人狼は夢を見れるのか   作:渡邊ユンカース

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交友

人間というものは好奇心が旺盛だ。

 

その人間の好奇心の大きさというものは獰猛な動物以上のものとされることがある。

例えるなら、何故人間は空を飛ぶことが出来ないのか。それは単純に翼を持っていないから、そして昔の人々は鳥の様な翼を作った。

しかし、それは飛べずにいた。それは人間と鳥の筋肉の付き方が根本的に違ったからだ。

かの有名なレオナルド・ダヴィンチを筆頭に数々の発明家が空を飛ぶために案を模索した。魔女でもない人々でも飛べるような物を作るために。

 

 

そして、人類の夢は叶うことになる。俗にいう航空機だ。航空機という鳥の如く飛べるような万物が完成したきっかけ、それは長きに渡る人類の好奇心から出来たものだと思う。

人間は空を最低限飛べるにも関わらず、改良を加えていったのだ。

 

 

今日も人狼は昼休みに本を読んでいた。この頃になると人狼は図書館が閉まるギリギリまで入り浸ってしていた。図書館で読み切れなかったものは借りて孤児院で読んでいた。

そんな人狼に興味を持ったバルクホルンという少女は、最初は昼休みだけ観察していたが、最終的には毎日のように放課後も人狼を観察するようになった。

人狼はそんな彼女に目もくれず本を漁っていった。最初、バルクホルンは人狼の真似をして彼女の年齢に合わないような本を読んでいた。

人狼がどのような本を読んでいるのかを知るために読んだのだが、全くもって頭に入らない。それもその筈、人狼が読んでいたのは童話でも何でもない、政治に関する書籍だからだ。

政治関係の難しい本などは教員用の本棚にあり、そこから拝借した書籍だ。

読み始めて数日後、バルクホルンは自身の年齢に一致するような本を読んだ。前まで読んでいたものとはまったく違うメルヘンチックなものに変わった。

そんな難しい本を読んでいた人狼に対し、本当に内容を理解をしているのかどうかを調べるために、彼女はクイズを出すことにした。

 

「おい白髪頭。私がクイズを出すからそれに答えろ」

「…」

「第一問、過去には無くて未来にあるもので、目に見えないけど確かにやってくるものはなーんだ」

「…」

 

彼女は昨夜、自身の母親にクイズを出すように頼んだ。彼女の母親は今言ったバルクホルンと同じ問題を言った。

ちなみにこの問題は、バルクホルンには解けなかった。一時間かけていたのだが、それは無駄だった。

彼女に無理やりクイズを出された人狼は、今読んでいる分厚い本のページをペラペラと捲っていく。その姿は何かを探しているようにも思えた。

 

「どうした。もしかしてわからなかったから無視しているのか、きっとそうに違いない」

「…」

「ん? どうしたいきなりあるページを指差して」

「…」

 

人狼はあるページの文を指差した。

それは章の題名のようで、【第四章 明日へと続く道には何が起きるのか】の明日の部分を指していた。

彼女は人狼が何をしているか一瞬理解が出来なかったが、じっくり眺めるとそれは正解に当てはまってしまった。

先ほどまでの行動で、人狼はバルクホルンの出したクイズの正解を当てるためにページを捲ったのだと理解した。

 

「せ、正解だ…」

「…」

 

どうやらクイズは当たったらしい。

 

「第二問、朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足の動物はなーんだ」

「…」

 

今度も書籍を使ってページを探す。

そして、【第二章 人間同士が争う理由】の人間の部分を指差す。

この章は人狼にとって一番好きな章であり、生前の第二次世界大戦を引き起こすこととなった理由が詳しく書かれている。

そして、人狼はこの世界でも後々大きな戦争が勃発することを察していた。

 

「くっ、正解だ。何故わかるんだ、私でもわからなかった問題なのに、何故…」

「…」

「母さんの問題は昔から難しかったのに…」

 

ぶつぶつとバルクホルンは独り言を呟いていた。人狼は再び読書を再開する。

いきなり、図書館が閉まる前に鳴るチャイムが二人しかいない図書館に鳴り響いた。

人狼は背表紙の番号のところに本を返した。教員用の本は基本的には貸出は禁止されており、赤いシールが貼られている書籍などは持ち出すことが出来ない。

バッグを担いで、すたこらと正門へと向かった。後ろからはバルクホルンが付いてくる。

 

「…じゃあな、白髪頭」

「…」

 

と、小さく手を挙げた。彼女が人狼に手を挙げる行為は、今回が初めてだった。

彼女とは通学路が別々だ。人狼は後ろを向き、孤児院へと帰っていく。

 

「人がお別れをしたんだから挨拶をしないか!」

「…」

 

人狼は振り返ることはなかったが、バルクホルンがした行為よりも、さらに小さく手を挙げた。

その姿を見て、彼女は口元を緩めた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

挨拶をした次の日、人狼はいつものように図書館へと赴いた。

しかし、肩を掴まれた。

 

「…おい白髪頭。えーとそのだな」

「…」

「い、一緒に遊ぶぞ」

「…」

「け、健康な生活を送るためには適度な運動が必要と母さんが言っていた。だから一緒に遊ぶぞ」

「…」

「別にただお前と遊びたいだけじゃない! これは母さんが言っていたそう、規則なんだ!」

「…」

 

 

人狼は彼女に腕を引っ張られながら、彼女がよく遊んでいると思われる空き地に入った。土管がいくつかあった。

そして彼女は、土管からボールを取り出した。

 

「ここはな、私しか知らない秘密の場所だ」

「…」

「それじゃあ、サッカーをしようじゃないか」

「…」

「ルールはわかっているよな、まっ流石に知っているとは思うが」

 

二人でサッカーとなるとボールを奪取する遊びか、PKしか出来ないのを彼女は知っているのだろうか。

そんなことを気に留めずに、彼女はドリブルをしながら人狼に接近してきた。

 

「ふっ、白髪頭に私のボールが取れるか!」

「…」

「って取られた!?」

 

人狼は戦闘で鍛えられた動体視力と反射神経、それとシュレディンガー准尉に付き合わされた経験を使い、難なくボールを奪ってみせた。

一瞬の出来事だったので、バルクホルンは目を丸くしていた。

 

「まだだ、まだ負けてはいない!」

「…」

「ちぃ! まだまだ!!」

 

人狼はボールをキープしたまま放さない、バルクホルンは己が出し切れる技術を用いて攻撃を仕掛ける。

それでもボールは取れないままだった。

ずっと取れずにいたバルクホルンに対し人狼はボールを渡し、漁などで使われる網を木と木の間に結び付け、サッカーゴールの代わりとして利用した。

 

「えい!」

「…」

「今度こそ!」

「…」

「何故取られるんだ!」

 

二人しかいないサッカーは教会の六時を知らせる鐘が鳴るまで続けられた。

 

「マズい!そろそろ私の家の門限になってしまうぞ!」

「…」

「暗くならないうちに帰るんだな! 私はもう帰らなくてはならない、また会おう!」

 

バッグを背負って猛ダッシュで帰宅したバルクホルン。

人狼はボールと網の片づけを終えて帰る。夏とはいえ六時となると暗く感じた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ハインツ、今度は負けないからな」

 

初めてハインツという名前を言い、彼女はまたもや人狼に勝負を仕掛けてきた。

人狼は静かに前の場所へと向かった。

 

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