どうも、ふぁもにかです。正直、この辺の展開を書きたくて本作を始めたまでありますので、気合入れて描写しますね。
霜月家の墓を含めて、様々な家の墓が立ち並ぶ墓地にて。
士道と砂名の視界の先で、砂名の妹:夢唯が大型バンと衝突して塀にぶつかり、大型バンがそのまま夢唯に追突したため、夢唯が為すすべもなく無残な残骸と成り果ててしまった中。
「おいテメェ、なにこいつを殺してんだよ!」
「なにって、逃すわけにはいかなかっただろうが! 霜月砂名は化け物だ! 人質に逃げおおせられたらその時点で俺たち全員速攻で全滅だろ! だったらここで殺してあいつにメンタルダメージ負わせてから、俺たちの手で殺すのが最適だ! 違うか!?」
「違うだろ! 奴を毒で極限まで弱らせてから、妹を殺して、奴が絶望しきったところで殺す。それが一番奴を確実に殺せる唯一無二の方法だろうが! メンタルにいくらダメージを受けようが、化け物に本気出されちゃ俺たちは死ぬしかねぇだろうが! どうしてくれんだよッ!!」
砂名への復讐を誓う1人の男が大型バンの運転手を座席から引っ張り出し、互いに相手の責を怒号を引き連れて攻め合い始める。どうやら男たちは、砂名に復讐するという動機こそ一緒だったが、復讐完遂に至る経緯について綿密にすり合わせができていなかったようだ。
しかし、今の士道は砂名への復讐を目的とする男たちのことなど、まるで意識できていなかった。理由は簡単だ。士道の視界の先で夢唯が大型バンと衝突して、夢唯が死んでしまったと士道が認識したと同時に、士道が腕に抱いていた砂名の姿が光に包まれ、死んだはずの夢唯の姿に変貌したのだから。
「夢唯、なのか?」
「ッ!」
わけもわからず士道はお姫様抱っこしている夢唯の名を問う。すると夢唯は士道の腕の中でひときわもがき始め、士道の腕から脱出する。士道の手から離れた夢唯はほんの数秒宙を舞った後、体をひねって足から床に着地する。
「夢唯? 何を言っているのかな、私は霜月砂名……」
夢唯は士道の問いかけを不可解に感じ、〈
「……夢唯?」
「違う」
「え?」
「違う。ボクは、夢唯なんかじゃ、ないのです。ボク、わわた、私私私私私私私私私私は、名前『霜月砂名』年齢『18歳』身長『165センチ』体重『48キロ』血液型『AB型』誕生日『12月20日』好きな物『アニメ漫画小説おいしい料理スポーツ観戦可愛い子かっこいい人面白い展開』嫌いな物『じめじめとした天気』好きな漫画『SILVER BULLET』好きなアニメ『
夢唯は士道の呼びかけを首をブンブンと左右に力強く振って否定すると、〈
「違う。そうじゃないです。ボクがまずやるべきはこっちじゃないのです。……ボクは、失敗したです。大失敗なのです。最悪の気分です。こんな、ロクに世界征服できていない序盤で正体がバレてしまうなんて。このままじゃあ、ダメです。やり直さないと。全部リセットして、お姉ちゃんをやり直さないと。テイク2を始めないと。失敗を取り消さないと」
「夢唯、一体何を――」
「〈
夢唯は震えを含んだ声色で早口に言葉を紡いで己の方針を確定させると、士道が口を挟むよりも早く、スッとたおやかな右手を士道へと差し出し、〈
夢唯が能力を行使した直後に効果が表れるものではないのだろうか。士道が疑問に感じていると、士道の周囲で異変が発生した。先ほどまで砂名への復讐を果たすためにまるで手段を選ばなかった男たちの挙動に変化が訪れたのだ。
「あれ、ここどこだ?」
「ん、と? マップ見たけど、千葉県? なんでこんなとこにいるんだ?」
「日本一周の旅とかやってたっけ。まぁいいや、帰ろうぜ」
男たちは朦朧とした意識のまま、士道と夢唯の隣を素通りし、先ほど夢唯を轢き殺したはずの大型バンに何事もなかったかのように全員乗り込み、墓地を後にする。この時、大型バンのボンネットにも、夢唯を潰したはずの塀にも、夢唯の血や肉片は残っていなかった。その様子はまるで、世界に何度も殺されまくっていた頃の志穂が死んだ後のような、1人の人間が死んだ証拠が丸ごと消え去った光景だった。
露骨に言動を切り替えてきた男たちの様子を士道が呆然と眺めていると、士道は付近から強烈な殺意を感じた。その方向へと振り向くと、夢唯が人を余裕で射殺せそうな視線で士道を睨みつけていた。
「は? なんでボクの〈
「なんでって言われても……」
「【
夢唯は士道の回答など知ったことかと、士道を対象に〈
「ボクの天使が通用しないって、マジなのです? あぁぁぁあああああああああもう! なんでこうもイレギュラーばっかり! どうせボクのことを無様な奴だってあざ笑ってんだろ、このクソ世界が! イライラするですよ!」
夢唯は士道に【
「人の記憶を改竄できる【
士道の目の前で、夢唯の姿が霧散する。その光景に士道は見覚えがあった。新人類教団の集会で砂名が志穂を襲おうとした時も、砂名は己の体を霧散させて、その後瞬間移動して志穂を殺しにかかったのだ。ゆえに。
