いつも眠そうな轟のクラスメイトがヒーローを目指すお話。   作:Re.

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俺のクラスのイケメン(轟 焦凍)の話

ちょっと弁当持って来てくれないかと誘われて、昼休みに屋上に行く背中を追う俺 即ち黒川 律は同じクラスの轟がまっすぐ進む姿を後ろから見ていた。

 

ん?ご飯一緒に食べようってことなのかね?

 

 

「急に悪いな」

 

屋上にできる影の下で弁当を広げながら轟は目を泳がせた。

 

「いやいや、別に気にしてない。今日の朝ぶりだなー。いつもあんなに早く走ってんの?」

 

メロンパンを一つ口に入れる黒川に頷いて、口を引きつらせた。

 

 

「黒川…お前、昼ご飯それだけじゃないよな?」

 

黒川が持っていたビニール袋にメロンパン以外の膨らみはない。

 

 

「?これだけだけど」

 

口を引きつらせる轟を不思議そうに見てもぐもぐと口を動かす黒川を見て轟はある決意をした。

 

(黒川が餓死しないように俺が面倒をみよう。)

 

 

「ところで、急にどうしたん?」

 

「あ、黒川、これ…やる」

 

 

差し出された保冷バッグを開けるとそこにあるのは

「ハーゲンダッツ」

 

 

「な、!おま、轟!朝、俺が言ったの冗談だったんだぜ!!!?」

 

 

黒川は自分の言ったことに律儀にハーゲンダッツを差し出す轟が近いうちに詐欺に巻き込まれないだろうかと心配になってきた。

 

 

「いや、丁度貰い物で家にあったから食っていいぞ」

 

 

この前のお礼にと差し出す轟、黒川もハーゲンダッツの誘惑には勝てずに「さんきゅーな!」と頬を緩めながら食べている。

 

 

「そういえばさ、俺お前のこと名前で呼んでいい?轟って言いにくいし」

 

「…あ、あぁ!構わない」

 

 

「了解、しょーと。俺のことも律でいいから」

 

「分かった。…律これから一緒にここで飯食ってくれないか…?」

 

轟は自分が何を言ったかも分かっていなかったが、初めての心置ける人間に対しての本心だった。

 

「当たり前じゃん。友達だしー」

 

 

さらっと笑いながら返事をした黒川に轟は珍しく笑顔で笑った。

 

 

 

 

_________________

 

 

それから、屋上で毎日ご飯を食べるのは普通のこととなり毎日のように轟が黒川に差し入れをすることとなった。

 

「しょーと、毎日こんなに貰っていいのか?」

 

「余り物で悪ぃ(ほっといたら餓死するかもしれねぇ)」

 

「いや、全然それはいいんだけどさ…」

 

 

「律、良かったらだが今週の日曜、家に来ないか?」

 

 

「しょーとの家に?いいけど、どうかしたの?」

 

 

「いや、姉さんが連れて来いって煩くて…、日曜なら親父も居ないし話したい事があるんだ」

 

 

轟の姉 冬美は毎日、機嫌よく学校に行く焦凍を見て「何があったの!?」と問い詰めたそうである。

 

 

律も、轟の家に事情があるのに薄々気づいていた。それが、しょーとがお父さんと仲が悪いことと、火傷の痕に関係することも。

 

 

だが、深入りせず「友達だからって全部話さなきゃいけないってことは無いんだぜー」と笑う黒川に轟は自分の全てを話すことを決意した。

 

 

律なら、自分のことのように悲しんで聞いてくれることが分かっていたからだ。大切にしたい親友に隠したくはなかったのだ。

 

 

 

____________

聞いた住所にある家は非常に大きく流石ヒーローの家だなぁと感心した黒川は呼び出しのインターホンを押した。

 

 

鍵の開く音とともにサッと開いた扉の前に居たのはしょーとではなく、女の人だった。

 

 

「いらっしゃい!!律くん!!」

 

にこにこと笑う女性がしょーとのお姉さんだと気づいて挨拶をしようとした黒川の声はお姉さんの後ろから飛んできた声にかき消された。

 

 

「姉さん!勝手に開けないでくれ。律が困ってるだろ」

 

 

疲れた顔で睨むしょーとに手を振って

 

「初めまして、黒川 律です。今日はお邪魔します」

と腰を折った。

 

「焦凍の姉の冬美です!ゆっくりしていってね〜」

にこにこと心からの笑みを浮かべる冬美さんに律はお礼を言った。

 

 

 

 

「ほんと、悪い…。この前から律くんはいつ来るのって煩くて…驚かせたよな」

 

顔を顰めて謝るしょーとに律は「可愛いお姉さんで羨ましいなー」と朗らかに笑った。

 

 

清潔感溢れた部屋で、整頓されているのを見て黒川は

「しょーとっぽい部屋だな!」と辺りを見回した。

 

焦凍は律に自分の過去を話した。律は目をそらすことなく見つめながら真剣に話を聞いていた。

 

母のことと火傷の痕のこと、炎の個性を使わないこと、クソ親父への憎しみを全て。

 

 

 

「話してくれてありがとな。上手くは言えないんだけど…、変わらないことはさ…俺とお前が親友だってことだ。きっとしょーとはこれからも大変だと思う、きっと傷つくと思う。でも俺はそばに居るからさ…ちゃんと頼れよ」

 

黒川は俯く轟の頭に手をのせて、軽く叩きながら、そう言った。

 

 

「…あぁ、さんきゅ」

 

轟は手で垂れる涙を拭きながら優しい友の手の温かさを噛み締めた。

 

 

「俺さ、ヒーローになるわ。世界中のみんなを救いたいわけじゃないんだ。でも、大事な人を護れるようなヒーローになりてぇ。一緒に雄英高校入ってさ……一緒になろうぜヒーローに!」

 

 

律がそう言って笑うのを見て焦凍は「あぁ」と笑った。

 

 

(お前は、もう既に俺のヒーローだ。)

 

 

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