上の空で」

「良いよ良いよ、誰だってそんな日はあるさ」

 

自分の中で折り合いはつけたし、これで気兼ねなく練習に身が入るってもんだ。

「まずは素振り1000本行ってみよう!」

「それはまずなのか?!」

「肩慣らしにもならんな」

 

とはいったものの、さして状況は好転したわけでもない。だがみんなの気持ちが前を向いている、そう分かっただけでも一歩前進だ。

勝つか負けるかは任せて、選手がベストコンディションを引き出すお手伝いをする。余裕があれば、対戦相手のことを考える。

こんな感じで割り切って考えればうだうだ悩む必要もないし、理解していないメンタル面まで不必要に踏みこむ心配もなし。

「一夏、もうちょっと腕をだな」

「こうか?」

「いや、もうちょっと捻って」

「こう?」

「違う」

「こうだ!」

「そうじゃない」

「これだぁ!」

「No」

「だあああああああ!」

「何がわからないんだよ、もっとそこを狭めたほうが力入れやすいって簡単な事しか言ってないぞ俺は」

「それをもっと具体的に分かりやすく説明するんだよ」

「右脚3センチ前、右肘5ミリ内側寄せ、竹刀の先を1センチ上げ」

「具体的すぎるわ!」

 

ああもうやって見たほうが早いだろ、と竹刀を投げ渡してくる一夏。やってみせろ、と言いたいようだ。一見は百聞に如かず、ならばやってみせようとふわっと軽く投げられたそれを俺は、

 

「あいたっ!」

 

受け取り損ねて頭にクリーンヒットし、

 

「のわっ!?」

 

床に落ちたそれを拾おうとして踏んづけてバランスを崩し、

 

「がっふ!」

 

それなりの速度で以ってして顔面を板張りの床に強打した。

「おおおおおおおおおお......」

「お前、ドジなんだな」

「河南大丈夫か!? 凄い音だったのだが」

「長い付き合いだから慣れてるよ、あたた」

 

この極度の運動音痴のせいで身体だけは人一倍頑丈になったというオチは付くが、お陰でスポーツ全般はポンコツレベルだ。昔はもうちょいマトモだったんだが、小学校に入学した途端にコレなんだもの。

 

「だからマネージャーになったのか?」

「マネージャーは好きでやってんの」

「昔は片鱗すら見せなかったのに、どうしてだ」

「どういうわけか突然こうなってしまいまして。マネージャーの仕事に支障はなかったから別に大丈夫よ?」

「ならいいのだが」

「さっさと練習に戻った戻った。そろそろ朝飯の時間になっちゃうよ」

「心配させてくれても良いのに......」

「マネージャーの事なんて気にすんなって篠ノ之」

 

一夏の言うようにマネージャーの始まりは逃げもある。きっかけは心が折れた事だが、後悔はしていない。選手に対する未練もないし、俺の心をへし折った篠ノ之に恨みもない。むしろ綺麗に折ってくれて感謝してるくらいだ。

 

「その他人行儀な呼び方、なんなのだ」

「他人行儀って?」

「一夏のように名前で呼んでくれない」

「幼馴染とはいえそう名前で呼んでいいものかと。親しき仲にも礼儀あり、でしょ」

「幼馴染だろう? いいではないか」

 

昨日お前が一夏の事好きってわかった以上、好きでもないやつに名前で呼ばれるのはあまりよろしくないだろうという俺のステキな心遣いを無駄にするつもりなのか篠ノ之。

思ってるだけじゃ伝わらないので、篠ノ之を手を掴んで引き寄せ、一夏に聞こえないように小声で話す。

 

(名前で呼んでもらえるなら好きなやつだけの方がいいだろうて)

(その程度の事私は気にせん。そのような細事で貴様に心がなびくなど自分を高く見積もりすぎだぞ河南)

(お前は気にしなくても俺が気になるんだよ!)

(いいや河南が気にすることでも無いだろう!)

