興味があったら本家も見てください。
北アフリカ
この土地では幾多の歴史が紡がれてきた。ローマの宿敵ともいえようカルタゴや古代エジプトの王たちによって建築されたというピラミッド、そしてイスラム王朝。
数多の指導者は地中海の要所となる北アフリカを獲得しようと戦争を起こし、手に入れて繁栄を続けていった。
例え、片方の陣営が負けてもそれは人類にとっての損失にはならず、むしろ利益を生み出していった。
だがしかし、突如として現れた異形の化物は人類の成長を無視するかのように強奪していった。今までにも、異形の化物たちが襲来してきたのは古代の文書にも記載されてはいるものも、一か国や同盟国だけで対処できた。
だが、今回ばかしは違った。1939年の冬に化物たちは何処からともなく出現し真っ先にエジプトを占領、ブリタニア軍が持ちこたえようと必死の防衛を行うも大敗、スエズへと退却する。
スエズにはスエズ運河があり、地中海の海運を担う重要な拠点のため絶対に防衛を成功させないといけなかった。ブリタニア軍は限られた物資と弾薬を用いて防衛線を構築、また民兵を集いスエズという要所をより強固にさせた。
しかし、新たに現れた光線を発射するネウロイには強固な防衛線はあっさりと瓦解しスエズは占領されてしまった。
さらに悲劇的なことに、エジプトなどの都市から避難してきた難民はスエズから北上するも、突発的にアラビア方面から現れた少数のネウロイにより蹂躙され、オストマンの領地に辿り着けたのは僅か三十名だったという。
エジプトやスエズには瘴気が振りまかれ続けている限り生物は棲むことができないという。
一方で、この惨劇を傍観していたロマーニャはすぐにブリタニアとガリアに援軍を要請し、自国の領土を他国と共同で守ることを取り決めた。
ロマーニャは第一次ネウロイ大戦において無謀な作戦で兵士を死なせた国と評されることが多々あったものも、ロマーニャは外交に関しては一流の腕であった。自らの軍事力では防衛は不可能と現実を見ることができたため即決することができたのだ。
無論、自国の領土を守るということで他国も介入するので、他国の兵站もロマーニャが請け負うこととなった。ロマーニャはローマ帝国からインフラ整備や兵站には優れていたため難なく数年間も継続させた。。
だが果たしてこのままではいいのだろうか。
いつか化物の方も行動を起こし、先制攻撃を仕掛けてくるであろう。そうなったら人類は対処しきれずに敗北するかもしれない。
だからカールスラント、ブリタニア、リベリオン、ロマーニャの四カ国は先に先手を打つことにした。
現在、人狼たちが滞在している基地では歩兵や工兵と兵科を問わない一同は広く平たい荒野に整列している。誰もが顔を引き締め背を伸ばし、目には並みならぬ闘志を燃やして直立する。現在の時刻は五時、普段なら起きている者の方が少ない時間帯だ。
兵士たちを囲うようにして臨時の拡声器が取り付けられて、そのコードは兵士たちが視線を向ける方へと一本、また一本と集束していく。
コードを伝っていった先には流行りの歌手が持つかのようなマイクを前にしたロンメル元帥が後ろに手を回して堂々と立ち、元帥としての威厳を醸し出していた。
荒野に風が吹き、彼の背広がゆっくり揺れる。彼は深呼吸をするとともにマイクに話し始めた。
「軍は欧州でネウロイを攻撃したものより小さいが、我が軍の一部は偵察のため危険な敵地へと進撃した。海岸線の一部を無理やり奪取して我が軍の進路を確保した」
ロンメルは偵察に従事した兵士に敬意を表しながら言い放つ。整列する兵士はこの朗報を喜々として喜ぶこともなく、ただただ緊張した面持ちで彼を見つめる。
「五月は特に厳しい戦いだった。だがカールスラント兵とロマーニャ兵は困難を乗り越え努力した」
ここ数か月を思い出すかのように彼は言う。五月はネウロイが急激に活性化し、マルタ島や陣地を脅かした。
しかしそれはウィッチの力や兵士の努力によって、犠牲を払いながらもそれは解決した。
「六か月も取り組んだ攻勢を諦め敵前で撤退するのはとても難しかった。大変さなど南リベリオンのカールスラント兵士はわからないだろう。我が軍には車がなかった」
六か月にも及んだ初期の攻勢は失敗に終わり、敵を目前に撤退することは困難を極めた。ウィッチが献身的なサポートを行うもそれは一時的なものにしかならず、撤退中にも断続的にネウロイに襲われて被害を生んだ。
この際、ロンメルの決死の案として囮部隊を作り本隊は撤退させるといったもので、選出された兵士たちに激励を送った過去を一生忘れることはないだろう。
全員死ぬであろう部隊になるであろうというのに、誰もが不満や涙を零さずに満面の笑顔で本隊と離脱した。
