【完結】死に芸精霊のデート・ア・ライブ   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。唐突ですが、この作品……ただいまかなりクライマックスに突入しています。そもそも10万文字で完結させるつもりで執筆していましたからねぇ。



19話 トリックスターな精霊Ⅱ

 

 

 フラクシナスにて。琴里と令音から志穂を救うために必要な手掛かりとなり得る情報を一通り入手した士道は、転送装置により、暴走する志穂の近くの路地裏へと転移していた。

 

 

「琴里、志穂の様子はどうだ?」

『そうね、盛大に暴れているわね。今はASTが被害に遭っているわ』

「なッ!? ま、まさか、全員志穂に殺されたのか!?」

『いいえ、生きているわ。でも、いっそ殺された方がマシな仕打ちを受けているわね』

「え?」

『何度も何度も死んでは生き返ってを無理やり繰り返させられているみたいなのよ。……全く、えげつなさ部門なら間違いなく最強でしょうね。志穂の天使は』

「マズい、志穂が本当にASTの人たちを殺す前に止めないとッ!」

『ええ、そうしてちょうだい。士道、ナビゲートするわ。志穂の場所は――え?』

 

 士道はまず、志穂の様子をモニターしているであろう琴里から、志穂の様子を尋ねる。結果。志穂がまだ人殺しこそしていないものの、トラウマ不可避の仕打ちをASTの面々に行っていることを知った士道は、一刻も早く志穂の元に駆けつけるべく、琴里の案内を受けようとする。が、ここで。琴里が唐突に驚きの声を漏らす。

 

 

「琴里? どうしたんだ?」

 

 何か琴里にとって想定外な事態でも発生したのだろうか。心配した士道が琴里に声を掛ける中、コツコツとの足音が士道の前方から響いてきた。士道が足音の聞こえた方向に顔を向けると、そこに、彼女はいた。漆黒の髪に、色違いの双眸に、血と影の色で染められたドレスといった特徴を併せ持つ精霊:時崎狂三が士道の眼前に姿を現したのだ。

 

 

「狂三!?」

「きひひ、士道さん。昨日ぶりですわね。いえ、正確に言うなら、21時間ぶりでしょうか」

「……あぁ、そうか。まだ狂三と会ってから1日も経ってなかったのか」

『ちょっと士道、あなたいつの間に狂三と接触してたのよ!? いえ、それよりどうしてこのタイミングで狂三が出てくるのよ!? 士道、気をつけなさい! 狂三はあなたを喰らうつもりで姿を現したのかも――』

「――いや、琴里。今回は多分、大丈夫だ。俺に任せてくれ」

 

 悠然とした様子で士道へと歩み寄り、妖艶な微笑みを浮かべる狂三と士道が会話をしていると、インカム越しに琴里の焦り声が届く。だが、直に狂三と向かい合っている士道は、狂三の纏う雰囲気から今の狂三に士道を害する意思はないと判断し、狂三に問いかけた。

 

 

「それで、狂三。今度は何の用だ?」

「お急ぎの所、申し訳ありませんが……今から少し、わたくしとお話をしませんこと? とっても大事なお話がありますの」

「……悪い。俺は今から志穂を救わないといけないんだ。今はまだ志穂は人を殺していないけど、時間が経てば経つほど手遅れになりかねない。今はとにかく時間が惜しい。話があるなら、志穂を救った後にしてくれないか?」

「そうですわね。わたくしとしてはそれでも構いませんけれど……今の士道さんのままでは、志穂さんを救うことはゼッッッッタイにできませんわ」

 

 一刻も早く、一秒でも早く志穂を救いたくてたまらない士道は、狂三から用件を聞いた上で、現状の最優先事項は志穂を救うことだと判断し、やんわりと狂三の要望に応えられないことを伝える。すると、狂三は『絶対』の部分をことさらに強調して、今の士道が志穂の元に駆けつけた所で無駄であることを宣言した。

 

 

「なぁッ!? な、なんでだよ!? 志穂を救えるかどうかなんて、やってみないとわからないだろ!? どうしてそう断言できるんだよ!?」

「だって、今の士道さんは、志穂さんの過去を知りませんもの。例え志穂さんの士道さんへの好感度が高くても、例え士道さんがどのような手段を用いてでも志穂さんを救うとの強い意気込みを持っていようとも、志穂さんの過去を知らないようでは、志穂さんの心は絶対に救えませんわ。それぐらい、本番の志穂さんの攻略は困難でしてよ」

「志穂の、過去……」

「確かに、今すぐ士道さんが志穂さんの所へ行かなければ、志穂さんに襲われている最中のASTの方々辺りは死ぬかもしれませんわ。でも、志穂さんの説得に失敗して、いたずらに時間を浪費してしまえば、数え切れないほど多くの人間が志穂さんに殺されてもおかしくありませんわ。……士道さん、ここは先を見据えて、賢明な判断をするべきではありませんの?」

「……その言い振りだと、狂三は志穂の過去を知ってるんだよな? だったら、俺に教えてくれないか?」

「もちろんですわ。そのためにわたくしが来たんですもの」

 

 狂三の巧みな説得を受けて、志穂の過去を知った方がより志穂を救える可能性が増しそうだと判断した士道は、早速狂三から志穂の過去を聞き出そうとする。対する狂三は士道の決断に、よくできましたとでも言わんばかりに笑みを深くしながら、コクリとうなずいた。

 

