竜王と白雪姫   作:コマ夜叉

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遅くなりすいません、小説って難しいですね
遅れましたが、りゅうおうのおしごと、8巻、アニメ最終回おめでとうございます


遊園地

「うわぁ~結構混んでますね」

「そうね」

 

 今日は、姉弟子の誘いで遊園地に来ていた。

 なんでも、桂香さんが商店街の福引で遊園地のペアチケットを当てたらしく、自分は行かないからと姉弟子にあげたそうだ。

 姉弟子だって本当は桂香さんと行きたかっただろうけど、その桂香さんが行かないということで消去法で俺が誘われたんだろう、それでも俺は姉弟子と一緒に遊園地に行けることが嬉しかった。

 

「少し油断したらはぐれちゃいそうですね」

 

 日曜日ということもあり、家族、友人どうし、カップルなど様々な人達で遊園地はとても賑わっていた。

 

「何から乗りましょうか?」

「あれ、乗ってみたい」

 

姉弟子が指を差した方向にはコーヒーカップがあった。

 

「いいですね! それじゃあ行きますか」

「待って」

 

そう言うと姉弟子は俺の手を掴んできた。

 

「どうかしましたか?」

「⋯⋯手、繋いで」

予想外の言葉に驚いたが姉弟子は少し恥ずかしかったのか目を反らし下を向いている。

からかっているわけではなさそうだ。

 

「繋いでいいんですか?」

「⋯⋯はぐれると困るから」

 

 姉弟子は俺と手を繋ぎたいのかな、と思い上がっていた部分もあったが、ただ迷子になりたくないだけだと知り、やっぱり姉弟子は俺の事をただの弟子としか見てないと再確認してしまった。

 

「そ、そうですよね! はぐれると困りますもんね」

「……うん」

 

そう言うと姉弟子は俺の手を握ってきた。

昔、何度も繋いだその手は、昔と変わらないはずなのに俺は手を握られた瞬間今まで感じたことのない胸の高まりを感じた。

 

「どうしたの? 早く行こ、八一」

 

少し固まっていた俺を心配に思ったのか、隣にいた姉弟子は手を繋ぎながら不思議そうに俺の顔を覗きこむ。

 

「な、なんでもないですよ! ほら、行きましょう姉弟子」

 

 姉弟子の仕草があまり可愛かったので俺はその気持ちを誤魔化すように姉弟子の手を引き歩き出した。

 

 

 

 

「コーヒーカップはあまり並んでませんね」

 

 コーヒーカップの列に着く頃には、少し姉弟子と手を繋ぐ事にも慣れて、胸の高まりも収まっていた。

 

「姉弟子はコーヒーカップ好きなんですか?」

「別に」

「あれ、そうなんですか? てっきり好きだと」

「そもそも遊園地なんて来るの昔師匠達と来たとき以来だし、よくわからない」

 

そういえば俺達は昔から将棋ばっかりで、こういう場所にはほとんど無縁なので、よくわからないのが当然だ。

 

「次の方どうぞー」

少し姉弟子と話してるうちに俺達の番が来た。

俺は姉弟子の手を放し席に座ると姉弟子も少し後に向かい合うように座った。

 

「初めてだから楽しみ」

「昔乗りませんでしたっけ?」

 

師匠達と来た時は俺もいたし、子供が乗れるのなんて限られてるからコーヒーカップなら乗ってるはず

 

「私達、将棋がしたいってすぐに帰ったじゃない」

「⋯⋯そうでしたね」

 

 そういえばそうだ。あの時は桂香さんも来てくれたのに俺達は口を揃えて将棋をしたいと言い2人には悪いことをしてしまった。

そんな事を思っていると、周りのお客さんも席に着いており、従業員の合図でコーヒーカップが動き出す。

 

「動きましたよ姉弟子! ハンドル、回してみてください」

「わかった」

 

姉弟子は自分の目の前にあるハンドリングを回すが加減がわからないのか凄くゆっくり回す。

 

「姉弟子! もっと速く回して下さい」

「う、うん」

 

今度はものすごい勢いでハンドルを回す姉弟子

それに合わせてコーヒーカップが高速回転する。

 

