いつも眠そうな轟のクラスメイトがヒーローを目指すお話。 作:Re.
俺の親父はエンデヴァー。
No.2ヒーローとしてのプライドを「成功作」の俺に押し付けて帰って訓練の繰り返し。
つまり、何が言いたいかっていうと学校にそこまで執着はねぇ。
3年になり、クラス編成が行われた。勿論俺には同じクラスだなと喜ぶ人間が居るわけでもなく、高い声で話しかけてくる女子や俺の親父を知って繋がりを持とうとする男子に興味があるわけでもない。
クラスメイトなんてものに興味もない俺がほんの少しだけ目で追う男子が居る。
隣の席の黒川 律。テストの成績は俺に続く2位で、成績優秀だが授業はいつも寝ている。
艶のある黒髪と整った顔立ちからか女子はよくあいつに近寄り、男子は恨めしそうにそれを見る。
だが、本人の素っ気ない態度と口数は少ないが男子に話しかけられるとノリがよく面白いことから男子から嫌われておらず、寧ろ好かれている。
成績がよいからと鼻にかけず、授業中寝て先生に毎日怒られていることも親しみやすい原因かも知れない。
ヒーローの息子ということでクラス替えがあって暫くは男子から次々に話しかけられたものだが、口数が少なく表情をあまり変えない俺に話しかける男子はあまりいない。黒川を除いて。
「おい、あいつエンデヴァーの息子なんだって!」
「だからあんなに調子乗ってんだろ。俺達にはキョーミありませんってな」
「滅多に笑いもしねぇし、まじで愛想悪いよな」
こんな陰口はいつもの事で、俺のことをよく知りもしない女子が毎度のこと男子に注意して余計にヒートアップするのがいつもの事だった。
またか、ほんとめんどくせぇ
嫌いなら構わなきゃいいのに、と心の中で溜息をつく。
でも、その日は違った。
「お前ら煩いんだけどー」
明らかに自分達に向けて言われた言葉によって男子達は口を閉ざした。
「は、黒川、そんなやつの味方しなくてもよくない?」
「それな、お坊ちゃん庇う理由とかないっしょ?」
さっきより勢いを失くした彼らの言葉に首を傾げて黒川は言った。
「え?何の話ー?てか、俺今めっちゃ眠いんだよ、いいとこだから静かにしてー」
そう言って顔を机の上の手に埋めて寝る体勢に入った黒川に男子達が何かを言えるわけでもなく興が冷めたようで自分達の席に帰って行った。
黒川がほんとに煩いと感じたのか、それとも俺を庇ったのか、クラスの誰も知らないだろうが、
口をぽかん空けながら隣を見る俺は黒川の目が一瞬こちらをチラッと見たのを見た。
その目は授業中の眠そうに瞼を閉じる目ではなく、本来のパチッと開いた目だった。
「轟、おはよー」
椅子が引かれる音で意識を戻すと隣には黒川が立っていた。
「あぁ、おはよう。」
俺の素っ気ない返しに気を悪くしたわけでもなく、横に座ってうとうとと頭を揺らす優しい黒川の秘密を俺だけが知っている。
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黒川に助けられてから数日後
日課の朝のランニングをしようとドア開いて暫く走った時に会ったのは同じクラスの黒川だった。
「…黒川?」
俺の声に反応して自転車を止めて振り返った黒川は目を丸くした。
「轟じゃん。早いねー」
「バイトか?」
自転車の荷台に積まれてる新聞を見ながら言った俺に黒川は頭をかいて笑った。
「おー、俺の家両親いなくて貧乏だからさ」
「そうか…」
「あ、でも大家のばーちゃん居るし困ってないけどな」
軽々しく「大変だな」と言うことも出来ず口を噤む俺を見て黒川はへらっと笑って
「だから今度ハーゲンダッツでも奢ってくれていいぜー」と付け足した。
「じゃ、俺そろそろ行くわ。ランニング頑張れよー」
手を振る黒川に手を振り返していつも眠そうにしてるのはそういうことだったのか、と納得した。
そして黒川にこの前のお礼を言い忘れたことに気がついて眉を寄せた。