人狼は夢を見れるのか   作:渡邊ユンカース

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出してほしい兵器などがあったら教えてください。
なるべく応えます。



戦車

人狼はバリケードとして置かれていた机に腰を掛ける。MG機関銃は地面に投げ捨ててある。

着ていたシャツは穴だらけでとても着れるような様子ではない、そのシャツを脱ぎ捨てて、拳銃自殺を果たした兵士の死体から上着を剥ぎ取った。

その上着には飴玉が入っており、暇だったのかそれを舐めていた。傍から見れば可愛らしい姿だが、悲惨な状態で行うのはあまりにも場違いだ。

 

それから十分が経った。

奥に投げた兵士は回収されて、バリケードには兵士が集まり、MG機関銃を増設し取り付けている。そしていつでも撃てるようにこちらをじっと見つめている。

 

その時、地響きが聞こえた。外からだ。

人狼は外に出て、地響きの原因を目にした。

 

 

戦車

 

鋼鉄の皮膚を纏い、凶暴な砲を積んだ恐ろしい兵器だ。

当時カールスラントで主力だったⅢ号戦車が姿を現した。暴徒鎮圧のためにこの軍事施設に五両置かれている。

 

前世の記憶から人狼はこの戦車の情報を知っていた。

通信機械等の全てが最新鋭に揃えられた電撃戦を支えた戦車だ。

五十ミリの砲はこの年代においては強い部類に入る。

しかし装甲はお世辞にも厚いとも言えず、1940年代に開発されたソ連のT-34と戦うには分が悪い。あちらは傾斜装甲と言う斜めに装甲を溶接させることで弾を弾き、そして砲のほうも七十五ミリと大きいからだ。

 

人狼が正面玄関で騒動を起こした時に、ある兵士が車庫まで走り、個人的な理由で戦車を動かすように懇願し、その気持ちに押され戦車を動かしたらしい。

通路の奥や建物の中から戦車を動かしたということに兵士たちの驚いた声があとも絶たない。だがそれは心なしか全部嬉しそうなものだった。

 

「いいぞー!」

「化け物を倒せ!」

「殺せー!」

 

歓声に応えるかのようにキューポラから車長が出てくる。戦車兵が必ずや被っている帽子に黒髪でチョビ髭を生やし、顔もいかつい男性だった。

 

「ったく、まさかこんな騒動を起こしやがって…」

「車長、あいつをコイツで倒しましょう!」

「そうだな、榴弾を装填! 砲を合わせろ!」

「完了しました」

「よし、奥の連中にぶつけんなよ」

 

ガシャンと榴弾が装填される音が車内に鳴り響き、砲塔がゆっくりと人狼に向けられた。しかし人狼は動かない。

照準が人狼を捉えた。

 

「撃てます」

「狙いを定めて……」

 

 

「撃てェ!!」

 

弾が発射されることで辺りの空気が震える。無機質な音が一帯を支配した。

榴弾は人狼の目の前に落ち、土煙が舞う。

榴弾の真価というものは、榴弾のそのものの爆風や破片による殺傷である。

つまり、榴弾が人の目の前で落ちたとなれば、その被害は尋常ではないほどになる。

人狼の身体に幾つもの破片が刺さり、破片が頭を抉りとった。頭だけを抉りとっただけではなく、右足や左腕を奪い取る。

人狼は爆風で投げ飛ばされ、体を強く打ち付けた。

 

「はっはー! やったぞ!」

「ナイス腕だ!」

「戦車兵のやつらありがとう!」

「…へっ、化け物とはいえガキを殺すのは胸糞悪いぜ」

「そうですね車長、僕にもあのくらいの子供がいますし」

「さて、早く帰るぞ。始末書を書かないといけないからな」

「私も手伝いますよ」

「ったく頼むぜ。さあ戦車前進だ!」

 

車長が上半身を車内に戻す。

戦車が車庫に戻るために前進しようとした、その時

 

 

ピクリと人狼の体が動いた。

 

「んあ? 今動いた気が・・・」

「車長、ふざけんのはいい加減にしてくださいよ」

「いや待て…動いてる! 動いてるぞ!」

「はあっ!?」

 

人狼の身体を再構築させるために身体の部位が集まり、身体を接着させてみせた。

人狼はゆっくりと立ち上がった。

 

「どうします!?」

「ちィ! 機銃で牽制を掛けつつ榴弾を再装填だ!」

「りょ、了解!」

 

車体や砲塔に備え付けられた機銃が発射される。

人狼は避けながらまた、正面玄関内に戻っていった。

 

「これじゃあ撃てねえな・・・」

 

中には奥にバリケードを築いた兵士の姿が見える。無闇な機銃掃射は味方に被害が出る。このままでは撃てない。

再び車長はキューポラから上半身を出し、拳銃を構える。

 

「次は、仕留めるからな・・・!」

 

 

人狼は正面玄関内に戻ったあと、さっき上着を剥ぎ取った兵士からライフルを拾い受け、残弾を確認する。

残弾は四発、これだけでは足りずに手から拳銃を奪い取り残弾を確認。

こちらはまだ七発。

右手には拳銃を構え、肩には身の丈に合わないライフルを掛けていた。

そして、戦車に向けて突撃をする。

 

