十八年経てばR18年生まれが誕生するのか……。
ジェネフに名字付けたはずだったのに忘れてしまった。わかる人いればコメントください。
マルセイユたちが基地に帰還してきて一週間が過ぎようとしていた。
被撃墜時の基地の様子は大変慌てふためいており、加東が血相を変えて捜索隊を即座に結成させて戦闘があった地区に送らせていた。
この捜索隊の規模は他所の基地とは大きく違い、炊事の者を含む非戦闘員までもが自ら志願し捜索をしたという。
それほど彼女の存在は大きいのだ。
そんな時に人狼が彼女らを連れて帰還したらどうなるのか、それはおのずと想像できるだろう。
人狼は狼化を解いてマルセイユを背負い、片腕でライーサを抱いてやって来た際には歓喜と喝采が基地中から響き渡り、一種のお祭り状態となった。
無論、この報を受けて加東も思う存分にはしゃぎ喜んだ。
だが、それが一週間を過ぎても衰える様子もなく、むしろ前より盛り上がっている。
昼間から本部の天幕外から聞こえる叫び声や歌が頭の中で反響し、煮えたぎる水の如く苛立ちが込み上げてくる。
ただでさえ暑いこの地に嫌気が差しているのにも関わらず、喧騒が相まるともう我慢ができない。
地団駄を踏み鳴らすように彼女は天幕から出てその喧騒を鳴らす主犯格の元へと向かう。
挨拶を掛けようと寄る者やただその場に居た者が彼女の通過により、まるで背中から氷を入れられたかのように身震いをして、何が起きたのかと辺りを見渡す。
事情を察することができた兵士は同情したように苦笑いを浮かべる。
主犯格の周りには人だかりができている。今は昼で小規模なのだが夜になると中規模へと遂げる。
人だかりは彼女を見るといなやモーゼが海を割るように避けていき、主犯格へと続く一本の道が完成し、彼女はより一層腕を振り接近した。
そしてその場に怒声が響いた。
「さっきからうっさいのよ!
主犯格の人物はジェネフ大尉、人狼と長らく関係を持っている人物の一人にしてパ・ド・カレーの英雄と呼ばれた男だった。
むくりと立ち上がり、持参してきたギターを仕方なしに座っていた椅子の置いた。
身長は加東を平然と超す高さで自然と見下ろすような視線になってしまうが加東は動じることもなく鬱憤を吐き出していく。
周りの者はそそくさと散っていく。
「さっきから貴方たちが騒ぐせいで苛立ちが溜まってるの! 夜だったらまだしも、昼間からどんちゃん騒ぎとか貴方おかしいわよ!」
「いいじゃねえか、俺らなんて前線張る兵士なんだぜ? 好きなだけ騒げずに死んだら勿体ないだろ」
「それでもなのよ!」
確かに彼の言い分は正論でもあった。
彼女自身も扶桑でユニットを履いて戦っていたため気持ちはよくわかっていた。
だけど今は違う。後方で組織を取りまとめる司令官的立ち位置、この騒ぎで常務に支障が出ることを彼女は危惧していた。
……まあ、私的な理由もあったが。
「それに俺ら戦車大隊に仕事なんてないしな」
実質これも正論であった。
現在この基地にはジェネフ率いる戦車大隊が駐屯して、暇を持て余している。
他の基地と比べ備蓄しているオイルや部品が少なく、訓練をすることができない。
他にすることといえばただただ騒ぐ、それだけである。
一応、いつでも出撃できるように整備や飲酒禁止をしていたりと最低限のことはしていた。
「はっはー、俺らはいち早く派遣された北アフリカ独立混成旅団の大隊長だ。残りがやってきたらさらに騒がしくなるぜ」
「……戦力的には嬉しいけど業務に差し支えるから本当にやめて欲しい」
「まあまあ慣れるさ」
「能天気ね羨ましい程に!」
北アフリカ機甲独立混成旅団というのは増援で送られるカールスラントの軍隊で一足先に戦車大隊の大隊長を務めるジェネフとその搭乗員が基地に駐屯していた。
そして驚くべきことに、その旅団の指揮をするのは言わずと知れたランデル中将であった。
「じきに大規模作戦が始動するんだ。まっ、目的としてはスエズ奪還だよ」
「……貴方、作戦のことは受けていたのかしら」
「戦車大隊を任されてるんだ。当たり前だろう」
大規模作戦をジェネフが切り出した時に、目の色が変わる。
まるで狩人のように鋭利な眼光と雰囲気に彼女は認識を改めた
彼の第一印象はただ声の大きいだけのお飾り、欺瞞に溢れた男というもので、カールスラント軍のプロパガンダ通りではパ・ド・カレーに出没した陸戦型の大型ネウロイを倒した英雄の一人と称されていたが、ただそこに居た兵士を担ぎ上げただけだろうと思っており、今に至るまで英雄という威厳は垣間見ることもなく、逆に歓楽街で見かける酔っ払いと同等だと印象づけてもいた。
しかし、ジェネフから投げ飛ばされる幾多の戦場を生き抜いてきたと瞬時に察することができる眼光と威圧に認識を改めざるおえなかったのだ。
