俺様だって真剣で幸せになったっていいだろ! (岳人×義経 【習作】)   作:雲寺香月

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朝5時起きで夜9時に帰って来て明日も5時起きだけど書きたかったので書きあげたっ!





俺様とトラックとばあさんと

6月×日

 

時間は交流戦数日前のまで巻き戻る。日曜日の朝早くに、岳人はバイクで千葉県に向かった。

 

しかし、突然のゲリラ豪雨で人が居らず、みるみる道路が冠水してきて岳人自身も命の危険を感じたため、早々に引き返してきたのだ。全身びしょ濡れで川神に帰って来たのが午後3時頃。

 

川神は、嫌がらせのようにからっと晴れたいい天気だった。

 

「ちくしょう、ついてねえなあ。」

 

岳人は川神市に入って一番最初に見つけたコンビニに泥で汚れたバイクを止めた。

 

店の床を泥や雨粒で汚したせいで店員に嫌な顔をされたが気にせず、着替えの黒Tシャツと灰色のハーフパンツ、スポーツタオル、そして大きめのビニールバッグ等を購入しトイレの個室に閉じこもる。

 

人様の迷惑よりまず俺様をどうにかしねえとな、と岳人はトイレに入ってすぐ素っ裸になった。

手洗い場の上の鏡に映る自分の姿に思わずポーズをとってしまったのはご愛敬である。

 

新品のタオルは全身をぬぐうとすぐに黒く汚れてしまった。持ち歩くのも面倒なのでゴミ箱にシュート。

次に、泥水につかってびしょ濡れになってしまったライダースーツを洋式トイレの上で絞る。自慢のパワーで絞り取れるだけ水を出してやったがライダースーツもぐしゃぐしゃになってしまった…。

多少むしゃくしゃしてたとはいえ、俺様ウカツすぎる・・と岳人男泣きの状態で愛用のライダースーツをそっと畳みビニールバッグに入れた。

 

岳人がビニールバッグを右肩にかついでトイレから出た時には、1つしかないトイレの前には3人の人が鬼気迫る表情で並んでいた。すれ違いざまトイレに駆け込んだ一般人にガンをつけられた気もしたが、口笛を吹いたまま何食わぬ顔でコンビニから出る。

 

……俺様だって大変だったんだもん。そう言い訳をしながらそそくさとバイクを道路に向けて、またがりかけたその時である。

 

―コンビニの目の前には大きな交差点があった。コンビニに真っすぐ向かってくる横断歩道を、黒い傘をさしたおばあさんがふらふらと歩いていた。コンビニ側の歩道までおよそ5メートル程だ。

 

歩行者の信号は青。足元がおぼつかないおばあさんだが、今のペースなら問題なく歩道までたどり着ける。

しかし、左のから強引に右折して来るトラックがおばあさんに迫っていた。

 

運転席を見ると、運転手は左手に持つ携帯電話の画面を見ていて、目の前のおばあさんには気がついていない。

おばあさんも足元しか見ておらず、車には気がついていない。

このままだと、ぶつかる・・・!

 

 

「あぶねえっ!」

 

『マープル、危ないっ!』

 

どこかで聞いたことのあるような(・・・・・・・・・・・・・・・)女の子の声と、岳人の声が重なる。―

 

目の前の光景に岳人は反射的にバイクを放りだして10メートル前の交差点に突っ込んだ。

 

1回目の人生、己の身に迫った黒いベンツが脳裏をよぎったが、岳人の足は止まらない。

 

―ここであのばあさん身捨てたら、男じゃねえ!