「〈
士道はとっさに十香の天使:〈
「夢唯! どうして俺を殺そうとするんだ!?」
「決まっているのです。ボクの秘密を知る者がこの世に存在してはならないのですよ。【
人間と精霊では、身体能力に雲泥の差が存在し、当然膂力でも精霊に叶わない以上、士道は徐々に夢唯に力負けしている状況を自覚しつつ、夢唯が士道を殺そうとする理由を問う。対する夢唯はどこまでも平坦な口調で、さもこの世の常識を語っているかのような声色で士道に回答する。状況を完全に把握できたわけではないが、どうやら夢唯が〈
「【
「ッ!?」
と、ここで。夢唯が〈
そこでは強大で醜悪な見た目をした、万の瞳を持つ漆黒の化け物に向けて〈
「はぁ、はぁ……!」
刹那。士道の視界から化け物が消えて、墓地の光景へと戻る。今のはおそらく夢唯が士道に無理やり見せてきた悪夢なのだろう。所詮は、偽物の景色だ。しかし士道は己の体の震えを止めることができなかった。
「そこ!」
「ぐぅ!?」
「……ったく、士道さんの記憶の改竄はできないのに、ボクの妄想を士道さんの脳にぶち込むことはできるのですね。通じる技と通じない技の基準がよくわからないのです」
そんな士道のがら空きな胴体に夢唯は蹴りを叩き込み、士道を吹っ飛ばす。士道が受け身を取れずに墓地を転がっていく一方、夢唯は深々とため息を吐いてから、士道の命を刈り取るべく一歩、一歩と士道へと近づいていく。士道は痛みを訴える体に鞭を打って体を起こし、夢唯を牽制するように〈
どうする、どうすればこの窮地を切り抜けられる? さっき話した限りだと夢唯はどこまでも頑なで、夢唯の説得は難しい。だったら夢唯から逃げないといけない。だけど、どうやって? 夢唯は瞬間移動することができる。〈
「さようならです」
死中に活を求めようとする士道に夢唯が切迫し、日本刀で一閃する。士道は夢唯の日本刀を〈
「コフッ!?」
刹那。夢唯が立ち止まり、激しい咳き込みとともに、膝をついた。思わず日本刀を手放し、地に血の塊を吐き出し、荒い呼吸を繰り返す。急に体調に不調をきたした夢唯を士道は困惑の眼差しで見下ろし、そこでふと思い至った。
そうだ。さっきまでの砂名が、夢唯が〈
「くそ。あの野郎ども、どこまでボクの邪魔をすれば気が済むですか……」
何度か咳き込み血の塊を吐き出した夢唯は、悪態をつきながら、口元を拭いつつふらりと立ち上がる。それから夢唯は、士道の心配そうな顔を見て、一瞬驚いたかと思うとすぐさま不機嫌そうに眉を寄せる。
「……なんて顔をしているですか。ボクは士道さんの命を狙う敵なのですよ? 敵が勝手にくたばりかけてるんですから、もっと喜んだらどうなのです? 良い人ぶった建前ヅラしやがって、とことんムカつく人ですね、士道さん」
夢唯は再び手元に【
「俺は、夢唯のことを敵だと思ってない。さっきあれだけ無理やり毒を飲まされた夢唯のことを心配して何が悪いんだよ! ……なぁ夢唯。夢唯にとって俺が殺さないといけない敵だとして。絶対に今、殺さないとダメなのか? 夢唯の毒を治療してからじゃダメなのか? 俺は、お前を助けたい。毒を治療できそうな施設に心当たりがあるから、今すぐそこで毒を治療してもらいたい。それまでこの戦いは一時休戦、ってことじゃダメなのか?」
「……命乞いですか? それとも何かを狙って時間稼ぎでもしてるですか?」
「俺は夢唯に無茶をしてほしくないだけだ! 頼む、治療を受けてくれ!」
士道は夢唯の身を案じて一時停戦&ラタトスク機関で毒の治療を受けることを提案する。夢唯が士道の提案の裏を探ろうとしたところで、士道は畳みかけるようにして『夢唯を救いたい』という己の正直な気持ちをこれでもかと詰め込んで説得の言葉を叫ぶ。
「……」
すると、夢唯はしばしの熟考を挟んだ後、手に持つ日本刀を消滅させてトン、と軽く地を踏み、宙へとふわりと跳び上がった。
「夢唯! どこへ――」
「敵の施しなんてボクには不要です。ただ……気が変わりました。一時休戦の提案には乗ってやるです。次に会った時が士道さんの命日なのです。精々、遺書でも書いて、家族や友人に別れのあいさつを済ませておくことです。……遺された人が、過去に囚われずに済むように。無為な時間を過ごさずに済むように」
夢唯は士道に一方的にメッセージを残すとその体を霧散させ、墓地から姿を消す。かくして。墓地での怒涛の展開の中、士道は窮地を切り抜け、ひとまず生存をつかみ取れたのだった。
五河士道→好感度の高い精霊とキスをすることで、精霊の霊力を吸収し、封印する不思議な力を持った高校2年生。今まで封印した精霊の天使の力を活用し、夢唯との強制戦闘をどうにか切り抜けることに成功した。
霜月
霜月砂名@天国「わ、我が妹ムイムイが怒涛の勢いで私のプロフィールを暴露してりゅううううううう!? 何ということだ……! 助けて、個人情報保護法!」
次回「状況整理」