【完結】死に芸精霊のデート・ア・ライブ   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。いよいよ明日はデート・ア・ライブ18巻の発売日ですね! 読者としてはただただ楽しみですが、現在デアラ二次創作を執筆している身としては、私の考えた設定が原作と致命的に矛盾してしまわないかと戦々恐々なんですよね。くッ、だからこそ毎日更新をして、18巻の発売前にこの作品を完結させるつもりだったのに……!



15話 リベンジデート終盤

 

 

 天宮百貨店にて。士道と志穂は色々な店を回りながら、ショッピングデートを満喫した。その最中、当然ながら死の呪いは志穂の命を刈り取るべく襲いかかってきた。だが、死の呪いの内容を想定しやすいシチュエーションを敢えて用意することで、士道は死の呪いから難なく志穂を助け出すことに成功していた。

 

 わざと志穂に天井に備え付けられたシャンデリアの真下を歩かせ、シャンデリアが落下を開始したと同時に志穂の手を引っ張りシャンデリアの落下地点から志穂を逃がす。わざと志穂とジュエリーショップを訪れることで死の呪いの刺客たる強盗の登場を促し、強盗の威嚇射撃と同時に志穂の目の前に氷結傀儡(ザドキエル)で氷の盾を構築して銃弾を防ぎ、何の前触れもなく突如現れた氷にわけがわからず動転する強盗を取り押さえる。

 

 そのようにして志穂に迫る死の呪いを士道が防いだ結果、死の呪いが今までとは一転して志穂を襲わなくなった。志穂が世界に嫌われ、死の呪いに取り憑かれている。そのような事実がまるで最初から存在しなかったかのように、士道と志穂の元には至極平和な時間が訪れていた。おそらく、今日の分の志穂への死の呪いが尽きたのだろう。

 

 そのため、士道と志穂は天宮百貨店のレストランでゆっくりディナーを堪能した後、天宮百貨店の屋上に足を運んでいた。現在時刻は午後9時であるため、屋上からは天宮市の夜の街並みを一望できる。街灯に窓の明かりが各々闇に彩りを加える様は中々に幻想的である。ゆえに、今日の志穂とのデートの最後にふさわしいと士道は考えたのだ。

 

 

「へぇぇ、雰囲気出てるッスねぇ! 自然豊かな満天の星空を見上げるのとはまた別の趣があって、中々に興味深いッス!」

「気に入ってくれたなら何よりだ」

 

 志穂は軽快な足取りで屋上を動き回りながら、色んな方向から夜景を見下ろして楽しむ。士道は死の呪いへの警戒も一応残しつつ、表では自然とは縁遠い街の夜景を志穂が気に入ってくれたことに安堵の笑みを浮かべる。

 

 

「先輩。今日のデート、凄く楽しかったッス。最初からハチャメチャ続きで、喜怒哀楽で忙しいデートだったけど、終わってみれば一生忘れない最高のデートになったッス。素敵な思い出をプレゼントしてくれて、ありがとうございます」

「そう言ってくれると嬉しいよ。頑張った甲斐があったってもんだ」

「えへへ。私のために頑張る先輩、すっごくカッコよかったッス。よ、男の中の男!」

「あはは。そこまでまっすぐ褒められるとその、照れるな」

 

 屋上からの街並みを十分に鑑賞し終えた志穂は士道へと振り返り、士道に感謝の気持ちを表明する。相変わらず志穂のような見目麗しい美少女に正面から褒めちぎられることに慣れていない士道は恥ずかしさを紛らわせるように頭をかく。一方の志穂はここで、にこやかな笑顔から真面目な顔つきへと切り替え、士道を改めて見上げる。

 

 

「……先輩。私、こんなに長い間、この世界にいたの、初めてッス。今までは現界してはすぐ死んでの繰り返しで、どんなに長くても3時間くらいしかこの世界で生きられなかったッスから。でも、先輩のおかげで、今日は1日中この世界に留まることができたッス。この世界をじっくり楽しむことができたッス」