「これ! どうやって止めるの八一!」

「ハンドルを逆に回してみてください!」

 

姉弟子はハンドルを逆に回し、回転を止めようとするが、勢いに負け手が弾かれてしまう。

 

「姉弟子! 俺が止めるんで離れてださい!」

 

その間にもコーヒーカップは高速回転し、俺と姉弟子の三半規管を刺激して来る。

 

「やいち⋯⋯気持ち悪い⋯⋯」

「耐えてください姉弟子! もう少しの辛抱です!」

 

姉弟子の顔色が目に見えて悪くなり、体があまり強くない姉弟子は今にも限界そうだ。

 

「やっと収まってきましたね、姉弟子大丈夫ですか?」

「⋯⋯うん、なんとか」

 

回転は収まったけど姉弟子はまだ気持ち悪そうだ。

すると、コーヒーカップの動きが止る。

どうやら終わったようだ。

 

「終わりましたよ姉弟子、ほら、掴まってください」

 

無言で俺の腕に掴まる姉弟子

 

「ちょっとベンチの方で休みましょうか」

「⋯⋯⋯⋯ありがと」

 

そのまま俺は姉弟子を誘導し、近くのベンチに座らせた。

 

「姉弟子、大丈夫ですか?」

「⋯⋯さっきよりは気持ち悪くない」

「俺、飲み物でも買っての?」

「いらない、⋯⋯一緒にいて」

 

その言葉に不意にもドキドキしてしまった。

姉弟子はただ、一人でいたくないだけで言ってるだけなんだとわかってるはずなのに。

 

「酷いようなら帰りますか?」

「落ち着いてきたし大丈夫」

 

少し心配だったが本当に落ち着いたのか、姉弟子の顔色はさっきよりよかった。

 

「ごめんね、八一」

「ん? 何がですか?」

 

 俺は別に姉弟子に謝られるようなことをされた覚えはないから不思議だった。

 

「私、体弱いから迷惑かけちゃって⋯⋯」

 

姉弟子は凄く申し訳なさそうに言う

 

「そんなこと気にするなんて姉弟子らしくないですよ」

「でも、私が誘ったし⋯⋯」

「気にしなくていいですよ、それより姉弟子、この後乗りたいのとかありますか?」

 

 このまま話してても終わらないので、強引に別の話題に切り替える。

 

「激しくないならなんでもいい」

「じゃあ、お化け屋敷で」

「え?」

 

 姉弟子は驚き、開いた口が塞がらない。

 とても予想通りの反応だった。

 

「俺、お化け屋敷って行ったことないから、一回行ってみたかったんですよね」

「そ、そうなんだ⋯⋯」

 

 一応返事はしてくれたが、その顔は少し引きつっている。

 

「姉弟子はどうですか、お化け屋敷」

「⋯⋯行きたくない」

 

 姉弟子がホラー系が苦手なことは知っている。

 だが、それで諦める俺ではなかった。

 

「姉弟子、もしかして怖いんですか?」

「べ、別に怖くないし⋯⋯」

 

姉弟子は強がるように言うが、体が少し震えている。

 

「俺、姉弟子とお化け屋敷行くの楽しみだったのにな」

「⋯⋯ほんと?」

 

 姉弟子は案外優しい所があるのでこういう言い方をすると姉弟子の機嫌次第ではあるが、結構成功率は高い。

 

「⋯⋯八一が側にいてくれるなら行ってもいい」

「ほんとですか!」

 

 俺がどうしても姉弟子とお化け屋敷に行きたかったのには理由があった。

 それは、怖がっている姉弟子が見たい、ただそれだけの理由だった。

 自分でも性格が悪いと思うが、姉弟子の怖がる姿を見たくて仕方がないのだ。

 

「それじゃあ行きましょう!」

「⋯⋯うん」

 

 姉弟子はそう言うと俺の方に手を出してきた。

 

「どうしました?」

「⋯⋯繋いで」

 

 姉弟子の言葉を聞いてその意味を理解した俺は姉弟子の手を握りそのまま2人でお化け屋敷に向かった。

 

 

 

 

