俺様だって真剣で幸せになったっていいだろ! (岳人×義経 【習作】)   作:雲寺香月

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俺様とバイクとファミリーと

5月某日(日) 快晴 

 

 

 

 

「ふっふーん、今日もがっつり晴れて、いいナンパ日和だなあ!普段の俺様の行いがいいからだろう。」

 

朝の日課であるジョギングと筋トレを終えて愛車のオートバイを家の前に引いてきた岳人は上機嫌だった。

 

『ヤマハ ドラックスター400(中古)』。遠くまでナンパをするため、深夜の道路工事などでコツコツ稼いでようやく購入した、岳人の愛車である。

 

「今日もヨロシクな、相棒」

 

鼻歌を歌いながら黒く光る車体を丁寧に磨いていると、隣にある寮からファミリーの連中がぞろぞろと出てきたのが見えた。翔一、大和、卓也、クリス、京、まゆっちの6人である。

 

 

 

ファミリーの中で一番早く岳人に気がついた卓也が手を振って来た。

 

「あ、岳人おはよー。相変わらず日曜日だけは早いね。」

 

「毎週毎週実らないナンパの為だけに早起きしてバイク磨いて・・その努力だけは凄いと思う。今回も無駄な努力に終わるのが目に見えてるけど・・。」

 

「うっせえぞ京。お前らこそぞろぞろとどこにいくんだ。」

 

岳人が手を止めて6人を見やると、軍師が手に持った白いボールを投げてきた。

 

「俺たちは河原で野球。珍しく岳人以外全員用事がなかったんだ。」

 

「なあ、岳人も不毛な事やめて野球行こうぜ!女探しに行くよりファミリー皆で遊んだ方が楽しいじゃんか。どうせ今回もだめなんだろ!」

 

「そうそう。彼女できるどころか、ねーちゃんの横にバイク止めて話しかけた時点で警察よばれちまうかもダゼ。」

 

「こ、こら松風っ!」

 

「否定できないところが辛いな。自分の場合は警察ではなくレイピアで攻撃してしまいそうだ。」

 

松風(まゆっちの本音)の陽気な毒舌ととクリスの真面目な頷きが岳人のピュアなハートにつきささる。生まれ変わって20回、タフガイな彼のハートは以前よりちょっぴり弱くなってしまっていた。

 

「うがーっ!言いたい放題言いやがって!見てろ、今日こそ彼女をゲットしてラブラブ写真を見せつけてやるからな!」

 

半泣きになりながら岳人はボールを翔一の顔に向けて投げ返す。

 

キャップはと言えば、ひょいと顔をよけて右手であっさりとボールをとり本当につまらなそうに口をとがらせた。

 

「なんでそんなに外に女が欲しいかねー。彼女なんて変に束縛されるだけじゃん。俺には全然わからねーな。」

 

「ふっ・・歩けば女の方から声をかけられるキャップには俺様の気持ちはわからねえだろうな。束縛ってのは、愛の証なんだよ!そのくらいじゃねえと結婚して家庭なんか一生築けねえんだよ!周り皆の結婚式ににご祝儀だけだして自分は一生もらえない負け組の気持ちがお前らわかるか!」

 

「急に話が大きくなったな。」

 

「まだ学生なのに、まるで体験してきたかのように言うよね。」

 

血の涙を流す岳人と対照的に若干引いてる卓也とクリス。

 

「ていうか、岳人は普段から普通の格好して普通に生活してればいずれ川神(こっち)で彼女できると思うんだけど。」

 

京の言葉にファミリーの視線一斉に岳人の服に向く。緑色の渋いライダースーツは岳人に良くにあっていた。普段過剰に露出している筋肉を完全に隠しつつているのもいい。『身長があり、体が引き締まってる普通のお兄さん』に見える。

それに比べて普段着のタンクトップとジーパンは・・もはや何も言うまい。

 

「川神でモテることは諦めている。俺様が狙うのは外の女のみ。」

 

「なんでだ。普通にしてればいいという京の意見には自分も賛成できる。それに、川神にはかわいい子がたくさんいるではないか。」

 

「なに!なんだクリス俺様に気があるのか!」

 

「どこをどうつなげばそういう話になるんだっ!!」

 

「ふぐおっ!」

 

だらしない顔をして詰め寄って来た岳人の顔面にクリスの怒りの右アッパーが直撃し、巨体が宙に舞う。ドスンと背中から地面に落ちた岳人だったが次の瞬間にはがばっと飛び起きた。むろん無傷で殴られたところは赤くなってもいない。岳人本人も気づいてないが、幾度もの人生で数多の武士娘(筆頭は武神)から鋭い突っ込み(拒否反応)を受けているうちに壁一歩手前くらいの頑丈さを得ていたのである。

 

「しかし俺様は不死身だっ!とうっ!」

 

「わわ!」

 

「こら岳人、クリスをいじめるな。」

 

一歩下がったクリスを庇うように大和が体を割り込ませた。クリスが安心した様子で息を吐いたのが気に入らず、岳人は鼻をならした。

 

「ふん。ちょっとちょっかいかけただけでビビるとはなさけねえ。俺様の純情をいじるからこうなるんだ。」

 

「実際やられたのは岳人のほうじゃないかな。」

 

「うるさいぞモロ!とにかく、凶暴な武士娘や川神のねーちゃんは観賞用って決めてるんだ。手に入らない物ばっかり追いかけるのは疲れたのさ。俺様は、俺様だけの運命の人を見つけるんだ。」

 

岳人は思う。

 

クリスはもちろんきれいだし、昔― 一度目や二度目の人生ではあわよくばと思っていた。しかし、彼女は8回目の人生で大和の彼女だった。クリスのみならず京、ワン子、モモ先輩、まゆっち、クラスメイトの千佳、委員長、武蔵坊弁慶、葉桜清楚(項羽)・・果ては担任の梅先生も過去の人生で大和の彼女だった。

今は何の関係もなくても親友の女を取る気にはならないし、親友の彼女になりそうな女に手を出す気は全くない。

 

だからこうやってじゃれあって、ふっとばされてる関係が岳人には丁度よかった。

 

「というわけで俺様行ってくるぜ!ではな諸君。」

 

岳人は磨きかけだったことも忘れ、バイクに颯爽と飛び乗ってエンジンをかけ格好よくその場をさろうとした。が。

 

「こら岳人!ヘルメット無しでバイク走るなんて母ちゃん許さないよ!ちゃんと被って行きな。」

 

「うおっ。」

 

実家の台所の窓から投じられたバイクのヘルメットが体に当たり、盛大に地面に転倒したのだった。

 

 

 

 

 

20回目の人生・・はたして彼は真剣で幸せになれるのだろうか?




20回目のファミリーと彼の関係をざっくり書いてみました。

ファミリーの中でクリスあたりがこっそり岳人に恋心抱いてくれないかなあなんて思ったけど、全力で拒否されました(笑)

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