俺様だって真剣で幸せになったっていいだろ! (岳人×義経 【習作】)   作:雲寺香月

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俺様と水上体育祭2

昼休み。学長の計らいで特等席で水上歌合戦を堪能しながら風間ファミリーは昼食を堪能した。

 

一時は持ち歌の納豆ソングを披露した松永燕が優勝かと思われたが、燕にデレデレしている大和を見た京が発奮、飛び入り参加して優勝をかっさらった。

久々に本気の京の歌を聞いた風間ファミリーの面々は、歌に関して本気の京に勝つならプロの歌手でも難しいと、改めて思った。

その京は、表彰式後の優勝者のコメントの際に、全校生徒前で大和に告白したが、あらかじめ予測していた大和は京ルートを回避しお友達でいることに成功し、全校の男どもほぼ全員(岳人含む)からブーイングをもらっていた。

 

そして、歌合戦の優勝賞品『地元商店街で使える食事券』は、京の発案で風間ファミリーの体育祭打ち合げに使うことになった。『大和が告白を受けてくれたら二人きりで食事デートでもとおもってたんだけどね、ククク』とは、京の談であるが。なんにしても京様様である。

 

競技の方だが、午前中が終わった時点で、2Fの順位はS組、A組に次いで3位。主力がほとんどいなかった状態を考えると大健闘だ。

午後は得点の高い団体競技が多く、逆転優勝も夢じゃあない。

最初の競技は水上レスリング。各クラスから選ばれた選手2名が不安定な浮島の上で乱闘し、落ちずに残っていれば多くポイントが入る。

出場前に人脈を使っていち早く多クラスの選手を把握した大和の指示で、F組からは男子は岳人と忠勝、女子はクリスと一子が出場することになった。

 

「この水上レスリング部門は男女のどちらか優勝しないと、逆転がきつくなる。だからみんなには死ぬ気で頑張ってほしい。まず女子だけど、S組からは弁慶と不死川がエントリーしてる。弁慶と不死川が連携をとるとは思えない。クリスとワン子はスピードで攪乱しながら二対一になるようにしながら戦ってくれ。二人なら必ず勝てる」

 

大和の指示に、二人は頷く。大和としては、クリスが『二対一なんて卑怯だ、自分は正々堂々と戦う』とか言い出したらどうしようかと心配していたのだが、杞憂だったようだ。

 

「わかったわ!毎日お姉さまについて走っているんだもの、スピードでこの二人に負けるわけにはいかないわよね」

 

「それに、大和が信頼して自分達にまかせてくれたのだからな。騎士として期待には応えなければ。行ってくる」

 

やる気満々で二人は海上の浮島に向かっていった。二人の遠ざかる背中を見つめながら、大和は二人の前では見せなかった不安げな表情でため息をつく。

 

「不死川はともかく、弁慶はかなりの強敵だよな。うまく戦ってくれればいいんだけど」

 

「何言ってんだボケ。軍師が選んだ選手を信頼しないでどうすんだ」

 

「いてっ!あ、ゲンさん」

 

大和の頭を、女子の歓声とともに歩いてきた忠勝が強めに小突いた。忠勝にとっては、大事な幼馴染が信用されてないというのは看破できることではない。

 

「もちろん、信頼はしてる。ただ、普段のあいつらを知ってる分、心配もあるわけでさ」

 

「そうだとしても、弱気な顔をみせんじゃねえよ。今はお前が2-Fの大将なんだからな。胸張って立ってりゃそれでいい。俺たちはそれに全力で応えるだけだ」

 

忠勝らしい不器用な励ましだった。

 

「ありがとう、ゲンさん」

 

「礼を言われることじゃねえ。大将が弱くみられるとクラス全体がなめられるから言っただけだ」

 

「…ゲンさーん!」

 

フンと鼻を鳴らしてそっぽをむく忠勝。大和は感極まって抱きつこうとするが、忠勝にあっさりかわされため頭から砂地に埋まってしまった。

大和は、優しく抱きとめてくれてもいいじゃないか、でもそれだったら忠勝が忠勝じゃない、ツンデレな忠勝の良さは自分だけが知っていればいいのだ、と思った。…頭を打って少し錯乱しているようである。

 

「そんなことより、男子の方はどうなってんだ?」

 