 

 

「やいちぃ⋯⋯こわいよぉ⋯⋯」

 

 俺の手を握り怯えている姉弟子

 

「大丈夫ですよ姉弟子、怖くないですから」

 

 俺は姉弟子をなだめるように言う

 正直、お化け屋敷なんて子供騙しだと思っていたが、それは甘い考えだった。

 お化け屋敷内の僅かな明かりも点いたり消えたりしており、時々人間の呻き声のようなものも聞こえる。

 姉弟子の圧倒的可愛さで緩和されているが実は相当怖い。

 

「こわいよぉ⋯⋯」

 

 姉弟子は俺の手をさっきより強い力で握る。

 

「安心してください、俺はどこにも行きませんから」

「やいちぃ⋯⋯」

 

 涙目になりながら姉弟子は言う。

 

「結構歩いたと思んですけどまだ出口は見えませんね」

 

 お化け屋敷に入ってから結構歩いたはずだが出口は見えなく、それらしきものもない。

 

「やいち⋯⋯あれ⋯⋯」

 

姉弟子は震えながら指を差して言う。

 その先には、頭のない落ち武者のような物が座っていた。

 

「だいじょぶですよ、ただの置物ですから」

「そ、そうね」

 

 ただの置物だとわかり少し安心する姉弟子。

 それを確認した後、先に進もうと歩こうとした時、金属の擦れるような音が微かに聞こえた。

 

「ん? 今なにか聞こえませんでしたか?」

「⋯⋯わかんない」

 

 たしかに聞こえたきがしたが俺の勘違いだったみたいだ。

 

「勘違いだったみたいですね、行きましょうか姉弟子」

 

 そう言い姉弟子の方を見ると姉弟子は先ほどの頭の無い落ち武者を見ていた。

 

「どうしました?」

「あ、頭が……」

                                      

 姉弟子にそう言われ落ち武者の方を見るとさっきまでは無かったはずの頭があった。

 その頭は血だらけで生々しい切られた傷跡のようなものが複数ついていた。

 

「は、早く行きましょう姉弟子!」

 

 俺は返事を待たずして姉弟子の手を引き、落ち武者から逃げるように先を急ぐ。

 そうして、少しするとあの落ち武者は見えなくなり少し明るい場所へ出た。

 

「すいません姉弟子急に手をひっぱちゃって、痛くありませんでした?」

「いいよ、私も怖かったし⋯⋯」

 

 怖がってた姉弟子も少しは落ち着いたのか少し安心した表情をしていた。

 

「姉弟子! あれ、出口ですよ!」

「ほんとだ」

 

 姉弟子も気づいたのか出口の方を見た。

 この辺りが少し明るかったのは出口の光が少し入ってきていたからみたいだ。

 

「ようやく出口ですね⋯⋯行きましょうか姉弟子」

 

 俺は出口へ向かおうと歩き始めたが、姉弟子はその場から動こうとしなかった。

 

「行かないんですか姉弟子?」

「こわい」

「え?」 

 

 よくわからないことを言う姉弟子。

 出口はもうすぐだし、光も入ってきて少し明るい、それで怖いなんてことはないはずだ。

 

「出口もすぐそこだし、怖いなんてことはないでしょ?」

「う、うるさい! いいからこっちに来なさい!」

 

 怒り気味に言う姉弟子、その意図はわからなかったがおとなしく従い姉弟子の近くに寄った。

 

「腕、貸しなさい」

 

 そう言って俺にピッタリとくっ付き自分の腕を絡めてくる。

 腕組み、と呼ばれるやつだった。

 

「あ、姉弟子、何するんですか!」

「うるさいクズ、早く行くわよ」

 

 俺の腕を組みながら歩き出す姉弟子、それに引っ張られるように俺も歩き出す。

 さっきまでの怯えていた姉弟子はどこへ消えたのか、もう、いつもの姉弟子だった。

 そのまま状態のまま2人で歩いていると出口の前に辿り着きお化け屋敷の外へ出た。

 

「なんだか、外の空気を吸うのが随分久しぶりな気がしますね」

「そうね」

 

