【完結】死に芸精霊のデート・ア・ライブ   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回から本章スタートです。
 プロローグの時系列に至るまで、おそらく2話くらい使うと思われます。



1話 攻略優先度の低い精霊

 

 

 9月28日木曜日。つい1週間前に盛大に開催された天央祭の影響で浮き足立っていた天宮市が落ち着きを取り戻した頃。学校を終えた五河士道は下校のついでに商店街に足を運んでいた。ちなみに、いつも士道の隣にいることの多い十香は今、クラスメイトの亜衣、麻衣、美衣の3人とどこかに出かけている。

 

 

(う~ん、今夜は何にしようかなぁ)

 

 士道は今日の夕飯の献立を考えつつ、スーパーを巡る。自分1人のための料理であれば頭を悩ませずにテキトーな物を作って終わりである。しかし士道には、己の料理を待つ妹の琴里がいる。その上、五河家の隣に建設された精霊マンションに住む、精霊の十香、四糸乃、耶俱矢、夕弦、美九が士道の夕飯を食べにくることが多い以上、料理を雑に済ませるわけにはいかない。美味しい料理を前提として、彼女たち1人1人の好みを勘案した料理を振舞う必要があるのだ。

 

 だが、士道はそのことを面倒だとは思わなかった。むしろ、十香たちのために、こうして夕飯の献立を悩む今この瞬間が幸せだとすら思っていた。

 

 

(にしても、精霊のことを知ってから、まだ半年かぁ。もう5年くらい経った気がするぜ)

 

 そう。士道が最初の精霊、十香と初めて出会ったのは今年の4月10日である。

 そして今日は9月28日。大して時は経っていないはずなのに、十香と出会ったあの時がもう随分遠くに感じられる。それだけ、精霊と関わってから濃密な半年を過ごしたということか。

 

 士道はこれまで、十香、四糸乃、琴里、耶俱矢&夕弦、美九の6名の精霊を救うことに成功した。だが、まだ救えていない精霊は存在する。世界から討伐対象とされ、ありふれた平和な日常を過ごすことを否定されている精霊はまだまだ存在する。そんなまだ見ぬ精霊たちを全て救うその日まで、士道の歩みが止まることはない。

 

 

(これからも頑張らねぇとな)

 

 士道は改めて決意を抱きつつ、適当な食材を次々とカゴに投じていった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 精霊たちとの和気あいあいとした夕食を楽しんだ後。士道はフラクシナスを訪れていた。フラクシナスとは、士道の住む天宮市の上空15000メートル地点に浮遊している巨大な空中艦のことだ。未だ表の科学の世界に明かされてない顕現装置などの技術を結集させて作られた空中艦の中には、士道と同様に精霊を救う意思を持つラタトスク機関のクルーが多数存在している。ちなみに、士道がフラクシナスに足を踏み入れられるのは、フラクシナスが士道を艦内に転送しているからだ。

 

 

「来たわね、士道」

「あぁ」

 

 士道が艦橋に着くなり、士道の気配を察知した琴里が艦長席で凛とした声色とともに、士道を迎える。琴里は士道の妹にして、ラタトスク機関の一員として、フラクシナスの艦長を任されるほどの重鎮である。艦長としての琴里の言動には威厳が伴っており、そのカッコよさには士道も度々感心させられていた。

 

 

「それで、今日はどうしたんだ?」

「美九の一件も落ち着いたことだし、そろそろ士道に次の精霊を紹介しようと思ってね」

「次の精霊? 見つかったのか!?」

 

 士道が本題を尋ねると、琴里は口にくわえていたチュッパチャプスの棒をピコピコと動かしながら返答する。士道は『次の精霊』とのワードにすぐさま反応する。士道の使命は、1人でも多くの精霊を、一刻も早く封印し、平穏で幸せな生活を送ってもらうことだからだ。

 

 

「見つかったというよりは、既に見つけていたと言った方が正確になるわね。まずはこれを見てちょうだい」

 

 琴里の合図とともに艦橋のメインモニタに一人の少女の姿が表示される。淡くきらめく桃色の髪に、小動物を想起させるようなくりくりとしたエメラルドの瞳をした少女だ。琴里と同じくらいの体型の少女は、霊装の代わりにシンプルな色合いのグレーのパーカーに青色のホットパンツで着飾っており、いかにも外向型のアクティブな少女、といった印象だった。少女が精霊だとわかりやすく証明してくれる霊装は纏っていないものの、少女の現実離れした美貌は、士道に少女が精霊であると信じるに足るものだった。

 

 

「氏名不詳。識別名はイモータル。私たちラタトスク機関が把握している精霊の中で最も観測数の多い精霊になるわ」

「そんなにたくさん姿を現しているのか?」

「ええ。イモータルは4年前の初観測以降、毎日のように世界各地に姿を現しているわ。朝大阪で発見されたと思ったら昼にはイギリス、夜にはシンガポールって感じで、やたらと現界と消失(ロスト)を繰り返しているわ。もちろん、天宮市にも現界したことがあるし、ここ半年は天宮市に頻繁に現界しているわね」

