ヒロインはみんな大好きダイワスカーレットです。
宮藤はウォーロックの攻撃に魔法障壁を展開して防ぐ。背後に展開された魔法障壁は放たれた機銃弾を弾く。
「はあああああ!!」
一瞬の隙をついて、いざ攻勢に出ようと銃口を向けるもウォーロックは察知して撃たれる前に躱す。Gなんて知ったことかと言わんばかりの軌道で宮藤に迫る。宮藤はウォーロックから全力で逃げる。
これを何度も何度も繰り返していた。
並みのウィッチ、いやエースでもウォーロックを単独で相手にするのは難しい。むしろよくここまで宮藤が粘っていた方がすごい。
「はぁはぁはぁ……」
いくら魔法力が多い宮藤でももう限界に近かった。息は切れ動悸が速くなり、魔法力をうまくユニットに回せない。それにまだウォーロックには一発もダメージを与えていない。
時間稼ぎが目的とはいえ心理的負担が大きかった。
「くっ!?」
ウォーロックは両腕を広げると、そこから多数の光線を放つ。その一撃は中型ネウロイなんて木っ端微塵にするほどの破壊力を有する。宮藤はその攻撃を何倍も防御力を増して作った魔法障壁で身を守る。
「まだ、やるの……ッ!?」
矢継ぎ早にウォーロックは光線を放つので、動きを止めて防御に徹している宮藤の体力と魔法力がどんどん削り取られていく。いつまで魔法障壁を張れるかもわからない状態に宮藤はもう駄目だと諦めかけていた。
そんな中、一発の鈍い光弾がウォーロックに直撃した。
爆風をあげて自身の破片を撒き散らしながらウォーロックは赤城の方へ墜落していく。そして赤城と衝突して爆ぜた。その衝撃からか赤城はウォーロックと一緒に海底へと沈んでいく。
「やった……」
何が起きているのか理解できなかった宮藤はポツリと呟く。
後方からは聞きなれたエンジン音が複数聞こえる。間近にまで迫ると持ち主が宮藤に声をかける。
「お待たせ!」
「芳香!」
「皆!」
振り向くとそこには第501統合戦闘団ストライクウィッチーズの隊員全員がその場に居た。坂本はミーナといつの間にかユニットを履いているペリーヌに肩を貸している状態だ。
ちなみに旧式のユニットを履いている人狼はまともに戦闘ができないだろうという自らの判断で武器弾薬庫兼ユニット運送係を務めている。なので腰のところには武器を詰めた箱を腰に吊り下げて飛んでいるため、傍から見ると滑稽な姿となっている。この無様な姿に流石の坂本も苦笑した。
「よく耐えたな宮藤」
「坂本さん!」
「これは必要なくなったようだな」
「…」
ピクリと人狼は赤城が沈んだ方を見つめる。エイラもその場でタロット占いをすると塔のカードが出てきた。意味としては緊迫、突然のアクシデントだ。
「そうでもないかも、ほら見て」
エイラが視線を飛ばした先にはかつて赤城があった場所だ。いきなりその地点で大きな水柱が立った。
「何だ!?」
「いったいどうなっているんだ!?」
「何なんだいったい!?」
「……まさか」
海上では避難している赤城の乗組員が慌てふためいていた。唯一、赤城の艦長を務めていた杉田は最悪の未来を予想した。
そしてその予想は見事的中することになる。
「あっ!?」
「ウォーロックが赤城と……!?」
まるで一匹の大鯨が海上に跳ねるように海中から赤城が現れた。鋼鉄の装甲で灰色となっていた全体色がネウロイと同じ黒と赤いラインに変わっている。艦首の戦闘にはウォーロックが航海の安全を願う女神像の如く収まっていた。
浸食された赤城は空中に舵を切り、上昇を続ける。不気味で奇妙な光景でありながらも幻想的であった。
ユニットを履き替えた宮藤と坂本は人狼から武器弾薬を貰う。
ちょうどその時に赤城は艦尾付近から何十条もの光線を放って宮藤たちを攻撃する。
