人狼は夢を見れるのか   作:渡邊ユンカース

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ダウンタウンにでた元SMAPメンバーが一世を風靡したアイドルらしからぬネタを披露していて笑いました。


大鋏

「いいか、二号車と歩兵小隊はこの場でやつを引きつけろ。そして俺と他の車輛で挟撃を行う」

「「「了解」」」」

「んじゃあ、行動開始!」

 

ジェネフの指示通りにジェネフの乗る戦車は左へ、三号車四号車は右へと回頭する。歩兵小隊と二号車を置いて、三輛は路地を走って挟撃の手筈を整える。

しかし、市街地ということで建物の多くが半壊しているといっても時折通行の妨げとなっていた瓦礫を砲撃して踏破していた。

 

「あぁクソ! 弾がもったいねぇ。ジョイル! そのまま建物を突っ切っちまえ」

「はあっ!? そんなことしたら砲塔にダメージが!」

「砲塔を上げさせるから大丈夫だ。行けッ!」

「わかりました!」

 

ジョイルは彼のされるがままにギアを上げて勢いよく建物に突っ込む。操縦席からは数年前までは人が暮らしていたのだろうと察せられる形跡があった。けれど、数秒だけ感傷に浸るだけで最後の壁を突破すると、新たな路地に出た。

土煙を引いて戦車は砲身を天に仰いだ状態で爆走する。

 

「砲身に異常なし。戦闘可能です」

「そうか。で、あるなら―――――ッ!?」

 

エドガーの報告を聞いてさらなる指令を出そうとした瞬間、車輛の左側面から衝撃と共に耳障りな金属音が車内を揺らしてから響かせた。それでも戦車は止まることなくそのまま走っていく。

ジェネフは頭から落ちそうになったクラッシュキャップを被り直し、先程何が起きたのかを把握するためキューポラから顔を覗かせた。すると突然、頭上を一本の光線が通り過ぎていく。間一髪である。

 

「……やっぱりな」

 

半身を出してから体を反らして左側面を確認すると装甲として張られていた装甲版がやや溶けていたのだ。この場所において、戦車の装甲を溶かす要因といえば一つしかない。辺りを見渡してから、すぐさま彼は車内に戻った。

 

「ここら辺、小型のサソリがいやがるな。しかも多い」

「当り前じゃないですか。最前線ですから」

「そうなんだけどな。こうなりゃ狙われないように走るか回避しろよジョイル。光線の方向は俺が知らせる」

「無茶すぎるッス!」

「それができて一端の山羊隊だ。そもそも操縦手は搭乗員の命を預かってんだからな、責任もってやれよ!」

「が、頑張ってみるッス!」

「で、エドガーは見敵必勝(サーチ・アンド・デストロイ)だ。機関銃使ってやれ」

「うへぇー、機関銃苦手なんですよね」

「ごちゃごちゃ言うんじゃねぇよ。……右前方五メートル!」

「ッス!」

 

ほぼ無茶ぶりともいえる命令にできると宣言してしまった以上、ジョイルは成し遂げなければならない。ジェネフの発言に合わせてレバーを引いた。すると車輛は急停車しようと地面を滑り減速する中、三メートル前の右側から一本の光線が通過する。建物の陰から小型ネウロイが待ち伏せをしていた。

 

「エドガー!」

「お任せを」

 

砲塔を回してネウロイが潜伏する建物へ機関銃を放つ。逃げようと背後を見せたネウロイの背には無数の弾痕が生まれて爆ぜてしまった。撃破を確認すると車輛は速度を上げて大サソリへと向かう。

 

「よ、よく建物の陰にいるのにわかるッスね……」

「長く戦車乗ってると勘が鋭くなるんだよ」

「昔から勘鋭いですからね、車長は」

「うるせえ! けど対処できないやつもあるからそればかりは運だ」

「大丈夫ッス。俺の爺さんは元戦車の操縦手だったッス、被弾はしなかったらしいッスよ」

「それが遺伝しているといいな。後方左」

「了解ッス」

 

指示に合わせ右に車輛をずらすと後方から串刺しにするように光線が通過する。流石に後方には砲塔を回すと、いざ挟撃する際に砲塔が回頭しきらないという滑稽な光景を避けた。代わりにジェネフが拳銃をキューポラから出して数発撃っていた。

 

「そろそろだ。一つ先の角を曲がったら奴の横腹に砲弾を喰らわせろ」

「あの二輛に伝達します?」

「必要ない。同時に攻撃ができそうな気がする」

「だといいですね」

「角曲がるッス!」

 

数本のレバーを忙しく操作させて右折する。なおその際、戦車はカーレースの如く大きくドリフトして曲がり、エドガーは大サソリ型ネウロイへと照準を合わせた。

 

 

――――――はずだった。

 

「んなッ!?」

「何処に行ったッ!?」

 

そう照準器の中には挟撃を仕掛けた三号車と四号車の姿しか映されていない。おそらくはあちらの隊員たちも攻撃目標の消失に驚いているであろう。ジェネフは上半身を車外に曝そうとした次の瞬間―――――。

 

 

照準器が作り出した視界の中に一輛の戦車が上空から降ってきた。戦車は砲塔部から地面に叩きつけられた衝撃で様々な部品を散らかしてその場に鎮座した。哀れにもその砲塔は直角に曲がり、地面とキスしている。また、戦車側面には逆さで2と書かれていた。

 

「……二号車が空から、だと?」

「た、確かに降ってきたッス!」

「まさかあの大サソリが!?」

 

