【完結】死に芸精霊のデート・ア・ライブ   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。この作品は我ながら中々の完成度で完結していたため、おまけすら投稿するつもりはなかったのですが、デート・ア・ライブ3期が放送中とあっちゃあ投稿するしかありませんよね! アニメで動く七罪さんのあまりのかわいさに執筆意欲が再燃しちゃいました。仕事で忙しいだなんて知ったこっちゃありません! あ、でも今回の蛇足なおまけは暗めのIFルートなので、ご注意ください。本編を終えた志穂ちゃん幸せルートのお話ではありませんよ?



蛇足なおまけ
11話IF もしもリベンジデートに失敗していたら


 

 

「くそ、マモレナカッタ……」

 

 天宮市の一角にて。士道はガクッとその場に膝をつく。

 その表情は悲しさと悔しさと絶望がないまぜになっている。

 

 10月1日日曜日。士道は残機∞ゆえに世界から嫌われ、容赦ない死の呪いに晒される運命を押しつけられた精霊イモータルこと霜月志穂を1日、守り抜くための戦争(リベンジデート)に挑んだ。

 

 この日のために最善を尽くしたつもりだった。かつて琴里からもらったイフリートの、身体再生能力を生かし、体を張って最後まで志穂を守り抜くつもりだった。

 

 天宮市の上空15000メートル地点に浮遊する巨大な空中艦:フラクシナスのクルーを率いる艦長:妹の琴里も、散歩デートを行う士道と志穂の周囲一帯にこっそり交通規制を敷くことで志穂の周りに車が存在しない空間を生み出したり、士道と志穂の周囲に自律カメラを飛ばし、志穂に危機が迫りそうなら、士道が耳に装着しているインカムへとすぐさま指示を飛ばしたりと、士道が志穂を守りやすい環境を用意したはずだった。

 

 だがしかし。志穂は死んだ。天宮動物園から脱走したらしいゴリラと不運にも出くわしてしまい、志穂はゴリラに殴り殺されたのだ。あっという間の出来事だった。天宮市の街中になぜか筋骨隆々のゴリラが出現するという、あまりに想定外な光景を目の当たりにした士道が呆然としていた、ほんの一瞬の悲劇だった。

 

 士道は、結局志穂を守れなかった。

 士道は、志穂に終わりなき理不尽な死の呪いを繰り出す世界に、勝てなかった。

 

 地面に膝をついたまま、立ち上がろうとしない士道の目の前に広がる志穂だった亡骸と、飛び散る鮮血。が、直後。志穂の亡骸と血が綺麗さっぱり消失し、入れ替わるように無傷の志穂が静粛現界する。それは昨日、士道が散々目の当たりにした、志穂が復活する光景だった。

 

 

「……まぁ、いくら先輩が頑張った所で、結末はこんなものッスよね。私は、どうあがいても死の呪いからは逃れられない。世界には、運命には逆らえない。きっとこの世の中は、そういう風にできてるってことッスよね」

 

 士道が死の呪いから志穂を1日守るなんて最初から無理だとわかっていた。だけど、少しだけ期待している志穂が存在していたことも事実。そのため、微かな期待を打ち砕かれる形となった志穂は深いため息とともにおもむろに曇天の空を見上げる。この世界に、死の呪いに囚われた自分を救うことのできる人はいない。志穂の眼差しはそう悟りきっていた。

 

 

「志穂……」

「私の安定の死に芸披露のせいで雰囲気もぶっ壊れちゃいましたし……デートはここでお開きにしましょうか。士道先輩。約束通り、もう私を封印しようとしないでくださいよ?」

「あぁ。……ごめんな、志穂。お前を守れなくて」

 

 志穂が士道の元からテクテクと歩き去っていく。志穂を守れなかった。その、揺るがぬ事実に士道は歯噛みする。もう1万5千回も死に続けて、いつ本当に壊れてしまってもおかしくない少女を、自分の不甲斐なさのせいで救えない。士道は己の無力が悔しくてたまらなかった。士道はたまらず拳を強く握る。あまりの強さに手のひらから血が滲み出すも、そんなことは今の士道にとってどうでもいいことだった。

 

 

「……先輩」

 

 が、志穂はそんな痛々しい士道の姿を看過できなかった。ふと士道の様子が気になり振り向いた結果、握りこぶしから血を流す士道を視界に捉えた志穂は思わず立ち止まり、逡巡の後に、士道の元へと戻る。志穂も士道と同じく地面に膝をつき、士道の手のひらを両手で優しく包み込み、士道の握りこぶしをゆっくりと解いていく。

