人狼は夢を見れるのか   作:渡邊ユンカース

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前線

「あーあ、何でこんな事態に巻き込まれなきゃいけねえのかなぁ…」

「車長、そんなこと言ったって変わりませんからね」

「だってよぉ」

 

現在、ジェネフ少尉率いる戦車小隊がダリア王国の平原を走り回っている。

そして、撤退中の味方について来るネウロイを破壊することが使命だ。

戦車という物体は陸の王だ。

それは第一次ネウロイ大戦で有効であったことが証明されていた。

 

「まさかⅡ号戦車とか、ふざけてるのかよ!」

 

そう、以前使っていた戦車とは別物のⅡ号戦車だ。

この戦車は、1936年に運用が決まったもので、主力であるⅢ号戦車とⅣ号戦車のつなぎで作られた。

性能はお世辞にも良いとは言い切れず、砲は二十ミリ機関砲と非力なもので、対人戦ならまだしも、硬いを装甲持っているネウロイにはさほど効かないのだ。

しかも、人数が不足しているのでジェネフ少尉が砲手、エドガー上等兵が操縦手を果たしている。

カールスラントは必ずくるネウロイ襲来に備えて主力となっている飛行機や戦車はあまり送ってはおらず、旧式の兵器の在庫を売り捌き、資金を稼いでいた。

現在はダリア王国とオストマルクをはじめとする諸国らに売り捌いている。

 

「クソ、砲手慣れてないぞ」

「変わりますか?」

「お前に状況判断出来なさそうだからやめとくぜ」

「そうですか」

「……おっとお出ましのようだ」

 

ジェネフは双眼鏡を覗き、陸戦ネウロイを見つける。三メートルサイズが三体ほどだ

すぐさま無線のスイッチを入れた。

 

「こちらジェネフ少尉、敵を補足した。戦闘に移行する」

『『『了解』』』

「さーて、どうやって殺していくか…」

「散開して撃破は?」

「いいや、それだと経験の少ない新兵が各個撃破されて終わりだ」

「…密集します?」

「うーむ、それだと撃破されやすい。仕方がねえ、二両ずつの分隊で叩く」

『俺と二号は第一分隊で左翼を、三号と四号は右翼、そして挟んで殺す。あとガスマスク着用を忘れるな』

 

戦車兵たちはマスクを着用していく。ネウロイからは瘴気という有毒なガスが出され、ガスマスクを付けないと死んでしまうのだ。

 

 

交戦距離が百メートルと近付いてきた時に、ネウロイ側がこちらに気付いたらしく、頭部に搭載されている砲を放ち、攻撃を仕掛けてくる。

 

『うわああああ!!』

『こ、こんな攻撃受けたらたまらねえよ!!』

「落ち着けテメーら!こんな攻撃ここからじゃ当たらねえよ。進め、急いで進んで両翼から集中砲火だ!」

 

ジェネフは新兵を落ち着かせるように言葉を掛ける。

彼の額から汗が滲み出ている。

距離が挟み撃ちが可能になった距離にまで近付いた。

その時、ネウロイから放たれた一発の砲弾が二号車の正面を容易くぶち抜き、爆発四散する。

 

「車長、二番のⅡ号戦車が!」

「わかっている! けど前見て操縦しとけ、俺がアイツの分まで働く!」

「了解しました!」

 

何とか両翼に展開することが出来た小隊は砲を撃ち始めた。

二十ミリの弾が高速で発射される音が平原に響き渡る。

 

「おらあああああ!!」

 

ジェネフは何とか標準をネウロイの一体に合わせて引き金を引く。

弾は確かにネウロイの装甲を傷つけているものも、決定打にはならない。

 

「ヤバい、削れないぞ!」

「車長、足を狙ってください!」

「足ってお前…」

「いいから早く!!」

「ああもうわかった!!」

 

ジェネフはエドガーの言う通りに攻撃を始める。

足に弾を集中すると、足が折れてネウロイの巨体が横転した。

すぐさまその背中に撃ちこみ、やっと撃破することが出来た。

 

「ハッハー! 一体初撃破だ!!」

「車長、新兵の援護を!」

「ああそうだった。……て二両失って一体撃破か、レートが悪いぜ」

 

覗き窓からは燃え盛る戦車が二両あった。

すぐ近くには奇跡的に戦車から降りた新兵が上半身を無くした状態で地面に倒れている。降りた時を狙われたのだろう。

 

「さて、最後の一体だ。突っ込め!」

「了解! 行きますよ!!」

「おどりゃああああ!!」

 

ネウロイに向かって突進、ジェネフは行進間射撃を始める。

難易度の難しい技ではあるが、これほどまで距離を詰めていたら簡単なものだ。

ネウロイは彼らの戦車に攻撃をしようと砲を向ける。

 

「早く足を!!」

「うるせえええええ!!」

 

必死の攻撃でネウロイの足を破壊することに成功した。

折った直前、地面に向けてネウロイが砲を放った。あと少し遅れていたら彼らの戦車に当たっていただろう。

地面に空いた穴を避け、体当たりをかます。

その際の衝撃が二人を襲うも、特に怪我はせず、零距離で機関砲を撃ちまくる。

 