一同はあの細身の体で十数トンもある戦車を投げ飛ばすことが可能な能力に震えた。なお、人狼はさらに小さい子供の体で戦車を投げ飛ばしていたりするがジェネフとエドガーは忘れていた。

叩きつけられた二号車は幸いにも炎上及び爆散することはなかったため、生存者の可能性が見込めた。ジェネフは無線を同伴していた歩兵小隊に繋いで彼らの救出を命令しようとする。

 

しかし、無線は繋がらない。再度掛け直そうとスイッチに手を伸ばした瞬間、ひっくり返った戦車に攻撃目標である大サソリが迫り、車体の底部に自身の大きなハサミを突き刺した。戦車の底部は装甲厚が薄いため小型ネウロイの光線でも容易に風穴が開く。もしそれが大きなハサミだとしたらどうなるのだろうか。

 

「やめろおおおおッ!!」

 

紙を破るかのようにズタズタに挟み斬っていく、しかもタチの悪いことに戦車の奥深くまで刺しているため搭乗員の空間は無事では済まない。暫時、中を荒らしていると何かを察知したのかハサミを引き抜いて後ろへと飛び退いた。それから十秒が経過すると戦車は内部から激しく火を噴いて穴という穴から火山が噴火するかのように炎を伸ばした後に爆散しする。

 

ジェネフを含む搭乗員たちは一から最後まで見届けるだけで、何もできずにその残酷な行為を止めることができなかった。そのことをジェネフは人一倍後悔しつつも、無線を三号車と四号車に繋げた。

 

『各員それぞれで攻撃に移れ!』

『『了解』』

 

ジェネフの乗る戦車は燃え盛る戦車の元まで走らせて、砲塔を回して後退した大サソリに攻撃しようとしたが、もうその場には存在しない。辺りを見渡すと大サソリは円筒状の塔にしがみ付いてこちらに針を向けている。

 

「退避と同時に砲撃!」

「了解ッス」

「了解」

 

すぐさまジェネフの指示に従い後退する最中、エドガーは後退中にも関わらず砲撃を敢行した。行進間射撃は後退の速度が前進よりも遅いからといえど、停止しながら撃つよりも難しい。けれどもエドガーは難なく大サソリに当ててみせた。

 

大サソリはドラム缶を小刻みで叩いたかのような奇声を発しながら光線を放つ。案の定光線は彼らが居る角へと曲がった。突然眼前に光線が出現したかのように見える中、ジョイルの車輛は後退しながらも右に方向を変える。

後退し建物を突き抜けて回避に成功、光線は直進し進行方向にある建物を破壊した。

なお、光線を放った大サソリは砂煙を派手に巻き起こしながら穴を掘り、何処かに姿をくらましてしまった。

 

「あ、危ねぇ……」

「心臓に悪いッスよ……」

「けどナイスだよジョイル君。車長の指示に即行動できたのは」

「へへっ、そうですかね」

 

先輩であるエドガーに褒められて頭を掻いて照れている様子のジョイル、そんな彼らを傍らにジェネフは無線機をあるところへと繋げる。

 

「こちら山羊隊隊長のジェネフだ。おいハインツ聞こえているか」

『…』

 

無線を繋げた先は人狼であった。

実はこの新しく製作された無線機にはある機能が追加されていたのだ。その機能というのは誰が無線を送ったのかというもので、この無線機の技術の応用で日頃ウィッチがつけているインカムにもこの機能が追加されていたのだ。なお問題点としては各々の無線の周波数をあらかじめ登録しなければ宛先がわからないのだが、人狼は登録していたようであった。

 

「この前と同様に陸空協力して大サソリを撃破する。連携プレーは久しぶりだがいけるよな」

『…』

「……よし多分賛成だな。では稲垣の嬢ちゃんと共に頼むぞ」

 

ジェネフは人狼の無線を切ると、今度は各車輛に繋いで指示を飛ばす。

 

「隊長から全車輛へ。本命の曲がる攻撃に気を付けて攻撃、サポートはウィッチがしてくれる」

『『了解』』

「なお大サソリの攻撃パターンがわかねぇ、注意しろ」

 

無線機のスイッチを押して無線を切ったタイミングで、大きく車体が揺れるのを感じた。隙間窓から垣間見ると数体のサソリ型ネウロイがいつの間にか接近して体当たりや光線を放っていた。このまま攻撃を受け続けてはいつか故障してしまうだろう。だが彼は慌てた素振りを見せることなく冷静に搭乗員である二人に命令する。

 

「即座に移動、また小型ネウロイには機関銃を喰らわせろ」

「了解」

「了解ッス」

 

命令に従い戦車を急発進させて小型ネウロイの群れから脱出するも、しつこく砲塔付近にしがみ付くネウロイが一体いた。そこでジェネフは拳銃を取り出してキューポラを開ける。そこで腕だけ出してむしゃらにネウロイに向かって銃撃をすると、ネウロイは被弾したのか戦車から剥がれ落ちる。

 

一方で人狼と稲垣は先程の無線を傍受されて地上からの光線を躱し続けていた。雲が存在し回復は可能であるが、裏返せば雲で太陽が隠れるまで回復できないということで人狼はその身を犠牲にした戦法を取れずにいた。けれど攻撃を躱している間も人狼と稲垣は姿を消してしまった大サソリを探していた。

 

此処に人狼と山羊による討伐が再始動する。

 




ドラム缶

二百リットル以上の大型の金属製の缶のことで、1900年にヨーロッパで金属製の樽が登場し、1902年に米国のスタンダード・オイルがこれを大量生産して使用を始めた。
どうでもいいけど土管くんのことドラム缶くんと思ってました。
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