「志穂……」

「先輩は宣言通り、私を守り抜いてくれたッス。だから、先輩には私を封印する権利があるッス」

 

 志穂は士道に向けて一歩、一歩近づいていく。

 志穂は期待と不安がない交ぜになった眼差しを士道へと注ぐ。

 

 

「……ねぇ、先輩。もう、私は死ななくていいんスよね?」

「あぁ、当然だ」

「先輩とキスをしたら、私の残機はたったの1になっちゃうけど……これからも先輩が私を守ってくれるんスよね? 私は、普通の人みたいに、生きていけるんスよね?」

「あぁ、保証する。志穂は俺が幸せにしてみせるよ」

「……そうッスか。ふへへ、嬉しいッス。まるで、夢みたい」

 

 志穂は己の抱える不安を解消するべく、士道に問いかける。士道は力強くうなずく。士道の有言実行っぷりをよく知る志穂は、士道の自信に満ちあふれた返答に、にへらと笑みを零す。士道の回答は、志穂の不安をすっかり消し飛ばしたようだ。

 

 

「それにな、志穂。実は――」

 

 士道は今のタイミングが頃合いと見て、志穂に令音の考察を伝える。世界は志穂が不死だからこそ嫌っている。だから、志穂を封印して、志穂の残機を∞じゃなくすれば、志穂が死の呪いに襲われることはなくなり、精々不幸体質になるくらいで済むだろうとの令音の考察を志穂に教える。

 

 

「え? それってつまり、私が封印されることで、私の死に芸属性がドジっ娘属性にクラスチェンジするってことッスか? おおう、何だろう。嬉しいけど、少し複雑ッス。でも、死の呪いに襲われなくなるのなら万々歳ッスね!」

 

 結果、志穂は最初こそむむむと唸り声を漏らしていたが、死に芸属性がなくなることを前向きに捉えることに決め、ガッツポーズを通して己の喜びを体現した。

 

 

「ところで先輩。私、残機が1になったら早速、やってみたいことがあるッス」

「ん、何だ?」

「ぐっすり寝ることッス。今までは寝ようものなら遅かれ早かれ寝起きドッキリな死をプレゼントされてたから、この3年間、まともに寝たことなかったッス。だから、何も心配しないで、安心して眠ってみたいッス。できれば、今夜は先輩の隣で眠りたいんスけど……」

「そのくらいなら構わないさ」

「お、本当ッスか!? 言ってみるものッスね!」

「あ、でも封印した精霊は一旦ラタトスク機関で検査を受けないとだから、寝る場所は多分フラクシナスの中になるけど、大丈夫か?」

「寝る場所なんてどこでもOKッスよ。今夜先輩と一緒に眠れるなら、例えラブホだろうが野宿だろうが何だっていいッス」

 

 志穂は自分の願いが士道の迷惑にならないかと、心配そうな表情で士道の顔を覗き込む。さすがに毎晩志穂と一緒に寝るとなるとマズいかもしれないが、1日ぐらいなら問題ないだろう。それに、志穂のささやかな願いを拒否してしまうのは忍びない。そのような心境の下で、士道は志穂の頼みを快諾した。その際、寝る場所を自由に選べないであろうことを士道が伝えるも、志穂は寝る場所にこだわるつもりはないようだった。

 

 

「……それじゃあ先輩、いつでもいいッスよ」

 

 そして。お互いに話すことがなくなった時。意を決した志穂はスッとエメラルドの双眸をまぶたで覆い隠す。同時に。背伸びをして、顔を少々上げて、士道からのキスを待つ態勢に入った。

 

 

「あ、あぁ」

 

 志穂からキスを求められた士道は緊張にゴクリと唾を飲む。ここで士道は思い至る。これまで士道は6人もの精霊を、キスを通して封印してきた。だが、自分からキスをして封印した例は琴里だけで、あとの5人の場合は、相手の方から士道にキスをしてきてくれたことを。

