「はっはー! 新型戦車をなめんじゃねェッ!!」
「お見事です。この調子でいきましょう」
「そうだな!」
確実に狙いを定めて放たれる砲弾、狙いは逸れることなくネウロイへと向かっていき見事撃破していく。
ジェネフはニヤリと敵を嘲笑しながら弾を込めて引き金を引き続ける。今回はより多くの砲弾を持ってきていたため長期戦が可能である。したがって砲弾の節約をしなくてもいいこととなる。これは隊員たちのモチベーションにも影響することだ。
ちなみにだがこの戦闘においてジェネフは三十体撃破で使用した砲弾四十発近くと狙撃の腕も徐々に上がってきていた。小型には榴弾か機銃で対応する。
この戦闘を含め非公式記録であるが百は撃破したという、戦車兵では最強を誇る存在だ。
『一体撃破!』
『こちらもです!』
「お前らその調子だ。流石は歴戦の猛者を集めた戦車中隊だ!」
「くっ!?」
「あいった!」
隊員たちに激を飛ばしていると突如ネウロイから放たれた砲弾が砲塔に命中した。しかし運よく弾くことができて難を逃れることに成功した。顔面蒼白になる車内一同、しかし気を取り直して攻撃を行ったネウロイを特定、照準を向ける。
「撃てッー!」
だが標準に捉えた瞬間に爆散していく、対戦車砲の3.7cmPaK36が火を噴いたのだ。案外対戦車砲部隊も捨てたもんではないとほくそ笑みながらも攻撃を続行する。
塹壕内にいる狙撃兵もスコープを合わせ、観測者に確認を取って狙撃。小型ネウロイを見事に破壊していく。機関銃手も猛スピードで迫りくるネウロイを得意の弾幕で足止めからの撃破という一連の流れができた。
「ネウロイ塹壕内に侵入!」
「くそっ! 銃剣とスコップで殴り倒しにいくぞ!」
「うああああ!!」
「よくやった!」
そしてネウロイが塹壕内に侵入したら即座に二人がかりで白兵戦を繰り広げた。
「我らも歩兵科の意地を見せてやれ!」
「……次だ」
「はい風速は東から微弱、いつでも」
「撃つッ」
「命中、脚部損傷しました。この調子でいきましょうマルセル上級兵」
「当然だ。次弾装填、撃つ」
「命中、撃破しましたお見事です」
対戦車ライフルも伊達ではなく急所を抉り、進行速度を遅くしている。対空戦車は一門の二十ミリ機関砲を空へと打ち出して急降下爆撃や機銃掃射を防ぐ。
「一体がこちらに急降下してきます!」
「ええい! すぐに弾幕構成だ!」
「了解!」
指示を仰がれた各車両は砲塔を回頭、仰角を上げて細い針金で作られた照準器越しに一斉射撃を開始する。
たかが一門の機関砲が束になって打ち出されることは恐ろしく、効果は絶大であり、機銃掃射や爆撃を受ける前に撃破していく。空の脅威を落とすといちいち歓声があがる。実はこの対空戦車部隊は適当な雑兵を補充していたためである。だが流石はランデル中将、雑兵たちの才能を見抜いて的確な部隊に送りあげたのだ。
「来るぞアーデルハイト!」
「障壁を張りますのでその隙に」
「言われなくてもだ」
空では航空ネウロイ多勢を相手に二人だけの航空ウィッチが陣取り合戦をこなす。アーデルハイトが障壁を展開することで防御、無防備になった時を狙い機関砲を短射して撃墜を果たす。
「ほう、こちらに来るか。ならばお前は!」
急接近してきたネウロイに対し、ルーデルは拳を振り上げてネウロイが攻撃範囲に辿りついた瞬間を狙って振り下ろす。甲殻が割れる音を残しながら下へと墜とされる。
相手にもならないといった風な笑みを浮かべる。その姿は実に魔王であった。
「これでだいぶ減ってきただろう」
「ですね、数が少なくなった気がします」
「けどまだまだこれからだ。気張るぞ」
「了解」
「ほら言わんこっちゃないな」
「援護します」
「任せるぞ」
空では陸では全てにおいて人類側が圧倒していた。人類の叡智が積もった兵器は得体の知らない化物に十二分なまでに通用したのだ。勝算はこちらに十分にある、もしかするとこのまま押し勝てるかもしれないと誰もが思った。
だが、化物側もスペードを切ってきた。
数々の戦場において体の一部を現れることで戦場を把握してきた魔法のカードの一つ。それはある意味化物の巣窟よりも厄介で恐ろしく畏怖しなければならないカードであった。
それは大きな地響きとともにやってくる。
大地が揺らされ立つことが危ういほどの力、車内では身体を打ち付けられ、砲兵は持っていた砲弾を足元に落とすまでに。
ジェネフはこの異変に気づき全車輌に通達する準備を始めた。
「またか、またあの規格外がやってくるぞ……」
「相手にはしたくないレベルの奴ですか……」
