【完結】死に芸精霊のデート・ア・ライブ   作:ふぁもにか

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世界「(^q^)トツゲキー!」
士道「来いよ世界! 相手になってやる!」

 どうも、ふぁもにかです。今日ふと知ったんですが、2017年10月にデート・ア・ライブのアニメ新シリーズが制作決定されたって本当ですか!? もしかして、アニメ3期を期待してもいい感じなんですか!? 8~11巻くらいをアニメ化してくれるものと思っていい感じなんですか!? デアラ10巻、11巻で完全にデアラの虜となった私としては嬉しすぎるお知らせなんですが、真偽のほどはどうなんですかね!? 教えて、わかる人!



11話 世界の本領発揮

 

 

 志穂を敵対マフィアのスパイだと勘違いし、志穂を銃殺しようとした中国マフィアの2人から、ラタトスク機関のサポートのおかげで無事逃げ切ることのできた士道と志穂。路地裏から表通りへと出た2人は今、眼前のあまりに想定外な存在を前に硬直していた。

 

 

「「んぇ?」」

 

 なぜなら。士道と志穂の眼前に、ゴリラがいたからだ。

 黒の体毛を蓄えた、筋骨隆々のゴリラがいたからだ。

 

 

「マジ、かよ!?」

 

 本来街中にいるはずのないゴリラは興奮しているのか、牙を剥き出しにして咆哮しながら、両手を振り上げ、志穂へと叩きつけようとする。士道はゴリラまでもが死の呪いの刺客として志穂の命を狙っていることに戦慄しつつも、未だゴリラが街中にいる現実を受け止められていない志穂の手を引っ張り、ゴリラの拳の攻撃範囲から志穂を逃がした。

 

 

「こ、今度はゴリラッスか!? 何なんスか、もう!? マフィアといい、天宮市って実は常人はまともに生きられない魔境だったりするんスか!?」

「そんなの俺の方が聞きたい――ッ!?」

 

 ゴリラの攻撃から命拾いした志穂はハッと我に返り、現状のわけのわからなさに混乱し、絶叫する。士道も志穂と全く同じ心境だったが、ここで。士道の言葉を遮るようにゴリラが士道の頭をわし掴み、アスファルトの地面に叩きつけた。

 

 

「がふッ!?」

「先輩!?」

 

 士道の視界にチカチカと火花が生じる。頭をガンガン襲う激痛に、士道は一瞬、頭が真っ白になる。頭を駆け巡る、あまりの衝撃と激痛に思わず意識を手放しそうになるも、士道は寸前の所で堪えた。今、士道が気絶でもしようものなら、志穂の死は避けられないからだ。

 

 

「ぐッ!?」

 

 ゴリラは士道の頭をわし掴みにしたまま、今度は近くの建物の壁に士道の頭を衝突させる。どうやらゴリラは志穂を殺すために、志穂殺害を妨害する士道から先に倒すつもりのようだ。

 

 

「ああ、先輩ッ!」

「志穂! 早く、逃げろ!」

「そ、そんなことできるわけないッスよぉ! だって、先輩が! 先輩が!」

 

 このままゴリラに攻撃され続けるとなると、士道の気絶も時間の問題だった。頭を執拗に攻撃されるせいで集中できず、十香の天使こと鏖殺公(サンダルフォン)を顕現させるといった、ゴリラへの反撃手段を行使できない士道は志穂に自分を置いて逃げるよう頼む。だが、志穂はゴリラに容赦なく攻撃される士道の様子を前に、蒼白の表情で立ち尽くしている。志穂が士道の意思を汲み取って逃げてくれることへの期待はとてもできなかった。

 

 

「が、ぁああああ!」

 

 と、その時。士道の頭を、治癒の炎が包み込む。頭を丸々火に焼かれる感覚に士道が悲鳴を上げる一方。ゴリラは、唐突に士道の頭から発生した謎の炎に驚き、士道の頭を掴む手をパッと放す。ゴリラは士道の頭から湧き出る炎を警戒して数歩後ずさり、士道の様子見の態勢に入った。

 

 

(これは、チャンスだ!)