そんな眼光を当てられた加東は思わず息を呑み、彼から紡がれるであろう言葉を緊迫した状態で待つ。
「…ということで、またどんちゃん騒ぐからよろしくな!」
「馬鹿でしょ!」
あまりのギャップに調子が狂わされた加東はズコッとバランスを崩し、転倒しかけた。
陽気に何も考えてはいないだろう笑みに彼女は再度認識を改める。
「あぁ、こいつはロンメル将軍と同じ性質か」と
ケタケタと笑うジェネフのもとに何処にでもあるような握りこぶし程の石が向かっていき、見事頭部に命中した。
声にもならないような悲鳴を上げてうずくまる彼に近寄る眼鏡を光らせた人物がジェネフの背広を掴み引きずろうとする。
「ほら車長、迷惑なのであっちに行きましょう」
「うおおおお、人に投石するとか信じられない!」
「皆様の迷惑ですからいいでしょう」
「た、助かったわ。ありがとうエドガー兵長」
「いえいえ、この人を止めるなら強引にやっちゃってください」
「肝に銘じるわ」
意外な救世主に彼の取り扱い方を教えてもらった加東は、無様に引きずられていく彼をよそに本部へと戻ることにした。
その道中、マルセイユを含む少女たちと人狼がトランプに興じているのを見つけた。
「あらトランプやってるのね」
「む、ケイか。いやぁ大尉のポーカーフェイスが強くてな、中々勝てないぞ」
「うん、しかもポーカーだと勝てない戦いは乗らないという冷静な判断もできていて中々だよね」
「将棋ならまだ勝てましたけど……」
「あら稲垣軍曹勝ったの?」
「はい。だけどやるにつれて成長していって今はもう……」
「恐ろしい成長力ね」
加東が話題の人狼に目を向けると人狼はただひたすらにカードをシャッフルしており、その手の速さに戦場で鍛え抜かれたはずの目が追い付かなかった。
これには加東も苦笑いを浮かべる。
「にしてもマルセイユとハインツ大尉は一時期どうなるかと思ったけど安心したわ」
「あぁ、あの一件か。私の方も大人げなかった、申し訳ないと思っている。……どうしたケイ、そんなに目を見開いて?」
「マ、マルセイユが非を認めているですって……ッ!?」
「それはどういうことだ!」
思ってもみなかった行動に加東は目を見開いてあんぐり口を開ける姿に、すかさずツッコミをいれるマルセイユ。
その滑稽な光景に微笑む稲垣とライーサ、人狼もシャッフルを止めてこっちを温かい視線で見つめている。
マルセイユは「それに……」と口ずさんで顔を赤らめてモジモジとした様子をする。
「た、大尉を抱いてしまったわけだし……」
「……はあっ!?」
加東は二度仰天した。
まさか人狼とマルセイユがそういう関係になっていたなんて知るよしもなかったのだ。
暴露された情報に加東を始めとする少女たちも驚きを隠せないようすで動揺が走る。
なお当の人狼は加東の裾を引っ張って首を横に振り続けている。
「ま、まさかマルセイユからいったなんて……!? 大胆すぎるわよ! それに処女を失ったら空を飛べないのよ!!」
「…」
「ひ、秘密の愛……」
「それっていいですよね、ライーサさん!」
「おっ、これはめでたいなハインツ!」
「おめでとうございますハインツ先輩!」
何処からともなく登場したジェネフとジョイルがハインツに祝言を言う。エドガーの手から脱走してジョイルと合流したのだろう。
人狼は収拾がつかなくなったと諦め、雲が太陽を覆った瞬間に姿を霧にして何処かへ去った。
無論これはマルセイユの冗談であり、抱いたというのは狼化した際、人狼に乗るために抱き着いたという表現が正しい。
彼女の冗談はたちまち基地の人間へ、そしてロンメルの元へと知れ渡る。
後日、人狼はロンメル将軍率いる【ハインツ大尉ぶん殴る軍】に追いかけられるハメになるのであった。
なお、この誤情報は南リベリアンのカールスラントの皇帝の元へと届き国内は騒然とした。
「あれ、案外このカップルはいけるのでは?」と考えた両者のファンと「マルセイユは俺の嫁」というマルセイユファンクラブの過激派が乱闘騒ぎになるという珍事に、マルセイユも流石に危機感を抱いてか謝罪文を本土に送った。
「あの生意気な奴が恋人だと!?」
「落ち着いてトゥルーデ、これはデマよ」
「そうだよ、うん」
「……ちょっと問いただしてくる」
「馬鹿じゃないの!? 言うけど彼は今アフリカだからね!」
「離せハルトマン!」
「恋は盲目にさせるというけどまさかここまでだとは思わなかったわ……」
また、別の場所でも珍事が発生していた。
ギター
ギターはおそらくスペイン起源の楽器であり十六世紀に派生したといわれる。
1600年の前に5組目の弦が加えられた。18世紀の終わりころには6組目の弦が加えられた。
ジェネフが持参してきたのはアコースティックギターである。
ギター侍懐かしいですよね。
テツトモの方が好きですが。