本当に悲しくなる。
ウォーロックとネウロイの戦いは終始ウォーロックに軍配が上がっていた。
いかなるネウロイの攻撃を躱し、搭載されている光線兵器でネウロイを一撃粉砕した。とても試作機とは思えないような性能でネウロイを蹴散らしていくので、基地の管制塔でマロニーたちは歓喜した。
だが、ここで異変が起きる。
ウォーロックはネウロイがひしめき合う巣へ突入を開始した。ウォーロックに搭載されたレーダーからは多数のネウロイを検知し、管制塔に不安を与える。
そして何故かウォーロックの心臓部であるコアを自発的に稼働させた。何らかの不具合だと案じたマロニーたちだが、作戦を継続して巣のネウロイ全てを支配下に置くことに成功した。
ウォーロックの支配下に置いたネウロイたちを操り、ネウロイ同士で攻撃をさせて巣の殲滅に成功した。歓喜に沸く管制塔だったが、突如として近場を航海していた赤城に攻撃を仕掛けた。
混乱する管制塔で、スタッフの一人がマロニーにウォーロックの強制停止を進言するもこれを一時は拒否した。しかし襲われている赤城が沈めば国際的な問題になってしまうのを考慮し、苦渋の決断でウォーロックの強制停止を命じた。
だが壊れた
赤城から上がる対空砲火を魔法障壁で防御すると、赤城の側面に回り込んでは光線を照射する。熾烈なる攻撃を浴びせられた赤城からは損傷個所が増えていき、ついには格納庫まで破壊された。そして赤城という船には宮藤、坂本、ペリーヌが乗艦していた。
傾く甲板の上で坂本は宮藤に自分のストライカーユニットを渡し、宮藤は艦からの避難と救援が来るまでの間の時間稼ぎを任された。
そして基地の管制塔では狼と軍犬が暴れまわっていた。
「ふん……」
「…」
バルクホルンが自慢気に拳を握りしめて、人狼は破損した椅子を手にしたまま立っている。近接格闘に秀でた人狼とバルクホルンは何人もの兵士を容易く返り討ちにすることができた。
一方でステックによって運ばれたミーナとハルトマン二人は机に置かれていた計画書を流し読んでいた。なお、上官に顔を覚えられては堪らないということでステックは外で待機している。
「我々をどうするつもりだ……!」
「どうするミーナ」
「ふぅ、ウィッチーズを陥れようとして随分色々となさったようですね。閣下」
「くっ」
「ウィッチを超える力を得るため、敵であるネウロイのテクノロジーを利用。その事実を隠そうとしてウィッチーズを解散させようとした。よい計画でしたが宮藤さんの軍の理解を超えた行動に慌てたのが失敗でしたね」
「もっと、もっと早く宮藤を信じてやっていれば……」
「おーい大変だよ!赤城が沈みそうだよ。ウォーロックとウィッチが戦っている!誰だ?」
ハルトマンからの知らせを受けて、ミーナは固有魔法を用いて誰なのかを特定した。
「……宮藤さんだわ」
「宮藤が!?」
「ありえん。お前たちのユニットはすべてハンガーに封印されているはずだ」
「……このユニットの波形は美緒のストライカー!?」
「うっそお!やるなぁ宮藤!」
「敵を欺かんとするならまずは味方か。ふふっ、流石坂本少佐だ」
「…」
人狼はそれはないだろうなという顔で手を振って否定した。良くも悪くも坂本が単調な人であることを見抜いていたからだ。ちなみに坂本は人狼が敬愛するジェネフと同タイプである。
「宮藤さん一人では時間稼ぎが精一杯よ。行きましょう!」
「それもそうだな。行くか!」
「ま、待て待て待てー!」
「…」
人狼たちはマロニーを捕縛すると、急いでハンガーへ足を運んだ。移動中、バルクホルンは偶然ネウロイとウォーロックの繋がりに気づいた宮藤を賞賛していた。ミーナとバルクホルンはまた始まったと言わんばかりに生返事を返す。
「つまりだ。宮藤がネウロイに接触したから、やつらは慌てて尻尾を出したってことさ。わかるだろうミーナ」
「んー、はいはい」
「だろエーリカ」
「あぁ、もう私の知ってるトゥルーデじゃない」
「そうだよなハインツ」
「…」
「あっ!エイラさん、サーニャさん」
鉄骨によって封鎖されたハンガーの出入り口ではすでにサーニャとエイラが待機しており、どうしようかと考えている最中だった。
サーニャとエイラはすでに北欧行の列車に乗っているものだと考えていたので、ミーナたちは驚いていた。
「あっ、えと、あの、えー列車がさ、二人とも寝てたら始発まで戻ってきちゃっテ……ほら仕方ないからここの様子でも見ようカナーテ。なあサーニャ」
「今芳香ちゃんたちが戦っている。私たち芳香ちゃんを助けに来た」
「あぁサーニャ、おいィ!」
歯切れが悪い言い訳をするエイラに対し、サーニャは真実を告げた。暴露された真実にエイラは赤面して慌てふためいていた。それをニヤニヤと小馬鹿にするようにハルトマンは笑う。
「素直じゃないなぁ」
「私たちも同じよ」
「えっ違う!私は違うぞ!」
