人狼は夢を見れるのか   作:渡邊ユンカース

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ガルパンの作品、始めました。
日本兵が主役ですので見て、どうぞ。


弾丸

「ネウロイ、視認できず」

「そうか、警戒を怠るなよ」

「了解」

 

ウェリントンの機内では銃手兼見張り員が辺りを見回して索敵をする。第十四ウェリントン爆撃隊の機体数はおよそ十機、Vの字型の陣形を二つ、それに加えて他の基地から離陸した第十五ウェリントン爆撃隊と合流を果たす。護衛機としてはハリケーンの小隊が五組が護る。

 

ドーバー海峡を超えて、一同はガリア本土まで辿り着いた。爆撃手が下を見下ろす。戦前までは賑わいを見せていただろう街が今ではその末端も感じることができない。

未だにネウロイが現れないのに対して不信感を抱きつつも、イーストウッド小尉は目的地へと赴く。彼はコーヒーを片手で持ち啜っている最中、胸騒ぎが心を駆り立てた。

何だろうとジッと前のフロントガラスを凝視して見る。夕焼けが目を刺して痛い、老眼が始まりかけたが、最悪を視認することができた。

 

「前にネウロイと思われる数多数!」

「時間がない上に面倒だ。我が隊は迂回せずそのまま突っ込むぞ。 すぐに護衛機を先方へ向かわせろ」

「ちょ、マニュアルにはありませんよ!?」

「迂回先に敵がいたら厄介だろう。我が隊は進路そのままだ」

「……あーもう、了解しました!」

 

同時に他の見張り員がネウロイに気付き、彼は通信手に指示する。通信手は無線を用いて半やけくそ状態で護衛機と同じ隊のウェリントンに伝える。するとハリケーンの小隊たちはエンジンの出力を上げて全体の小数の小隊を残して前方に突出した。小柄ながらも強力な歯を持つ鮫は敵へと接近していく。

ネウロイが側もこちらの存在に気づいたらしく、約二十体が速度を上げて接近する。距離は即座に近づいていき、ハリケーンとネウロイは同時に機銃や機関砲を撃ち放つ。

 

「うおっ!?」

「しまった!!」

「ぐっ……」

 

幾つかのハリケーンに銃弾が当たり、黒煙を上げながら落下たり翼が折られて墜ちていく。中にはコックピットの風防を突き破り身体に直撃し、即死する輩もいる。損失は八機被撃墜、そしてこちら側の戦果はネウロイを五機撃墜という手痛い代償を受ける。機体は小隊を解散してそれぞれ襲い掛かる。

 

「おら墜ちろ!」

「死ね化物!」

 

ハリケーンに搭乗しているパイロットにはヒスパニア戦役で戦った兵士もいる。このハリケーンで実践を経験してはいなかったが、それを難なく使いこなしてネウロイの後ろについて攻撃する。放たれた二十ミリは正しく真っすぐ飛来してネウロイの装甲を削る。仲間のネウロイを助けようと他の個体が襲い掛かろうとするも手慣れのパイロットにより撃墜される。

 

「ちゃんと後ろを確認しろ!」

『隊長感謝します』

「ネウロイはどこまで減らした?」

『あと八機です』

「こぼし損ねるなよ! こぼし損ねた数だけ爆撃隊が被害を喰らう!」

『了解』

 

激しい空中戦を目の前にしてイーストウッド小尉機の新兵は呟く。

 

「凄い……」

「これから嫌という程見ることとなるぞ、空戦地域を突っ切る。覚悟を入れろ!」

「「「「「りょ、了解!」」」」」

 

機体内には多数の返事で溢れかえる。エンジン出力を上げて早いうちに突破する目論見であった。爆撃隊は進路を一切変えずに空戦地域を突っ切り始める。

普通なら避けて通れとマニュアルでは書かれているが、それを無視して自ら危険に晒す愚行を見たパイロットは驚嘆しているものも、それを批判することは言えなかった。それはイーストウッド小尉のある逸話が基地各地で広がっているのが関係していた。

