狂三「始まりましたわね。……さて士道さん。志穂さんとの
どうも、ふぁもにかです。この度、志穂さんが愉快なことになります。それと、今回は執筆していてかなり楽しかったです。やっぱり今回のようなシーンとか、大好物なんでしょうね、私。
「――くふふ。ふふふふふふふ、ひゃははははははははッ!!」
夜の天宮百貨店屋上にて。士道がキスをした後。光の粒子に彩られながら、小刻みに体を震わせ、目を見開き、血涙を流し、両手で肩を強く抱いていた志穂が、狂ったように嗤い出す。あたかも悪魔にでも取り憑かれたかのように志穂が哄笑する。
「……ッ」
今までの志穂からはまるで想像できない、志穂のゲラゲラ笑いに士道は言葉を失っていた。ただただ志穂という存在に圧倒され、飲まれていた。
「あぁ、あぁ。そういうことッスか。ぜぇーんぶ、理解できたッス。はぁぁ、なるほどねぇ」
「し、志穂。大丈夫、なのか?」
息が苦しくなったために哄笑をやめた志穂は、荒い呼吸を繰り返しながら、今度はぶつぶつと独り言を呟き始める。ここでハッと我に返った士道は、自己完結している様子の志穂におずおずと問いかける。もちろん、志穂が大丈夫なんかじゃないことは理解している。それでも、大丈夫なのかと尋ねることが今の士道の精一杯だったのだ。
「あ、士道先輩。朗報ッス。私、この度晴れて記憶が戻ったッス。きゃは☆」
「記憶が? それって確か、志穂が初めて現界した4年前から3年前までの1年間の記憶だよな?」
「あい。まさか先輩とのキスが私の記憶復活に欠かせない唯一無二の条件だったとは、さすがに想定外だったッスねぇ。でも先輩のおかげで、寝ることなんかよりも今すぐやるべきことが見つかったッス。やったね、志穂ちゃん!」
「やるべき、こと?」
「イエス。人類殺戮、人類殲滅、人類虐殺……とにかく私が人類の敵として、この世界から人間を1人残らず殺し尽くしてやることッスよ! 善は急げって言うしね! はい拍手、パチパチパチィー!」
「……は?」
血涙を流したり、哄笑していた時よりはマシだが、いつもと比べて妙にテンションのおかしい志穂の発言から、志穂が士道とのキスをきっかけに失われていた記憶を取り戻したことを、士道は知る。一方の志穂はエメラルドの両眼にギラギラとした殺意をみなぎらせつつ、人類を滅ぼす意志を表出させ、士道に拍手を促すために自分で拍手を始めた。対する士道は硬直していた。志穂の言葉の意味を理解できず、呆然とした声を漏らす。
「むぅ。ノリ悪いッスよ、先輩。一体どうしたんスか、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔しちゃってさぁ。私の知る先輩はもっとノリノリの陽キャさんなんスけど」
「い、いやいやいや! 待ってくれ、志穂!? 本気なのか!? 本気で人間を滅ぼすつもりなのか!?」
「もっちろん! 私はやるといったらやる女ッスよ! ……あ、もしかして先輩。私のようなその辺の人より紙装甲なクソザコ精霊に人類殲滅なんて大それたことできるわけないとか思っちゃってるッスか? うぅ、悲しいなぁ。でも、まぁそれも仕方ないッスよね。私、今まで先輩には死に芸精霊の一面しか見せてなかったですし。ではでは、私の新たな一面を知ってもらうため、満を持してお披露目といくッスよ! カムヒア、私の天使!
士道の反応への不満からぷくーと頬を膨らませる志穂に、士道は志穂の人類殲滅発言が冗談だと信じて、確かめようとする。が、志穂は士道の望みを無慈悲にも打ち砕いた。その上で、士道に舐められていると解釈した志穂は右手を天に掲げ、最強の矛たる天使の顕現を要請する。結果、志穂の体を覆い隠すように漆黒のマントが現れた。マントの随所には無数の人間の目がプリントされており、不規則に目が瞬きをする様は、士道に不気味な印象を植えつけた。
本来なら、士道とのキスにより完全に霊力を封印された精霊は、天使を完全に顕現させることはできない。だが、精霊の精神が不安定になった時、士道が封印した霊力は精霊に逆流する仕様となっている。今の尋常でない志穂は、精神が不安定だなんて生易しい表現で済ませられる程度の様子ではない。その上、記憶を取り戻し、天使や霊装の使い方をも思い出したらしい志穂が、天使を顕現できたのはそうおかしなことではなかった。
「これが、志穂の天使……」
「むっふふ。中々に厨二心を刺激する素敵なデザインでしょ? では、説明しよう!
