【完結】死に芸精霊のデート・ア・ライブ   作:ふぁもにか

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士道「志穂を襲う死の呪い。これには必勝法がある」
世界「ッ!?」

 どうも、ふぁもにかです。今回もちょっとややこしい内容が入っているかもしれません。さすがに6話よりはマシだと思うのですが……それもこれも私の説明能力不足が招いた悲劇なんですよねぇ。もっとわかりやすい文章を書けるようになりたいです。



14話 世界を手玉に取る男

 

 

「それで、先輩。次はどこに行くッスか?」

「あぁ。ちょうど近くに天宮百貨店があるから、そこに行くつもりだ。……志穂はどこか行きたい所はあるか?」

「いーえ、先輩にお任せするッス。えへへ」

 

 士道と志穂がビルから立ち去り、病院で志穂の手の治療をしてもらった後。志穂の問いに士道が返答した際、散歩デートなのに最初以降、志穂に行き先の希望を聞いていないことを思い出した。ゆえに士道は志穂に問い返すも、対する志穂は照れ顔を浮かべつつも士道の腕に抱きつきながら、士道のデートプランに乗っかる意思を示した。

 

 と、その時。士道と志穂の歩く歩道が唐突に沈み始めた。

 志穂の足場を起点として歩道が重力のままに真下に落ち始める。

 

 

「ちょッ、地盤沈下ッスか!?」

 

 突如歩道で発生した地盤沈下は中々に規模が大きく、士道と志穂はみるみるうちに地面の下に落ちつつある。これが世界のもたらした志穂への死の呪いならば、志穂がこのまま地盤沈下に巻き込まれたら最後、志穂の死は避けられない。

 

 

「先輩!」

「あぁ、任せろ!」

 

 が、士道を全面的に信じている志穂は慌てずに士道を呼ぶ。士道はそんな志穂の期待に応えるべく、己の足を起点として氷を表出させた。士道の足から発生した氷は、士道と志穂の足元から、地盤沈下を起こしていない地点の歩道までを繋ぐ、緩やかな氷の階段を構築する。

 

 そう。これまで封印した精霊の力を利用することができる士道は、地盤沈下から士道も志穂も無傷で助かるために四糸乃の天使:氷結傀儡(ザドキエル)を駆使したのだ。

 

 

「行くぞ、志穂!」

「おおお! 先輩のお姫さま抱っこッスか! やったー!」

 

 いくら氷の階段で歩道とともに士道と志穂が落下する展開は防げたとはいえ、空中に生成した氷の階段も間もなく重力に従って落下していく以上、ゆっくりしてはいられない。そのため、士道は両手で志穂の体を軽々と持ち上げると、階段を軽快に駆け上がっていく。一方、士道の腕の中の志穂は死の呪いのことなど全然意識せずに純粋にはしゃいでいる。

 

 

「よし、この辺まで来れば大丈夫か」

「先輩、さっきの氷も精霊の力ッスか? カッコいいッスよ! 輝いてるッスよ!」

「お、そうか? ――っと!」

 

 地盤沈下が発生した地点からある程度離れた歩道にて。士道は志穂に褒められつつも、お姫さま抱っこ状態の志穂を下ろそうとして、中止する。代わりに再び氷結傀儡(ザドキエル)を発動させ、士道と志穂を包み込むように大きめな氷の立方体を構築する。

 

 

「先輩? 急にどうし――ひゃッ!?」

「やっぱりな。そろそろ来ると思ってたぜ」

 

 士道の行動の意図が読めず、志穂が尋ねようとした時。突然、士道と志穂を囲う氷の立方体に轟音が轟いた。至近距離で爆弾が起爆したのではないかと思えるほどの激しい音が志穂の鼓膜を奇襲してきたため、志穂はビクリと肩を震わせ、悲鳴を上げる。だが、士道は想定内だと言わんばかりに頭上を見上げ、言葉を紡ぐ。

 

 

「……い、一体何が起こったッスか?」

「志穂目がけて雷が落ちてきたんだよ。氷で守ったけどな」

「雷ッスか!? いや、でも雨降ってないッスよ!?」

「乾雷って言ってな。雨が降ってなくても雷が発生することがあるんだよ」

「ふぇぇ、そうなんスね。よく今、雷が来るってわかったッスね」

「わかってたわけじゃないさ、ただの勘だ。けど、今までの死の呪いの傾向からいつ雷が落ちてきてもおかしくないとは思ってたからな。だから後は自分の直感を信じて、しかるべきタイミングで氷結傀儡(ザドキエル)を使って志穂を守ればいいってわけだ」

