基地は主に石造りで建設されている。遠い昔に作られた城をブリタニア軍が最大限改築して現代の基地へと近づけた。
そして、城ということもあり部屋も豊富に存在してウィッチ一人に一部屋割り当てられていて、それは男性である人狼も含まれていた。
「…」
人狼は現在何をしているのかというと、もう四年前から所有している狼男が題材の小説を読んでいる。本はもう何十回も読まれているのでシミができたり多くの折り目がついている。
人狼の部屋はとても殺風景であり、私物は持ってきたボストンバック内の物しかない。しかも娯楽といった物はこの本しかない。読書以外の暇潰しといえば拳銃の整備や鍛錬ぐらいだ。
人狼以外のウィッチは他国のウィッチと交友関係を深めたりしているのだが、人狼は訓練や出撃以外に交友を持たない。人狼が進んで孤立しているのもあるが、やはり自己紹介時にルッキーニに行った行為も一因である。
つまり人狼に対する好感度はゼロに近い。かろうじて基地内で好意を持っているのは幼馴染のバルクホルンやハルトマンにミーナ、そして畏怖の念を抱いているペリーヌである。
人狼はおもむろに煙草を吸いながらガラス越しに外を眺める。外ではペリーヌが傘を差して軽装状態で日光浴をするシャーリーとルッキーニと談話をし、ハンガーへと哨戒を終えたサーニャとエイラが帰還した。
実はネウロイが来襲するパターンをある程度把握しているので、初戦と比べると気楽に待機できるよう進歩していた。
慌ただしく腕を振るペリーヌを傍目に人狼は二本目の煙草を口にして火を点けようとした頃、突如としてアラームが基地内に鳴り響いた。当然、この警報が知らせる内容とはネウロイ来襲のことである。
人狼と外に出ていたウィッチたちは急いでバンカーへと向かい、バンカー内にて合流した。出撃するメンバーが黒板に記されている。ペリーヌ、バルクホルン、ルッキーニ、
そして人狼だ。
「赤城からの電報でネウロイは赤城率いる艦隊を襲撃中のこと。すぐに出撃してちょうだい!」
「あ、赤城って坂本少佐が搭乗しているんじゃ!?」
「そうよ。現在迎撃中らしいわ」
「すぐに出ますわ!」
「…」
「あ、あわわッ! ハインツ大尉ッ!!」
ルッキーニは人狼の名前を確認すると先の行動を思い出したのか顔を青ざめていた。完全に恐怖を植え付けられていた。
「流石に大丈夫だ。ハインツは何もしない」
「けどぉ……」
「じゃあペリーヌをハインツの分隊にして、ルッキーニは私の分隊になればいいだろう」
「……わかったよぉ」
ルッキーニの返事を聞いたバルクホルンたちは速やかにユニットを履き魔法力を流し込んだ。四つのプロペラは爆音と風を生み出し、整備兵から武器を受け取る。武器の種類は多国籍であり、MG42やブレン軽機関銃にM1918である。小口径の銃器を使うウィッチが殆どなのに、二十ミリの機関砲と後部機銃を扱う人狼は異彩を放っていた。
しかも、風でコートがなびくと腰から弾倉以外に集束手榴弾に二丁の長い銃身が露出した。この重装備を見たウィッチたちは思わず顔をしかめたり、やや引き気味である。
「うへー」
「すごい重装備ダナ」
「人間武器庫だ」
「重くないのかな」
そんな彼女たちをよそに人狼たちは勢いよくバンカーから飛び出した。空中で編成を組み、全速力でネウロイのもとへと向かう。
編隊中では沈黙が続いていた。戦闘を指揮するのはバルクホルンは飛行中に雑談をしない性格であり、必要な会話以外避けていた。しかも重圧を常に放つ人狼に坂本少佐のことばかり考えているペリーヌ、とてもルッキーニが話しかけられる状況ではなかった。
まだ齢十二歳の彼女には居心地が悪すぎた。
「き、昨日のチョコ美味しかったね!」
「ルッキーニ、無駄な会話は避けてくれ」
「……ごめん」
可哀想である。
しかもこの状況が十分も経過した。ルッキーニは早くネウロイとの戦闘をもはや心待ちにしていた。
そしてルッキーニ待望のネウロイが目に見えた。人狼たち一同は緊張感に包まれる中、ルッキーニはネウロイに照準を定めて十発の銃弾を放った。ルッキーニは天才的な空戦技術及び射撃能力を有しており、期待の星であった。
その銃弾はネウロイに全弾命中し、ネウロイは眩く赤く発光した後にに白い破片となって空に散布するのを確認した。
ルッキーニは喜々とした声で撃墜を確認報告をする。
「コア破壊確認!十発十中だよ!すごいでしょー!」
「こちらも確認した。ネウロイ撃墜、戦闘を終了する」
「…」
「坂本少佐ー!ご無事ですかー!」
インカムに連絡するバルクホルンとは反対的にペリーヌが迎撃にあたっていた坂本のもとへ急行していく、その光景を見たルッキーニは彼女を馬鹿にしていた。人狼は辺りを見渡して他のネウロイが存在しないかを確認して、脅威が存在しないと判断して安全装置を切る。
眼下には轟沈した艦やその破片、そして艦から救命ボートに乗った乗員が漂っていた。しかし、無事な艦もあるのですぐに救助活動が行われるだろう。
そして坂本のもとへと接近するにつれて彼女一人でないことを視認し、彼女は一人の少女を胸に抱いていた。その光景はまさに白ユリの花びらが舞う中、王子が姫を抱きしめている姿そのものだ。幻想的だ。
なお、坂本を敬愛するペリーヌにとって、彼女が見知らぬ少女を抱きしめているのは気に食わないのでペリーヌは怒り心頭といった具合に騒いでいた。
人狼はペリーヌ同様、坂本が抱いている少女に疑問符を抱いていた。莫大な魔法力を感知したが坂本のものではないと本能的に察した。坂本も初戦から活躍した古参のエースだが齢十九歳になると聞いていた。ウィッチは二十歳を迎えるころには上がりを迎えるので魔法力が衰えるのだ。
だからこそ、あの莫大な魔法力の発生源は胸に抱いた少女であると結論を下した。
「流石だな坂本少佐は。ハインツ、貴様はどう思う」
「…」
バルクホルンから掛けられた言葉に人狼は無視した。人狼に無視されたバルクホルンは顔に影を落とすと同時に、人狼が最後に会った頃と今とでは大きく変わってしまったことに疑問を抱いた。
少女を抱きしめた状態の坂本と一緒に帰還した人狼たちは再度各々の行動を行うためにバンカーから離れていった。
ブレン軽機関銃
イギリスで作られた軽機関銃、エンフィールド王立造兵廠で1935年に開発された。
1930年代、イギリス軍は新型軽機関銃について競作を行った。その結果、採用されたチェコスロバキアのZB vz 26軽機関銃を、使用弾薬を変更してライセンス生産したのがブレン軽機関銃である。
射弾の散布界が非常に狭いため、ブレンガンの射撃精度が高すぎると指摘したが熟練すれば可能である。
インドやパキスタンなどの旧英領諸国では、現在も現役兵器として使用されている。