人狼は夢を見れるのか   作:渡邊ユンカース

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カスタムキャストで今は亡きアニーサ中尉を作成しました。初心者なので許してください。

【挿絵表示】




概要

人狼が滞在する基地にランデル中将を始めとする北アフリカ機甲独立混成旅団が現在、駐在している。

辺り一面が荒野のため兵士が寝泊まりするテントの設営には困らないものも、最新のカノン砲である17cmK18や伝令のバイク、または物資などは従来の布設の収容範囲が超過してしまったために、新しく作らなければならない事態へと陥った。

 

司令室のテントの中にはランデル中将、ロンメル元帥、加東と人狼含める航空隊、それにロンメルと鉢合わせると喧嘩が起こることで有名なバーナード・モントゴメリーとジョージ・S・パットン、それに各兵科の指揮者が着席し、狭く暑苦しい室内に詰まっていた。その中には当然ジェネフも出席している。暑い室内というのに彼と人狼は帽子を着用していた。

 

テント設営時のピンを叩く金属音や指示を出す怒声が外から聴こえる中、室内は重々しい雰囲気に包まれており、稲垣とライーサは委縮してしまっている。マルセイユと加東も表には出してはいないものも、顔に緊張の色が見受けられる。ジェネフが彼女らにちょっかいを出すも何も返答もないほどに。

 

それに対し、遠方からの来訪者ランデル・オーランドは常に口角を上げて皺を伸ばす。狂気が溢れる態度がよりこの雰囲気にした原因とも思える。ロンメル、パットン、モントゴメリーはランデル中将の側近から配られた書類を読み通していた。

人狼はその側近には見覚えがなく、前任者のダロン大佐は何処に居るのかふと疑問に思い、辺りを見渡す。

 

「ハインツ、残念だがダロン大佐は此処にはいないぞ」

「…」

「彼は戦死してしまったからな。あのパ・ド・カレーで無残に、そして華やかしく」

 

そう言って彼はおもむろにポケットに手を突っ込んだかと思えば、何かを机に置いた。それは一片の白い物体。戦場に慣れ親しんだ皆は、それが何なのかが察することができた。

 

「ひっ!?」

「ッ!?」

 

唖然とした表情や短く悲鳴を上げて少女たちは物体に視線を集める。それは人骨であった。どこの部位なのかはわからなかったものも、それはまさしく骨であった。

稲垣とライーサは恐怖で青ざめ、加東とマルセイユは目を見開いて無意識に口を思わず押さえる。ジェネフはやっちまった感を醸し出して手で顔を覆う。

ロンメルは当然、発端の主であるランデルに注意を促す。

 

「ランデル中将、兵士の士気を下げるのはやめてもらいたい」

「何を言うのです。私は別に意図的にしたことではなく、ハインツに大佐は死んだことを伝えようとしただけで」

「おい、これ以上乙女を怖がらせ続けるのなら俺がぶん殴るぞ」

「忌まわしきパットンの発言に同意しよう、今は」

 

バキバキと拳を鳴らすパットンとモントゴメリー怒気で満ち溢れている。それに対しニタニタと常時不気味な笑みを浮かべるランデル。

辺りは緊迫した状況に陥り、今にも暴力沙汰になりえそうな雰囲気が立ち込める。

しかし、この状況を打破するのは以外にもあの人物であった。

 

「申し訳ないですが各方面軍の将軍様方。ここはニューヨークの裏路地でもスラム街でもありません。ここは両者とも拳と感情を抑制して作戦概要を説明していただけませんか?」

 

啖呵を切ったような発言をするジェネフは、将軍三人を部下同士のいざこざを止めに入る際に使用した眼光で睨みつける。

鋭い眼光で貫かれたパットンとモントゴメリーは仕方なしに席に着く、それでもランデルは薄気味悪い笑みを浮かべ続けている。一触即発から脱したことに安堵した加東はため息を吐いた後に、ジェネフの印象を再度改めた。

ジェネフも冷や汗を隠すように制帽を被りなおす。まあ将軍に立ち向かうのは勇気がいることなので致し方ないが。

 

「では私が直々に作戦概要を説明しよう」

 

このままランデルが説明しようものなら今後の作戦に影響するだろうと察したロンメルは代わりに概要を説明する。

 

「我らの任務といえばスエズ奪還にある。スエズ運河はブリタニアだけではなく、各国の海運の重要拠点である。ここが封鎖されたことにより、物資の運搬はほぼリベリオンを経由しての海運で非常に時間の掛かる航路だ」

「確かにこのアフリカだとかなりの時間が掛かる。ヒスパニア方面のジブラルタルから侵入するわけだし」

「そうだ。幸いにも農場や酪農、家畜に関しては不足していないものも数が限られる。マルタ島などの防衛は当然のこと、地中海に住む各国の民を飢えさせてしまう」

「配給で成り立ってるらしいですしね」

 

ライーサとマルセイユは相槌を打ってロンメルの話を補助する体となる。

 

