人狼は夢を見れるのか   作:渡邊ユンカース

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あけましておめでとうございます(激遅)


砂塵

人狼がアフリカに着任した翌日。

辺境の地アフリカには合わない朝飯を食し終え、自室とも呼べるテントにて読書にふけっていた。

 

何故そんなにも美味な飯が食えるかというと食品などの管理が行き届いていることに加え、ロマーニャの料理人が駐在しているのだ。

これにより常に兵士の士気は一定を保ち、素行などの問題点が収まったのだという。

おまけにではあるがもう一つ要因が存在する。

 

それは扶桑のウィッチである稲垣軍曹が自ら調理場に立ち料理を振るう。

これには嫌が応にも兵士たちは歓喜し、当時なら食べることはまず少ないだろう扶桑料理を定期的に食べれるのだ。

だが人狼は久しぶりに食べる日本食ならぬ扶桑食には普段通りの鉄面皮で食すので、彼女は料理が美味くないのかと落ち込んでいる様子が見てとれた。

 

兵士たちは食後に何処からか採ってきたサソリを戦わせ賭けをしたり呑気に葉巻を吸って悠々と過ごす。

別段訓練やらをしている様子がないがこれでも何年もアフリカの地を防衛してきた古参兵で、誤報で飛び込んできたネウロイ来襲の際も忙しなく働いていた。

 

 

今日は何事もないだろうと人狼が再度一から読み直そうとページに手をかけた時、けたましいサイレンが耳をつんざく。

テントから這い出ると太陽が人狼を刺すかのような日差しが降りかかり、兵士たちは持ち場へと着き、高射砲に対空砲の準備や銃器の弾倉を用意していた。

人狼も急いで司令官的ポジションに収まった加東の元へと駆け出す。

 

「ハインツ大尉出撃よ」

「…」

「ここから南に四十キロも離れたところにネウロイの群体が見つかったの、前線の兵士をサポートするべく今から飛んでもらうわ!」

「…」

 

人狼は頷き、加東と共に滑走路の元へと向かう。

そこにはユニットを脚に履き、今にも空へ飛びかねないライーサとマルセイユの姿がそこにはあった。武装としてはMG42を携え、二人の腰には幾つかの弾倉を括り付けている。

マルセイユは人狼を見ると否や敵意の籠った目でこちらを睨めつける。

 

「おい私はライーサと共に行かせてもらう。お前はついてくるな」

「我が儘言わないの、大尉と一緒に行ってもらうわよ」

「ふざけるな、こんな噂だけの男が居ても邪魔になるだけだ。先に行くぞライーサ!」

「け、けど……」

「いいから行くぞ!!」

「う、うん」

 

怒声を散らしたマルセイユはエンジンを轟々と鳴らし、固定機具を外して滑走路を走る。百メートルも超えない内に大空へと飛翔した。

ライーサはマルセイユに言われるがままに滑走路を抜け、二人は前線を維持するために向かっていってしまう。

人狼は彼女らを節目に整備兵からMGFF機関砲を受け取って安全装置を外す。両手に持つと有事の際に解除できないのだ。

 

傍のテーブルにまた機関砲を置いてから今度は自身の所持するモーゼルC96の弾倉を確認、弾倉は四つで後から集束手榴弾を腰に一個取り付けた

あまりの重装備に加東と途中からやってきた稲垣がやや引き気味にこちらを見つめている。

 

「確かに此処のネウロイは強いけどそこまで重装備だと悪影響よ」

「…」

「取りあえずは稲垣軍曹と二機編成で飛ぶからよろしくね」

「お、お願いします」

「…」

 

ぺこりと小さな身体を頭を垂れてより小さくする。

人狼はこの世界の礼儀作法と元の世界の作法と同じことを改めて認識した。

彼女がユニットを装着し、自身の武器であるボヨールド40mm砲を二人の整備兵から受け取る。

小柄な体格なのに大の大人が二人がけて持ってきた機関砲を彼女は両手に易々と持つ、ため人狼は筋力を向上させる能力か念力系統なのかと予測を立てる。

 

「ハインツ大尉、いつでもどうぞ」

「…」

 

人狼は彼女が現状報告を聞き入れ、エンジンに魔法力を流し込む。

エンジンのプロペラは徐々に速くなり轟かせるような轟音を周囲に鳴り響きさせる。やはり特注のエンジンは伊達ではなかった。

一定の魔法力を感知し固定機具が外れると滑走路をかなりの速度で滑走する。

滑走路で見守っていた新兵の一人は「マルセイユの速度を更新したぞ」と黄色い声を上げ、彼の班長にげんこつを喰らわされる。

続いて稲垣もやや遅くではあるがエンジンを乾燥した空気に響かせて空へと飛び立つ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

空に飛び立ち二機編成の編隊飛行をする人狼と稲垣。

今回は初めてのアフリカの戦闘のため長機は彼女が務めており、後方で人狼は辺りを見渡して索敵をする。

本来の出撃の際は軽い会話などを挟むのが常だがあいにく今回はそうといかない。

理由は簡単かつ簡潔で人狼は喋らない、それだけだ。

 

「あ、あのーハインツ大尉は好きな食べ物とかはありますか?」

「…」

 

後ろを振り向いて会話の糸口を模索するが、人狼からは何も返されない。

好きな花やら好きな色やらと幼稚もいいところの話題を振るが一向に答える兆しは見えず、辺りを索敵するだけ。

威圧的な雰囲気に怖気づき、猛暑や戦闘とは違う汗を掻いていた。

 

『こちらマルセイユ、戦闘に移行する』

 