「おおおおおおおおおおおお!!」

 

 頭の炎が収まり、頭部の怪我が完治した士道はここぞとばかりに息を吸い込み、渾身の力を込めて咆哮を上げた。結果、士道の腹の底からの全力の雄叫びにゴリラは怯え、士道たちに背を向けて退散した。謎の炎を使える上に、速攻で怪我を治せる未知極まりない人間の咆哮が、ゴリラにとっては相当怖かったのだろう。

 

 

「よし、何とかなったか。志穂、無事か?」

「は、はいッス。先輩のおかげで……え?」

 

 段々と小さくなっていくゴリラの背中を確認した後、士道は志穂に声を掛けると、当の志穂は自分を守ってくれたことを感謝しようとして、目を点にした。志穂の反応が気になった士道は、志穂の目線を追うように背後を振り向く。すると、去りゆくゴリラと入れ替わるように、のしのしと歩く熊の姿が士道の視界に捉えられた。

 

 

「「クマぁぁあああああ!?」」

 

 士道と志穂は驚愕の声を零しながらも、熊から距離を取るために一目散に逃げ始める。幸い、熊は士道と志穂のことに気づいていなかったため、追いかけられることはなかった。

 

 

「ど、どどどどどーなってんスか、これ!? 私今まで相当死んできたッスけど、こんな街中でゴリラに殺されそうになるのはさすがに経験ないッスよ!? 精々、海外の国立公園に静粛現界した時に殺られたくらいッスよ!? しかもなぜかクマまで徘徊してるし!?」

「俺にも全然さっぱりだよ!」

 

 熊の索敵範囲から脱するまで逃げ続けた後、士道と志穂は先ほどゴリラとエンカウントした時と似たような会話を繰り広げる。と、その時。士道たちの近くの家電量販店の入り口に並べられた新型テレビが緊急ニュースを流していることに気づいた。

 

 

『緊急速報です。本日、天宮動物園から動物が集団脱走しました。現在、脱走した動物は天宮市を徘徊しています。今の所、動物に危害を加えられたとの報告はありませんが、住民の皆さんは安全のため、屋内に避難し、戸締りをしてください。繰り返します――』

「こ、こんなことってあるんスね……」

 

 なぜゴリラが、熊が街中にいるのか。その理由を端的に示してくれたニュース番組を受けて、志穂はあまりに現実味に乏しい事態に思わず引きつった笑みを浮かべる。

 

 

「……」

 

 一方、士道は言葉を失っていた。ここまでするのか、ここまで世界は志穂を殺しにかかってくるのか。士道の心境はその一言に集約されていた。これまで。士道は志穂の命の危機を何度か回避してきた。倒木に始まり、野球ボール&窓ガラスの破片、階段、マフィアと、以上4回分の志穂の死を士道は妨害してきた。だからこそ、世界は本腰を入れて志穂を殺しにかかりつつあるのだろう。士道が志穂の隣にいようとどうしようもない形の死を志穂に叩きつけようとしているのだろう。天宮動物園からの動物の集団脱走というとんでもない事態を前に、士道は確信した。

 

 

(させるかよ! 志穂は、絶対に守る! 絶対に殺させないッ!)

「志穂! 外は危ない、建物の中に逃げるぞ!」

「えっと、それならこのお店の中じゃダメなんスか?」

「そこは出入り口が1か所しかないし、狭いからダメだ! 他の所に行くぞ!」

「はいッス!」

 

 現状、天宮市にどれほど多くの動物が放たれているかわからない以上、屋外にいることはもはやリスクしかない。ゆえに、士道は志穂に適当な屋内に逃げることを伝える。志穂は目の前の家電量販店に逃げることを提案するが、当の家電量販店の内装を知る士道は、万が一動物に侵入された際に脱出が困難になることを踏まえ、志穂の提案を却下した。

 

 

『士道。今の状況はわかってるわよね? 私たちが把握した限りだと、天宮動物園から脱走したのは、カバ、キリン、熊、ゴリラ、ゾウ、チーター、パンダ、ライオンって所よ。わかってるでしょうけど、くれぐれも見つからないように移動しなさい』

「どいつもこいつも危険な動物ばっかりじゃねぇか、ちくしょう……!」

 

 志穂を伴って士道が駆ける中。士道が耳に装備している小型インカムを介して、琴里の声が届く。琴里から提供された脱走した動物の情報に、士道は思わず吐き捨てるように呟いた。

 

 

「琴里。どこか、良い逃げ先があったら教えてくれ」

『そうね。ここからだとアイスクリーム屋の隣に先月竣工した新築オフィスビルがオススメよ。入り口がタッチ式の自動ドアだから動物の足止めに期待できるでしょうし、まだテナントがほとんど入っていないビルだから一般人を巻き込む可能性は限りなく低い。加えて、仮に動物が自動ドアを突き破ってビル内に侵入したとしても、屋上にさえ来てくれれば士道と志穂をフラクシナスに回収できるからね。……ナビゲートは必要かしら?』

「いや、場所はわかったから大丈夫だ」

 

 琴里が主張するオススメの逃げ先の場所に思い至った士道は、目的のビルへの最短ルートを即座に脳内で構築しつつ、ひた走る。

 

 

「志穂、まだ体力は大丈夫か? きつかったら遠慮なく言ってくれよ?」

「私はまだまだ平気ッスよ。私は元気が取り柄の女の子なんで」

 