「だああああああ!!」

 

みるみるうちに装甲が剥がされ、ネウロイの核が光り輝いているのが視認出来た。

しかし、それを壊すための機関砲の弾がなく、再装填が必要だった。

ジェネフはキューポラを開けて、腰に付けていたホルダーから拳銃を取り出す。

拳銃を核に向けて何度も発砲した。

すると核は難なく壊され、白い破片と姿を変えてしまった。

 

「……生き残ったな」

「そうですね、僕ら勝ちましたね」

「だな、戦力を失いすぎたが。まっ、あとの祭りさ」

「ですね」

「さっさと帰投するぞ、不味い飯が冷めてさらに不味くなるからな」

「同感です。あぁ家の家庭料理が食べたい…」

「ハハハ! だったらなおさら生き残らないとな」

 

その時、突如木が倒される音が聞こえる。

一瞬、同じ任務をこなしている味方だと思ったが、そうではないと瞬時に悟った。

 

「降りるぞ! 急げ!!」

「で、でも」

「いいから降りるんだ。死ぬぞ!!」

 

ジェネフ少尉が必死に説得してエドガー上等兵を戦車から降ろす。

すぐさま来た道を走り出した。

丁度いい大穴を見つけたので、そこで二人の体を隠した。

 

「うぅ、一体なんですか」

「静かに、死ぬぞ」

 

暫くしてから、放棄した戦車が爆発した。

遠くからのそのそと先ほどのネウロイよりも大きい五メートルサイズのネウロイが現れた。

ネウロイは鉄の残骸となった戦車を取り込んでいる。

 

「あ、危なかったですね…」

「だな、戦車使って逃げてたら撃破されてたな」

「根拠は?」

「俺の勘だ」

「…その勘に救われましたね」

「そうだな、感が鋭いのは昔からでな」

 

ガスマスクを着脱し、煙草を吸おうと胸をまさぐると、いきなり影が出来た。

何だと思い上を見上げると、なんとそこにはもう一体の陸戦ネウロイがこちらを覗きこんでいた。

 

「……は、背後の確認忘れてた」

「車長の馬鹿ァ!!」

「ハ、ハハハ……」

 

砲を向けていつでも撃てるように用意をしていた。

乾いた笑い声を発声しながら煙草に火をつけて吸って目を閉じ、死ぬ覚悟を決めていた。

 

 

その時、いきなり影が消えた。

いや正確には、飛ばされたのが正しいだろう。後から地響きが聞こえる。

そして、ストライカーユニットのエンジン音が聞こえる

 

「……遅えよまったく。ハインツの野郎、死ぬとこだったぞ」

「…」

 

人狼が仁王立ちをしながら空中に居座っている。

その姿を確認した彼らは笑みを浮かべる。

 

「遅いですよ、ハインツ」

「やっちまえハインツ、痛い目を奴に見せようぜ」

「…」

 

一挺の機関砲を投げ飛ばしたネウロイに向けて撃ちまくる。

魔法力を込めた銃弾は軽々とネウロイの表皮を破壊していき、終わりを告げるかのように集束手榴弾を取り出して投げつける。

すぐに爆発して核を覆っていた装甲と核をまるごと破壊した。

 

「やるじぁねえか!」

「ハインツ、受け取って!」

 

エドガーは自身の手榴弾を投げて渡した。

人狼はそれを掴み、遠くで戦車を吸収していたネウロイ目がけて投擲した。

集束手榴弾と比べて威力が少ないので魔法力をたくさん含んだ手榴弾は見事に当たり、爆発した。

遠くからでも核の露出が確認出来る。

すぐさま接近し、人狼は機関砲を撃ちこんで撃破した。

 

「ありがとうなハインツ!!」

「助かったよ!!」

 

飛び去る人狼に感謝を伝えるジェネフたち、それに応じるかのように人狼は敬礼をする。

あんなにも近かった人狼が徐々に離れていき、最終的には見えなくなってしまった。

二人は顔を見つめて笑いあっている。

 

「ハハハ! 立派になりましたね、ハインツ」

「アハハハ!! そうだな、立派だったぜ」

「てかどうします、帰り?」

「…徒歩だな」

「徒歩ですか…」

「しかも不味い冷や飯確定だ」

「嫌ですけど生きてるからいいや・・・」

 

 

その後彼らは不味い冷や飯を食うことになったが、ネウロイを二体撃破されたことが認められ、一週間後に勲章を貰えたという。

 




Ⅱ号戦車

ドイツで生まれた戦車で1936年に運用が始まった。
武装は二十ミリとかなり貧弱だが、軽戦車の正面を抜く威力はあった。
しかしそれはその時だけで、装甲が熱くなっていき、効果はなさなくなった。
電撃戦の主力であるⅢ号戦車とⅣ号戦車のつなぎである。
何気に色々な戦場を渡り、北アフリカにも進出している。
1942年までに532両作られた。
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