そんな中、耳のインカムから特徴のある声が聴こえる。

どうやらマルセイユの編隊は空戦をし始めたらしく、より一層空気が張り詰め、まだ戦闘慣れしていない彼女は息を飲み込む。

 

マルセイユたちとは時差があったとはいえ僅か七キロ程度の差で無線が入った二分後には戦闘空域に突入する。

このことを基地にいる加東に知らせて、味方地上部隊を確認するとミミズが這いだ跡の如し塹壕が引かれ、塹壕内から小銃や機関銃、暫し離れたところからドアノッカーと名高い3.7cmPaK36が土嚢越しから砲撃をしている。

 

このことから地上に陸戦ネウロイがいることを把握した稲垣は地上の低空へとダイブする。人狼は地上支援をする彼女を護衛するために追従した。

地上には十体後半の陸戦ネウロイが中小揃っており、形態としては欧州で視認した小型のアリと中型のクモが居る。

塹壕との距離としては三百メートル、即座に撃破ができなくては地獄の白兵戦が繰り広げられるだろう。

 

彼女は低空を飛行しているが、標的に捉えた一体にまたも降下して四十ミリの砲弾を二連射する。一発目は外したものも二発目は見事に命中し、核が粉砕されたのか弾けた。

対地に関しては人狼を超えるもので次々に命中撃破していく。

 

何度も攻撃を行う彼女を流石に放っては置けなかったネウロイは彼女を倒すために襲い掛かる。

だが人狼は彼女を襲うだろうと当に予測し、光線を照射させる前に二挺の機関砲を短射して三体中二体を撃破する。

残りの一体は被弾したのか塔のような身体をふらつかせながらも、細い光線を照射するが、難なく人狼が魔法障壁で防衛し魔法力で強化した機関砲を殴りつけて地上へと叩き落とす。

 

「な、なんて鮮やかな手際……」

「…」

 

それでも彼女を墜落させるためと十体のネウロイがこちらへ続々と降下する。

あんなにも墜とされていった仲間が何故墜ちたのかという理解がないのか、纏まって動くので機関銃を先程同様に発射して一面に破片の雨を降らせた。

一体が人狼の後ろへ付いて光線や弾丸を飛ばすが、搭載された後部銃座機能が作動して独特な形態の上下部分を分解した。

 

また新たに二体のネウロイが機銃を撃ちながら突入してくるのではないか、人狼は引き金を引くが二挺から何も発射されない。

太陽が雲に隠された時、人狼の身体からは血飛沫が飛ばされた。損傷箇所は胸に頭部といった急所ばかりである。

 

「大尉!!」

 

態勢を崩して武器を手から落とし、頭から落下していくのに対し彼女と離れているためか受け取り救うことができない。

それでも彼女は首に武器を掛け、魔法力をつぎ込んでエンジンを加速させる。

地面まで接地する百メートルに達すると被弾した所が霧に巻かれ態勢を取り戻した上で静止する。

 

人狼は不可思議といった風に両手を見つめて、何が起こったかが理解できずに首を傾けている。

遅れて彼女が涙目になりながら人狼の元へと向かい、慌てふためいたように口にする。

 

「い、今応急手当を!」

「…」

 

医療箱から包帯を取り出して首を確認するが傷の一つも見当たらない。それどころかただ血で濡れているだけだ。困惑の色が見てとれる。

傍から見れば不可解極まれりだが一応にも戦場、人狼が地上を指差して再度攻撃の指示を促す。ハッと気づいた彼女は包帯を仕舞い、武器を手に地上にいるネウロイに撃つ。

 

対戦車砲の活躍や塹壕の兵士たちが一生懸命に撃ち続けたお蔭で数も減らされている。

片手にモーゼルを携え、もう一方には集束手榴弾を。

口で安全ピンを外してから集束手榴弾を全身の力を込めて投擲する。

投げられた物はメジャーリーガーも驚きの速度で最後の一体となった中型ネウロイに命中してから爆散、魔法力を込めた甲斐もあり塵芥となって果てた。

 

「…」

『お見事です!』

 

無線から年頃らしき少女の声が響き人狼は深く戦闘帽を被る。

 

『こちらマルセイユ、全て撃墜した。これより帰投する』

『制空権を奪取してくださってありがとうございます!』

『何、当然のことだ。私だってどこぞの誰かとは違い、異名で呼ばれているエースに相応しい活躍をしなくてはな』

『ちょっとティナ!』

 

明らかに人狼を意識した発言に相方のライーサが注意を促す。

マルセイユは彼女の注意を無視し嘲笑うかのように溢れんばかりの失言を言い放つが、これ以上は関係が悪化すると察した加東が阻止した。

彼女は愚痴を零しながらも一足先に帰っていった。

 

罵倒には慣れたという風格で塹壕をジッと凝視する人狼に稲垣は早期の帰投を促した。

しかし人狼は先に帰れという仕草をして帰らせる。

その後、塹壕を沿うようにに十分間飛行した後に帰投した。

加東から何があったかを聞かれたが、人狼は何も答えずに自身のテントへと戻り去ってしまうのであった。

 




グロスフスMG42機関銃

ドイツで生まれた機関銃、1942年に開発された名機関銃である。
ラインメタルMG34は優秀な銃だったが、部品に削り出しを多用するなど生産性や高価格という欠点を抱えていたが、プレス加工の多用により、MG34のおよそ半分の人手や低いコストで製造できた。
MG42の発射速度は毎分1,200発とかなり速く、ヒトラーの電動のこぎりとも呼ばれる。

よくゲームに登場しており、派生が今なお使われている。
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