 

岳人の大きな空だが、宙に舞った。

 

「間に合えええ!」

 

『…!』

 

岳人は巨体と自らの発達した筋肉ですっぽりとおばあさんの体を包む事に成功した。トラックには及ばないが、その衝撃でおばあさんの手から黒い傘が離れる。

細い体を壊さないように抱きしめて庇ったまま、岳人は右肩から道路に突っ込んだ。

 

「ぐっ。」

 

ざりざりと岳人のむき出となった肌と道路が擦れる。痛みはさほど感じなかったが、擦れるような熱さに岳人は無意識に眉をひそめた。

 

持ち主に置き去りにされた傘は、まるで身代りのようにトラックのフロントガラスにぶつかりぐしゃりとつぶれて元の姿を失った。

ようやく気付いたのだろう、横断歩道から車体5個ほど離れたところで停車したトラックから慌てた様子の運転手が転げ出てこちらに走ってくる。

あわや惨劇かとの状況に、周囲には人だかりができ始めていた。

 

「だ、大丈夫ですかっ」

 

「俺様はな。あんたが謝るのはこの人だろ。おい、ばあさん。大丈夫かよ。」

 

岳人は(いまさらだろ俺様が居なかったら昼下がりののどかな風景がスプラッタだぜ馬鹿運転手。こんな奴に免許やるとか教官アホじゃねえの)という内心を隠して、手の中のおばあさんに声をかけた。

が、予想とは外れおばあさんは冷たい目で命の恩人であるはずの岳人を冷たい目で見上げると、体を抱えている腕を振り払って立ち上がった。

 

「ばあさんとは失礼な。あたしゃ大丈夫さ。あんたが助けてくれなくても大丈夫だったさ。くそ、こんなめまいさえなけりゃこんな気持ち悪い男にさわられることもなかったのに・・・。」

 

パンパン、と体の泥を落として踵を返したおばあさんは茫然としている岳人を一瞥して一言。

 

「助けようとした心意気に免じて、タダでアタシの体に触ったことは不問にしよう。じゃあね。」

 

「な、なんだよ!その言い草!いくらなんでも俺様に失礼…」

 

驚きに怒りが追いついて来た岳人がおばあさんに詰め寄ろうとした時、おばあさんはその場から一瞬で姿を消した。

そう、まるで今までそこに誰もいなかったかのように。

 

そして、空気を全く読めない若い運転手が一言。

 

「…えっと。もしかして今のは夢だったのかな?ラッキー!仕事クビになるところだった。」

 

「んなわけあるか!あのババアも腹立つが、お前も人殺しそうになって仕事の事気にしてんじゃねえ!」

 

岳人は跳ね起き、擦れて血が滴っている右腕を怒りのまま運転手の脳天に振り下ろす。ぐえ、と運転手が変な声を出して地面に倒れた。

岳人は心配してやる義理も気力も全くなくなって、イラついた様子を隠そうともせずにコンビニの方向にいるギャラリーに向きなおりガンをつける。

 

「おい、見世物じゃねえ。どけ。」

 

「は、はい。・・その、救急車は。」

 

「いらん!」

 

最後に集まってきたギャラリー全体を一睨みして散らし、コンビニに置き去りにしたバイクのそばまで戻って来たところ…盛大に倒したせいで、横のボディが陥没していた。

 

走れなくなる程の傷ではないが、修理に出さないと格好悪い。

踏んだり蹴ったりの状況に岳人はその場に膝を付き、頭を抱えて叫んだ。

 

「厄日だああああ!」

 

『ようやく、現場についた!』

 

その叫びに、また先ほどと同じ少女の元気そうな声が重なる。頭を抱える手を強引に取られ、岳人は無理やり右に引っ張られた。

 

「うおっ、なんだあ?」

 

「君がマープルを助けてくれたのか!義経では間に合わなかった。ありがとう、本当にありがとう!」

 

空気を読まず、岳人の手を握って頭を下げる美少女。その瞳には涙まで浮かべていて、本当に岳人に感謝している様子である。

 

「…義経、だと?」

 

予想外の美少女の登場に、岳人は唖然とした。今までの人生で、こんなところで彼女に会った事はない。

過去になんどかすれ違った源義経のクローンがそこにいた。




こんばんは。

浮かんだ場面を呼び起こしながら書くから時間軸が前後していまいました。
精進せねば。
でもきちんと義経は出した!(最後にちょっぴり)

うちのマープルさんはちょっと持病もどき持ちです。



ちょっと立ち寄って読んで下さる方、お気に入りしてくださる方、感想してくださる方、みなさんありがとうございます。
感想全部大事に読んでます。
返信遅れてますがちゃんと返しますので、もうちょっと待っててください。
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