「はぇぇ……」

 

 士道は己と志穂を守る氷の立方体を霧散させつつ、志穂の疑問に答える。士道の自信満々な様に、志穂はただただ感心するのみだ。そう、士道は志穂に雷が落ちる直前、寒気を感じたのだ。それは、かつて霊装を纏っていない十香が折紙に狙撃されそうになった時と同種の感触だった。過去の経験からこの手の勘に従った方がいいことを知っているからこそ、士道は雷の落ちる寸前に志穂を守る氷のバリアを用意したのだ。

 

 

「先輩。さっきから凄いじゃないッスか! 確かに私は先輩を信じたッスけど、それでもまさか先輩がこうも私を襲う死の呪いを難なく攻略してみせるとは思わなかったッスよ。……でも、どうして先輩は私の死の呪いに上手に対処できるようになったんスか!? 私、とても気になるッス!」

「ほう、知りたいか?」

「はいッス! もったいぶらないで教えてほしいッス!」

「わかったよ、志穂」

 

 天宮百貨店へ向かう道中。志穂は士道が地盤沈下と乾雷から自分を見事に救ってくれたことへの興奮から目を輝かせながらも、士道に率直な疑問を投げかける。士道が即時の種明かしを控えようとすると、志穂は戦略的な上目遣いで士道から回答を引き出す作戦を発動させた。結果、志穂の作戦が士道に効果抜群だったのか、元々士道はそのつもりだったのか。士道は種明かしを始めた。

 

 

「簡単な話だよ。志穂を襲う死の呪いの性質が大体わかってきてな。その性質を利用することで、俺はさっきから志穂を上手に守っているんだ」

「死の呪いの性質ッスか?」

「あぁ。世界は志穂を嫌っていて、だから志穂に死の呪いを行使してくる。だけど、例えば『志穂の目の前にいきなり、過去の世界からタイムスリップさせた恐竜を召喚して、恐竜に志穂を喰い殺してもらう』なんて非現実的すぎることを、死の呪いはやらないだろう?」

「まぁ、そうッスね。だって、恐竜を現代に持ってくるなんて、いくら世界でも無理でしょうし」

「つまり、だ。死の呪いってのは、現実に存在する材料を利用してでしか、志穂を殺せないんだ。公園の時は、近くに木があったから、その内の1つを根腐れでもさせて志穂目がけて倒木させた。来禅高校の時は、ちょうど野球部が部活動をしていたから、野球ボールが志穂の頭に向かって飛ぶようにした。マフィアの時は、たまたま志穂に殺意を抱くマフィアが天宮市にいたから、マフィアに志穂のことを気づかせて銃殺させようとした。ビルの屋上に行こうとした時は、俺たちがビルのエレベーターに乗ったから、エレベーターに施された全ての安全装置を作動させずに急降下させて志穂を殺そうとした、なんて具合にな」

「ふむふむ」

 

 士道は志穂が話を理解できるように丁寧に種明かしを行っていく。その途中で天宮百貨店に到着した士道と志穂は、自動ドアを通り、天宮百貨店の中に入る。そして、士道の先導の下、2人はエスカレーターを利用して2階へと上がっていく。

 

 

「世界は現実的にあり得るやり方でしか志穂の命を狙えない。そうだとわかれば、状況次第じゃ死の呪いの内容を絞り込めると思わないか?」

「え?」

「そう、例えば――」

「――わッ!?」

 

 士道の解説の途中で、士道と志穂の乗るエスカレーターの踏板が2階へと到達する。まず最初に士道がエスカレーターを降り、志穂も後に続こうとする。が、ここで志穂の乗るエスカレーターの踏板が文字通り、落ちた。まさかの事態に志穂は目を見開く。志穂の体も為すすべなく落下し、エスカレーターの中に飲み込まれそうになる。が、士道が志穂の腰を両手で掴み、持ち上げたことで志穂の体がエスカレーターに飲み込まれずに済んだ。

 

 

「大丈夫か、志穂?」

「は、はいッス。さすがッスね、先輩」

「どういたしまして」

 

 士道は志穂の体を床に下ろし、志穂に怪我がないか確認すると、付近にいた天宮百貨店の従業員にエスカレーターの踏板のことを報告した。その後。士道は志穂を伴って天宮百貨店2階を移動しながら、解説を再開する。