数日後、ウィッチの偵察によって囮部隊の全滅が確認された。彼は悔し涙と自身の不甲斐なさに涙を零した。
だからこそ死んでいった兵士のためにもどうにかしてスエズを奪還しなければならなかった。
「さあ往くぞ、我らは誇り高き人間という種である! 正義という言葉は人間が生み出したのなら、常に正義は我々にあるということを忘れるな!」
ロンメルは渾身の声量でマイクに向かって吼える。兵士たちは感化され大声で叫ぶ。アフリカの狐は兵士全員の恐怖や緊張を騙し、しまいには勇気を取り付けた。
狐が振り返る先には早くも太陽が顔を覗かせ、こちらを眺める。あの地平線の向こうにはエジプトとスエズがある。
亡き市民や戦友のためにロンメルは地平線を睨み続けるのであった。
人狼の腕時計が六時を迎えた。
人狼は横で同じようにストライカーユニットを履いて待機している稲垣やライーサ、マルセイユを見た。全員決心した様子で銃を構えていつでも離陸できるようにしている。
この中では経験が少ない稲垣も今では他方でエースを務めるほどにまで成長した。ある程度の空戦もこなせるまで成長していた。
マルセイユは無言を貫き、ひたすらに集中している。おそらくはネウロイの動きを想像してどう避けるかイメージトレーニングを行っているのだろう。
ライーサはお守りとして持っていた小さな十字架を片手に目を閉じて祈る。
人狼は最後の武器の確認をした。
MG FF機関砲二挺にモーゼルC96二丁、それに腰に集束手榴弾二つとMG FF機関砲の予備弾倉を括り付けている。このいつもと変わらない装備に追加でコートの内側に信号弾とそれを発射する信号拳銃に八個の手榴弾を取り付けた。
かなりの人狼の重装備を目の当たりにした稲垣は唖然とした。
「裸の上にコートでコートには重武装ってスゴイですね……」
「…」
「い、いや他意はないですからね!」
こんなやり取りも最後になるのかもしれないと思うと稲垣は寂しくなった。もしも自分が戦死したら笑うことも泣くこともできなくなると思うとより一層寂しく思ってしまった。けれどいつかはやらなきゃいけないことだ、と無理やり納得し決心を再び固め直すのであった。
主に戦車隊などが集う旅団側で戦車長のジェネフは車長の席に座り考え込んでいた。
もしも以前のタコ型ネウロイのような亜種が現れたらどう対処するのか、もしくは補給を考えないで積極的に弾薬を使うかといった問題にだ。
いくら答えを模索しても経験値がまだ足りずに導き出せない。暑苦しい車内の仲、ジェネフは頭を掻き毟った。
「くそっ! どうすりゃいいんだよ」
「どうしたんですか車長」
彼の愚痴を砲手のエドガーが拾う。
「前みたいなタコ型に似たやつが現れたらどうしようかと悩んでいてな」
「なるほど。確かにその問題は重要ですよね」
「そうなんだよなぁ……」
二人は脅威を知っていたためか黙りこくり考え込む。最新車輛に乗って戦った中隊が一時間後には全滅したのだ、忘れることもできない。
考える度に不安が増し、恐怖も浮上する。己の命令で大隊は全滅してしまうこの責任に押し潰されそうであった。
だが、この最悪な雰囲気を払拭したのは意外にも新兵である操縦手のジョイルであった。
「だったら勝てばいいだけッスよ」
「は?」
「えっ」
想定外の発言にジェネフとエドガーは驚いたように口をあんぐりと開ける。
ジョイルはさも当然のことだと感じ言ったのか、真顔である。先輩であるジェネフとエドガーが恐れていることをジョイルは気にしなかった。何故なら二人に絶対の信頼を置いていたからだ。意外にもジョイルは肝が座っているのかもしれない。
「……はっはー! そうだったな忘れていたぜ!」
「……ふふっ、確かにそうだったですね」
何故かその言葉が面白かったのか笑いがこみ上げてきた。ゲラゲラと独特の笑い声を発しながら笑うジェネフとくすくすと笑うエドガー。この二人の言動に理解できないジョイルは首をかしげている。
「あぁそうさ。俺らは最強の戦車隊、山羊隊だ。簡単に負けるわけにはいかないよな」
「そうですね。僕も砲手としての腕を存分に振るいたくなりました」
二人は自信に満ちて、なおかつ獲物を捉えるかのような凶暴な笑みを静かにジョイルに向ける。そんな笑みを向けられて背筋が凍るジョイルをよそにジェネフは腕時計を確認する。
時刻は六時半、作戦開始の時刻だ。
キューポラから上半身を出してこれから赴く方角を見つめる。
間も無くすると赤の発煙弾が放たれて空に赤色の狼煙が伸びているのを確認すると、ジェネフは後続に集う戦車隊に向けて大声で言い放つ。
「さあ野郎共、出撃だ! 人類の力を見せてネウロイをぶっ潰せ!
発煙弾
ようするにのろしである。昔から伝達の際に用いられた。
直接の目的は、任意の場所に発煙をもたらす事にあり、煙幕や観測などに使用された。