 

「流石は自由過ぎる魚(FREE FISH)と呼ばれるだけはあるな……」

 

彼は昔、第一次ネウロイ大戦の際に爆撃機パイロットとして戦った際に友軍を救うと言って規則違反である単機出撃を何度も犯し、その度に友軍が命からがら退却できたという話である。彼の後処理を担当する上官と救われた友軍から畏敬の意味を込めて自由過ぎる魚(FREE FISH)という二つ名を貰ったのだ。流石に初老を迎えた身体で無茶はしないだろうと油断した搭乗員たちは度肝を抜く羽目になるとは。

 

「うおおおお!!」

「来るな来るな!」

 

残ったネウロイがウェリントン爆撃隊に迫る。必死になって追い払おうと防衛機銃を忙しく働かせる機銃手。一見、七ミリの機銃は効果が薄いようではあるが集団だと濃い弾幕を構成させた。一体が七ミリの霰に屈して白い破片となって飛散した。ただあちら側も黙ってやられるだけではない。とあるネウロイが放った弾丸が幾つか羽に直撃する。

 

「被害確認!」

「被害は軽微、特に異常は見られません!」

「そうか、続行するぞ」

 

小尉の問いに見張り員が声を荒々げながら確認する。羽に当たったとはいえ目立った損傷は受けていないらしく息を撫で下ろした。通信手である新兵は頭を抱えながらうずくまる。そして信仰元の神に自身の安全を懇願している。

 

「主よ、どうか私をお救いください…」

「俺に任せて神を信じろ。少なくとも墜ちはさせない」

「今までに犯した罪を償います…」

 

安心させようと小尉が声を掛ける。だが依然として神に懇願するばかりである。己もこうであったか、と思い出に浸りながら空戦地域を抜けた。追従しようとしたネウロイは護衛機により撃墜された。

爆撃隊の損傷はなし、エンジンの一基が黒煙を上げている機体もあるが、爆撃には続行できそうである。大きな被害を受けた三機のハリケーンは基地へと帰投していった。

 

 

「もうすぐパ・ド・カレーだ。爆撃手頼む」

「了解、真上に落としてみせます」

「少しでも陸の奴らに楽をさせろ」

 

爆撃に成功しただけネウロイが減って防衛できる。これまで数多の規則を破って人々の命を救っていた小尉だ。助ける過程で幾つかの障害があったとしてもそれを強引に突破するのがイーストウッドという人間である。

爆撃手がパ・ド・カレーの防衛施設を確認して小尉に報告する。

 

「進路そのまま」

「よし、着いたか。先に制空権を守りに行った部隊があるはずだ。少しは楽になっても油断はするな」

「わかってますよ」

「で、間違えて味方陣地に落としたらお前を投下するからな」

「それは勘弁を」

 

爆撃手は軽い冗談を交わしながらも、標準機を覗いて敵で埋もれた地面を確認する。インクを紙一面に零したように黒く、恐怖を感じるものである。思わず彼から冷や汗が垂れるも拭い取る時間も惜しく、任務を続行する。

 

「投下準備―――」

 

部隊は各爆撃手の言われる通りに爆弾槽を開いていき、幾つもの爆弾が露出する。あまりの数に照準を合わせる必要がなく、タイミングを図る。あまりに近すぎると見方にも被害が及ぶ可能性があるからだ。十秒経過してから爆撃手は知らせる。

 

「投下!」

 

小尉の機体を最初に各爆撃機から爆弾が放たれる。爆弾は風切り音を立てて地面へと吸い寄せられていく。機体を急いで旋回、基地へと帰投しようとする。その数十秒後、地面が大きく爆裂して爆炎と煙をあげるのを視認できた。どのくらいのネウロイを破壊できたのかはわからない。だが確実に被害を与えることはできただろう、小尉は満足気に基地へ進める。

 

 