しかしこの場に居るのは全員が名高いエース、瞬時に回避軌道を取り離散した。そして一気に上昇して、螺旋を描くように赤城との距離を詰める。
「美緒できる?」
「あぁ、大丈夫だ」
「ハインツ、お前は無理して戦闘をするな。ユニットが型落ちなんだ」
「そうだよ。これ以上トゥルーデを悲しませないでね」
「…」
「ッ!?なんだこれは」
「ウォーロックと赤城が融合してる……!?これじゃ手を出せないわね」
「だがやるしかない。あれはウォーロックでもネウロイでもない別の存在だ。我々ウィッチーズが止めなければ誰もあれを止める者はいない!」
「来ますッ!」
サーニャが攻撃を察知して注意を呼び掛ける。呼びかけ通りに赤城は光線を密度の濃い攻撃を打ち込んでいく。
「ストライクウィッチーズ隊、全機攻撃態勢に移れ!目標、赤城及びウォーロック!」
「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」
「…」
ミーナの号令とともに全員が攻撃を仕掛けにいく。ミーナは坂本と手をつなぎ固有魔法の魔眼を共有することで核の在処を見つける。しかしそこは重厚な装甲で覆われたところだった。
「コアは赤城の機関部だ」
「外からじゃ破壊できそうにないわね。内部から辿り着くしか」
「内部を知っている私がいく」
「私が行きます!」
「私も行きます!」
「わ、私も内部なら多少知っていますわ」
「ありがとう!」
「べ、別に貴女のためじゃありませんわ」
「ペリーヌ、お前が付いていてくれれば心強い」
「えっ!はい!」
「…」
「ハインツ、お前も行きたいのか」
「…」
「お前のユニットと技術では機敏に動けないだろう。どうするんだ?」
疑問に思っているバルクホルンに人狼は自分のユニットを指差す。真意を知ったバルクホルンは肩をすくめてやれやれといったよう様子だ。
「……わかった。なら行ってこい。そして必ず帰ってこい」
「…」
人狼はバルクホルンの問いかけに深く力強く頷いて答える。
「ではその他各員は四人の突入を援護。突破口を開いて」
「「「「「「了解!」」」」」」
「攻撃開始!」
雲海に突き出した赤城はその雲海を海の如く進んでいく。そして攻撃を仕掛けていくウィッチたちを迎撃しようと再度無数の光線を放つ。
「他の連中に手柄を寄越すなよ、ハルトマン」
「ふふっ、先に行ってるよー!シュトルム!」
「私の仕事!」
圧倒的破壊力を持つ機関銃とハルトマンの固有魔法で分厚い装甲を削っていく。一方でサーニャを抱きしめた状態でエイラは未来予知から出た指示を送る。
「……右ダナ」
「うん」
「上ダナ」
「うん」
「眠くないカ?」
「うん。大丈夫」
小柄なサーニャには似つかわないフリーガハマーを発射して高威力の弾頭は赤城に炸裂する。皆が熾烈な攻撃を仕掛けたおかげで赤城から照射される光線の数が減っていく。
「攻撃が弱まったぞ」
「行っちゃう~?」
「GO!!」
艦首目掛けてシャーリーとルッキーニは突撃を敢行した。そしてシャーリーはルッキーニを捕まえて思い切り前方へと投げる。
「行っけぇ!ルッキーニ!」
「あっちょー!!」
何十もの魔法障壁でドリルのような形を形成、そしてユニットの出力を上げて加速して、艦首から艦尾にかけて一気に貫いた。文字通りに突破口が開かれる。
人狼はハンドサインで突撃をすると伝える。
「…」
「行きますわよ!」
「うん!」
「はい!」
艦内へ突入した人狼たちは隔壁に行く手を阻まれる。人狼はその場でユニットを脱ぐと、肩を回して調子を整える。
「リーネちゃん!」
「はい!」
リーネは対戦車ライフルで隔壁を撃ち抜いた突破して前進を進める。しかし宮藤たちは通路に用意された光線照射機関から攻撃を受ける。狭い空間で光線を躱して宮藤たちは迎撃に当たるも数が多く対処しきれない。宮藤とリーネは回避の際に武器を落としてしまった。