『全車輌に告ぐ!回避行動を専念し攻撃の手を緩め、躱すことに重視しろ!!』
「じ、地震ですか!?」
「馬鹿言え、カールスラント含む欧州は地中海側を除き少ないぞ」
「じゃあ何ですかコレは!?」
「わからない、だが確実に異端であることには違いない。一時待避、すぐ近場の家で狙撃だ」
「了解しました!」
「嫌な予感がする。アーデルハイトは上空で待機、孤軍奮闘を期待している」
「私一人ですか、まあいいでしょう。何処へ赴くんですか大尉」
「決まっているだろ、あの化物と再戦さ」
「なるほど、できるだけ頑張ります。どうやら制空権を抑えに戦闘機部隊がわざわざブリタニア本土から応援に駆けつけてくれましたし
そのカードと死闘を繰り広げた強者は身構え、経験がなくとも変化に気づいた強者は最善の案を浮かばせる。そして未来永興に伝わることとなる大激戦、パ・ド・カレー防衛線に強烈な色を着色する出来事、
八本の禍々しく黒い触手が地中から円を囲むように飛び出して地面を強く抑える。すると中央の地面が盛り上がり、タコのような身体を露呈させた。黒と赤がで禍々しく吐き気を覚え、巨大な図体からは隠しきれないほどの異様な雰囲気を醸しだす。
唖然としている兵士たちに一本の触手が無残に薙ぎ払われた。急いで塹壕内で屈みこんでやり過ごそうとするが触手の先端部が赤く赤く点滅していき、継続的に輝き始めると一条の太い光線を塹壕の線に沿って薙ぎ払われた。当然一瞬かつ即死の攻撃に断絶魔すら残すことも赦されずに焼失する。
「これが、アイツの本体……」
「デカい……」
『た、隊長どうします?』
「そんなん決まってるだろ、喰うぞ。神話上の生き物クラーケンを獰猛な山羊が突いて殺す!」
『了解しました!』
しかし、戦車隊では動揺が走ったものも彼の発言に勇気付けられて戦意を取り戻してみせた。ガスマスク越しからでもわかるように眼は絶望に染まってはおらず、意気込んでいる。山羊が呻りをあげる。
「これが、師団を壊滅させたという伝説の化物……」
「怖気ついたか?」
「恥ずかしながらそうです。逃げたい気分です」
「なら逃げろ、生に固執せよ」
「……ですが、ですがこの化物を退治しなければさらなる犠牲が生まれる。私らでやりましょう」
「いい覚悟だ。観測頼む」
「了解しました!」
初見にも関わらず戦意喪失しないマルセル上等兵、小屋へと向かいながら策を練る。どこを的確に攻撃すれば有利になるか、そもそも弱点はあるのかと多少弱気にはなるものも大した技量を持ちえない観測手の勇気にあまりにも無礼だと感じ、己の唇を噛みしめ罰した。
「久しぶりだな。今度は引き分けにはさせない、ここがお前の死に場所だ」
『久しぶりだな魔王の嬢ちゃん』
「この声はジェネフか、お前も気づいているよな」
『勿論、アイツは俺の部隊を壊したんだ。忘れるわけないだろ』
「だろうな、弱点を今探す」
『頼むぜ』
空では魔王が待機している。弱点を探しつつどう攻めるかを模索した。先程ハインツから受け取ったMG FFの残弾数を確認すると三発ほど、適当に撃ち込むが距離もあいまって効果は微小、舌打ちを鳴らす。だが同時に硬い甲殻で覆われているが距離を詰めれば効果的だと断定、MP40に持ち替えて構える。
「今度の戦いは勝ってやるぜ」
闘志むき出しの山羊
自身の蹄と角を向ける。
「魔王の恐ろしさをその身で堪能しろ」
冷徹に嗤いかけ、鼻に付けられた傷が疼く魔王
手榴弾がいつでも落とせるようベルトに手を、片手でMP40を向ける。
「観測を頼む、対戦車ライフルでどこまでいけるかわからんが」
「お任せを! 全力でサポートさせていただきます!」
「お前と俺は一蓮托生、二人で一つだ」
同じ意思を持った似た者同士の若い観測手と冷静な観測手
観測手は双眼鏡を覗きこみ風向きを調べ、狙撃手は触手の先端部に照準を合わせる。
「―――――撃てッ!」
対戦車砲の砲撃が戦闘のゴングとなり雌雄を決する戦いが始まった。
3.7cm PaK36
ドイツで生まれた対戦車砲、1928年末に開発された。
開発当時の対戦車砲としてはごく標準的な性能を有しており、初期型のIII号戦車の主砲として使用された。
ヴェルサイユ条約で重火器の製造は禁止されていたが秘密裏にソ連内で開発、製造していた。
スペイン内戦にも送り込まれた経験があり活躍したがフランス戦においては戦車の装甲増加に伴い威力不足とされ、連合国からドアノッカーと揶揄されることとなる。
ちなみに日本軍に日中戦争の際に鹵獲されていたりする。