 姉弟子はいつも通りに言うが腕はまだ組んだままだった。

 

「あの⋯⋯姉弟子⋯⋯もう外ですけど」

 

 少し恥ずかしくなり、姉弟子も放す気はないようなので自分から話しを切り出した。

 

「だから?」

 

 姉弟子は堂々と言う

 

「いや、もう外ですし怖くないですよね?」

「私、お化け屋敷が怖いなんて行ってないし⋯⋯」

「なんですかそれ⋯⋯」

 

 よくわからない事を言う姉弟子。

 やっぱり俺をからかっているのだろうか、これじゃあまるでカップルだ。

 

「いいから次、行くわよ」

「はいはい、わかりましたよ」

 

 俺達はそのまま腕を組みながら次に行くアトラクションの元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「暗くなってきたわね」

「そうですね」

 

 あのお化け屋敷の後、激しくない物を中心に園内を回った。

 ゴーカート、メリーゴーランド、立体迷路なんて物あった。

 

「そろそろ帰りますか?」

 

 もう行ってないのはジェットコースター系しかないしちょうどよかった。

 

「私⋯⋯観覧車乗りたい⋯⋯」

 

 観覧車は盲点だった。

 思い込みかもしれないが遊園地の最後といったら観覧車だろう。

 

「いいですよ、行きましょうか」

「⋯⋯うん」

 

 俺達は観覧車の方へ向かった。

 当然、腕は組んだままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「景色が綺麗ですね」

「そうね」

 

 観覧車はゆっくりと頂点へと上がっている。

 

「楽しかったですね」

「そうね」

 

 お互いに会話があまり弾まない。

 そんな中、観覧車の動く音だけが響く

 

「映画とかだと観覧車が一番高くなった時にキスをする、みたいなのありますよね」

 

 会話に困ったあげく出てきたのはそんな話題だった。

 そんなことを言っても余計に気まずくなるだけなのに。

 

「そ、そうなんだ」

 

 思っていた通り姉弟子は返事に困り気まずい雰囲気になる。

 

「⋯⋯姉弟子はそういう相手いるんですか?」

 

 自分でも変なことを聞いているのはわかっていた。

 姉弟子には前に似たような事を聞かれたが、姉弟子の方はどうなんだろうか。

 

「いない⋯⋯」

 

 姉弟子は変わらず外の景色を見ながら言う。

 

「⋯⋯じゃあ好きな人は?」

 

 聞いてしまった。この事を聞いてしまえば俺は……

 

「⋯⋯⋯⋯いる」

 

 その言葉を聞いた瞬間俺の心は締め付けられる。

 気のせいか呼吸をするのも苦しい。

 

「ご、ごめんなさい⋯⋯もう一回いいですか?」

 

 聞こえていた。聞こえていたけど認めなくなかった。

 

「⋯⋯私、好きな人がいる⋯⋯」

 

 姉弟子は確かに言った。好きな人がいると

 

「そう⋯⋯ですか⋯⋯」 

 

 苦しい、すごく苦しい、今まで感じたことのないくらい苦しかった。

 

「ど、どんな人なんですか?」

 

 聞きたくない、でもすごく聞きたい、そんな矛盾した思いが体中を駆け巡る。

 

「⋯⋯すごく優しくて⋯⋯すごくかっこいい⋯⋯私が、ずっと⋯⋯ずっと前から好きな人⋯⋯」

 

 姉弟子は少し愛おしそうに言っている。

 胸が張り裂けそうだ。

 

 自分がなんでこんな思いをしているのかは、わかっている。

 本当は少し前から気がついていた。でも、その気持ちは無意識に心の奥底にしまっていた。

 こうなってしまうと知っていたから。しかし、もうだめだった。

 今日、完全に気づいてしまった。

 俺は姉弟子、空銀子が好きなんだ

 

「⋯⋯うまくいくといいですね」

 

 俺は自分の気持ちを隠し、胸の痛みを耐えながら、できるかぎりの笑顔で言う

 

「⋯⋯⋯⋯ばか」

 

 姉弟子のそんな言葉と観覧車の音が響く。

 いつの間にか観覧車は頂上をとっくに過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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