「そんなことよりさ」
「すぐに始めましょ」
「そ、そうだな。さあ、やるぞハインツ!」
「…」
人狼とバルクホルンは前に進みだし、バルクホルンは一本掴み、人狼は大狼化していくつもの鉄骨を縄で結び、それを腹に括りつけるようミーナたちに身振りで指示をする。どうやら引っ張るつもりだ。
「わー、すっげぇ大きいナ」
「うん、本当に大きくて毛並みも綺麗」
「……もふもふしたいなぁ」
「霧化とそれに伴う再生能力、そして変身。一人で二つの固有魔法を持つだなんて、流石はおとぎ話の再来と言われたまでのことはあるわ」
「あれ、つまりこの状態って全裸状態なの?」
「ぶーッ!?な、何を考えているんだハルトマン!ハレンチだぞッ!」
「だって衣服ないからさ。気になるじゃん」
「ほら、早くやってちょうだい。二人しか力自慢はいないんだから」
「う、うぅ。わ、わかった。いくぞハインツ」
「…」
バルクホルンに向けて人狼は頷く。そして合図とともに双方で力を込めて鉄骨を撤去しようとする。全身の筋肉が無駄なく活用し、数トンはある鉄骨をなんとか引っこ抜いては後ろに放り投げた。
「おりゃあああああ!!」
「…!」
人狼は大きな音を立てて鉄骨を引っこ抜き、一度に十本の鉄骨を撤去することに成功した。その光景に思わずミーナたちは感嘆の声を漏らす。人狼たちの活躍でユニットの搬送が格段に効率が上がった。
汗を流して息を整えるバルクホルンに大狼化を解いた人狼が拳を向ける。バルクホルンはふと笑みを浮かべ、自身の拳を合わせた。
「スゲー!」
「すごい力持ち」
「流石ね二人とも!」
「よくあんなの持ち上げられるね。たいした馬鹿力カップルだよ」
「か、カップルだなんて!!」
「いや、うちらにあの宣言したらそうなるにきまってんじゃん」
「あらあら。羨ましいわ」
「ま、まずは健全な付き合いからだな!」
「あっ、ハインツ大尉が元の姿に」
「やっぱ服着てんだな」
「…」
「ほら、ユニットを外に出すわよ」
ミーナはくすりと笑いながらも、ユニットの搬送を指示した。整備兵はいないながらも簡易的なメンテナンスはできる。各自のユニットと武器を点検し、問題がないかを確認した。
「機関銃の整備は大丈夫。弾薬の補充も十分だ」
「いきなり解散させられたからね。問題はないでしょ」
「けどハインツはどうする? こいつだけユニットがないぞ」
「そうなのよね。代わりのユニットはある分にはあるけどスピードに問題がある旧式だし……」
「…」
ユニットの不足に頭を悩ませるミーナとバルクホルン、しかし人狼はバルクホルンに指を指す。何かを悟ったミーナは驚愕する。
「……まさか空中で投下するの!?」
「なんだそれは!?」
「随分と破天荒ダナ……」
「何も付けずに空中戦ができると思うか!馬鹿!」
「…」
「こうなったら仕方がありません。旧式のスピットファイアを使ってもらいますが構いませんね」
「…」
人狼はミーナの提案に相槌を打って応えた。
ハルトマンたちがユニットを履いて武器を構えていると、一機の飛行機がハンガー前に着陸した。オレンジ色に塗られたソードフィッシュには航空帽を着けたウサギのエンブレムがある。二つの座席から見慣れた顔が並んでいた。シャーリーとルッキーニだ。
ルッキーニはある人物を見つけて声をかける。
「リーネ―!」
リーネは息を切らしながら全力疾走でハンガーへと向かっていた。リーネの姿を見たバルクホルンたちは柔らかい笑みを浮かべて出迎えた。
「わぁ!来た来た」
「遅いぞリネット・ビショップ」
「おかえり貴女が最後よ」
「はい!」
皆に迎えられたリーネは満面の笑みを零しながら自身のユニットへと向かう。リーネのユニットと武器にはすでに手の空いていたバルクホルンとハルトマンが点検し終えている。人狼の臨時のユニットも調整を終えたところだ。今すぐにでも皆が飛び立てる状態だ。
今ここに軍規違反を盛大に犯した第501統合戦闘団、通称ストライクウィッチーズが再結成された。
日本で生まれた空母。呉海軍工廠が1920年に起工した。
言わずと知れた日本を代表とする空母だが、元々巡洋戦艦として起工されていたのを空母に改造された。そして空母にも砲撃戦に参加できるとして対艦戦闘用の砲が備えられている。
排気の関係上、居住性が悪く赤痢や結核を患う兵士が続出して「殺人長屋」と言われるほどになる。そのため廊下や格納庫に寝床を作る兵士もいたという。
ミッドウェー作戦では急降下爆撃により、格納庫内で誘爆を起こして沈んでしまった。かの「運命の五分」と呼ばれる時間がなければ誘爆はしなかったというが、装備転換は五分で終わるものではない。
2019年にポールアレン財団は深海調査船ペトレルが赤城を海底で見つけた。
ちなみに赤城の由来である赤城山は、後に某峠で競い合うレース漫画の舞台となる。