 

 

「ちょうど今みたいに、志穂がエスカレーターに乗れば、世界は志穂の乗る踏板を落として、志穂をエスカレーターに飲み込ませようとするだろうなと想定して、志穂を助けることができる」

「おおお……!」

「さっきの地盤沈下や落雷も似たような原理だよ。動物の集団脱走騒ぎで人気がない上に、車道に車が全然ない状態の歩道で志穂を襲うであろう死の呪いの種類なんてそう多くはない。大雑把に分けるなら、下から志穂を襲うか、上から志穂を襲うかだ。そこまで死の呪いの内容を絞り込めたからこそ、俺は想定済みの死の呪いから志穂を上手く守れたってわけさ」

「おおおお……!」

「今までは死の呪いの性質がわからなかったから不意打ちの死の呪いを前に後手に回るしかなかったけど、性質を大体理解した今なら、死の呪いに先手を打つことができる。死の呪いの内容を絞り込みやすいシチュエーションを敢えて用意して、俺の想定した死の呪いの内容の範囲内で、俺の想定したタイミングで、死の呪いに志穂を襲ってもらうことだってできるわけだ」

「おおおおおお……!!」

 

 士道の解説を一言一句聞き逃すまいと聞き入っていた志穂の目が、士道の解説が締めくくりに向かうにつれてどんどん輝きを増していく。興奮の声もどんどんボルテージを増していく。

 

 

「凄い、凄い凄い凄い! 先輩、凄いッス! 先輩の思い通りに死の呪いを操って、私を守りやすくするなんて、私今まで全然考えたことなかったッスよ! まさかこんな方法があるとは……!」

「だろう? これからも今みたいに志穂を守ってみせるから、俺に任せてくれよな」

「はいッス! 先輩を200パーセント盲信待ったなしッスよ!」

 

 その場でぴょんぴょん飛び跳ねながら興奮を体全体で表現する志穂を前に、士道は得意げに笑みを浮かべる。志穂には死の呪いをさも完全に攻略したかのように発言した士道だが、当の士道は死の呪いを完全攻略しただなんて慢心などしていなかった。いくら志穂を守りやすくするべく、死の呪いの内容を絞り込めるように状況を整えた所で、仮に百貨店内にテロリストが仕掛けた爆弾が志穂の足元で起爆した、なんてことが発生すれば、いくら士道が想定済みの死の呪いであっても、志穂を守り切れないかもしれないのだから。

 

 だが、一方で。士道は現状を鑑みた上で、デートの最後まで志穂を守り抜けるだろうと推測していた。志穂は以前、志穂が現界してから死ぬまでの時間を約2時間だと言っていた。単純に捉えれば、志穂は1日に平均12回死んできたわけだ。そして、今日。志穂を襲った死の呪いの数は、倒木、野球ボール&窓ガラスの破片、階段、マフィアの銃撃、ゴリラの拳、キリンの蹴り、エレベーターの急降下、ビルの一部倒壊、地盤沈下、落雷、エスカレーターの踏板落下と、既に11を記録している。となると、今日志穂を襲う死の呪いは残り1つ、多くても残り数回と考えられるのだ。

 

 

(今日の分の、志穂を襲う死の呪いの数は残り少ないはずだ。……ここまで来たんだ、最後の最後まで志穂を守り抜いてみせる!)

 

 士道の思惑を知らず、無邪気にはしゃぐ志穂に隠れて。

 士道は己の覚悟を世界に示すかのように、強く拳を握るのだった。

 

 




五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。志穂に迫る死の呪いの攻略方法をどうにか掴んだようだ。なお、天宮百貨店は死の呪いのせいで今後評判的に大変なことになりそうな予感。
霜月志穂→精霊。識別名はイモータル。ここ半年、やたらと天宮市に現界している新たな精霊。なぜか天使や霊装を全然使わず、ほぼ静粛現界で姿を現している。今までとは段違いで頼もしくなった士道への心酔具合が凄まじい模様。

士道「ほらほら、どうした世界。志穂を殺してみせろよ?」
世界「ぐぬぬ」

 というわけで、14話は終了です。原作を見ていても思ったのですが、氷結傀儡(ザドキエル)ってかなり使い勝手良いですよね。氷属性は最強でこそないけれど、汎用性、応用性においてはトップクラスで優秀だと思う今日この頃です。

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