 マフィアと出くわした時から走ってばっかりなため、士道は志穂が無理をして走っていないかを心配する。が、当の志穂は発言通り、息切れも汗もなく、体力を大いに残しているようだった。これなら走ったままの状態でビルまで到着できる。士道は一刻も早くビルの中に入って、志穂の安全を確保するために、さらに足に力を入れて走る。

 

 

「よし、あのビルだ! あそこに入るぞ!」

「うぃッス!」

 

 そして。大通りを挟んだ向かい側に目的のビルを見つけた士道は志穂とともにビルに入ろうとする。本来なら横断歩道の信号が青になるのを待たないといけないのだが、フラクシナスのクルーは今も交通規制を続けているため、この大通りに車は1台も走行していない。ゆえに、士道と志穂は信号など無視して、ビルへと走っていく。

 

 

「いいッ!?」

「んんッ!?」

 

 が、ここで。ビルの隣の道路から体長5メートルは優に超えていそうなキリンが飛び出してきた。キリンもまた相当に興奮しており、士道と志穂の姿を認識すると全速力で突進し、志穂目がけて蹴りを繰り出してきた。

 

 

「志穂ッ――ごふッ!?」

「みゃあ!?」

 

 士道はとっさに志穂より一歩前に出て志穂を庇うも、キリンの前足での蹴りが士道の腹部に抉り込まれる。キリンの強烈な蹴りをまともに喰らった士道はその場に踏ん張ろうとする努力も虚しく、志穂を巻き込んで後方へと吹っ飛ばされた。

 

 

「か、はッ!」

 

 士道は大量に吐血するも、激痛を訴える腹部を手で押さえつつ、立ち上がろうとする。キリンは士道の事情を鑑みて待ってはくれないからだ。現にキリンは何度か首を振る動作をした後、再び志穂の元に突進してくる。キリンの害意はまだまだ収まる所を知らないようだ。

 

 

「せん、ぱい?」

「志穂、行くぞ!」

「ふぇ? え?」

 

 自分のせいで士道が追い詰められている。こんなにも血を流している。その事実を前に、志穂は呆然とその場に座り込む。一方の士道は体を酷使して立ち上がると、志穂をお姫さま抱っこで持ち上げつつ、ビルへと走り出した。刹那、志穂が座り込んでいた場所にキリンが己の体重を存分に乗せた踏みつけを行った。

 

 その隙に、士道はビルへと渾身の力を足に投じて走っていく。腹部に負った重傷のせいで転びそうになるのを気合いで防ぎながら。ビルへと、ビルへと、足を踏み出す。そうして。ようやくビルの自動ドアにたどり着いた士道はタッチスイッチを押して自動ドアを開け、中に踏み込んだ。

 

 自動ドアが閉まった直後、士道たちを追ってビルまで突撃してきたキリンが蹴りを自動ドアに叩き込む。新築オフィスビルの最新技術の詰め込まれた自動ドアであってもキリンの蹴りを完全に防ぐことはできないらしく、キリンの蹴りで自動ドアにどんどんヒビが刻まれていく。だが、例え自動ドアをキリンが破壊したとして、キリンの体長では、ビル内に入ることはできないだろう。

 

 

「ぐ、間一髪だったな」

「……そう、ッスね」

 

 士道の腹部を中心に治癒の炎が駆け巡る中。志穂をお姫さま抱っこ状態から下ろした士道は志穂に語りかける。対する志穂は士道に返事こそするものの、さっきまでとは打って変わって明らかに元気を失っていた。その理由が気にかかる士道だったが、目の前でキリンが自動ドアに蹴りを放ち続ける、心臓に悪い光景をもう見たくないとの気持ちが勝ったため、腹部の怪我が完治したタイミングを見計らい、士道は志穂を連れてビルの奥へと歩みを進めるのだった。

 

 




五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。ゴリラに頭をわし掴みにされたりキリンに蹴られたりと散々である。
五河琴里→士道の妹にして、精霊保護を目的とするラタトスク機関の一員にして、5年前にファントムに力を与えられ、精霊化した元人間。士道たちの逃げ先のビルについてやけに詳しかったのは、以前、ラタトスクの地下施設への出入り口としてあのビルを購入すべきか上層部で検討したことがあったからとのこと。
霜月志穂→精霊。識別名はイモータル。ここ半年、やたらと天宮市に現界している新たな精霊。なぜか天使や霊装を全然使わず、ほぼ静粛現界で姿を現している。士道が傷つきながらも体を張って、ひたすらに自分を守ろうとする姿に思う所があるようだ。

自動ドア「ここは俺に任せて先に行け!」
士道「じ、自動ドア先輩!」

 というわけで、11話は終了です。ゴリラや熊、キリンの鳴き声は動画で何度か確認したのですが、セリフに落とし込むのはちょっと難しそうだったので、地の文でどうにかごまかしました。

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