ちなみに私の推しキャラはダイワスカーレットとトウカイテイオーです。
「芳香ちゃん……」
「リーネちゃん……?」
マロニーが第501統合戦闘団を宣言した数時間後に宮藤は医療室で目が覚めた。辺りを見渡すと人狼を除く全員がその場に居た。
リーネは親友である宮藤が目を覚ましたことに安堵し、周囲の空気も若干ではあるものも柔らかくなった。
「よかった」
「皆、私……」
「さっき滑走路で倒れたんだよ」
「蓄積した疲労とショックで意識を失ったの」
「そうだ!あのウォーロックってなんかおかしいし、ハインツ大尉の捜索もしないと!皆でやればなんとか―――ッ」
宮藤はリーネたちの足元にボストンバックが置かれていることに気づいた。嫌な予感が脳裏を横切った。
「皆、それは?」
「命令で今から私たちはここを出なきゃいけないの」
「それじゃ、やっぱりウィッチーズは解散……」
「……うん」
改めて冷酷な真実を目の当たりにした宮藤は涙をポロポロと流して泣き崩れた。自分の浅はかな行動が解散のきっかけとなってしまったことに罪悪感を抑えきれなくなったのだ。大粒の涙がシーツを濡らす。
「ごめんなさい……皆っ」
「芳香ちゃん……」
「ごめんなさい、ごめんなさい。私のせいで……!」
「違うよ。そうじゃないよ!」
「芳香、元気出せ!」
「ごめんなさい…ごめんなさい……」
今の芳香にはただ泣きながら皆に謝ることしかできなかった。少女にこの重責は重過ぎたのだった。リーネとルッキーニは慰めるために激励の言葉をかけるがさほど効果はなかった。
「ハルトマン大尉。貴女、マロニー大将がハインツ大尉のことを暴露してた時に何か知っている様子だったが何を知っていたの」
「本当かハルトマン」
「……うん。そうだよ」
宮藤が泣き止んで多少落ち着きを取り戻した頃、ミーナはハルトマンに先程の反応について訊いた。人狼が行方不明で気掛かり気味であったバルクホルンは食い入るように反応した。彼女は人狼の
一度、通路に誰もいないのを確認したハルトマンは真剣な眼差しで深呼吸をする。
「皆、ちょっと過激な話になるけど大丈夫かな」
「……いざとなったら私がルッキーニの耳を抑えるから」
「わ、私もサーニャのことは守るからナ!」
「ありがとうエイラ。けど私はそんな子供じゃないわ」
「じゃあ話すね」
重々しい雰囲気が室内に立ち込めてくる。覚悟して聞き入れようとする者、何が明かされるかわからずに怯える者の二極に分かれるが共通してその場から立ち去ろうとする者は居ない。
誰もが人狼の過去について知りたがっていた。
「ハインツ大尉は北アフリカ戦線で活躍したのは知ってるよね」
「もちろんだ。そこでマルセイユとの関係やエジプト奪還の立役者になったと報道されていたな」
「そのニュースはリベリオンにも届いたぜ」
「私も聞いたことある!」
「そうだね。そしてハインツ大尉と親身になっていたジェネフ・アイヒマン大尉率いる山羊隊がスオムスに行ったんだ」
スオムス、そこは小国でありながらも第二次ネウロイ大戦の初期からネウロイと交戦して前線を維持し続けている国だ。
何故そんな小国が戦線を維持できているのか、それには二つの要因があった。
一つ目は各国からの支援物資だ。仮にスオムスがネウロイによって占領されてしまうと欧州奪還の拠点となっているブリタニア本島にも脅威が迫ることになる。それを避けるために比較的余裕のあるリベリオンやブリタニアといった国々が支援をしていた。
二つ目は優秀な兵士が指揮及び戦闘に従事していることだ。数々のネウロイの攻勢を跳ね返し要所の奪還に成功してきた名将マンネルハイム。あがりを迎えてもいまだに陸戦ウィッチとして活躍するエイラの姉アウロラ・E・ユーティライネン中尉。
しかし、1943年にネウロイの大攻勢が数々の予兆から予想された。いくら二つの要因が戦線を支えてきたとはいえ大攻勢に耐えきれるかとなれば話は変わる。そのため各国の軍隊は優秀な人材をスオムスへ派遣する算段をつけたのだ。
各戦線から優秀な兵士や兵器がスオムスに派兵されて、その中には人狼とジェネフ率いる山羊隊が含まれていた。
「そういや、その頃にハインツ大尉と会ったっけカ」
「エイラそうなの?」
「うん。担当区域が違ったからあまり関係を持たなかったけど今みたいにギラギラしてなかったナ。それとアウロラ姉ちゃんが事あるごとにハインツ大尉の電報打ってタ」
人狼が1943年にスオムスに派遣されたが、すでに1939年に義勇軍として赴いていた。そこでは義勇独立飛行中隊、通称いらん子中隊で全隊員及び将官から絶賛されるほどに活躍していた。
なおエイラが親愛するアウロラは人狼を弟にしたい公言するほどに溺愛しており、度々送られてくる人狼を賞賛する電文にウンザリしていた。
「よくダイナモ作戦と北アフリカでの活躍が取り上げられてたけど1939年から兵士として従軍していたわね」