「……なら、どうして今までイモータルのことを教えてくれなかったんだよ?」

「簡単にいうと、イモータル攻略の優先度が低かったからよ」

「優先度? どういうことだ?」

 

 琴里から新たな精霊:イモータルのことを聞いた士道は率直な疑問を琴里にぶつける。これまでに天宮市に何度も姿を現しているのなら士道がイモータルを攻略する機会は多々あったはずだ。それなのに、琴里がイモータルのことを今まで士道に伝えなかった。その状況が、士道に疑問を呈したのだ。だが、対する琴里は士道の質問は想定内と言わんばかりにつらつらと言葉を紡いでいく。

 

 

「士道。おさらいするけど、精霊はなんで人類にとって危険なのかしら?」

「なんでって、人間の常識を超えた、圧倒的な力を持ってるからだろ? それに、意図的じゃないにしろ、空間震を起こして街を一瞬で破壊できるわけだし」

「そうね。でも、イモータルはラタトスク機関が観測した限り、一度も天使を使ったことがないし、霊装を身に纏ったこともないのよ。それに、イモータルはほとんど静粛現界で、この世界に姿を現しているようなの」

「え?」

「加えて、イモータルがごくたまに起こす空間震の規模も凄くしょぼい。十香なんて、現界する時にかなりの範囲の空間をくり抜いたでしょ? でも、イモータルの場合、空間震の被害は精々直径10センチ範囲。わざわざ空間震警報を鳴らして住民を避難させなくていいレベルの空間震しか起こしてないの。というか、そもそもここまで空間震の範囲が小さいと空間震の事前感知すら難しいんだけどね。ま、そうなると、十香たちに比べると遥かに無害。速やかに精霊の力を封印する必要はない。だから、士道には今までイモータルのことは伝えずに、速やかに霊力を封印してほしい十香たちの対応を任せたの。……でも、今はこれといった攻略優先度の高い、放置できない危険な精霊を見つけられてないからね。せっかくイモータルが天宮市に出現するようになったんだから、今の機会に士道には彼女とデートしてもらおうってわけ」

「なるほどな」

 

 士道は琴里の主張に納得し、うなずく。確かに、天使や霊装を全然使わず、空間震の規模が極端に小さい。そんなほぼ無害な精霊であれば、他の精霊よりも霊力の封印を後回しにするのは何もおかしいことじゃない。精霊を封印できるのは士道だけだ。焦って複数の精霊を同時に攻略しようとして、結局精霊を1人も封印できませんでしたではシャレにならないのだ。それに、イモータルは4年前の初現界から、毎日のように現界しているとの話だ。メインモニタに映るイモータルが霊装を纏っていないことからも、イモータルは世界に上手に溶け込み、対精霊部隊に見つかることなくやり過ごしているものと容易に推測できた。そういった意味でも、イモータルを即刻攻略して保護しなくても大丈夫という琴里の見解は妥当なのだろう。

 

 

「けど、イモータルは静粛現界が多いし、仮に普通に現界して空間震を起こしても、空間震を感知できるとは限らないんだろ? だったら、どうやってイモータルと会えばいいんだ?」

「さっき言ったでしょ。イモータルはここ半年、天宮市に頻繁に現界してるって。私たちがテキトーに市内に自律カメラを飛ばすだけでもイモータルを発見できる可能性は高いのよ。それに、士道がその辺をぶらつくだけでばったりイモータルと接触、なんてこともあり得るわ。何せ、士道はイモータルより遥かに観測数の少なかった十香や四糸乃と偶然出会えたぐらいだもの」

「あはは、確かにな」

 

 士道の次なる疑問にも琴里はさくさくと返事をする。一方の士道はイモータルに思いをはせる。精霊ならば誰しも天使や霊装を行使できるはずだ。十香や四糸乃のような純粋な精霊じゃない琴里や美九だって、謎の精霊:ファントムに精霊の力を与えられた時点で、力の使い方を理解していたとのことだ。だから、イモータルは敢えて天使や霊装を使っていないことになる。となると、イモータルはきっと、四糸乃みたいな優しい精霊なのだろうか。

 

 

「でも、気をつけなさい。いくら相手が天使や霊装を全然使わない精霊でも、精霊には変わりないわ。士道がうっかりイモータルの地雷を踏めば、彼女の天使の標的にされかねない。イモータルの天使の情報がない以上、イモータルが天使を行使する展開は避けるべきよ。それに、イモータルはあのナイトメア、時崎狂三と接触し、交流を深めている精霊でもあるの。人類にとって危険な思想を抱えているかもしれないわ。油断は禁物よ」

「ッ!」

 