(それ言うんだったらお前だって俺のこと苗字呼びだし。昔はなりきゅんとか呼んでたくせに)

(そんなことしたら一夏に勘違いされるだろう馬鹿者というか何故そんなことを覚えている)

(これでも記憶力はいい方なんでねもっぴーちゃーん!)

(呼ぶなあああああああ!)

「お前ら仲良いな。付き合ってんのか?」

 

ぽーんと、一夏が爆弾発言を放り込んだ。

今は朝練の時間、この時間帯の武道場では剣道部と空手部が練習を行なっている。このような武道系部活は優れた生徒が全国から集まり、外国人の多いIS学園の体質もあってか部員数は多い。

つまり、どういうことになるかといえば。

 

「え、篠ノ之さんと河南くん付き合ってるってマジ?」

「えー、織斑くんライバル多めだから狙い目だと思ったのに」

「篠ノ之さんとなんて、意外とだいたーん」

「幼馴染らしいよ?」

「ちょっと新聞部行ってくる」

 

「「断じてそんなこと有り得ない、誰がこんな奴なんか!」」

 

ざわめきをかき消すように大声を張り上げると、篠ノ之も一言一句同じ事を叫んでいた。

 

「謙遜するなって、隠す程のことでもないだろ」

「「ただの幼馴染なだけだ!」」

「やっぱ息ぴったりじゃないか」

場の状況も鑑みず、挨拶でもしたように無自覚な顔で核の起爆スイッチを押しても能天気にしているコイツが憎い。

横を向けば、篠ノ之も同じようにこのネジとデリカシーの欠如した阿呆を睨みつけている。

 

「成政、私いい事を思いついたのだが」

「ああ箒、俺も考えついた」

「......ん?」

「さて練習戻るか」

「俺やる事あるからちょっと抜ける」

 

 

30分後、食堂にて。

 

「おはよう織斑、いい天気だな」

 

とっておきの機会のためにレシピだけは取っておいていたが、まさかこんなところで役に立つとはな。店長公認麻婆豆腐レシピ。

月一で食べるとっておきだ、存分に味わってくれよ?

「今日はキツかったし、朝から麻婆でも納得だな......なんか見るだけで目が痛いんだけど」

「こいつはお前におみまいするんだよ」

「......は?」

「成政、今だ!」

「ちょ、なんで俺の事羽交い締めに、箒?」

超激辛特製麻婆豆腐河南スペシャル(おみまいするぞー)!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

 

「織斑はどうした」

「腹痛で保健室に行ってます」

「......河南、何か知っているか?」

「一緒に朝飯食ったら急に腹が痛いと」

「そうか。では、授業を始める」

 

嘘は言ってない。

 

◇◇◇

 

 

 

昼休み。

 

一夏は2時間目に教室に戻ってきていた。顔色は悪いが、授業を休むともう追いつけないと理解しているらしく無理しているようだ。

そうは言っても1時間と少しで復帰できているあたり化け物だ。流石世界最強の弟、身体も胃袋も鉄とまではいかないが強靭のようだが、

 

「俺何かしたか......」

「察しろ」

 

その代償にネジは外れているらしい。世の中完璧超人はいないことがこれで証明されたな。

「そんなことはどうでもいい、オルコットの話をしよう」

「俺の胃腸はどうでもいいのか!」

「はい牛乳」

「それは食べながら飲むもんだろ」

「もしくは食前だ、ってまた脇道に逸れてる」

「要点は纏めておけ成政、一夏はバカだからな」

「辛辣すぎるぜ箒ぃ」

 

箒の言う通りでもある。今度から話すときは小学生でも理解できるような簡単なものにしよう。

 

「でだ。お前はどうせ銃は使えん。

剣一本でやる、て話はいいよな?」

「ああ、それしか能がねえしな」

「ちょうど御誂(おあつら)え向きのものを見つけた」

 

取り出したるは先日も借りたPC、だが中身の動画は別物。

 

「そこで簡単な問題だ。

 