 

 

「志穂?」

「全く、そんなこの世の終わりのような顔しなくていいでしょうに。なんで先輩が私よりも悲しそうな顔してるんスか。……私の封印はもう禁止。そこは変えませんけど……別に今生の別れじゃないんですし、今後も先輩と会った時はお話くらいには付き合ってもいいッスから、どうか元気を出してほしいッス」

「…………あぁ」

「それじゃあ、今度こそバイバイッス」

 

 志穂に間近で微笑みかけられた影響か、士道の中で盛大に暴れていた悔恨の念が落ち着きをみせる。結果、士道の無意識の自傷行為が治まったことを確認した志穂は、もう安心だと言わんばかりに立ち上がり、士道に別れを告げ、去っていく。そうして。どんどん視界から遠ざかっていく志穂の小さな背中を、士道も、自律カメラ越しの琴里もただ黙って見つめることしかできなかった。

 

 

「悪い、琴里。俺は、志穂を守れなかった。昨日、あんなにカッコつけたくせに、情けないよな」

『……士道。今回の私たちはちょっと早計だったわ。もっと世界の脅威を正確に認識するべきだった。士道任せの、行き当たりばったりな精霊の攻略方法を省みるべきだった。今までのやり方は紆余曲折あったけど、最終的には狂三以外の6人の精霊の封印に成功していたから、問題ないと思っていた。でもそれは、ただ運が良かっただけだったのね』

 

 しばしの沈黙の後、士道はフラクシナス艦橋のメインモニタ越しにデートの行く末を見守っていた琴里に謝罪する。てっきり皮肉や悪態をついてくるかと思いきや、琴里は士道を一切責めなかった。琴里の返答にいつもの力強さがないことからして、今回の志穂の攻略失敗を受けて、琴里にも色々と思う所があったのだろう。

 

 

『……今回の失敗は、精霊の攻略方法を見つめ直す良い機会よ。今からフラクシナスで反省会を開いて、志穂の攻略はまたの機会に仕切り直しましょう』

「……今さら反省したって、もう意味ないだろ。もしも今日、志穂を守れなかったら、もう志穂の封印はしない。そういう約束だったんだから」

『そのことだけど、私から1つアイディアがあるわ。裏技だけどね。だから、いつまでもそんな街中でうじうじしてないで、さっさと立ち直りなさい』

「……へ?」

 

 琴里の意味深極まりない物言いに、士道が思わず素っ頓狂な声を漏らす中。士道の体は問答無用でフラクシナスに転送されるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 志穂の攻略に失敗した10月1日から時は過ぎ。11月18日土曜日。

 この1か月半の間に新たな精霊:七罪、折紙の封印を成功に収め、一回りも二回りも成長した士道は、改めて志穂攻略に乗り出すこととなった。すぐに封印しないといけない精霊が他に存在しない&最近、志穂が再び天宮市に頻繁に現界するようになったからだ。

 

 ゆえに。午前9時。来禅高校の通学路にて、志穂の目撃情報を琴里から得た士道は、万全の準備を整えた上で、志穂との距離を詰め、接触を図った。

 

 

「やあ、志穂ちゃん。初めまして。……単刀直入に言おう。突然だけど、私は君に一目惚れしちゃってね。デートをしたいんだ! どうかな、私と一緒に楽しいデートをしてみない? 決して君を飽きさせないと約束するよ?」

 

 なお、今の士道は女装をしている。士織モードである。美九の攻略を契機に女装を経験することとなった士道は、当初こそ女装を敬遠していたが、今は精霊攻略のために女装を活用できそうだとなると、割とノリノリで女装をするようになっていたりする。

 

 そう、これが琴里発案の裏技だった。10月1日のデートで志穂を1日守れなかったら、もう志穂を封印しようとしない。この約束は士道と志穂との間で結ばれたもの。だったら、士道ではない別人が、士道扮する五河士織が志穂を封印する分には問題ないはずという、屁理屈でしかない策である。琴里が『裏技』と称したのもうなずける。

 

 

「え? 士道先輩? いきなりどうしたんスか? って、そもそもどうしてそんな珍妙な格好を? 何かの罰ゲームッスか?」

「ッ!?」

 

 士道が士織に変装して志穂とデートをする。この作戦は、士道の正体が見破られたら最後、志穂の士道への好感度が大幅に下がりかねない危険を孕んでいる。ゆえに、士道はしっかり念入りに己に女装を施した。己のメイクスキルも存分に振るった。なのに、志穂は士道を一目見ただけであっさり正体を看破してきた。まさかの展開に士道は驚きを隠せなかった。