 

 士道は志穂の柔らかそうな桃色の唇に視線を向ける。バクバクと心臓が早鐘を打っていることがわかる。体が急にガチガチに固まり、身動きが封じられたかのような錯覚が士道を襲ってくる。だが。ここで志穂を待たせては、志穂からの士道の好感度が下がってしまうだろう。それが原因で志穂の精霊の力を完全に封印できなかったなんて事態になってしまいかねない以上、ためらってはいられない。士道は覚悟を決めると、志穂の唇に己の唇を重ね合わせた。

 

 

「んッ」

 

 永遠のようで、一瞬のようなライトキス。体の中に何やら温かいものが流れ込んでくる感覚を感じ取った士道は志穂からゆっくりと唇を放す。今の感覚はいつもの、精霊の霊力の完全な封印に成功した時のものだ。志穂の精霊の力の封印が上手くいったことを証明する感覚だ。

 

 

(ふぅ、これで終わった。俺は志穂を救えたんだ)

 

 士道は内心で安堵する。志穂とのデートが始まった時は死の呪いから志穂を守り抜くデートの難易度のあまりの高さに強く不安を抱いていただけに、志穂とのデートを無事に終わらせることができた事実を前に、士道はホッと一息つく。

 

 

「――ッ!?」

 

 が、刹那。士道の体をとてつもない寒気が駆け抜けた。何か大切なことを忘れているような。何か見落としてはいけないことを見過ごしているような。何か致命的な間違いを犯しているかのような。そんな、そんな得体の知れない寒気が士道を襲ったのだ。

 

 

「あ、ぇあ゛――?」

 

 士道が弾かれたかのように志穂をみやると、志穂はその場に棒立ちしていた。士道が今まで精霊とキスをした時に、精霊が身に纏っていた霊装が解除された時と同じような光の粒子が志穂の体の周囲をキラキラと舞う中。光の粒子に包まれた当の志穂は、小刻みに体を震わせていた。眼球が飛びださんばかりに目を見開き、エメラルドの双眸から血涙をダラダラ流し、肩を握り潰さんばかりに両手で肩を抱いていた。

 

 

「志、穂……?」

 

 明らかに、志穂の様子がおかしい。今しがた士道の体の中に流れ込んだはずの温かい何かが、士道の体から丸々抜け出す感覚に士道が襲われる中。士道が志穂の尋常でない様子に戦慄し、ただただ立ちすくんでいると。ここで。士道の脳裏に、とある言葉がよみがえった。

 

 

 ――ただ1つ、忠告しますわ。……志穂さんとの戦争(デート)はキスをしてからが本番になりますの。だから明日、志穂さんを守り抜いた後に、志穂さんとキスをして、霊力を封印したからといって、『ふぅ、これで終わった。俺は志穂を救えたんだ』などと気を抜いてはダメですわよ、士道さん?

 

 

 昨夜、狂三に告げられたことを士道が思い出した時。

 

 

 

 

「――くふふ。ふふふふふふふ、ひゃははははははははッ!!」

 

 狂ったように、志穂が嗤い出した。

 

 

 

 




五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。自分から精霊とキスをすることに慣れていない辺りが非常にかわいい。
霜月志穂→精霊。識別名はイモータル。ここ半年、やたらと天宮市に現界している新たな精霊。なぜか天使や霊装を全然使わず、ほぼ静粛現界で姿を現している。士道とのキスがきっかけで、なぜかSAN値直葬した模様。二亜さんのパターンと似てるかな?

 というわけで、15話は終了です。ようやく一番書きたいと思っていた、志穂さん豹変シーンまでたどり着きました。美少女がいかにも悪役っぽい笑い声を高らかに上げる姿って、素敵だと思いませんか? かわいいと思いますよね? ね?(威圧)

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