「S組は与一と九鬼英雄がエントリーしてるよ。他のクラスはまあ、岳人とゲンさんの敵じゃないね」

 

「九鬼英雄か…」

 

口に入り込んだ砂をはきだしながら、砂だらけのまま立ち上がった大和。次いで体についた砂を手で払っていたら、さりげなく忠勝が後ろに回り込んで背中をやってくれた。やはり優しい。

 

「与一は、午前中のサボりでかなり弁慶に絞られてた。たぶん命がけで挑んできてる」

 

監視二人がいないのをいいことに、ダラダラ競技していたことがバレたらしい。

昼食中に、S組のほうから与一の悲鳴があがっていたし、負けたらさらに折檻が待っているとなると本気で優勝を取りにくるだろう。

 

「ま、いざとなりゃ島津が何とかするだろ。こんな競技はあいつにもってこいだ」

 

「ゲンさんも頑張ってくれないと困るんだけど」

 

「女子達みたいに連携はとれねえだろうが、やるだけやってやるさ」

 

忠勝はそういうと、片手をあげてどこかへ去って行った。

大和はその背を見送った後、岳人にも相手を教えてやろうとあたりを見渡したが、当の岳人はヨンパチとともに美女ウオッチングをしてたので、近づくのをやめた。忠勝の言っていた通り、相手が誰だろうと、岳人なら大丈夫だろうからと、自分の中でいいわけして。

 

 

 

水上レスリング女子の部は、まさに大和が予想した通り進行した。まず、乱戦の中で注意を怠った不死川を一子が先に落とし、最終的に弁慶対一子、クリスの二対一に持ち込むことに成功した。

その後、予想以上に速い弁慶の動きに苦戦するも、弁慶が一子を海に突き落とした時のわずかな隙をついて後方からクリスが渾身の体当たりをぶちかました。弁慶は踏ん張ろうとしたが、耐え切れずに落下。F組の勝利となった。

 

その様子を、より近くでみていた次の男子部門の選手達もおおいに盛り上がったのだった。

中でもS組の九鬼英雄が、滂沱の涙を流して一子に向かって手を振り続けていて、周囲の選手は引いていた。不幸にも偶然隣にいた忠勝も迷惑そうに片耳をふさいでいる。

 

「うおおおー!一子殿おおおお!惜しかったぞーー!」

 

「うるせえよ。なんでS組のてめえが喜んでんだ」

 

「一子殿の勝利は我がクラスの勝敗にも勝るのだ。それに、この敗北は今から我自身が取り戻すので、問題ない。一子どのー!お、今手を振ってくれた!次は我の番、しっかりとその目に焼き付けてください!」

 

浮島につかまりながら、苦笑しながら手を振りかえす一子を視界に入れて、英雄のテンションがさらに上がる。

忠勝はそれが面白くない。

 

「どこのアイドルのファンだ。けっ」

 

燃える九鬼英雄を放置して、離れた位置で準備運動をしている岳人のところに向かった。

 

「おい、島津」

 

「なんだ?」

 

「一子たちみたいな戦い方は俺らにはできねえ。各個撃破でいくぞ。それで、」

 

「九鬼英雄は譲れってことだろ」

 

忠勝の言葉をさえぎって、岳人はにやりと笑う。忠勝が一子に秘めた思いを抱いているのは知っている。どのくりかえしの人生でも、どんな結果になろうとも、一途に一子を想い、幸せを願っていた忠勝。その武士のような男らしさを、岳人は認めていた。

 

「与一とその他雑魚は俺様に任せな。思い切りぶん殴ってこいや」

 

意外な返答に、忠勝は驚いたようだった。だが、すぐ不敵に笑って岳人にむかってこぶしを突き出す。

 

「おう。直江の話じゃ、与一も命がけできてるらしい。余裕見せたまま格好悪く落ちんじゃねえぞ」

 

「誰に物いってんだ。拳での殴り合いでまけねえよ」

 

「フン」

 

ゴツン、と二人の拳が合わさった。

 

そして、水上レスリング男子部門が、いよいよはじまる。

 




見事、主役をゲンさんに奪われた岳人でした(笑)
競技に入ったらどこで切っていいかわからなくなったので、こんな感じに。




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