流石にアフリカ編終わらせないといけないでしょう。
砲撃は念入りに行い十数分も続いた。元々エジプトの建築物は土壁などで構成されているため衝撃に弱く、たちまち街は廃墟と化した。砲撃には三カ国の自走砲が協力のもと行われた。
その際、リベリオンの自走砲が遅れてやってくると予想されていたが、攻撃で故障した
戦車やトラックを現地で放棄して兵士の遺体回収はわずかに残した歩兵一個小隊に任せて都市へと向かわせたのだ。
「うひょー、こりゃあすごいな」
「三カ国同時攻撃ですからね。今でも砲撃音が耳から離れません」
現在、旅団のジェネフ率いる戦車大隊は中隊規模に分散し待機していた。市街地までたったの一キロである。砲撃が終わり、上空の偵察が済んだあとに戦車隊と歩兵隊は市街地に突入する流れになっている。
後方では歩兵小隊ごとにトラックから降りて手には小銃を持って待機している。
「にしてもどこかおかしい」
「……わかりますか車長」
「あぁ」
「えっ? 何がですか?」
ジェネフとエドガーはどこか払拭できない違和感を感じていた。顎に手を当てて双眼鏡を除くジェネフ。エドガーも目を凝らしながら辺りを確認する。辺りにはただ荒野と廃墟となった街しかない。
対してジョイルは彼らがどこに疑問を抱いているのかが理解できなかったため、疑問符を浮かべていた。
「……敵がいない」
「それっていいことじゃないッスか」
「確かにそうだ。だがな、ネウロイによる攻撃を受けたというのだからネウロイは街にいるはずなんだ」
「ジョイル君、僕たちは蜂の巣を突いたんだ。すると激怒した蜂が僕らに向かって襲い掛かるのが普通なのに何故か来ないんだよ」
ネウロイは獣と同意義であるという説が通説であった。理由としては目についたものを片っ端から破壊し殺戮するからである。いくら姿形が違ったとしても自立して考えることはできず、本能に従った行動に出ることが多かった。
あるネウロイ研究家はネウロイは太古の昔に滅んだ生物なのではという説があがるほどに獣そのものであった。
しかし今回は巣であるはずの街を破壊しても一切の反応を示さない。非常に不自然であり、いくらあのぐらいの砲撃を行ったとしてもネウロイは全滅させることはできないとジェネフたちは知っていた。
エドガーはこの問題を司令部に連絡、ジェネフは警戒を高めるように大隊の全車輌に通達しする。
一方で人狼が所属する部隊アフリカは偵察の任務を兼ねて制空権を取るため市街地の上空を飛んでいた。下を見下ろすと土煙と黒煙が舞い上がり、狼煙のように線を引いていた。
「人々の家がこうも簡単に……」
「これはまた派手にやったな」
「家の持ち主の方可哀想ですね……」
「…」
マルセイユ、ライーサ、稲垣、人狼が分隊を組んで陸戦ネウロイ及び航空ネウロイを索敵していた。遠方で黒点を発見したと思ったらそれは他国の偵察機で、危うくライーサが連絡してしまうところであった。
リベリオン軍とブリタニア軍は航空ウィッチをアフリカに有していないのか、旧式の偵察機を用いていた。いくら誤認を防ぐために青色に塗ったり国家マークを大きくしても離れすぎていては意味がない。それに加えて、十機の偵察機がこの上空を飛び回っているので誤認しやすい状況が生まれていた。
「あー面倒くさい。面倒くさいぞこれ」
「ハンナ、外国のパイロットの皆さんも頑張って偵察任務に従事しているのだからそんなこと言っちゃ駄目だよ」
「けどなネウロイか味方かを判断するの神経を使う。これで集中力が切れてネウロイに撃墜されては本末転倒だ」
マルセイユは不機嫌そうに愚痴を吐いて、味方である黒点に機関銃の照準を合わせた。
「バババババッ」
子供が遊ぶように機関銃の銃声を口で再現するマルセイユ。
すると突如、彼女が照準を合わせた味方の下方の街から突き上げるように赤い光線が迫るのを視認した。光線に貫かれた偵察機は爆散し黒い花を咲かせる。
「敵だ! 散れッ!」
マルセイユの号令とともに人狼たちは普段の相機同士で分散する。稲垣は耳元のインカムを起動させて状況報告を行う。
「こちら部隊アフリカ。ネウロイの攻撃を確認!」
『了解。注意……され…し』
雑音が所々混じるがこの情報を伝達することができたことを確認し、無線を切ると一本の光線が彼女を掠める。あと数センチ寄っていたら今頃自分は戦死していたかもしれない。恐怖と不安が彼女の心を覆い、動揺を生んだ。
再度彼女の元目掛けて光線が放たれ、その光線は確実に頭を狙おうとしていた。
「しまっ―――――」
「…」