「出てきたぞ! 機銃!」

「はい!」

「おらおらっ!」

 

機銃が人狼に向けられて連射をかます。車長も負けじと拳銃を人狼に向けて撃つ。

だが、人狼は少しでも攻撃を緩めさせるために、車長に拳銃を向けて撃つ。

 

「うわっ!? あのガキ撃ちやがった!」

「車長、すぐさま退避を!」

「そんなんわかってる!」

 

車長は急いで車内に戻っていく。

射線を読み、機銃の攻撃を躱す。

 

「くそっ! あいつ避けやがる!」

「接近される前に砲を撃て!」

「了解!」

 

またもや戦車は砲を放つ。すぐさま榴弾を人狼の鋭い蹴りで弾き、明後日の方向に着弾した。まさしく人技ではない。

 

「あ、ありえねえ…」

「車長! 接近されます!」

「…ちくしょう。下がれ!」

「了解!」

 

Ⅲ号戦車は後ろに下がる。

だが、人狼はライフルを構える。

構えた瞬間、人狼は気づいた。自分の体内に沸きあがる謎の力がライフルに注がれるのを感じていた。

引き金を引き、銃身から一発の弾丸が放たれた。

前世の記憶を辿り、サスペンションにめがけて撃つ。弾丸は戦車のサスペンションに損傷を与え、戦車は動かなくなった。

本来ならばライフルの弾など小口径の銃は戦車の装甲に防がれて効果はない。だがそれを可能にさせたのは人狼にあった謎の力のおかげだろう。

 

「しゃ、車長! 戦車が動きません!」

「はあっ!?」

「サスペンションの故障かもしれません!」

「んなこたぁ聞いてねえ! 撃て、撃ち続けるんだ!」

「うわああああ!!」

 

搭乗員は必死に機銃を操るが、それでも機銃は一向に当たらない。

砲の装填はされてはいない。あまりにも近距離過ぎて撃てない。

 

今度こそと言わんばかりに、機銃を狙いに定めて引き金を引く。

弾丸は機銃を撃ち続けていた搭乗員の肩を撃ち抜いた。

 

「痛てええええ!!」

「大丈夫か!?」

「すぐに止血をしろ!」

「化け物がもうそこまで!」

「クソがああああああ!!」

 

阿鼻叫喚となっている車内を知らず、人狼は戦車の元へとたどり着いた。

すると人狼は戦車を持ち上げようとする。

Ⅲ号戦車は22.7トンあり、クレーンでしか持ち上げられない。

それを人狼は持ち上げてみせた。

 

「う、浮いてるうううう!?」

「何が起きたんだ!」

 

人狼は戦車を持ち上げたあと、戦車を投げ飛ばした。

 

「うわあああ!?」

「うぎゃあああああ!!」

「地面があああ!!」

 

戦車は着地したあと横転し、ひっくり返った。

中から乗組員らが出てきて、走り去った。

 

「こんなんのと戦ってたまるか!」

「ふざけんのもいい加減にしろ!」

「ひいいいい!!」

「助けてくれー!!」

 

最後の見せしめと称して、ライフルに何かを注ぎ込んで戦車に向けて二発撃つ。二発の弾丸はⅢ号戦車の燃料タンクや弾薬を撃ち抜いて爆破した。

人狼は人々の罵声を聞きながしながら正面玄関内へと戻っていった。

 

「おいおい、こんな奴に勝てるのかよ」

「そんなの知らねえよ……」

 

人狼に対する不安が兵士たちに纏わりついていた。

人狼はその状況に気づいていた。

 

人々の不安や恐怖という感情が人狼に向けられ、その感情に人狼は心地よさを感じていた。

化け物と呼ばれる生命体は人々の不安を煽り、人を孤立させて一人になったのを狙う。

そのため、不安や恐怖などの気持ちは化け物にとっては道具にして同僚のようなものだった。

それは人を食らうことが無くなった人狼にも受け継がれていた。

死に場所を求めて人狼は戦場を駆けていた時に敵兵士から向けられた視線が忘れられなかった。

人狼は自分を恐れる気持ちを忘れることもなく、自分に合った死に場所を探しつつ、自分に向けられる恐怖心を堪能していた。

人狼が戦場を駆けまわった理由の一つだ。

 

ライフルを投げ捨て、机に腰を掛けた。

この世界で対等にやりあえる存在はいるのだろうか

己の期待に反するような世界に生まれてしまった人狼は不安を抱きつつ人狼は顔を伏せた。

 




Ⅲ号戦車

出身地はドイツで新たな戦車戦術に対応できるように開発された。スペイン内戦などにも参戦しており、先進的な技術が用いられている。
元々は十五トンを目指していたが詰めに乗せて二十トンを超えた。
砲の大きさは五十ミリと開発された時には大きかったが1940年代になると各国の戦車が七十五ミリを搭載し、装甲も厚くなるにつれて五十ミリでは力不足になっていく。ちなみにⅢ号突撃砲の車体はⅢ号戦車の車体を流用されたものである。
しかし、不利な状態で戦闘が行えたのは戦術や装備の充実さによるものだろう。
戦闘を行った戦地は多く、フランス戦や北アフリカ戦線、独ソ戦が代表的な例とされていく。
派生の戦車といえばⅣ号戦車だろう。
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