俺様だって真剣で幸せになったっていいだろ! (岳人×義経 【習作】) 作:雲寺香月
楽しんでくれるといいなあ。
6月▽日
東西交流戦、クローン組とロリ&おっさん1年生の転入事件から数日が経った。岳人本人はもちろんピンピンしているし、事故で壊れたバイクは新品同様になって岳人のもとに帰ってきた。
それに対してボロボロなのは転入時に義経と決闘したワン子である。ワン子は、壁を越えた姉には遠く及ばないものの、決して弱くない。岳人が生きてきた今までの人生の中でも、何度か義経と対戦しているがいつもいい勝負をしていた。
だが、今回は違う。学長の開始の合図と同時に飛び出したワン子得意の薙刀を最小限の動きで躱して、すれ違いざまの一瞬でワン子の右肩を切り上げた。
その一撃でワン子は右肩を骨折、戦闘続行不可能となりあっさり決着がついてしまったのだ。負けたワン子も、なぜか勝った義経も茫然としていた。
義経の圧倒的勝利に殆どの川神生は歓声をあげたが、ワン子サイドの人間からしたら面白いはずもない。
岳人はパンチラ写真狙いのヨンパチと一緒に決闘を見ていたためその場にはいなかったが、その試合を見ていたモモ先輩は許可さえあればすぐにでも戦いに飛び出ていきそうな様子だったし、キャップは周りも見ず興奮して義経をほめるし、対照的に仲間思いの京やモロは黒いオーラをあたりにまき散らす勢いで義経を睨みつけていたらしい。
皆を抑えるのは骨が折れたよ、と、教室で合流した大和は疲れた顔で言っていた。
その役割はモテモテの道をたどるお前にしかできねえよ、という意味を込めて大和の背中を軽く平手で叩いたら「なにするんだよ!」と涙目で睨みつけられた。
学生生活を繰り返すたびに大和がひ弱になってる。きっとモテ度に比例して打たれ弱くなってるんだろう。
にしても、今回の人生はなんかいつもと違うと、岳人は感じていた。
義経。彼女だけが今までの人生と違い、『浮いている』気がする。マープルとかいう人を助けたことで知り合った彼女は、なんと東西交流戦のあとに俺を見つけて走ってきてあいさつをぶちかますという事件を起こした。転校したあともあいさつと、2-Sからわざわざ俺に会いにきたしな。プチリア充の気分を味わえた。そして弁慶に『主をたぶらかすとは・・このゴリラ、ゆるさん』とか言われて突然錫杖でぶんなぐられた。壁に体がちょびっとめり込んだ。いてえよこのやろ。
義経がかばうから、また弁慶からの殺気がすさまじいことになってたし。マジで今回の死因撲殺かと思った。
空気の読めないワン子がその馬で義経に歓迎の決闘を申し込んだから、そんな空気ふっとんだけどな。
てか、今回の人生の義経がマジ強い。今までにないくらい強い。チートなモモ先輩ほどじゃないけど、ここまで特定の人が強化されたのははじめてだ。
変わったことといえば、俺様が川神じゃなく外に彼女を作りに行っていることか。それがこのクソみてえに狂った人生周回に影響を与えているなら、嬉しいんだがな。
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そんな岳人とはといえば、決闘の日の放課後、童帝(ヨンパチ)からの命令で、売れそうな女子の写真もしくはアイテムを探して校内をうろついていた。
今回は義経が好意的なせいで、危うく魍魎の宴からはじき出されそうになっているのだ。いくら川神女、武士娘から手を引くと決めたとはいえ、魍魎の宴の参加から手を引くのは健全な男としておかしい。
彼女にするとしても、義経が美少女なのは認めるが俺様の好みとしては胸と尻の肉付きがもうちょっとあるほうが・・ゲフンゲフン。
などと妄想しながら、岳人は隙のある美少女を探していたのだった。
最終的に岳人が向かったのは、弁慶たちが転校してきたときに必ずできていた非公認の部活、だらけ部。今は大和が髭先生と使ってるんだっけか?それとも弁慶がもう入ってだらけ部になってるのか。このへんの時期は何回体験してもわからん。…俺様はだらけ部に入ってないからなあ!!入れてくれって頼んだこともあるが、大和にすげなく追い返された。ちくしょう。
それはさておき、弁慶が入っていたら、こっそり寝顔の写真撮って逃げることもできるかもしれん。
部屋に入る前にぶちのめされるのは勘弁なので、岳人はスパイのようにだらけ部のあるところに入る通路の廊下の角に張り付いて、そーっと向こう側をうががってみた。
そうしたら、なぜか、義経がはらはらと落ち着かない様子で、だらけ部の部室の戸に張り付いてこっそり覗いているのを見つけてしまった。流石の俺様も予想外だったぜ。
義経はこちらには全く気が付いてないようで、弁慶ほどではないが引き締まった尻が、彼女が動くたびに無防備にふりふりと揺れる。
これはもしやシャッターチャンスというものじゃないのかね!!
岳人は俊敏な動きで膝立ちになり、取り出した携帯電話のカメラを義経の後ろ姿に合わせる。斜め下のアングル、義経のスカートの中身がちらりと見える。た・ま・ら・ん!
岳人が震える指でボタンを押すと、ピロリロリーンと、間抜けなシャッター音が大きく廊下に響いてしまった。その音に驚いて携帯電話を落としてしまう。
慌てて拾おうと身をかがめたときに、義経がのぞきをやめてこちらを見たのが視界の端でわかった。
そりゃあね、こんだけ大きな音を出したら気づかれますよね~。
「し、島津君!?」
「よ、よう義経。こんなところで奇遇だなあ、あっはっはっは。」
岳人は白々しく挨拶をしながら、膝立ちのまま落とした携帯を拾って、ズボンの後ろポケットにさりげなく戻す。おそるおそる義経の様子をうかがうと、どこから取り出したのか刀を両手に持ったまま真っ赤になってプルプルしていた。
そのまま猛スピードで走ってくる。終わった。
…強化された義経にぶちのめされたら、入院何か月くらいでもどってこれっかな。
だが、岳人の予想と違って、義経は岳人の目の前に膝立ちになって目線を合わせてきた。うるんでいる純粋な目を見ていられず、明後日の方向を向く。
「みた、よね?」
「はい…。」
嘘をついても無駄だろうと岳人は頷く。
ばっちり見えました、きれいな白色。一瞬だけど目にやきついております、はい。
それを聞いた義経がゆっくり立ち上がるのを見て、岳人は目をつぶった。こういう場合はぶちのめされてボロボロになるのがいつものパターンである。逃げたら余計罪が重くなってひどくやられるので、おとなしく待っていたほうがいいと今までの人生で学んだ。
別に殴られたいわけじゃねえよ!逃げれないから仕方ねえんだよ!
しかし、義経のとった行動は岳人の想像をはるかに超えていた。彼女はいきなり岳人の左手をとると、いきなり走り出したのである。見かけによらない怪力に引っ張られて、体が宙に浮く。
岳人はそのまま顔面から地面に一度激突して跳ね返ったあと、なんとか二本足で地面を蹴る態勢に戻った。顔がいてえ。
「おい、どうしたんだよ!」
「いいから、ちょっとこっちに来て!」
「は・・!?」
わけもわからぬまま、岳人は額から血をだらだら流したまま義経に引っ張られるしかなかったのだった。