 

「ですが、わたくしの口から語るよりも、士道さんが直接志穂さんの過去を追体験した方がより効果的ですわ。その方が時間短縮にもなりますもの。……ねぇ、士道さん。以前、美九さんのことを知るためにわたくしたちが行ったこと、覚えておりまして?」

「あ、あぁ。美九の私物に狂三の刻々帝(ザフキエル)を使って、美九の情報を得るために、一緒に美九の家に潜入したよな」

「ええ、ええ。頬の傷をわたくしに舐められた時に顔を真っ赤にした士道さん、非常にかわいらしくて素敵でしたわよ?」

「い、今はその話はどうでもいいだろ!? ――って! 狂三、まさか!?」

「はい。そのまさかですわ」

 

 士道は狂三にからかわれつつも、どうして狂三が急に美九の話を持ち出してきたのかを疑問視する。直後、狂三の意図を悟った士道を前に、狂三は胸元から小さな黒猫の髪飾りを取り出し、士道の前に差し出した。

 

 

「これは、志穂さんが3年前まで身につけていた、猫の髪飾りですわ。この髪飾りにわたくしの十の弾(ユッド)を用いれば、志穂さんの歩んだ軌跡を知ることができますわ。……志穂さんを救うために欠かせない、最後のピース。欲しくはありませんか?」

「あぁ、凄く欲しい。……でも、狂三。1つだけ聞かせてくれ。どうして狂三は、志穂を救おうとする俺にこうも親身に協力してくれるんだ? 前も、俺に忠告をしてくれただろ?」

「きひひ、単なる気まぐれですわ。今まで志穂さんのおかげでわたくしは随分と助けられましたから、少しばかりお礼をと思いまして。元気が取り柄の志穂さんに悲しい結末は似合いませんもの。……それに、士道さんが志穂さんを救えないとなると、いずれわたくしは志穂さんの垓瞳死神(アズラエル)の標的とされ、死んでしまいますもの」

「……そうか。ありがとう、狂三。じゃあ、いつでもいいぞ」

「わかりましたわ。それでは、<刻々帝(ザフキエル)>――【十の弾(ユッド)】」

 

 狂三はなぜ志穂を救おうとする士道に協力してくれるのか。士道の問いに狂三はクルリクルリとその場で優雅に回転しながら、いくつかの主だった理由を口にする。何とも狂三らしい理由に納得した士道が狂三を促すと、狂三は自身の影から飛び出した古式の短銃を掴み、これまた狂三の影から滲み出た、輝く『X』の紋様を短銃の銃口に吸い込ませる。そして、狂三は士道の側頭部に銃口を突きつけ、士道の頭と銃口の間に黒猫の髪飾りを挟み込んだ後、引き金を引いた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……ッ!?」

 

 ハッと、士道は我に返る。志穂の過去を追体験した士道の目の前には、短銃の引き金を引いたばかりの狂三の姿が映し出されている。どうやら、士道にとっては長く感じられていた志穂の過去の追体験は、現実には一瞬の出来事だったようだ。

 

 

「そうか、そういうことだったのか……」

 

 士道の両眼から、涙があふれ出す。指で拭っても、拭っても、涙は中々に途絶えない。服の袖をしばらく目元にあてがうことで、ようやく士道は涙を収めることに成功した。どうやら士道は志穂の過去に随分と感情移入していたようだ。

 

 

「どうでしたか、士道さん。志穂さんの過去、知ってよかったでしょう?」

「あぁ。おかげで、志穂の説得に光明が見えたよ。志穂がどうしてあんな暴走をしているのかについても予想がついたしな。志穂の過去を知ってるのと知らないのとじゃあ、大違いだ」

「……志穂さんを、よろしくお願いいたしますね?」

「あぁ! 本当にありがとう、狂三! 今度、絶対に埋め合わせをするからな!」

 

 涙を流す士道を新鮮そうに、微笑ましそうに眺めていた狂三からの問いかけに、士道は力強くうなずく。その後、狂三から志穂のことを託された士道は、心からの感謝の言葉を狂三に残しつつ、志穂の元へと急いで駆け始める。

 

 

「埋め合わせ、ですの? でしたら今度、士道さんを本格的に喰らわせていただいても――」

「――それ以外でよろしく頼む!」

「あら、あら。それは残念ですわ」

 

 なお、『埋め合わせ』との言葉に反応し、期待から口角を吊り上げる狂三に、しっかり否定の言葉を残しておくことを士道は忘れないのだった。

 

 




五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。志穂の過去を追体験したことで、志穂を救うビジョンを見出したようだ。
五河琴里→士道の妹にして、精霊保護を目的とするラタトスク機関の一員にして、5年前にファントムに力を与えられ、精霊化した元人間。士道と狂三との会話をハラハラしながら見守っていた。
時崎狂三→精霊。識別名はナイトメア。名前は『くるみ』であり、決して『きょうぞう』ではない(重要)。実は士道さんと志穂さんがリベンジデートをしている間に、先の展開を見越していた狂三さんは、士道さんのサポートを通して志穂さんを助けるために、人海戦術を用いて志穂さんが3年前になくしていた黒猫の髪飾りを探していたとの裏設定。

 というわけで、19話は終了です。士道さんが追体験した志穂さんの過去については、次回描写します。今回はまだお預けなのです。閑話休題。やはり狂三さんは物語の裏で暗躍している姿が非常にお似合いですよね。

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