剣一振りであらゆる相手を斬り伏せ、世界最強の座をほしいままにしていたIS操縦者は、いったい誰でしょう?」

 

答えは簡単。

我らが担任、織斑千冬先生だ。

 

前回の焼き直しにならないよう、動画はしっかり見たし箒のお墨付きも貰っている。メンタルブレイクされないように安全は一応確保してるって訳だ、俺だって進歩するわ。

試合を見た俺の感想だが、千冬先生は戦闘センスはある方でもない。有り余る身体能力と機体性能にモノを言わせて相手を蹂躙していると言うべきだ。それだけなら対策も容易だと思うのだが、千冬先生はそう甘くない。

 

(1人だけ階級違うんだもんなぁ)

 

別に体重がどうのというわけではない。乙女(?)にそんな事言ったらいかんだろうて。

体重が違えばそれだけ筋肉の量も違うし基礎体力も変わってくるという話でなく、動きのキレ、反応速度の桁が違う。1人だけ時間の流れが違うとまで言われても納得できるほどの差。相手が一発叩き込む前に、二発三発と叩き込める。その上凶悪なのが、千冬先生が使用していた専用機『暮桜(くれざくら)』のワンオフアビリティ『零落白夜(れいらくびゃくや)』。

一言で説明するならば()()()()()()勝てる剣だ。

詳しく説明すると、ISが展開するシールドを無視して絶対防御に直接刃を当てられる。その上見る限り高出力レーザーブレイドの様で、零落白夜がなくとも実体剣より高威力なのは明らか。

擦りでもすれば致命傷、そうでなければ即死、ああ恐ろしい。

だがそう美味い話もあるわけでなく、発動中は

自分のシールドエネルギーを食い潰す諸刃の剣 らしいのだが、一撃で斬り伏せてしまえば持久戦もへったくれもない。

同じワンオフアビリティは発現しないと言われているのでこの戦い方は参考にはならないが、剣一本で相手に挑んでいる点は同じ。姉弟で通じるものもあるだろうから何か得るものもあるだろう。

「動画はDVDに焼いたから、試合日までじっくり見るように。続きは放課後ね」

「これが、千冬姉の......」

「見た事なかったのかい?」

「あんまりIS関連の事は触らせてもくれなかったしな」

 

食い入るように見ていたかと思えば、姉の試合をろくに見たことも無かったらしい。姉の背中を追いかけてなんて事はさせたく無かったらそんな事するだろうけど、ISを動かせるのは女子だけのハズ。

もしかして織斑先生、一夏がISを起動できる事わかってたんじゃないのか?

篠ノ之と織斑は幼馴染と言っているし、その姉同士でも繋がりがあったと見てもおかしくはない。マッチポンプよろしく都合よく一夏がISを起動できたのは篠ノ之束が噛んでるだろ絶対。

 

(あれ、じゃなんで俺はIS起動できてるのん?)

 

となると俺が起動できた理由が謎。

繋がりはなくはないが、俺は篠ノ之束の存在なんて知らなかったし面識もない。男子が起動条件を満たす抜け穴があったとしても俺を選ぶ必要性が無いだろ。

 

「何を難しい顔をしているのだ」

「いや織斑先生の事考えてたら、どうして俺がIS起動できたのかなぁって事になって」

「十中八九どころか十割姉さんの仕業だが、人の考えなぞ読めるわけもない。奇天烈で自由奔放な姉さんならば尚更だ」

「謎は深まるばかり、か」

 

この後時間いっぱい考え事してたせいで昼休みを無駄にした。

昼飯抜きは健康に悪いとかそういうのはないのだが、午後の授業は全然集中できなかった。これも全部織斑一族のせいだ!




*超激辛河南特製麻婆豆腐

某地の某中華料理店の激辛料理を再現したもの。
まだライトな辛党の成政が食べやすいようにアレンジしたもの。
本人曰く「クセになる」辛さを目指した結果、本人は満足しているが某神父はまだ足りないと言っていたそうな。

「テロ飯だよこれは」by成政の兄
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