箸休めに考えたやつなんで短めです。
「今日って何の日か知ってる?」
俺の家で2人で将棋を指している時、姉弟子は唐突に言ってきた。
「誰かの誕生日とかですか?」
将棋を指していたし心当たりもなかったので適当に返事をする。
「4月1日、エイプリルフールよ」
「そういえば、そんな日ありましたね」
ずっと将棋漬でイベント事には無縁なのですっかり忘れてしまってた。
「実は私、女じゃなくて男なの」
そう言いながら駒を動かす姉弟子
正直、このタイミングならどんな事を言っても嘘だとわかってしまう。
「だからそんなにツルペタなんですね」
ここは嘘だと言わずに姉弟子の話しに乗ってみる。
「ぶちころすぞわれ!!」
姉弟子は血相を変えて怒り出し、手に持っていた百折不撓の扇子を俺に向かって投げてきた。
「イタッ! ちょっと、投げないでくださいよ!」
姉弟子のコントロールが悪かったのか、俺はなんとか避けた。
「姉弟子! 自分の扇子なんだから大切にしてくださいよ!」
ほんと、百折不撓君は折られたり、投げられたりと、まったく不憫な子である。
「黙れ! バカ! 変態!」
「俺が悪かったですから、落ち着いてください!」
俺がそう言うと、姉弟子は自分の投げた扇子を拾いに行き、その後同じ場所に座った。
「それにしてもなんで急にエイプリルフールなんて、姉弟子、そういうの興味ないって言ってませんでした?」
姉弟子がエイプリルフールという存在を知っていたことに驚いていた。
だって、ガンダムを将棋用語だと思う人だよ、この人
「別にいいでしょ、なんとなくよ」
「そうですか……」
そんな風に言われてしまっては、何も言い様がないので、そのまま黙ってしまう。
「実は俺、ガチのロリコンで、10歳以下が恋愛対象なんです」
俺もなんとなく嘘をつたくなったので、少し考えたがこんな嘘しか出て来なかった。
「うん……知ってる……」
姉弟子は嘘だと受け取らなかったのか、なんとも言えない顔をしていた。
「冗談ですよ! エイプリルフールじゃないですか!」
「誤魔化さなくてもいいよ八一、私も頑張って受け止めるから……」
姉弟子は哀れむように俺の方を見てくる。
「嘘ですから! 信じてくださいよ!」
「ほんと?」
「本当ですから!」
「…………よかった」
なにがよかったのかは、わからなかったが、俺も信じてもらえてよかった。
「知ってる? エイプリルフールで嘘をついていいのは午前中までなのよ」
「へぇ~ 初めて知りました」
てっきり、いつでも嘘ついていいと思っていたので少し驚きだった。
「今が11時58分だから、もう終わるわね」
「ギリギリでしたね、一回は嘘をつけてよかったです」
あいが帰って来たら、エイプリルフール事を教えてあげよう、なんて考えていると姉弟子が口開いた。
「ねぇ、八一」
どうしたんだろうか?
さっまでとは、姉弟子の雰囲気が違った。
「どうしました?」
ふと、時計を見ると、今は11時59分だった。
「私、八一のことが好き」
「えっ!?」
姉弟子はとんでもないことを言った。
信じられない、姉弟子は俺のことを嫌いなはずなのに
「……嘘ですよね姉弟子?」
凄く嬉しかったが、直ぐにエイプリルフールだと思い出し、姉弟子に聞いてみる。
「…………時間」
姉弟子言われた通りに時間を見ると今は12時ピッタリ午後であった。
「姉弟子、それって…………」
正直、突然すぎて気持ちが追い付いていない
「自分で考えなさい、私は帰るから」
そう言い、素早く立ち上がり歩き出す姉弟子
「姉弟子、将棋の途中ですよ!」
「急用を思い出したの!」
姉弟子は強く扉を閉め家を出て行った。
「…………どっちなんですか」
姉弟子が出て行き、静かになった部屋に自分の独り言が響いた。
姉弟子があの言葉を言い終わった時、午前か午後、いったいどっちだったのだろうか。