だがギリギリのところで人狼が彼女に体当たりをすることで回避に成功する。彼女は酷暑なのに背筋が凍る体験をして肌寒く感じた。お礼を言おうと人狼の方を振り向くと、人狼の右頬がさっきの光線で抉り取られたのか生々しい断面図を残していた。
自分の不注意で人狼を傷つけてしまった事実に罪悪感が彼女の心を責め立てる。
「ご、ごめんなさい! 私の不注意で!」
涙を浮かべて謝る稲垣に対し、人狼はいつもと同じように何事も言わずに沈黙を続けていた。彼女は何度も人狼を相機として組んで飛んでいるのでこの沈黙には慣れていたが、この時だけその目は自分を責めているようで怖く思えてならなかった。
「すいませんすいません……」
その視線から逃れるように顔を伏せて、多量の涙をボロボロと零しながらひたすらに謝罪を続ける彼女に人狼はコートの襟で傷を隠す。
『大丈夫か稲垣!』
インカムからはマルセイユが彼女を心配をしている様子で呼び掛けた。
「は、はい。けど私のせいでハインツ大尉が怪我を……」
『怪我ァ? 大丈夫、アイツはお前が原因で自分が怪我をしたことに対し怒りとかそういう感情を微塵も思ってないぞ。アイツの顔を一度見てみろ』
マルセイユは過去に自分が原因でライーサと人狼を事故に巻き込んでしまったことを深く反省していた。自分が人狼に負けないという意地を張り無茶をしてしまった末に事故が起きて、その結果ライーサと人狼を巻き添えにする大事故に転じたのだ。
だが、この事件をきっかけに人狼の性質を知ることができたのだ。常に無言を貫いて感情など無いと事件前までは考えていたものも、実際は確かに無口でありながらも人を心配し気遣うことのできる優しい男だと彼女は感じ取ったのだ。
稲垣はマルセイユに言われた通りに再度人狼に目を向けると、右頬にあったはずの傷はとうに消え失せていた。そしてどこが温かみのある眼差しを彼女に投げかけていた。
『なっ。図体とか雰囲気は怖いくせして中身は良心のあるんだよ大尉は。だから稲垣も気にすることはない、なにせ自分の意志に基づいて大尉は行動しただけなんだから』
そういうとマルセイユの無線が切れた。稲垣は涙を袖で拭い、ただちに臨戦態勢を取る。地上の何処から攻撃を仕掛けてきているのかを目を凝らして索敵する。けれど、現在敵が潜んでいる地域には砂埃や黒煙やらが煙幕として機能しているため、こちらからでは見つけられない。
「けどネウロイはどうやって私たちを探知したんだろう」
稲垣はネウロイの特徴を思い出す。そしてネウロイの巣近くで行われていた実験を思い出した。鉄製の釘すら一切使わない木製の船が巣の周辺に存在したにも関わらす、無傷であったことに。
「ネウロイはどうして一斉に攻撃しないんだろう……」
『そっ…発見……か?』
マルセイユの声が雑音に混じりながらも稲垣の耳に届く。すると真下から光線が迫っているのを視認、ただちに回避した。彼女はマルセイユたちが飛んでいる方角に視線を移すと、マルセイユの方も同様に光線が飛んでいた。
度々訪れる雑音と同時攻撃に稲垣はある結論に辿り着く。
「無線を傍受して発信源と受信源を探知して狙っている!?」
「…」
まさか無線が傍受されていたこと知り驚嘆する稲垣と事実を知っても驚く素振りを見せない人狼。彼女はマルセイユたちに伝えようと無線を繋ぐ。
「今すぐ無線封鎖を! このネウロイは無線を傍受して私らを探知します!」
『わか……気を付…ろ』
確認を聞いた後に再三ネウロイはマルセイユと稲垣を攻撃するために光線を投射する。予期していたことなので難なく避けるのだが、避けた先にも光線が迫る。彼女は魔法障壁を張り攻撃を防いだ。
「…」
「真下からの攻撃ってことはそういうことですね!」
上空の人狼たちを真下から攻撃してくるということは、ネウロイは空中の人狼たちを狙って光線を真上に飛ばせるところに潜んでいるということになる。
急降下する稲垣と人狼。対地目標である陸戦ネウロイ目掛けて、稲垣は四十ミリの弾丸というよりかは砲弾を撃ちこんで人狼は二十ミリ機関砲を二挺撃ち続ける。
暫くの時間が経過すると煙幕と化していた土煙と黒煙が徐々に晴れ始めた。地表が少しずつ露呈していく。
だが、人狼たちが撃ち続けた場所にはネウロイの破片すら残っておらず大穴を幾つか空けた程度であった。稲垣は何が起きているのか理解できなかった。
人狼たちが疑問を浮かべている傍ら、全体が黒く尻尾の先端に鋭利なモノを取り付けた巨大な何かが瓦礫の陰でひっそりと動いた。
咽喉マイク
マイクの一種で喉の振動を用いるので周りの雑音を拾わない。
某女子戦車アニメで知っている人も多く、プラモデルなどでこのマイクを着けた戦車兵がある。