だが、攻撃ができるのは武器だけではないと赤城は知ることになる。
「ハインツ大尉!」
「…」
大狼化した人狼は体をドリルのように回転させながら分厚い装甲を何重も突き破り暴れまわる。爪で隔壁や照射期間を破壊し、牙で食い破る。まさに己の本領を発揮するには絶好の機会であった。
自然と赤城は脅威度の高い人狼に攻撃のソースを集中させるので、宮藤たちへの攻撃が手薄になる。閉所で大きな体は不利なため、無数の光線を撃ち込まれる人狼。しかしそれでも暴れ続ける。
「ハインツ大尉、今助けます!」
「…」
助けに行こうとする宮藤とリーネに人狼は任せろと言いたげな熱い視線を送る。真意を理解した二人はペリーヌと共に機関部へと移動する。
「…」
上へ上へと装甲を破り続け、ついに甲板に飛び出した。ちょうど飛び出した際、横にはバルクホルンが居て互いに目を合わせた。
「うおおおお!ハインツ!」
武器から手を離したハルクホルンは人狼を掴み、力の限り投げ飛ばした。人狼の進行方向には艦橋があった。再度ドリルのように回転させ、艦首と激突する。艦橋には大きな風穴ができ、下へ向かって人狼は突き進む。
「……二人の共同作業がこれっておかしいよ」
「何を言うんだ。あいつもきっと同じことを考えていたはずだ」
「そうかなぁ」
なお人狼はそんなこと思っていなかった。偶々甲板に出てしまっただけなのだ。それなのに突然投げられるとは完全に想定外だった。
機関部へと辿り着いた三人はまたもや隔壁に行く手を遮られた。ペリーヌは持っていた機関銃で破れるかを検証するが、予想通り破ることはできなかった。
仕方なしにペリーヌは隔壁に手をついた。
「最後にとっておくつもりでしたのに」
「えっ」
「トネール!」
ペリーヌの固有魔法は雷撃、魔法力を高威力の電撃に変換できる攻撃型である。これにより隔壁は六角形に切り取られた。
隔壁を抜けた先には巨大な核があった。核はギラギラと燃えるように輝いている。
「芳香ちゃん!」
「宮藤さん、何をするつもりですの?」
「リーネちゃん、ペリーヌさん。私を支えて」
二人に支えて貰った宮藤は足を閉じてユニットを合わせる。ユニットの出力に限界が来たのか一度は止まるが、なんとか再起してくれた。
「ありがとう」
戦友に礼を言うように宮藤は感謝を述べる。そしてユニットを脱いだ。
魔法力をある程度ユニットに残していたのか、ユニットはバラバラになることなく両脚揃って下へとゆっくり降下していく。
核へと到達した瞬間、眩い閃光を撒き散らしながら爆ぜた。
赤城はクジラの咆哮のような声をあげて雲海へと沈んでいく。まさに艦としての死と生命体の死が重なり合うように小規模の爆発を起こし、一瞬にして破片へと姿を変える。爆音が花火のように辺りに響く。
これが意味するもの、すなわちストライクウィッチーズはこの異形の化け物に勝つことができた。
「やったな」
「芳香だ!」
「わあ!」
「よし!」
ユニットを失った宮藤はリーネとペリーヌに支えられて飛翔する。無事に帰ってきたことに全員は歓喜した。リーネは宮藤に抱き着いて喜びを露わにし、ペリーヌは照れ臭いのか顔を背けていた。
すると背けていた先にあったネウロイの巣が徐々に晴れていく。ネウロイの巣があった地点、そうそこには奪取されたガリア共和国があった。
「私の故郷が解放された……!」
ペリーヌは思わず感激して涙を流す。四年間もの間、手が届きそうで届かなかった夢がついに実現したのだ。泣かずにいられる方がおかしかった。
「ハインツー!!」
「…」
一方で人狼は絶賛落下中だった。