 と、ここで。士道があまりイモータル攻略に緊張していない様子を受けた琴里が新たな情報を提示する。と、同時にメインモニタに狂三とにこやかに談笑しているイモータルの画像が表示される。時崎狂三。精霊は総じて保護すべき存在、守るべき存在。そのように考えていた当時の士道に多大なショックを与えた危険な精霊だ。天使刻々帝(ザフキエル)を使うために膨大な量の時間を必要とし、時間を調達するために実に多くの人間から寿命を吸い上げてきた狂三とイモータルとの仲が良い。その情報を受けて、士道は少々緩んでいた気持ちを改めて引き締めた。

 

 

「わかった。俺に任せてくれ」

「ふん、すっかり頼もしくなったわね。でも衝動に任せてイモータルを押し倒してそのまま――なんてことはくれぐれもしないように」

「誰がするか、誰が」

 

 士道が胸にとんと拳を当ててイモータル攻略への意気込みを告げると、対する琴里は腕を組みつつ、冗談に走る。士道はそんな琴里の発言を半眼とともに否定するのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 琴里からイモータルのことを教えてもらった次の日。9月29日金曜日。

 いつものように学校を終えた士道は帰路についていた。9月も下旬とあっては、うだるような暑さは鳴りを潜め、士道にとって非常に過ごしやすい気候となっている。

 

 

(しっかし、そう簡単にイモータルと出会えるかぁ?)

 

 士道は昨日こそ琴里の考えに同調したものの、今はイモータルとすぐに邂逅できる、なんて楽観的には考えていなかった。何せ、天宮市は意外に広い。それに、天宮市には様々な商業施設や観光スポットが存在するために市外からの観光客も多く、天宮市は全域で一定度の賑わいを見せる街なのだ。いくら前例があるとはいえ、この天宮市でそう易々とイモータルを見つけられるとは士道には思えなかった。そう、例えば今こうして帰宅している最中にイモータルに会えるなんて――

 

 

「――あッ」

 

 その時、士道は立ち止まった。視線の先は、細い路地裏。そこに1人の少女を発見したのだ。淡くきらめく桃色の髪に、小動物を想起させるようなくりくりとしたエメラルドの瞳をした少女を。そんな、精霊:イモータルと合致した容姿をした少女は非常に焦っている様子だった。

 

 

「ぐ、ぐぎぎぎぎ……! 抜けない! 抜けないッス! これピンチッスよね!? 超ピンチ! 一世一代の大ピンチッス! ヤバいヤバいマジヤバい。これもし私の下に誰か性欲に支配されたクマ吉みたいな人が来たら壁尻展開じゃないッスか!? やだー! てか、このままでもし対精霊部隊が『来ちゃった♡』してきたらそれはそれでアウトッスよね! えーと、日本だと確かASTだったかな? マズい、奴らに見つかったらフルボッコルート一直線ッス! また『この精霊、イモータルというよりただの練習台(プラクティス・テーブル)ですよね?ww』とかASTの新人辺りが呟いて私のハートまでもがフルボッコなコースッスよ!? 次回『志穂ちゃん、死す』でデュエルスタンバイされちゃうッスよ! あーうー! 早く抜けてくれぇえええええええッス!」

「……あー」

 

 なぜかイモータルがアスファルトの地面に埋まり、上半身だけ地面の上に露出していること。イモータルの慌てる様子が、イモータルの現実離れした美しさとセリフのギャップからか、やたらとコミカルに見えること。早々都合よくイモータルと会えないだろうと予測した矢先にすぐさまイモータルを見つけたこと。以上のことから、士道は困惑とともに頬をかくのだった。

 

 




五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。困っている人、絶望している人を助けるためなら己の命よりも優先して手を差し伸べる傾向にある。
五河琴里→士道の妹にして、精霊保護を目的とするラタトスク機関の一員にして、5年前にファントムに力を与えられ、精霊化した元人間。琴里たちのサポートの元、士道が精霊の好感度を上げ、キスとともに精霊の霊力を封印するというのがいつもの流れである。
イモータル→ここ半年、やたらと天宮市に現界している新たな精霊。なぜか天使や霊装を全然使わず、ほぼ静粛現界で姿を現している。普通に現界し、空間震を起こす際も、空間震の規模が非常にしょぼいため、現状確認されている精霊の中で総合危険度が最も低いと判断されている。

 というわけで、1話は終了です。現状、何となくイモータルが二亜と似ている感。果たしてイモータルが他の精霊たちと被らないだけの個性を確立できるのかはまだまだわかりませんね。


 ~おまけ(ラタトスクの観測精霊データ)~

            ※参考データ(十香の場合)
名前:不明        名前:十香
識別名:イモータル    識別名:プリンセス
総合危険度:E      総合危険度:AAA
空間震の規模:E     空間震の規模:B
霊装ランク:ー      霊装ランク:AAA
天使ランク:ー      天使ランク:AAA
STR(力):20     STR(力):230
CON(耐久力):16   CON(耐久力):202
SPI(霊力):100   SPI(霊力):125
AGI(敏捷性):80   AGI(敏捷性):142
INT(知力):65    INT(知力):32
霊装:不明        霊装:神威霊装・十番(アドナイ・メレク)
天使:不明        天使:鏖殺公(サンダルフォン)

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