 

 

「ち、違うよ? 私は士道くんじゃなくて、五河士織だよ?」

「いやいや、士道先輩ッスよね? というか、ちょっと待つッス。もう私を封印しないって約束じゃ――」

「――その話は士道くんから聞いたよ。確かに士道くんは志穂ちゃんを守れなくて、攻略に失敗した。だから、選手交代。志半ばで無残に散った士道くんに代わってこの私、五河士織が今度こそ、志穂ちゃんを世界から守ってみせるよ!」

「いやぁ……先輩先輩。よく変装できてるなぁ、完成度高いなぁとは思うッスけど、さすがにその設定のゴリ押しは無理ッスよ。前に言ったと思うんスけど、私、前にラタトスク機関に現界した時に、先輩の精霊攻略記録を見たことがあって、そこで先輩の女装姿の写真も見てるんスよ。だから、残念ながら五河士織の姿じゃ私は騙せないッス。大体、『今度こそ』私を世界から守ってみせる、ってボロ出しちゃってますし」

「あ」

 

 ジト目の志穂から指摘されて初めて己の致命的失態に気づいた士道は呆然とその場に立ち尽くす。士織の姿で志穂と初めて接触したはずなのに、出会い頭で志穂に己の正体を看破されたことに動揺したせいか、慌てて取り繕おうとして、つい口が滑ってしまったのだろう。

 

 

「――まぁ、別にいいッスよ」

「へ?」

 

 終わった。絶対、志穂に嫌われた。悲しみに暮れる士道に志穂から思わぬ助け舟が出される。困惑のままに士道は改めて志穂を見やる。すると、志穂の士道を見つめる眼差しに、志穂との約束を破った士道への、軽蔑や失望の念が一切こもっていないことに気づいた。

 

 

「先輩が男のプライドをゴリゴリ削って女装までして、再挑戦をお願いしてきたわけですから、もう1回だけチャンスを与えてもいいッスよ。ここで断ったら、さすがに先輩がかわいそすぎますしね」

「え!? 本当にいいのか!?」

「口調が崩れてるッスよー、先輩。今は五河士織先輩なんでしょう?」

「あ、うん! そうだったね!」

「やれやれ、先輩も懲りない人ッスねぇ。それで、今日はどんなデートにする予定ッスか?」

「うん。まずはね……」

 

 結果的に志穂から攻略の許可を得られた士道は、志穂から地味に士織の演技を続けることを要求されていることなど気にも留めずに、事前に練っていたデートプランを開示し始める。

 

 

『士道の女装がバレた時はどうなるものかと思ったけど、志穂の優しさに助けられたわね。とはいえ、今回が志穂攻略のラストチャンスなのは間違いない。さあ――私たちの戦争(デート)を始めましょう』

 

 この日のために、士道やフラクシナスのクルーたちは一丸となって、世界が志穂に繰り出す死の呪いの性質を分析し、ありったけの対策を用意した。その結果が実るか否か。フラクシナス艦橋の艦長席に鎮座する琴里は、内心で戦争(デート)の成功を心から祈りつつ、堂々と宣言するのだった。

 

 




五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。このルートでは志穂さんをゴリラに殺されてしまった。やはりゴリラは強敵だった。さすがはゴリラ。
五河琴里→士道の妹にして、精霊保護を目的とするラタトスク機関の一員にして、5年前にファントムに力を与えられ、精霊化した元人間。やれるだけの士道のサポートを行ったつもりだったのにリベンジデートが失敗してしまったことに、色々と思う所があったらしい。
霜月志穂→精霊。識別名はイモータル。いくら無意識の内に士道さんに砂名さんの面影を感じ取っているとはいえ、士道さんに再び封印のチャンスを与えるあたり、なんだかんだで甘い。でもそこがまたかわいい。

ゴリラ「ウホウホッ」
士道「ハァ…ハァ…敗北者……?」

 というわけで、11話のIFルートは終了です。本編で士織さん×志穂さんの百合(?)デート展開を実現できなかった未練から生まれたIFルートだったりします。ちなみに、このIFルートの場合、士道さんは殿町くんや亜衣・麻衣・美衣、岡峰先生たちに女装姿がバレるという、社会的にヤバいイベントに襲われつつも、最終的に死の呪いから志穂を1日守り抜くことに成功します。


 ……なお、もしも士織さんモードでも志穂さんの攻略に失敗した場合、12月にディザスターな士道さんが終始ハイテンションのまま、志穂さんの攻略に臨みます。なんというカオス展開。

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