「あぁ。なんならダリアの時からいるぞ」
「マジで歴戦のエースだよな」
「すごいね!」
「うん。それでハインツ大尉と山羊隊はネウロイと激戦を繰り広げていくんだ。だけどそんな中、悲劇が起きた」
「悲劇?」
「その山羊隊がネウロイとの一戦で全滅状態、誇張抜きで生存者なしになるんだ」
「待て。いくら親しい関係を気づいていた部隊とはいえ、戦死したぐらいであそこまで冷酷になれるか?それにあいつは戦場で長く生きてきたから多く経験しているはずだ」
バルクホルンは疑問を抱いた。戦場では親しい兵士と死に別れてしまうことはよくあることで、心に傷を負うことはあっても今の態度に至るにはいかないと考えたのだ。
ハルトマンはそんな疑問に返答した。
「確かに山羊隊はネウロイにやられた。けど精鋭中の精鋭が一戦で全滅状態になるにはわけがあるんだ」
「わけ……だと?」
「それがハインツ大尉を変貌させた元凶だよ」
「……もったいぶらずに教えてくれ」
「いいけどここから刺激が強くなるからシャーリーよろしくね」
「よしきた」
ハルトマンの忠告に沿ってシャーリーはルッキーニの耳を前もって塞ぐ。
これから衝撃の事実が暴露されるとなるとバルクホルンたちは緊張で顔が強張り、息を呑んだ。
ハルトマンも覚悟を決めた様相で固く閉ざされた口から重々しく言葉を発した。
「ネウロイを信仰するカルト宗教が関与していたんだ」
「それって!?」
「まさか!?」
「その通りだよ。後々掃討することになる教団さ。彼らの妨害工作で戦車の故障が起きた状態で通信網が途絶、そして部隊は孤立しちゃうんだ」
「そ、そんな!」
「に、人間同士がそんなことをするなんて……」
「酷い……」
明かされる人狼の真実に多くの者が口を押えて絶した。何故なら彼女らにとって自国の格差や目線があるとはいえ、手を取りあえばどんな状況でも打開できると信じていたからだ。
「……スオムスの一件は聞いたことはあります。けどハインツ大尉が関わっているだなんて……」
「親しかった人を間接的に殺されたハインツ大尉は教団に復讐心を持ってしまった。南リベリオンに帰還した後、彼は掃討部隊に志願して世界中を回ったんだ」
「……人を殺しすぎたからあいつはあそこまで」
「けど彼の行為は決して賞賛されることではないけど、ある意味私らを守ることになったね」
「確かに大尉の活躍が無ければ私たちは信者たちの妨害工作を受けていたかも知れません」
結果的には人狼の行った行為は正しかった。女子供問わずに信者を虐殺することで妨害工作に対する抑止力として機能したのだ。現に信者による妨害工作は行われていない。
バルクホルンは人知れず心を病んでまでネウロイとカルト宗教に立ち向かった人狼のことがいたたまれなくなり、部屋を飛び出そうとする。そんな彼女をシャーリーが引き止めた。
「何処に行くつもりだ」
「……ハインツを捜しに行く」
「すぐに此処を出ないとマズいぞ」
「トゥルーデ、やっぱり本気なの?」
「当然だ。あいつは私が支えないと壊れてしまう」
バルクホルンはかつての自分と人狼を重ねていた。妹を一時的に喪失し、その責任を背負い自暴自棄になっていた自分と陰ながら連合国を支えるために狂信者を掃討したが故に心を病んだ人狼、環境こそ違うものも両者には似通う要素があった。
自分が宮藤に助けられたように今度は自分が人狼を助けようとしたのだ。
「……もう修復できないぐらいに壊れているかもしれないのに?」
「それでもだ。あいつは私みたいに何でも独りで抱え込んでしまう不器用な人間なんだ。けど重荷を独りで抱え込むなとミーナが教えてくれた」
「トゥルーデ……」
「だから私はあいつを支えてやれる存在になりたい。一緒に泥水を啜って醜態を晒していきたい。そしてハインツ・ヒトラーという人間を救いたい」
バルクホルンは恥じらいを持たずに人狼を生涯の伴侶とするような告白を披露する。これは本心なのだろう。それほどまでに彼女の意思は強固であった。
かつて自分たちが言ったことをここで引用されるとミーナとハルトマンは反論できる余地がなくなってしまう。
二人はやれやれといった様子で同じ言葉を紡いだ。
「「行ってらっしゃいトゥルーデ」」
「あぁ。行ってくる」
二人の後押しを受けてバルクホルンは扉を開けた。
その扉は驚くほどに軽かった。
マンネルハイム線
ソ連軍の侵攻に対抗するためフィンランド軍がラドガ湖とフィンランド湾の間のカレリア地峡に長さ135km、幅90kmに亘り築いた防衛線のこと。
1918年のフィンランド内戦の直後にマンネルヘイムが構想したが、彼が下野したために実現しなかった。その後1921年より1924年、および1932年以後の2期に分けてトーチカや機関銃座が建設されたが未完成の状態でソ連との冬戦争に突入した。
なお地形や倒木による障害物を多用したため、コンクリートの量はヘルシンキにあるオペラハウスよりも少ない。