「ネウロイ真上から降下してきます!!」

「そう簡単にはいかないか、総員態勢を低くしろ!」

 

真上からの奇襲で機体に銃弾が貫通し、新たな風穴が生まれる。数はというと先程よりも断然多く、流石の護衛機でも対処しきれない。

 

『三番機、操縦不可です!』

『こ、こちら四番機。パイロットがやられました!』

『助けて、助けてくれええ!!』

『うわああああ!!』

 

無線から聞こえる阿鼻叫喚の報告、舌打ちを打ちながらネウロイから逃げる。助けを求められても何もできないのが腹立たしい。

すぐさま護衛機が奇襲を仕掛けたネウロイを討伐しに向かう、後部銃座ではひっきりなしに銃撃を続ける。

 

「墜ちろ墜ちろ墜ちろ!!」

「ぐおっ!?」

 

鈍重な音とともに機体がぐらりと揺さぶられる。また銃撃を浴びたようである。その瞬間、後部から鉄の生臭いがするのに気づいた。

 

「被害は!?」

「後部銃座沈黙! 一名やられました!」

「くそ、よりによって後部銃座か……」

「一基のエンジンが黒煙を上げ始めています!」

「一基ならいける。逃げ切るぞ!!」

「「「「了解!」」」」

 

エンジンの被害を気にせずに機体を駆らせる。爆撃隊は現在、十機のうち六機が墜落した。一緒に寝食共にしてきた仲間を喪うのはとてもツラく、さらに怒りが込み上げる。

けど今はそんな余裕は存在しない、歯を食いしばってただひたすらに逃げることしかできないのだ。

 

『ハリケーン小隊、被害甚大! ぎゃああああ!!』

「リーダー! 最後の護衛機が墜とされました!」

「密集陣形を維持して逃げ切るぞ、お前らならいけるはずだ!」

 

生き残るという強い意志を持って機体は空を駆ける。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ウェリントン隊帰投しましたー!!」

「損害が激しいな……」

「これは修復し甲斐がありますね」

「やめろ縁起でもない」

 

一機のウェリントンが基地に帰投してきた。途中で帰投したものなのかと整備兵一同が思ったが、着陸した瞬間に間違えていることに気付いた。

機体は穴だらけでエンジン二基からは黒煙を吹き、前方の銃座はガラスがひび割れて内部が見えずにいる。力なくウェリントンは胴体着陸、破片が滑走路に散らばっていく。

整備兵たちが目撃したのがそれは第十四ウェリントン爆撃隊の隊長を務めるイーストウッド小尉の機体であった。

 

「小尉!!」

 

中でも付き合いが長い整備兵が急いで駆けこみ、ドアをこじ開ける。

機内は酷く血生臭く、思わず鼻を摘まんでしまう程に。彼が操縦席へと足を進めているとぬるりとしたものに足を取られて転倒してしまう。

服にはべったりと血液が付着し、踏んだのが誰かの臓物であることに気づいて嘔吐した。一通り吐き終え、ふらつきながらも操縦席へ向かう。

操縦席にはぐったりとイーストウッド小尉が倒れていた。顔は青ざめて、虫の息である。しかし、着陸をしたということは先程まで操縦していたということに直結する。

こんな瀕死の重傷を負ったが意識を持っていることに彼は敬意を表した。

 

「今助けますからね!」

 

小尉を背負い、機内から出る。その二人の光景を見て殆どの整備兵たちが今戦争は身近にまで接近していることに気付かされた。

戦争はまだまだ続く。

 




イスパノ・スイザ HS.404

スイスのエリコン社が開発した初期型エリコン FFS航空機関砲のライセンスを取得してフランスでHS.7およびHS.9として生産を行った。
数々の国で使用されるも、初期型は旋回時の装弾不良などから部隊での評判は良くはなかった。
しかし、汎用性は高く、第四次中東戦争でも、旧式兵器でありながら航空機26機を撃墜する戦果を見せる。
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