今まで士道が目の当たりにした中で断トツで禍々しいマント型の天使:
「なぁッ!?」
「もちろん、今ここで先輩を殺すことだって、お茶の子さいさいッスよ?
その、人間相手にあまりに凶悪な効果を発揮する
「ッ!」
志穂に
「ふふん、冗談ッスよ。そんなに身構えることないじゃないッスか。先輩には今までお世話になったし、私の記憶を取り戻してまでくれたッスから、お礼に特別待遇で一番最後に殺してあげるッス。地球最後の人間になれるなんて超栄誉ッスね! やっふー!」
「志穂……」
「いやはや、物事には優先順位というものがあるッスからね。まずは今まで私を殺しやがった全ての人間に、心がへし折れるほどの凄惨な死を経験させてあげるッス。それから私によくしてくれた人たち以外をサクッと殺して、あとはノリと流れに任せて人類滅ぼす感じにするッスよ」
士道の反応を受けてにへらと笑みを浮かべた志穂は。現時点では士道を殺すつもりがないことを伝える。その後、志穂はザックリとした人類殲滅計画を士道に明かす。
「……なんで」
この時、士道の口は無意識に言葉を紡いでいた。例え志穂に今士道を殺すつもりがなくても、志穂の気が変わればいつ士道が殺されてもおかしくないのに。それでも士道は心の底から湧き上がる衝動とともに志穂に向けて声を荒らげた。
「なんでだよ、志穂! なんでお前はそんなに人間を滅ぼそうとするんだよ! さっきまで、志穂はあんなにも幸せそうにしていたじゃないか! もう死ななくていいことを喜んで! 普通の人みたいに生きられることを夢のように思っていたじゃないか! それなのに、どうして……!」
「それとこれとは別問題ッス。私は今まで散々世界に嫌われ、惨い仕打ちに晒されてきたッス。……私、泣き寝入りとかやられ損とか、そーゆー言葉大嫌いなんスよね。だ・か・ら。せっかく記憶を取り戻して、
士道の悲痛な声での問いを、志穂は何ともなさそうに受け止めつつ、世界への復讐を理由として人類殲滅を行う旨を主張する。そして。志穂は天使に続いて、霊装をも顕現させる。漆黒のマントの内側に、黒を基調として、所々白のアクセントが加えられた袴のような霊装を瞬時に纏う。
「ぅわッ!?」
と、刹那。唐突に士道の体が不思議な浮遊感が包み込まれる。この感覚を士道はよく知っている。これまで何度も経験した、転送装置を介して士道がフラクシナスに回収される時の現象だ。タイミングが良いのか悪いのか、琴里は今、士道を自身の元へ転送させるつもりらしい。
(このタイミングでかよ!?)
「お。お迎えがきたみたいッスね。ではでは、しばしのお別れッス。次に私たちが会うのは、私が先輩以外の全人類を滅ぼした後か、先輩がヒーローとして、死神の私を殺してでも止めると決意した時か。……くふふ、楽しみッスよ。きゃははははっはははははははははッ!」
霊装の効果により空中浮遊が可能となった志穂はおもむろに夜空に飛び上がり、クルクルと回転しながら哄笑する。今の志穂を1人で放置させるのはマズい。士道がいなくなれば、志穂が人類虐殺を開始するのは容易に想像できた。
「志穂! ダメだ! 人間をたくさん殺した所で世界が後悔するわけないに決まってる! だから、頼むから考え直してくれ! またすぐに会いに来るから、それまで絶対に早まらないでくれ! 志穂!」
だからこそ、士道は叫ぶ。士道がフラクシナスに転送されるまでの残されたわずかな時間を利用して。志穂が人類虐殺に着手しない可能性を少しでも残すべく、人類虐殺をした所で世界は決して悲しまないとの根拠なしの理由を用いて志穂に凶行を実行させないように声を張り上げる。直後。士道の体は天宮百貨店の屋上からフラクシナスへと一瞬にして転移されたのだった。
五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。今回は終始志穂さんに振り回されていた模様。
霜月志穂→精霊。識別名はイモータル。士道とのキスを契機に、失っていた記憶を取り戻した模様。天使や霊装の使い方も思い出したため、人類の敵として、死神として人類殲滅を行うべく、天宮市で早速活動を開始する模様。つまり、志穂さんは反転はしていないものの、暴走しています。ちなみに、志穂さんの霊装のイメージはBLEACHの死覇装です。
というわけで、16話は終了です。今回、志穂さんの天使:
~おまけ(ラタトスクの観測精霊データ・改)~
名前:霜月志穂
識別名:イモータル
総合危険度:AA
空間震の規模:E
霊装ランク:D
天使ランク:S
STR(力):20
CON(耐久力):16
SPI(霊力):100
AGI(敏捷性):80
INT(知力):65
霊装:神威霊装・番外
天使:垓瞳死神(アズラエル)