ユニットを脱ぎ捨てているため飛翔することはできないので落ちるしかないのだ。墜落する人狼のもとに一番にやってきたのは幼馴染のバルクホルンだった。
バルクホルンはこちらに手を指し伸ばし、人狼は真っ先にその手を取る。
「まったく、お前はいつも無茶をするんだから」
「…」
「やれやれ。ほら、基地に帰るぞ」
「…」
「ふっ、子供の頃は私が背負われていたが今度は私が背負う番だな」
「…」
バルクホルンは人狼を一度空中に放り投げて背中で受け止める。あまりにポンポン人を投げるので人狼は人使いの荒さを実感した。一方で人狼よりも脳筋なことばかりしているバルクホルンにハルトマンは苦笑した。
「うわぁ。ありゃ結婚したら尻に敷かれるね、基本受け手だし」
「いいじゃない。だからこそトゥルーデと相性良いんだから」
「まっ、そうかもねー」
「……終わったな」
「えぇ。ストライクウィッチーズ全機帰還します」
「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」
こうして赤城とウォーロックの激闘を終えた。
基地ではいつの間にか元々在籍していた整備士がおり、ミーナの部屋の前ではステックが堂々と待ち構えていた。ミーナと坂本がどうやって整備士と機材を取り戻したのかと訊くと、ステックは非常に面倒くさかったと愚痴を零した。だがその言葉に悪意はなく、喜んでいた。
後日、ステックは楽な仕事に戻れると期待しながら書類を読む。そこに書かれていたのはアフリカへの転属だった。悪運と踊り《ダンス》をする男、それがステック・セラックだった。
一方で夜、公園のベンチで人狼とバルクホルンが座って月夜に照らされた海を眺めていた。この場は人狼がバルクホルンに諭された場所だった。
バルクホルンは何かを決心した面持ちで人狼に問う。
「なあハインツ」
「…」
「暫くストライクウィッチーズは結成されることはない」
「…」
「だから、その……」
「…」
「い、一緒に私の原隊で活躍してくれ!」
「…」
「だめか?」
「…」
不安げに瞳を揺らすバルクホルン、そこにエースとしての風格はない。
人狼はその返事に黙って答えたのに彼女は満面の笑みを浮かべる。何故なら人狼は子供のように幼い笑みを向けたからだ。明らかに肯定の意を示すものであった。
「よ、よかった。私はすごく嬉しいよ」
「…」
「ど、どうした?顔が近い――――ッ!?」
人狼はバルクホルンに顔を近づけ、そのままキスをした。頬や額に向けて行う類ではなく、互いの口を合わせたロマンチックなものだ。
赤面しながら慌てふためくバルクホルンだったが、やがて幸福感と満足感に吞み込まれてキスを受け止めた。
人狼は夢を見れるのか。結論は人狼、いや
それが刹那の夢であっても幸せな夢であることには変わらない。人間になった彼を祝福するかのように大きな満月が笑った。
これにて最終回です。
三年間今まで読んでくださって誠にありがとうございます。
本来なら三期までやろうと考えていた本作ですが、モチベーションの低下と新生活で投稿が難しくなってしまいました。現に巻き気味に一期の話を終わらせてしまいました。
えっ、欧州編とアフリカ編が長すぎるのと道中でガルパンの連載をしたからだと言われてもその通りなんで何も言えません。
日本兵SSを昔に書いてしまったから書きたい欲求が増してしまったんだ……。
ちなみに後書きで兵器開設やらをする際にネタ切れで半ば雑用品紹介になってしまいました。
それと一話か二話追加のエピソードを載せようと思います。これは完成次第載せていきたいと考えています。
再度この作品を読んでくださった方に感謝の意を露わにしたいと思います。
本当にありがとうございました。