「そして黒海の奪還。遂にはダキア王国にオラーシャ帝国、及び近隣諸国の奪還も夢ではない」

「ロンメル将軍待ってください。そういえば、ダキアとオラーシャの黒海艦隊はどうなったのですか?」

「あぁ、オラーシャ帝国の潜水艦一隻を除く艦艇は全て撃沈だ」

 

実際、黒海から現れたネウロイの巣は沿岸防衛を任された艦隊を造作もなく薙ぎ払い。潜水艦の艦長が独断で撤退、なんとかオラーシャの黒海艦隊は全滅することはなかった。

しかし、職務を全うできなかったという理由づけて艦長は降格後、前線であるバルト海での哨戒艇の艦長へと転じられた。人々は艦長を罵るが人間として仕方のない行為であった。

 

「さて話を戻そう。スエズ奪還においてはリベリオンのパットン将軍率いる師団とブリタニアのモントゴメリー将軍率いる師団、そして私と新大陸からやってきたカールスラント旅団率いるランデル将軍で攻勢を掛ける。なお、この際指揮権は統一することはなく、四つの梯団で仕掛けることとする」

「ちょっと待ってください。それでの師団間での連絡が」

 

加東は声を張り上げて指摘する。

各軍の連携が命の戦場においてこの戦闘でのカギを握るのにそれができないとなると潰走は免れない。下手すれば現在滞在している基地すらも放棄しなければならない状況が生まれる。さすれば、ロマーニャやヒスパニア進出の足がかりを構築されてしまう恐れがある。

 

「あぁ安心したまえ。そこは考えがある」

 

今度はロンメルではなくランデルが声を上げる。

机に置いた遺骨を仕舞い、封筒をがそごそと探っていると例の書類を見つけて加東に投げる。手裏剣の如く投げられた書類は見事、加東の目の前に止まる。

加東は渡された書類を手に取り、じっくりと読み進める。「なるほど」と読み終えた後は納得した様子で書類を置いた。

 

「最新の無線機ですか」

「そう、カールスラントとリベリオンの研究者が英知を絞って完成にこぎ着けた逸品だ。砂嵐は勿論のこと爆発の中、砲弾降り注ぐ嵐の中でも機能する画期的な逸品だ。それと砂塵による機器の故障を比較的抑えている」

「ちなみに戦車隊にも取りつけられてて、試験ではバッチリの感度を示してくれたぜ」

 

信頼性をアピールするようにジェネフもランデルの言葉に付け加えた。確かにカールスラントとリベリオンは優れた科学技術や電気工学を所有している国であり、扶桑では量産が難しいような無線機を世界に輸出していることで有名だ。

最近の扶桑の物はまだましなのだが、加東が現役だった頃はお粗末なものであったと記憶している。

昔のことを思い浮かべて加東は苦笑する。隣ではキョトンとした様子で稲垣が首を傾げる。

 

「これのお蔭で救援要請が楽になるな。こき使ってやる」

「そうだな、モントゴメリーが直にやってくる機会が減って気分がいいわ。ネズミの顔など見たくもない」

「どういうことだ」

「おっ、やるか」

 

パットンとモントゴメリーが火花を散らす中、ロンメルは慣れたように無視し、説明を続行する。

 

「北からリベリオン、ブリタニア、ランデル中将の旅団、そして我らだ。なおこの際、指揮官が死亡した際は戦力的に比較的余裕のある者が指揮する方針となる」

「ほほう、つまり将軍三人方が戦死なされば私に指揮権が」

「ま、まあ極論では」

「そうかそうか、いい話だ」

「……ランデル中将、もしや戦死させようとしてないですか?」

「なに、そんなことはないさ」

 

期待で胸が膨れ上がっている様子のランデルを諭すようにジェネフが告げる。ランデルは屈託もない笑みを浮かべ否定するが今までの言動と前科のせいで説得力がない。

ランデル・オーランドという人物を目の当たりにした加東たちは乾いた笑いを発して口角をひくつかせ。本当にやりかねないのが恐ろしい。加東は余計に胃を痛めた。

ジェネフは面倒な上司を持ったと呆れるように頬を掻き、人狼は慣れていたため表情を崩さずにいる。

ちなみに前科というのは勝手に私用の武器を所持したり、戦車隊を私物として運用していたりと盛り沢山だ。

 

「作戦名は彗星作戦。諸君らの健闘を祈る」

 

かくして始まったスエズ奪還作戦、結末がどうなるのかは未だ神すらも知らない。

 




D型潜水艦

ソ連で生まれた潜水艦、正式艦級名称は第1系列潜水艦デカブリスト。
ソビエト連邦海軍が、最初に運用した潜水艦である。また、様々なソ連内の混乱により海軍力は落ちていたため、船体はイタリアから輸入した図面を参照し、発動機はドイツ共和国のMAN社より輸入した鉄道用ディーゼルエンジンを参考とした。
バラストタンクの配置が悪く、潜航時には船体重心に偏りが生じたので不十分な性能で六隻しか建造されなかった。
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